著者
隠岐 さや香 野澤 聡 小林 学 但馬 亨
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、力学、光学、流体力学、および他の数理的な工学理論の分野など「混合数学」として分類されていた諸分野の知識産出に関して、道具や実験機器など(物質・技術文化)が果たした役割を検証した。「混合数学」の歴史は科学史上における二つの重要な時期に関わる。第一は17世紀末におけるニュートン科学のインパクトと18世紀後半の欧州における代数解析の発展である。この時期は、数学の適用が自然哲学の領域に広がったのだが、理論知を産み出すために適切な方法や「実験」の位置付けについての論争があったことが本研究でわかった。第二の時期については数学は工学諸分野に本格的に応用されたのだがその試行錯誤の様子を分析した。
著者
佐々木 綾香 小林 佑慈 井庭 崇
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.17, pp.89-92, 2008-03-05
被引用文献数
1

本論文では,研究活動を支援するための「リサーチ・パターン」を提案する.リサーチ・パターンとは,研究活動において繰り返し起こる問題とその解決策を「パターン・ランゲージ」の手法を用いて記述したものである.これにより,学生の研究活動の直接的な支援となること,および教員や学生,および研究者のコミュニケーションを促進するツールとなることを目指す.In this paper, we propose a pattern language for academic research. Each pattern consists of a frequent problem and its solution in a research activity. In this paper, we show the overview and two examples from 43 research patterns. Our aim is to support students to manage themselves and be productive in research, and also provide a tool for researchers to communicate about their research activities.
著者
竹村 瑞穂 重松 大 小林 大祐
出版者
日本体育・スポーツ哲学会
雑誌
体育・スポーツ哲学研究 (ISSN:09155104)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.27-40, 2011 (Released:2012-12-17)
参考文献数
9

The purpose of this paper is to explore the ground for putting a ban on doping in competitive sport circles, especially focusing on the doping problem as “the issues of that with free will”. The IOC and also some researchers have suggested the reason for prohibiting doping but it's still quite contentious.The object and methods in this paper are as follows: We consider “the issues of doping with free will” (object) in the way of applied ethics with four ethical theories as the framework for researching. The adopted frameworks are as bellow (method).1) the theory of virtue2) the theory of liberalism3) the theory of utilitarianism4) the theory of dutyWe can find some prior views about the topic in terms of the theory of virtue andliberalism, whilethe views based on the theory of utilitarianism and duty are our original one.It would be clarified that the view of virtue doesn't make sense and the view of utilitarianism can only show the prospective judgment. The limit of the theory of liberalism and the significance of the theory of duty would also be shown in this paper as a conclusion.Arguments on the doping issues in terms of the theory of duty, however, are limited on “doping negatively affecting the human body”. It means “doping issues that do no harm to human body in sport” should be treated as different problems that concernwith the essence of sport. Finally, we will suggest that both “the bioethical research” and “the philosophy of sport” should be pursued in the research on doping issues.
著者
小林 克 堀内 秀樹 岩下 哲典 金田 明美 小川 保
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.337-348, 2008 (Released:2018-01-31)

オランダ各都市・アユタヤ・ゼーランディア・平戸・長崎(出島)から出土した資料をサンプリングし,胎土分析を行った。この結果,黄色レンガは,オランダ地域からアジア各地にもたらされた可能性が高いこと。平戸・長崎(出島)出土の赤色レンガの多くは台南地域からもたらされた可能性が高いことが明らかになった。更に日本の瓦と同質のレンガが平戸と出島から確認され,日本人によりレンガが生産されていたと考えられる。オランダ式桟瓦も,タイ・アユタヤのオランダ人居住地と,インドネシア・バンテン遺跡からも発掘されていた。アユタヤで確認されたオランダ式桟瓦については,アムステルダム出土桟瓦との比較を行ったが,明確な差異は確認出来なかった。
著者
中川 大 小林 寛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.187-206, 2006 (Released:2006-03-30)
参考文献数
203
被引用文献数
4 5

