著者
飯塚 重善 小川 克彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.319, pp.31-36, 2005-09-30

コンピュータの普及やインターネットの発展により, さまざまな情報が場所や時間を問わず扱われるようになってきている.その結果, 高い機密性が求められる情報でさえも, いつでもどこでも扱われるようになってきた.しかしこれは, 利用者が, 個人情報の漏洩や流出といった危険性にもさらされることにもなりうる.このようなサービスは, 頑強なセキュリティ技術とともに提供されているため, システム機能上ではセキュアなサービスとして利用することができるが, 実際, 情報セキュリティ対策を十分に行ったシステムであっても, その利用場所によって利用者の安心感に大きな差が生じることが確認されており, 不特定多数の人間が利用できる公共の作業環境(パブリックスペース)において, 利用者は, 機密性の高い情報を必ずしも安心して扱うことができているとはいえない.そこで筆者らは, 公共空間で, 利用者が安心して利用できる作業環境を構築するための研究を行っている.本稿では, インターネットユーザを対象に, 個人情報毎に, それらを扱うことへの意識をたずねることで, 一般の人の, 個人情報取り扱い時の意識レベルを調査した結果を示した.さらに, 大学キャンパス内およびレンタルオフィスといった, 実際の公共空間での情報取り扱い実験を行い, その状況での個人情報取り扱いに対する意識調査も行った.それらから, 実際の公共空間での情報の取り扱い場面も含む, 汎用的な個人情報のセンシティブ度を得たといえる.
著者
小川 俊二 田中 泉
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

従来のデザインの目標の一つは、目に見え手に触れることのできるモノのカタチを決めることであった。一方近年、デザインの受け手の時間や経験を含めたコトのデザインという視点が提示されている。ここでは実際の製品提案や製品作りにかかわるデザイン・プロセスの中で、モノとコトのデザインがどういう関係にあるのか、事例とともに議論する。
著者
千本 英史 小川 豊生 山口 眞琴 増尾 伸一郎 谷口 洋
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

サンスクリット仏典での「偽書」のあり方、中国漢文文献における「偽書」の取り扱い方について報告を受け、討議・調査した。それらが東アジアの漢字文化圏(朝鮮・韓国、ヴェトナム、日本)においてそれぞれどのように受け継がれて、「偽書」を生み出していったかについて、調査し、個々の事例に則してその実態を考究した。この三国にあっては、ことに中国との関係をめぐって、また近代植民地支配の中での「偽書」の性格に大きな違いが見られた。
著者
町田 昌昭 小川 和夫 沖山 宗雄
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology (ISSN:03852423)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-5, 1982-03

A new nematode belonging to the family Physalopteridae was obtained from a primitive, deep-sea frill shark, Chlamydoselachus anguineus, caught off the Pacific coast of central Honshu, the main island of Japan. On the other hand, the larva was also found lying on the brain of a deep-sea bristlemouth, Cyclothone atraria, taken from the Pacific coast of northern Honshu. The life cycle of this nematode is briefly speculated. The nematodes were preserved in 70% ethanol and cleared in glycerin or Gater's solution. The specimens are deposited in the collection of the National Science Museum (Nat. Hist.), Tokyo. We are grateful to Dr. Toru TANIUCHI, Faculty of Agriculture, University of Tokyo, who afforded an opportunity to collect the parasites of the frill shark. Thanks are also due to Dr. Elmer R. NOBLE, University of California, and Dr. Yuzo KOMAKI, Far Seas Fisheries Research Laboratory, for providing valuable specimens.
著者
中澤 勇夫 雨宮 将稔 清水 裕之 秦 正治 広瀬 敏之 佐藤 英昭 木村 滋 小寺 隆三 阿部 宗男 杉田 邦博 水谷 太蔵 光武 雄一郎 工藤 栄亮 野原 学 吉川 憲昭 鈴木 文雄 関 和彦 小川 博世
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.568, pp.141-148, 2000-01-20
被引用文献数
1

