著者
坂本 美穂 蓑輪 佳子 岸本 清子 中嶋 順一 鈴木 仁 守安 貴子 深谷 晴彦 斉藤 貢一
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.96-107, 2019-08-25 (Released:2019-08-30)
参考文献数
36
被引用文献数
2

LC/Tribrid Orbitrapを用いて強壮系健康食品中のphosphodiesterase-5 (PDE-5)阻害薬および構造類似体を迅速かつ確実に同定できる分析法を開発した.液体クロマトグラフの移動相に5 mmol/Lギ酸アンモニウム含有0.1%ギ酸溶液(pH 3)および0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液を使用し,C18カラムでPDE-5阻害薬および構造類似体を分離した後,higher-energy collisional dissociationおよびcollision-induced dissociationの2種類の解離法を用いて複数のMS/MSおよびMS3スペクトルを同時に取得した.本分析法を市販強壮系健康食品および個人輸入医薬品105検体に適用したところ,いずれの検体からもPDE-5阻害薬および構造類似体を検出することができた.さらに,検体から検出された3種類のPDE-5阻害薬の構造類似体と15種類のPDE-5阻害薬および構造類似体の不純物について,本分析法を用いて構造を推定した.本法は強壮系健康食品中に含まれるPDE-5阻害薬および構造類似体の迅速かつ確実な同定および構造推定に有用な方法である.
著者
岸本 恵一 神田 かなえ 日下 昌浩 大槻 伸吾 大久保 衞 前田 正登 柳田 泰義
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.67-70, 2017

<p>アメリカンフットボール競技の現場で重症度判定が適切でなかった熱中症の症例を経験した.主訴は全身性筋痙攣であり,当初は意識清明であるとの評価から軽症な熱中症を疑ったが,採血結果から重症熱中症(III度熱中症/熱射病)と診断された.スポーツ現場で利用可能な重症度判定指標は限られるため,暑熱環境下での体調不良は重症熱中症の可能性を疑い,可及的早期に病院を受診することが望ましい.</p>
著者
岸本 直子 樋口 健 岩佐 貴史
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
スペース・エンジニアリング・コンファレンス講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp._A06-1_-_A06-2_, 2014

近年,衛星搭載のアンテナや太陽電池パネルは,観測周波数の高周波化や高感度化,大電力要求に対応するために,大型化かつ高精度化している.そこで,著者らは,地上ならびに軌道上で,大型構造物の形状を高速かつ高精度に計測する技術の研究開発に取り組んできた.しかし,各種地上試験や軌道上で実用に供するためには,計測装置の小型化とロバスト化が必須である.本研究では,格子投影法を用いた可搬型形状計測装置を用いて,圧縮試験時のスキン付きCFRP製ラティス円筒(直径約2m)および,小型衛星搭載を目指した合成開口レーダー用平面スロットアンテナ(700mm×700mm)の形状計測を実施した計測結果について報告する.可搬型形状計測装置は,基準面を用いたキャリブレーションをあらかじめ実験室でおこなっておき,実際の計測には,プロジェクターとカメラから構成される簡便な計測装置のみを用いた.いずれの場合も,表面形状や変形形状の全視野計測に成功し,ひずみゲージやレーザー変位計による計測では判別しにくい全体の変形モードを取得することができた.
著者
三木 文雄 生野 善康 INOUE Eiji 村田 哲人 谷澤 伸一 坂元 一夫 田原 旭 斎藤 玲 富沢 磨須美 平賀 洋明 菊地 弘毅 山本 朝子 武部 和夫 中村 光男 宮沢 正 田村 豊一 遠藤 勝美 米田 政志 井戸 康夫 上原 修 岡本 勝博 相楽 衛男 滝島 任 井田 士朗 今野 淳 大泉 耕太郎 青沼 清一 渡辺 彰 佐藤 和男 林 泉 勝 正孝 奥井 津二 河合 美枝子 福井 俊夫 荒川 正昭 和田 光一 森本 隆夫 蒲沢 知子 武田 元 関根 理 薄田 芳丸 青木 信樹 宮原 正 斎藤 篤 嶋田 甚五郎 柴 孝也 池本 秀雄 渡辺 一功 小林 宏行 高村 研二 吉田 雅彦 真下 啓明 山根 至二 富 俊明 可部 順三郎 石橋 弘義 工藤 宏一郎 太田 健 谷本 普一 中谷 龍王 吉村 邦彦 中森 祥隆 蝶名林 直彦 中田 紘一郎 渡辺 健太郎 小山 優 飯島 福生 稲松 孝思 浦山 京子 東 冬彦 船津 雄三 藤森 一平 小林 芳夫 安達 正則 深谷 一太 大久保 隆男 伊藤 章 松本 裕 鈴木 淳一 吉池 保博 綿貫 裕司 小田切 繁樹 千場 純 鈴木 周雄 室橋 光宇 福田 勉 木内 充世 芦刈 靖彦 下方 薫 吉井 才司 高納 修 酒井 秀造 西脇 敬祐 竹浦 茂樹 岸本 広次 佐竹 辰夫 高木 健三 山木 健市 笹本 基秀 佐々木 智康 武内 俊彦 加藤 政仁 加藤 錠一 伊藤 剛 山本 俊幸 鈴木 幹三 山本 和英 足立 暁 大山 馨 鈴木 国功 大谷 信夫 早瀬 満 久世 文幸 辻野 弘之 稲葉 宣雄 池田 宣昭 松原 恒雄 牛田 伸一 網谷 良一 中西 通泰 大久保 滉 上田 良弘 成田 亘啓 澤木 政好 三笠 桂一 安永 幸二郎 米津 精文 飯田 夕 榊原 嘉彦 螺良 英郎 濱田 朝夫 福山 興一 福岡 正博 伊藤 正己 平尾 文男 小松 孝 前川 暢夫 西山 秀樹 鈴木 雄二郎 堀川 禎夫 田村 正和 副島 林造 二木 芳人 安達 倫文 中川 義久 角 優 栗村 統 佐々木 英夫 福原 弘文 森本 忠雄 澤江 義郎 岡田 薫 熊谷 幸雄 重松 信昭 相沢 久道 瀧井 昌英 大堂 孝文 品川 知明 原 耕平 斎藤 厚 広田 正毅 山口 恵三 河野 茂 古賀 宏延 渡辺 講一 藤田 紀代 植田 保子 河野 浩太 松本 慶蔵 永武 毅 力富 直人 那須 勝 後藤 純 後藤 陽一郎 重野 秀昭 田代 隆良
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.914-943, 1987
被引用文献数
2