阪神淡路大震災後の大規模な渋滞は,大都市の震災対応策に重要な教訓をもたらした.しかしながら,それから10年以上が経過しているにもかわらず,震災緊急時の交通対応の視点は基本的には変わっておらず,その教訓が十分に活かされる状況には至っていない.その原因の一つには,実際に現場でどのような現象が生じていたかが必ずしも明らかになっているとは言えないという点がある.そこで本研究では,最も重要な期間である震災発生後1~2日間における現象をあらためて明らかにするため,当時の状況に関する研究・文献等を調査し,被災地に流入できる全断面の震災直後の状況を把握する.また,これらの分析から,大都市における震災時の交通対応策に対して得られる教訓を整理し,現在の対策の課題を明らかにする.
著者
椿 崇裕 小林 聖人 上田 好寛 元井 直樹
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.144, no.1, pp.28-34, 2024-01-01 (Released:2024-01-01)
参考文献数
25

For operability improvement, this paper proposes a frequency modification method using fast Fourier transform (FFT) in a bilateral control. A bilateral control is one of the remote control methods with tactile sensation. The bilateral control system consists of the leader and follower systems. By using FFT, the position response and estimated force in the leader and follower systems are converted from the time domain to the frequency domain. In the frequency domain, frequency modification is conducted. After the frequency modification, the frequency domain data is reconverted to the time domain by using inverse FFT. Therefore, the proposed method enables frequency modification that is easy for the operator to manipuate in the bilateral control. For the confirmation of the validity of the proposed method, the experiments that imitate drilling tasks were conducted.
著者
鹿野 祐介 肥後 楽 小林 茉莉子 井上 眞梨 永山 翔太 長門 裕介 森下 翔 鈴木 径一郎 多湖 真琴 標葉 隆馬 岸本 充生
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.279-295, 2022-11-01 (Released:2022-11-14)
参考文献数
35

The Research Center on Ethical, Legal, and Social Issues (ELSI) at Osaka University and mercari R4D started a practical joint research project in 2021 to innovate based on the concept of ELSI and responsible research and innovation (RRI). This paper describes the research and practice conducted in this joint project on (A) upgrading the ethics review process for research and development, (B) assessing AI-based solution technologies and strengthening AI governance, and (C) conducting a feasibility study for participatory technology assessment on quantum technology, respectively. In this paper, we illustrate the methods and processes of this project, as well as the results of these individual studies, and share critical reflections on the ELSI/RRI knowledge production processes from the perspectives of both ELSI researchers and members of the private sector. Our results provide evidence of the contribution to innovation governance in science and technology from ELSI/RRI research and the knowledge of the humanities and social sciences.
著者
小林 博志
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.61-85, 2021-02-15 (Released:2022-03-10)
参考文献数
21

本稿では、農協婦人部の機関誌的存在である雑誌『家の光』を通し、第一次ベビーブームの親世代に着目して、高度経済成長期の農村社会における学歴アスピレーションの高まりについて考察する。一九五〇年代からの生活改善運動の展開と、一九六〇年代のテレビ普及を背景に、家族計画を一つの契機として教育への関心が高められ、その関心は子どもの成長と共に学歴取得へと向けられる。兼業化の加速による農外収入の増加と、テレビ普及による近代家族的価値観の浸透によって、工業製品の普及だけでなく、高卒という学歴も都市と同様に取得され、農村の都市化が進展する。これにより、消費財という「モノ」だけでなく、学歴という「経歴」も一般化していく。それは、都市と農村が共有しうる、「人並み」という生活水準意識の一端が形成されていく過程でもある。
著者
中塚 武 木村 勝彦 箱崎 真隆 佐野 雅規 藤尾 慎一郎 小林 謙一 若林 邦彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

全国の埋蔵文化財調査機関と協力して、年輪酸素同位体比の標準年輪曲線の時空間的な拡張と気候変動の精密復元を行いながら、酸素同位体比年輪年代法による大量の出土材の年輪年代測定を進め、考古学の年代観の基本である土器編年に暦年代を導入して、気候変動との関係を中心に日本の先史時代像全体の再検討を行った。併せて、年輪酸素同位体比の標準年輪曲線(マスタ―クロノロジー)を国際的な学術データベースに公開すると共に、官民の関係者への酸素同位体比年輪年代法の技術一式の移転に取り組んだ。
著者
後藤 拓朗 村田 尚道 前川 享子 神田 ゆう子 小林 幸生 森 貴幸 宮脇 卓也 江草 正彦
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.209-216, 2013-12-31 (Released:2020-05-28)
参考文献数
29