第三世代移動通信システム(IMT-2000)は、世界各国で使用可能なグローバルサービスを目指す位置づけから1992年ITUにおいて世界共通の周波数(2GHz帯)の割当が行われた。国内のIMT-2000の2GHz帯導入に際しては、既存システムとの干渉特性を明らかにする必要がある。このため、(社)電波産業会(以後ARIB)では平成8年度より調査検討会を設置し、導入が期待されているCDMA方式による移動無線と、IMT-2000に割り当てられた周波数帯を用いている既存の固定無線との周波数共用の可否、及び周波数共用を可能とする条件を明らかにするために、計算機シミュレーションおよびフィールド実証試験について調査及び試験分析を行ってきた。本報告はこの内、フィールド実証試験についての調査及び試験結果の報告であり、相互干渉モデル、試験システム、広帯域伝搬路特性、電界強度特性等について述べる。
著者
黨 康夫 小川 忠平 大友 守 荒井 康男 佐野 靖之 田代 裕二 古田 一裕 若林 邦夫 伊藤 幸治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.50-55, 1999
参考文献数
15
被引用文献数
5

症例は30歳女性. 1997年5月中旬頃よりの腹痛, 腹部膨満感で当院救急外来を受診. 腹部X線写真にてイレウスを疑われ, 緊急入院となった. 白血球数の増加(12300/μl)及び好酸球比率の上昇(42.5%)を認めたが, CRPは陰性であった. 腹部CTにて大量の腹水貯留及び回腸から上行結腸にかけて広範囲に腸管壁肥厚が認められた. 腹水中細胞のほとんどは好酸球であった. さらに末梢血及び腹水中IL-5が著明高値を呈した. 消化管粘膜生検では好酸球浸潤は証明されなかった. 6月3日よりプレドニゾロン50mg/日の経口投与を開始し漸減. 症状は著明に改善し末梢血好酸球数, IL-5も正常化した. これらの所見から漿膜下優位型の好酸球性胃腸炎と診断した. 鑑別には腹水中好酸球増加の確認が有用で, かつIL-5が疾患活動性の指標となりうる可能性が示唆された.
著者
阿部 和時 黒川 潮 浅野 志穂 岡本 隆 松山 康治 落合 博貴 寺嶋 智巳 島田 和則 野口 宏典 大丸 裕武 宮縁 育夫 小川 泰浩
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.91-96, 2002-08-31
被引用文献数
6 4

2000年6月から始まった三宅島の火山活動による多量の降灰で雄山山腹の植生は壊滅的被害を受けた。この影響で泥流災害が島全域で発生し,現在も危険性は非常に高い状態にあると考えられる。本研究では,このような火山降灰地帯が形成された直後の激しい土壌侵食の実態を実証的に明らかにすることを目的とした土壌侵食の発生状況は降灰による森林被害の程度と相関性があると推察されるので,空中写真による森林被害区分を行い,それぞれの区分において現地水路侵食実験で侵食特性を検討した。その結果,降灰が堆積し形成された地表面は流速が20〜35cm/secと早く,浸透性が低いこと,しかし流出土砂量は降灰層中に枝葉が混入した地区よりも少ないこと等が示された。このデータをもとに汎用土壌侵食式(USLE)によって相対的な面状侵食の危険度を,火口を中心とした14.5km^2の範囲について示した。
著者
小川 恒男
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、日本を訪れた中国人が明治の東京を描いた作品群を研究対象とし、その集成を目的とした。具体的な研究成果として「郁曼陀『東京雑事詩』訳注」が挙げられる。郁曼陀は当時の市井の人々の目線で東京を描いており、取り分け女性の姿を好んで描写していた。彼は幕末から明治にかけて流行した日本漢詩を模倣しており、ある意味において、郁曼陀「東京雑事詩」は中国人でありながら日本漢詩を作るという試みであったという結論を得た。
著者
宇佐 英幸 竹井 仁 畠 昌史 小川 大輔 市川 和奈 松村 将司 妹尾 淳史 渡邉 修
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.155-164, 2011-12-25