Clavulanic acid (以下CVAと略す) とticarcillin (以下TIPCと略す) の1: 15の配合剤, BRL28500 (以下BRLと略す) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性をpiperacillin (以下PIPCと略す) を対照薬剤として, welI-controlled studyひこより比較検討した.<BR>感染症状明確な15歳以上の慢性呼吸器感染症 (慢性気管支炎, びまん性汎細気管支炎, 感染を伴った気管支拡張症・肺気腫・肺線維症・気管支喘息など) およびその急性増悪, 細菌性肺炎, 肺化膿症を対象とし, BRLは1回1.6g (TIPC1.5g+CVA0.1g) 宛, PIPCは1回2.0g宛, いずれも1日2回, 原則として14日間点滴静注により投与し, 臨床効果, 症状改善度, 細菌学的効果, 副作用・臨床検査値異常化の有無, 有用性について両薬剤投与群間で比較を行い, 以下の成績を得た.<BR>1. 薬剤投与314例 (BRL投与161例, PIPC投与153例) 中, 45例を除外した269例 (BRL投与138例, PIPC投与131例) について有効性の解析を行い, 副作用は293例 (BRL投与148例, PIPC投与145例) について, 臨床検査値異常化は286例 (BRL投与141例, PIPC投与145例) について解析を実施した.<BR>2. 小委員会判定による臨床効果は, 全症例ではBRL投与群78.8%, PIPC投与群79.4%, 肺炎・肺化膿症症例ではBRL投与群 (79例) 82.1%, PIPC投与群 (73例) 79.5%, 慢性気道感染症症例ではBRL投与群 (59例) 74.6%, PIPC投与群 (58例) 79.3%の有効率で, いずれも両薬剤投与群間に有意差を認めなかった.<BR>3. 症状改善度は, 肺炎・肺化膿症症例では赤沈値の14日後の改善度に関してPIPC投与群よりBRL投与群がすぐれ, 慢性気道感染症症例では胸部ラ音, 白血球数, CRPの3日後の改善度に関してBRL投与群よりPIPC投与群がすぐれ, それぞれ両薬剤投与群間に有意差が認められた.<BR>4. 細菌学的効果はBRL投与群68例, PIPC投与群57例について検討を実施し, 全体の除菌率はBRL投与群75.0%, PIPC投与群71.9%と両薬剤投与群間に有意差は認められないが, Klebsiella spp. 感染症においては, BRL投与群の除菌率87.5%, PIPC投与群の除菌率16.7%と両薬剤群間に有意差が認められた. また, 起炎菌のPIPCに対する感受性をMIC50μg/ml以上と50μg/ml未満に層別すると, MIC50μg/ml未満の感性菌感染例ではBRL投与群の除菌率69.6%に対してPIPC投与群の除菌率94.7%とPIPCがすぐれる傾向がみられ, 一方, MIC50μg/ml以上の耐性菌感染例ではPIPC投与群の除菌率12.5%に対して, BRL投与群の除菌率は66.7%と高く, 両薬剤間に有意差が認められた.<BR>5. 副作用解析対象293例中, 何らかの自他覚的副作用の出現例はBRL投与群5例, PIPC投与群11例で, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>6. 臨床検査値異常化解析対象286例中, 何らかの異常化が認められた症例は, BRL投与141例中45例 (31.9%), PIPC投与145例中28例 (19.3%) で, 両薬剤投与群間に有意差が認められた. 臨床検査項目別にみると, GPT上昇がBRL投与140例中26例 (18.6%), PIPC投与140例中14例 (10.0%), BUN上昇がBRL投与128例中0, PIPC投与127例中4例 (3.1%) と, それぞれ両薬剤投与群間での異常化率の差に有意傾向が認められた.<BR>7. 有効性と安全性を勘案して判定した有用性は, 全症例ではBRL投与群の有用率 (極めて有用+有用) 76.3%, PIPC投与群の有用率の74.8%, 肺炎・肺化膿症症例における有用率はBRL投与群81.0%, PIPC投与群75.3%, 慢性気道感染症症例における有用率はBRL投与群70.0%, PIPC投与群74.1%と, いずれも両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>以上の成績より, BRL1日3.2gの投与はPIPC1日4gの投与と略同等の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を示し, とくにβ-lactamase産生菌感染症に対しても有効性を示すことが確認され, BRLが呼吸器感染症の治療上有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
岸本 浩和
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.101-107, 1974

