著者
岸本 進太郎 辛嶋 良介 近藤 征治 杉木 知武 川嶌 眞之 川嶌 眞人
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.25, 2016 (Released:2016-11-22)

【はじめに】 近年,野球肘に関しても投球肩障害と同様に,肩後方タイトネスやScapula Dyskinesiaなどの存在を指摘する報告がされている.今回,成長期の選手における野球肘と肩関節機能の関連性ついて調査したので以下に報告する.【対象と方法】 対象は,2015年9月から2015年12月の期間に当院を受診し,野球肘と診断され加療を行った7例(内側型4例,外側型3例)とした.全例男性,右利き,右投げであり,平均年齢12.3歳(10?17歳)であった.なお,投球時の一発外傷例は除外した.方法は,肩関節機能の理学所見を原テスト11項目で評価し陽性率を調査した.評価内容は以下のとおりである.①Scapula-spine distance(以下SSD),②Combined abduction test(以下CAT),③Horizontal flexion test(以下HFT),④下垂時外旋筋力テスト(以下ISP),⑤下垂時内旋筋力テスト(以下SSC),⑥下垂時外転筋力テスト(以下SSP),⑦Elbow extension test(以下EET),⑧Elbow push test(以下EPT),⑨Loosening test(以下loose),⑩Hyper external rotation(以下HERT),⑪Impingement test(以下impingement).また,内側型野球肘4例(平均年齢10.5±0.6歳)を内側群,外側型野球肘3例(平均年齢14.7±2.5歳)を外側群とし11項目の陽性率を2群間で比較した.統計学的検討にはχ2検定を用い,いずれの検定も有意水準5%未満とした.【結果】 原テスト正常項目は平均6.6(5?8)項目であった.陽性率は,SSD:100%,CAT:57.1%,HFT:71.4%,ISP:14.3%,SSC:42.9%,SSP:42.9%,EET:71.4%,EPT:28.6%,loose:0%,HERT:0%,impingement:14.3%であった.2群間の比較では,SSCは内側群75%,外側群0%で有意に内側群が高かった(p<0.05).CATは内側群25%,外側群100%で有意に外側群が高かった(p<0.05).SSD,HFT,ISP,SSP,EET,EPT,loose,HERT,impingementの陽性率は有意な差を認めなかった.【考察】 可知らは中学・高校野球選手に対する投球時の肘痛と肩関節機能について調査し,肘痛を有する野球選手の原テスト正常項目は6.3項目であったと報告していた.本調査も平均6.6項目とほぼ同様の結果であった.自験例から,肩甲骨位置異常,肩後方タイトネスを示す項目の陽性率が高い傾向にあり,成長期の野球肘において,肘関節に加え肩関節機能の評価と治療が重要だと考えられた.また,coking phaseからacceleration phaseの野球肘が発生しやすい投球相で,骨頭を求心位に保つ腱板に機能不全を起こしている可能性が示唆された.両群間でSSCとCATに差が認められたが,これは受診時の年齢の違いに起因する問題が原因として考えられた.内側群は平均年齢が低く,筋機能の未発達な時期に投球負荷が加わり,腱板機能にimbalanceを起こすと思われた.一方,外側群は平均年齢が高く,無症候性に病態が進行するため,障害発生の危険因子として特徴的な肩後方タイトネスが顕著となったと思われた.本調査の限界として,症例数が少なく今後も調査を継続していきたい.【倫理的配慮,説明と同意】 本調査はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,当院倫理員会の承認を得て実施した.また研究の実施に際し,対象者に調査内容について説明を行い同意を得た.利益相反に関する開示事項はない.
著者
藤原 勇太 岸本 朋宗 平林 政人 土井 克史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-24, 2017-01-15 (Released:2017-02-15)
参考文献数
10