健常者24名(男女各12名)を対象に(平均年齢:男性21.3歳,女性20.6歳),大腿・骨盤の動きと仙腸関節・腰仙関節・腰椎椎間関節の動きを,腹臥位と腹臥位・膝関節伸展位での股関節5・10・15°伸展位,15°伸展位から10・20N・mの伸展方向への加重を大腿遠位部に加えた肢位の6肢位で撮像したMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)を用いて解析した。結果,男女とも,股関節伸展角度の増加に伴って,大腿は骨盤に対して伸展し,骨盤は前傾した。股関節非伸展側の仙腸関節では前屈,第3/4・4/5腰椎椎間関節と腰仙関節では伸展の動きが生じた。しかし,第3/4腰椎椎間関節を除く各部位の動きは,10N・m加重時と20N・m加重時の間では女性だけにみられた。これらの結果から,他動的一側股関節伸展時の腰椎骨盤-股関節複合体を構成する関節の正常な動きが明らかになった。
著者
小川 光
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、政府間の情報の完全性を仮定しない場合にどのような問題が生じるかを明らかにすると同時に、ゲーム論等を用いることによって社会的に最適な状態に導くようなメカニズムをデザインすることを目的にしている。主たる研究成果は以下のようにまとめられる。Principal-Agentモデルを用いた『Allocation of authority under central grants』では、公共事業のタイプを決定する権限を二階層の政府間で配分する際に、公共事業への資金拠出インセンティブが重要な役割を果たすことから、事業への投資インセンティブを高めるために、資金調達費用に劣る下位層政府(地方政府)に事業タイプの決定権限を委譲することが最適解となる可能性があることを明らかにした。公共事業のタイプを内生的に選択する状況を扱った上記の分析を発展させて、『Grants structure when the type of public project is endogenous』では、地方政府の資金調達力が上がるとともに、中央政府は地方政府にとって優先順位が高い事業を選択すること、また、matching grantsからblock grantsへの補助金の給付方法のシフトを図るべきであることが明らかになった。中央政府から地方政府への権限委譲に加えて、さらに、地方政府から民間部門への事業内容の一部委譲を行う際の問題点として、コストの戦略的引き上げが行われる可能性を『Public monopoly,mixed oligopoly,and productive efficiency』において明らかにしている。これらの研究成果は、European Accounting Association Annual Congress(アテネ大学)や数理・理論経済学セミナー(九州大学)においても報告されている。
著者
小川 賢太郎 平山 育男
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会北陸支部研究報告集 (ISSN:03859622)
巻号頁・発行日
no.53, pp.541-542, 2010-07-18

柏崎市は「風のまち柏崎」と呼ばれるほど年間を通して風が強い。強風のため海沿いに砂丘が発達し、この上に成立したのが柏崎の町なみである。県内に同様の立地条件を持つ町なみは確認されなかった。高台となる町なみ全体に年間を通して強い潮風が吹き付け、これが金属製のゴミ箱を錆びさせる。そのため、柏崎の特に海沿いのゴミ箱は昔から使われてきた木製のゴミ箱である。柏崎の木製ゴミ箱は、歴史的に見ても古くから存在し、形や色、作りなどは柏崎の風土を色濃く反映している。即ち、柏崎にとって木製ゴミ箱とは柏崎の歴史と風土を映し出す、環境文化と言っても過言ではない。

1 0 0 0 OA 申采浩と儒教

著者
小川 晴久
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大學附屬比較文化研究所紀要 (ISSN:05638186)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.85-99, 1989