In May 11th, 1973, 399 specimens of <I>Stethojulis</I> were collected in Suruga Bay, ofwhich 33 showed color phase of <I>S.interrupta</I> and 366 that of <I>S.kalosoma</I>.In anaquarium, 312 specimens with"kalosoma"pattern were kept at the water temperature18.3-25.1°C.Some of them changed their color pattern to"<I>interrupta</I>"phase, within10 days.Among 312 specimens, 54 (42 died, 12 alive) changed to <I>S.interrupta</I> phaseand 258 remained in"<I>kalosoma</I>"phase (187 died, 71 alive), by July 31, 1973.Duringthe color change, certain specimens took on color patterns resembling <I>S."trossula"</I>.It was found that individuals of"<I>kalosoma</I>"phase included female, male and indeterminables, whereas those of"<I>interrupta</I>"phase were all males.On the basis ofmorphological characters and color patterns, it was concluded that <I>S.kalosoma</I> and<I>S.trossula</I> are junior synonyms of <I>S.interrupta</I>, and represent different color phasein the course of the sex reversal from female to male.
著者
パーカー ジョセフ ドン 身内 賢太朗 水本 哲矢 西村 広展 奥 隆之 澤野 達哉 篠原 武尚 鈴木 淳市 高田 淳史 谷森 達 上野 一樹 原田 正英 池野 正弘 田中 真伸 内田 智久 服部 香里 岩城 智 株木 重人 岸本 祐二 窪 秀利 黒澤 俊介 松岡 佳大
出版者
日本中性子科学会
雑誌
波紋 (ISSN:1349046X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.218-222, 2013

<p>We have developed a prototype time-resolved neutron imaging detector employing a micro-pattern gaseous detector known as the micro-pixel chamber (μPIC) coupled with a field-programmable-gate-array-based data acquisition system. Our detector system combines 100μm-level spatial and sub-μs time resolutions with a low gamma sensitivity of less than 10<sup>-12</sup> and high data rates, making it well suited for applications in neutron radiography at high-intensity, pulsed neutron sources. In the present paper, we introduce the detector system and present several test measurements performed at NOBORU (BL10), J-PARC to demonstrate the capabilities of our prototype. We also discuss future improvements to the spatial resolution and rate performance.</p>
著者
岸本 肇
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.82_3, 2018