症例は83歳の男性で,盲腸腫瘍の診断にて腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術が予定された.既往に両側緑内障があり,右眼は失明していた.麻酔導入はフェンタニル200μg,プロポフォール50mg,ロクロニウム40mgで急速導入し,経口挿管を行った.その後,経鼻胃管を鼻腔内に挿入すると心拍数50/minから15/minへと高度の徐脈となり,挿入操作中止すると心拍数42/minに回復した.本症例では三叉神経-心臓反射(trigemino-cardiac reflex:TCR)の可能性が考えられた.経鼻胃管挿入時には,TCRにより徐脈をきたす可能性があることを念頭に置くことが重要である.
著者
吉田 真理子 内田 広夫 川嶋 寛 五藤 周 佐藤 かおり 菊地 陽 岸本 宏志 北野 良博
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.759-764, 2010-06-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
26

症例は4か月男児.腹部腫瘤を主訴に紹介され,エコー上肝内に径5.7cm大の多房性嚢胞性腫瘤を認め,当初は間葉系過誤腫が疑われた.1週間後の腹部造影CTでは充実性成分を伴う多発性肝腫瘤と肝門部・後腹膜リンパ節腫大を認め,悪性腫瘍が強く疑われた.早期診断および治療のために緊急入院し,経皮針生検を行った.ラブドイド腫瘍と診断され,ICE療法を開始したが,治療に全く反応せず,腫瘍は急速に増大した.入院直後より全身状態も急速に悪化し,人工呼吸管理,持続血液透析濾過を含む集中治療を行ったが改善を得られず,初診から約1か月後に死亡した.肝ラブドイド腫瘍は非常に稀で,著しく予後不良な悪性腫瘍である.現在までの報告例は検索しえた範囲で33例のみであり,文献的考察を加えて報告する.
著者
村瀬 公胤 岸本 琴恵
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.97-107, 2019-03-31 (Released:2020-04-01)
参考文献数
23

本研究の目的は,教育実践における二つの道徳的価値「規則の尊重」と「相互理解,寛容」の相克について,ケアの倫理を導入することによってこれを乗り越える方途を探ることである。そのために,中学校の事例に基づいて問題の構制を分析するとともに,佐伯(2017)の「二人称的かかわり」および「三人称的かかわり」を参照しながら「規則の尊重」と「相互理解,寛容」の概念の再定義を試みた。事例を通して明らかになったのは,まず,「三人称的かかわり」が「規則の尊重」と「相互理解,寛容」の相克をもたらしており,「二人称的かかわり」がそれを乗り越える契機となり得ることである。次に,「二人称的かかわり」の中で,生徒が主体的な規則の担い手として育つ過程が示された。「規則の尊重」とは,私があなたとどのような関係でありたいかという,二人称的な自律性の発露として捉えることができる。 他方,「相互理解,寛容」としてのケアとは,一方的な保護で現状を無条件に肯定し放置する甘やかしとは異なり,成長の文脈において現状を受けとめることであった。多様な個によって担われる規範と,多様な個が成長するためのケアは,学校が道徳的空間であるための必要な要素である。この理解に基づいて,日々の生徒指導や学校経営が進められる可能性が示唆された。
著者
岸本 泰蔵
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.122-126, 2002-08-01 (Released:2016-11-01)

女性の「美しさ」とは何か.女性とともに成長することを目指す当社では,人間工学にもとづいた科学的アプローチによって女性のからだ・意識の変化をとらえ,時代をリードする美の指標を発表してきた.時代とともに女性達が追求する理想体型はゆったりであるが確実に変化している.とくに,ここ数年は急速に,身体意識が変化している.約40年間にわたる当社の女性美の研究を振りかえり,女性の「美しさ」とは何かを考察する.
著者
山川 真 山本 忠司 水谷 洋子 西谷 博 八星 元彦 平田 純生 堀内 延昭 清水 元一 山本 啓介 岸本 武利 前川 正信
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.115-127, 1982-03-31 (Released:2010-03-16)
参考文献数
55