Shin Chai-ho (申采浩) was a Korean journalist and national revolutionary who died in Rushun(旅順) prison in 1936. The year 1910, when his country was overthrown, divides his life into two distinct periods, the first being his time as a journalist, ardently fighting to prevent his country's downfall, and the second his time as a revolutionary refugee, fighting for the recovery of its independence. During both these periods he continued research into the ancient history of Korea. He criticized bitterly the "flunkeyist" view of history as found in "Sam-kuk Sagi" (三国史記), by the Confucianist Kim Bu-shik (金富軾), arguing that the true face of Korea would not emerge until the toadying attitude that the world revolves around China had been defeated. And he devoted all his efforts towards this end. Criticism of the Chinese world order was criticism of Confucianism. Nevertheless, he himself was a Confucianist until the age eighteen when he entered the Confucian university, Sung Kyun Kwan (成均館). How did he break away from Confucianism? Did he ever abandon it completely? Under the title of "Shin Chai-ho and Confucianism", this paper attempts to answer these questions. Two years before he entered university, the "Independence Association", a movement to promote national awareness, was founded with the purpose of promoting a spirit of self-goverment. This movement was at its peak when he entered university in 1898. He joined the Association and played an active part in its archives division, where he demonstrated his literary talents. During the storm of the people's movement he studied democracy and promptly abandoned Confucianism. A few years later he became a journalist, wielding his pen freely and vigorously as chief editor, the target of his criticism being Confucianism and Confucianists. But he did not totally reject the spirit of Confucianism. In his article "A Criticism of the Confucian world", written in 1909, a year before the fall of Korea, he stated clearly that the weakness of Korea was due not so much to belief in Confucianism as to the lack of proper Confucian practice. He insisted that Korea's hostile attitude towards the Western world should be replaced by one of watchfulness, that Korea should endeavor to display its true spirit by directing its efforts towards welfare and education of its people. In his "The Ancient History of Korea" (朝鮮上古史), written after the fall of his country, traces the source of the concept of "sonbi", used by Confucianists as a symbolof courageous scholar "sonbe" of the ancient Kokuryo(高句麗), but this concept which was fostered by the Confucianists continues to survive as a symbol in his history. There is no doubt that Shin denied and renounced Confucianism, but throughout this denial a typical Confucian thrust survives in his interest in nationalism and public welfare.
著者
林 良博 小川 健司 九郎丸 正道
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

まず、ハタネズミ精子がマウスとハムスターの卵子以外の異種動物の卵子透明帯を通過できるか否かを検討した結果、ラット、マストミス、スナネズミの卵子透明帯は通過できないことが明らかとなった。一方、同種であるハタネズミの卵子透明帯への通過率は、マウスやハムスターに比べ、明らかに低率であった。しかもそれらの卵子はハタネズミ精子が侵入しているにもかかわらず受精していなかった。以上の事実から、この実験系では精子が受精能を獲得していないことが明白となった。次なる実験としてハタネズミの体外受精(IVF;in vitro fertilization)を試みた。精子の前培養時間を30分〜2時間、精子の濃度を前培養時1×10^7cell/ml、媒精時1×10^6cell/mlの設定条件でIVFに成功した。また培養液に1mMのハイポタウリンを加えることによって受精率は高率となり、ハイポタウリンは精子の前培養よりも媒精時に効果があることが示された。それらのIVF卵は培養してもほとんど胚盤胞期まで発生しなかったが、偽妊娠状態になった雌の卵管に移植したところ、正常な産子が作出できた。以上の一連の実験によってハタネズミの最適なIVF条件が確立でき、またこの方法によって作出したIVF卵は正常であることが判明した。さらに、ハタネズミ精子が先体酵素を利用して異種卵子透明帯を通過しているのか否かを確認するため、精子の先体酵素を不活性化して、受精を阻害する酵素(proteinase/hyaluronidase inhibitor)を培地に加えたところ、ハタネズミ同士の体外受精はほぼ完全にブロックされたが、ハタネズミ精子のマウス卵子透明帯通過はブロックされなかった。またカルシウムイオノフォアで先体反応を誘起し、先体内の酵素を放出させたハタネズミ精子であっても、マウス卵子透明帯を高率に通過することができた。したがってハタネズミ精子は、先体酵素を利用しないでマウス透明帯を通過していることが推測された。