【目的】カプサイシンは赤唐辛子に多く含まれる成分で,嚥下反射の促進効果が認められている.咽頭の知覚神経からサブスタンスP(以下SP)を粘膜中に放出させ,SP濃度が上昇することによって反射が惹起されやすくなるとされている.現在,嚥下障害のある患者が容易に摂取できるように,フィルム形状のオブラートにカプサイシンを含有させたカプサイシン含有フィルムが市販されている.しかし,摂取後の嚥下反射促進効果については,十分検討されていない.そこで,本研究では,カプサイシン含有フィルム摂取後の嚥下反射と咳嗽反射への効果,および唾液中SP 濃度への影響について検討した.【方法】対象は,20 歳から40 歳までの成人男性(17 名)とした.カプサイシン含有フィルム(カプサイシン含有量1.5 μg/枚)とプラセボフィルムを用い,クロスオーバー二重盲検法にて行った.フィルムを摂取する10 分前の安静時の値を基準として,摂取後10 分ごとに6 回の嚥下反射および咳嗽反射を評価した.嚥下反射の評価として,簡易嚥下誘発試験による嚥下潜時を測定した.咳嗽反射の評価は,1% クエン酸生理食塩水を用いて咳テストを行った.さらに,摂取前10 分,摂取後10,20 分に唾液を採取し,ELISAキットにて唾液中SP 濃度を測定した.プラセボフィルム摂取時の値をコントロール群,カプサイシン含有フィルム摂取時の値をカプサイシン群として,両群を比較した.統計学的分析はFriedman test およびWilcoxon の符号順位和検定を用いて行った.【結果】カプサイシン群では,摂取前と比較して摂取後40 分で嚥下潜時の短縮を認め,コントロール群では差は認められなかった.また,コントロール群と比較して,カプサイシン群は嚥下潜時が摂取後20,40 分で有意に低値を示していた.その他の時間および他の評価項目では,有意差を認めなかった.【結論】カプサイシン含有フィルム摂取により,嚥下反射の促進効果が,摂取後40 分に認められた.
著者
福田 美絵子 來村 昌紀 隅越 誠 小林 亨 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.204-211, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
9

麗澤通気湯は『蘭室秘蔵』収載の方剤で副鼻腔炎との関連が推測できる諸症状を改善する事が知られている。先にわれわれは,本方剤が奏功した常習頭痛,気管支喘息,気管支アミロイドーシスの3症例を報告した。本稿は副鼻腔炎を合併した,月経前症候群,頭痛,食欲不振,手指知覚障害,咳嗽を主訴とした5症例に対し,副鼻腔炎を目標に本方剤を単独,あるいは補助的方剤との併用を行い,本方剤の証を明確にすることを試みた症例の報告である。
著者
小林 元樹
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.9-17, 2021 (Released:2022-07-26)
被引用文献数
1

ここ十年ほどで急速に進展した環形動物の高次系統に関する研究を,陸域の研究者向けに概説した.最近の研究か ら,環形動物門は初期に分岐したいくつかの系統と,遊在類および定在類(貧毛類やヒル類を含む)としてまとめられる系統からなることが分かっている.この系統関係は,既存の高次分類体系と合致せず,分類体系の大幅な見直しが必要であることが示されている.しかし,新しい分類体系はまだ提案されていない.環帯類内部についても,高次の系統関係について理解が進んできているが,分類体系の整理は今後の課題となっている.近い将来,環形動物の系統関係に関する最新の知見に基づいて,包括的な高次分類体系の整理が行われることが期待される.
著者
北村 亜也 田中 啓 松島 実穂 松澤 由記子 谷垣 伸治 小林 陽一
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.101-105, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
13