炭酸塩の析出という重曹透析液の欠点は, 酢酸ソーダを緩衝剤として用いることによって解決されたが, 透析法の発達によって新たに酢酸透析の問題点が指摘されるようになった. まず, dialyzerの効率の上昇に伴って, 透析液から生体に負荷されるacetate量がその代謝能を超える可能性があることと, 患者の中にはacetateの代謝能が低いものがあることがわかった. またacetateの大量負荷が生体のTCA-cycleに影響を及ぼすことが明らかにされた. 第2は, 酢酸透析では, dialyzerを通して血液から失われるHCO3-とCO2が大きいため, 適正な酸塩基平衡の是正が行われないこと, またCO2の低下から生ずるPO2の低下も考えられた. 第3はacetateの心機能抑制作用と, 未梢血管拡張作用が, 透析に不利に働いて, 透析中の不快症状の原因になっていることが示唆された. 第4はacetateの代謝経路から考えて, 長期には脂質代謝に何等かの影響が及ぶことが推測される. 第5は, まだ知見は少ないが, 重曹透析がCa代謝に有利に働くことが期待される.実際, 酢酸透析を重曹透析に移行することによって, 透析中の不快症状の発現が激減し, 種々の検査成績も改善することが示された. 重曹透析はすべての透析患者にとって有利な透析を提供すると考えられるが, 特に酢酸不耐症、 重症合併症、 心循環系合併症, 導入期, 大面積短時間透析等の症例に有効である. 重曹透析液は炭酸塩の沈澱を防止することが最大の課題であるが, そのためには, 液のpHの安定化をはからねばならない. このことはとりもなおさず, 液のPCO2の安定化に他ならない. 現在では, 重曹透析液は2原液法によって作製されるが, 安定した組成の液とその混合供給装置が開発され実用化している. 重曹透析は生理的で有用であるが, その取扱いはやや煩雑で、 高価になるので, 今後これらの点の改良が望まれる.
著者
髙橋 省吾 真鍋 誠司 本橋 永至 岸本 重雄 萩原 亨 金 垠憲
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1_35-1_43, 2020-01-31 (Released:2020-03-06)
参考文献数
11

海外特許取得に関連する費用は非常に高額であり,間接費として企業収益に大きな影響を及ぼすため,各企業は海外特許費用を管理し,次年度以降にかかる費用を予測して経営戦略に織り込む必要がある.しかるに,費用が発生する時期や回数も発明案件により区々であり,その予測は極めて困難である.このため,各企業は,例えば,前年度の実績を参考に当該年度の海外特許費用を予想するなどの単純な方法に頼らざるをえない.そこで,本研究は,海外特許費用,特に米国における特許費用を,より正確に推定する方法を見出すべく,複数の統計的予測手法を比較検討し,企業実務への適用を図ることを目的とし,研究を行なった.その結果,所定のアルゴリズムを用いて,複数の予測手法の中から状況に最も適した手法を選択することで,将来の海外特許費用をより高い精度で予測する方法を見出し,予測システムの開発に着手することができた.
著者
藤井 謙裕 堀井 康弘 岸本 和美 岩野 正之 土肥 和紘
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.1179-1184, 1995-08-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
12

CAPD (continuous ambulatory peritoneal dialysis) 排液の白濁は, 腹膜炎の重要な兆候であるが, 乳糜の混入による白濁排液と鑑別を要する場合が少なくない. 今回著者らは, 排液の白濁が脂肪成分の分析から乳糜の混入によるものと診断されたCAPDの3例を経験した. 乳糜排液の原因は, 症例1ではIPD (intermittent peritoneal dialysis) カテーテルによる腹腔内リンパ管の損傷, 症例2ではmanidipine hydrochlorideの内服, 症例3では高脂肪食摂取であった. つまり, 乳糜排液は, リンパ管の機械的損傷, 薬物によるリンパ管の透過性亢進, 高脂肪食後でのリンパ管流量とリンパ管圧の増加によるリンパ管からのリンパ液漏出が原因と考えられる. さらに, 乳糜排液は, 腹膜炎による白濁排液との鑑別が重要であり, 細菌培養や炎症反応の成績のない場合でも, 1) 発熱, 腹痛などの腹膜刺激症状がない, 2) 白濁排液中の細胞数が100/μl未満である, 3) 3,000rpm, 5分間の遠沈後も白濁が消失しないことが鑑別点になる. つまり, CAPD排液が白濁した場合は, 乳糜排液の可能性を考慮して腹膜炎と鑑別し, その原因を追求することが重要である.
著者
亀高 正男 菅森 義晃 石田 直人 松井 和夫 岸本 弘樹 梅田 孝行 東 篤義 山根 博 杉森 辰次 魚住 誠司 永田 高弘 松場 康二 桑島 靖枝 岩森 暁如 金谷 賢生
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.11, pp.793-820, 2019-11-15 (Released:2020-03-26)
参考文献数
152
被引用文献数
1

舞鶴-小浜地域の5万分の1精度の地質図を新たに作成し,上林川断層の破砕帯の観察結果などと合わせて,超丹波帯と丹波帯の地質構造発達史を検討した.超丹波帯は後期ペルム紀〜三畳紀(?)付加体の上月層・大飯層・氷上層に,丹波帯はジュラ紀付加体の周山・雲ヶ畑・灰屋・鶴ヶ岡・由良川の5つのコンプレックスと古屋層に区分される.これらの地質体は衝上断層によって境され,大局的には北に向かって構造的上位かつ古い地質体が分布するパイルナップ構造を形成している.超丹波帯および丹波帯は東西~北西-南東走向で西〜北西に傾斜した軸を持つ半波長数kmの褶曲構造を形成している.この褶曲構造を切って北東-南西方向に,左横ずれカタクレーサイト帯を伴う地質断層としての上林川断層が延びている.活断層としての上林川断層は右横ずれ成分が卓越し,より古い地質断層の一部が横ずれインバージョンによって再活動していることが判明した.
著者
岸本 麻子 金 義慶 南 豊彦 中川 のぶ子 多田 直樹 井野 千代徳
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.97-103, 2006

真性唾液過多症の1例を報告した。患者は24歳の女性で15歳頃より唾液過多を自覚していた。今日まで心因性のものとして加療されてきたが効果なく当科を紹介受診した。安静時唾液量は5分間で9-10mlと非常に多く、RI検査では両側の顎下腺で集積が低下していた。これは分泌に集積が追い付かない現象と理解した。唾液腺造影ではワルトン氏管の拡張が認められた。これは恒常的に多量な唾液が分泌されての現象ととらえた。顎下神経節をブロックして唾液量が著しく低下したことより顎下腺が責任腺と考えた。治療として抗ヒスタミン剤、マイナートランキライザー、H1受容体ブロッカー、カルバマゼピンを選択し投与した。結果、カルバマゼピンにてやや有効と判定された。最終的に左顎下腺摘出術を行ったが、結果は予想以上に良好で手術後49日目の安静時唾液量は1.5mlで、自覚的にも有効と判定された。
著者
岸本 一郎 井垣 誠 小松 素明 隈部 綾子 恒成 徹
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.347-354, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
16