産科出血は妊産褥婦死亡の主要な原因を占め,速やかな対応を必要とする.近年,子宮動脈塞栓術(UAE)は産科出血に対する治療法として頻用されているが,生殖能への影響は十分に評価されていない.産科出血に対するUAEが月経再開,妊孕性,妊娠合併症に与える影響について後方視的に調査した.産科出血に対してUAEを行った78例のうち,追跡できた53例の月経再開率は98.1%(52/53例)であった.月経再開した52例中,挙児希望があった15例のうち,11例が妊娠成立し,8例が分娩に至った.そのうち3例が前置胎盤となり,その全例で癒着胎盤を認め帝王切開同時子宮全摘術を実施した.本検討により,UAEは月経再開や妊孕性には概ね影響を与えないが,妊娠例では癒着胎盤の発生率を高める可能性があることが明らかになった.UAE後の妊娠については,ハイリスク妊娠としての慎重な管理と十分な患者説明が必要である.
著者
町田 昌彦 岩田 亜矢子 山田 進 乙坂 重嘉 小林 卓也 船坂 英之 森田 貴己
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
pp.J20.036, (Released:2022-01-26)
参考文献数
53
被引用文献数
4

We estimate the monthly discharge inventory of tritium from the port of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (1F) from Jun. 2013 to Mar. 2020 using the Voronoi tessellation scheme, following the tritium monitoring inside the port that started in Jun. 2013. As for the missing period from the initial month, Apr. 2011 to May 2013, we calculate the tritium discharge by utilizing the ratio of tritium concentration to 137Cs concentration in stagnant contaminant water during the initial direct run-off period to Jun. 2011 and the discharge inventory correlation between tritium and 137Cs for the next-unknown continuous-discharge period up to May 2013. From all the estimated results over 9 years, we found that the monthly discharge inventory sharply dropped immediately after closing the seaside impermeable wall in Oct. 2015 and subsequently coincided well with the sum of those of drainage and subdrain etc. By comparing the estimated results with those in the normal operation period before the accident, we point out that the discharge inventory from the 1F port after the accident is not very large. Even the estimation for the year 2011 is found to be comparable to the maximum of operating pressurized water reactors releasing relatively large inventories in the number of digits. In the national level, the total domestic release inventory in Japan significantly decreased after the accident owing to the operational shutdown of most plants. Furthermore, 1F and even the total Japanese discharge inventory are found to be minor compared with those of nuclear reprocessing plants and heavy-water reactors on a worldwide level. From the above, we suggest that various scenarios can be openly discussed regarding the management of tritium stored inside 1F with the help of the present estimated data and its comparison with the past discharge inventory.
著者
檜枝 光太郎 高倉 かほる 小林 克己 MICHAEL Barr
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

あらゆる放射線生物作用の初期過程は、低エネルギー電子線の作用に還元できる。しかし、低エネルギー電子線(10eVから数100eV)の照射実験は技術的に極度に困難であり、DNA分子に照射できる施設は、現在、英国グレイ研究所にしかない。一方、励起・電離等のエネルギー吸収モードを制御できる低エネルギー単色真空紫外線源として、我々が多くの業績をあげた東大学物性研軌道放射物性研究施設が閉鎖された現時点では、KEK・PFのBL-20Aが残されている。低エネルギーの電子線と単色光子は、放射線生物効果誘発機構を解明するためには相補的な役割を持つ。本研究は、日本と英国の専門家が協力して、おのおののグループが得意とする放射線源を用いて、DNA主鎖切断誘発機構を総合的に解明しようという国際協力研究である。得られた結果をまとめると、(1)15eV電子線によって1本鎖および2本鎖切断が、総量に対してほぼ直線的に誘発された。このことは1本鎖および2本鎖切断誘発の閾値が15eV以下であることを示す。特に2本鎖切断誘発の閾値が15eV以下であることが実験的に示された成果は大きい。(2)低エネルギー電子線は2本鎖切断を1本鎖切断の数十分の1の比率で誘発し、この比がγ線による比と極端に違わないことが示された。(3)低エネルギー単色光子によるDNA主鎖切断は、効率は極端に低いが4.3eVでも誘発された。この意味では主鎖切断誘発の閾値エネルギーは存在しないが、通常の定義に従えば10eV程度の閾値エネルギーが得られることが実証的に示すことができた。(4)単色真空紫外線をプラスミド水溶液に照射するための照射方法を開発し、水溶液中DNAの2本鎖切断が7eV程度でも誘発されることを明らかにすることができた。本研究によって、シュミレーション計算で用いるDNA主鎖切断誘発の閾値を決める際に参考にすべき重要な情報を得ることができた。