目的:糖尿病性腎臓病の重症化予防のため地域における課題を抽出し特に介入すべき対象集団を検討する.方法:4年間の豊岡市国民健康保険特定健診データ(初年度n=5,169)に基づいて後方視的縦断コホート研究を行った.血清クレアチニン値の1.2倍化をエンドポイントとして生存時間分析を行い,腎機能低下と関連する因子を解析した.結果:腎機能低下のリスク因子として糖尿病と高血圧が有意に関連しており,それぞれの疾患がある場合は約2倍リスクが上昇した.糖尿病患者のみの解析では,HbA1c(高値)とHDLコレステロール(低値)が腎症増悪と関連していた.特に,治療を受けていないHbA1c 8 %以上の群で腎機能低下の進行を認めた.また,尿蛋白(-)の糖尿病患者を対象とした検討では,低HDLコレステロール血症群が高リスクであった.結論:地域における糖尿病性腎臓病進行の高危険群が明らかとなった.
著者
岡田 隆平 角田 篤信 籾山 直子 岸根 有美 喜多村 健 岸本 誠司 秋田 恵一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.8, pp.791-794, 2012 (Released:2012-10-06)
参考文献数
10
被引用文献数
6 13

困難な術式や新しい術式に際して術前に解剖体を用いて解剖学的理解を深めることは有意義であるが, 従来のホルマリン固定による解剖体では組織の硬化が強く, 術式に即して展開することが困難であった. Thiel法は1992年に発表された解剖体の固定方法で, 生体とほぼ同じ質感を維持することができ, 病原体による感染の危険性を伴わない. 本固定法で処理された解剖体は組織が柔らかく, 実際の術式に即したかたちで解剖, 検討することができ, 術前の解剖学的検討に有用と考えられた. 本法は他の解剖体固定法と比していくつもの有利な点があり, 術式検討に加え, 新しい手術機器の開発, 外科医の技術評価にも有用であると考えられる.
著者
岸本 健雄
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.157-167, 1986-07-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
69

Maturation-promoting factor (MPF) is a cytoplasmic factor that is capable of inducing a maturation response involving nuclear envelope breakdown, chromosome condensation and spindle formation when microinjected into immature oocytes. MPF activity is found in a wide variety of eukaryotic cells at M-phase, such as mitotically dividing cells as well as maturing oocytes. MPF acts non-species-specifically among the animal kingdom. MPF has been partially purified and characterized as a heatlabile protein with a molecular size of approx. 5s. MPF activity oscillates with the same period as the cell cycle, with peaks during metaphase. MPF has the ability to amplify itself by activating its precursor, which is stored in fully grown oocytes. But replenishing MPF after its fall during cell cycle requires protein synthesis. MPF can cause nuclear envelope breakdown and chromosome condensation in vitro with isolated nuclei. Such cell-free system requires the cytoplasmic component extracted from eggs in addition to MPF. Further, MPF dissociates the junction between oocyte surface and surrounding follicle cells. Thus, MPF seems to act directly not on nucleus but on cytoplasm. Taken together, MPF might more generally be described as "metaphase-promoting factor" rather than a maturation-promoting factor.
著者
高橋 清 宗田 良 岸本 卓巳 松岡 孝 前田 昌則 荒木 雅史 谷本 安 河田 典子 木村 郁郎 駒越 春樹 谷崎 勝朗
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.686-692, 1992-06-30 (Released:2017-02-10)

自律神経系の機能異常に基づく各種アレルギー性肺疾患病態における肺肥満細胞の役割を解明する目的で, 酵素処理法, percoll遠心法, 付着細胞除去法によって得られた高純度ヒト肺肥満細胞のアセチルコリンに対する反応性を, ヒスタミン遊離率を指標として検討した. その結果, 肥満細胞からのヒスタミン遊離はアセチルコリンの濃度に依存し, 10^<-5>で有意に亢進していた (p<0.05). また, アセチルコリンは抗ヒトIgE家兎血清によるヒスタミン遊離を相対的に増加させた. なお, かかるヒスタミン遊離はアトロピンでは部分的にしか抑制されなかった. 一方, ヒト末梢血好塩基球はかかるアセチルコリンに対する反応性が認められなかった. 以上の結果より, ヒト肺肥満細胞はIgE受容体のみならず, アセチルコリン受容体を介する反応により自律神経系の標的細胞として各種アレルギー性肺疾患の発症機構の一端を担っていることが示唆された.