<p> 本研究は、旧東ドイツ(DDR)のサッカー選手"Jürgen Sparwassserの『自伝』を通して、社会現象としてとしてのスポーツのあり方について問題提起をしようとするものである。戦歴の素晴らしさはもちろんであるが、何よりも彼を有名な存在にしているのは、1974年6月22日、ワールドカップ・一次リーグ、ハンブルク・フォルクス・スタジアムにおける対西ドイツ戦において、1-0の決勝点の得点者であることと、1988年にDDRから逃亡したことの、2つである。</p><p> 1979年のシーズン終了後、引退した彼は、その後、サッカー指導者、スポーツ科学の研究者として、DDRで第二の人生を歩んで行くかに見えた。しかし彼は、1988年1月、西ドイツ側へ「逃亡」(Flucht)する)。やがて、時代は大きく変わり、1990年のドイツ統一、彼の活動も新たな展開を見せている。</p><p> 主たる報告内容は、「Sparwassserの幼少年期とKJS(青少年スポーツ学校)時代」「ワールドカップ1974、西ドイツとのDuell前後」「輝かしい選手経歴」「引退後、指導者・研究者への道」「逃亡後(西ドイツでの)の新たな課題」「現在のサッカー活動と社会的活動」である。</p>
著者
木ノ下 修 岡本 和真 小西 博貴 小松 周平 安川 覚 塩崎 敦 窪田 健 保田 宏明 小西 英幸 岸本 光夫 小西 英一 柳澤 昭夫 大辻 英吾
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.1281-1287, 2013 (Released:2013-07-05)
参考文献数
23

症例は56歳男性.膵内分泌腫瘍に対し膵体尾部切除術が施行され,病理学的診断は膵内分泌腫瘍(Ki-67 LI:3%,NET G2),T2N0M0,fStage IIで癌遺残は認められなかった.術後補助化学療法を施行され無再発であったが,術後15年目に胃体上部後壁に約3cmの粘膜下腫瘤を指摘され胃部分切除を施行された.病理組織学的には膵内分泌腫瘍の胃壁内転移(Ki-67 LI:10%,NET G2)と診断された.術後15年目に再発した膵内分泌腫瘍の胃壁内転移は非常にまれである.
著者
住友 克彦 山形 敦子 島 浩二 岸本 真幸 久松 完
出版者
農業技術研究機構花き研究所
雑誌
花き研究所研究報告 (ISSN:13472917)
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-11, 2009-12

遠赤色光(FR)を効率的に照射することが可能な蛍光灯を用い,数種花きにおいて明期終了時の短時間FR照射処理(EOD-FR)を行い,開花反応および伸長成長を調査した。EOD-FR処理に対する開花および伸長成長における反応は,植物種によって様々であった。EOD-FR処理によって,キクでは3品種において伸長成長が促進されたが,'神馬'では変わらず,反応には品種間差が見られた。ヒマワリ2品種,キンギョソウ2品種,ストック'ピンクアイアン',ブプレウルム'グリーンゴールド'およびカーネーション'バーバラ'では,伸長成長および開花が促進された。ガーベラ'オーランド',カラー'クリスタルブラッシュ',コスモス'ミヨシのベルサイユ'およびバラ'ボヌール'において,本実験のEOD-FR処理条件では,伸長成長および開花における影響は見られなかった。ケイトウ'デリーパール'では,EOD-FR処理によって茎伸長が促進されたものの,開花は遅延した。また,アスター'セレネピンク'では,茎伸長は影響を受けず,開花が遅延した。キク'デックモナ'および'セイエルザ',ヒマワリ2品種およびケイトウ'デリーパール'では,栽培時期によってEOD-FR処理による伸長成長または開花の促進効果が変動した。以上のことから,営利栽培においてEOD-FR処理を実際に利用するためには,EOD-FR処理の方法および効果について,品目ごとに詳細に検討する必要があるものの,花き営利栽培の場面でのEOD-FR処理の利用の可能性が示された。
著者
岸本 泰樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E2Se2073, 2010

【目的】現在我々理学療法士は、医療報酬・介護報酬の枠組みの中で運営する病院や老健などの施設で働いている場合が多い。平成21年現在、一般の保育園、幼稚園で働く理学療法士は皆無といってよい。しかしながら、昨今全国的に展開される様々な分野の公的機関民営化の流れに伴ない、これまで医療・介護に関わってきた医療法人が保育園を運営する例も珍しくなくなってきている。一般の保育・教育の現場でも、障害を有さない健常な子供たちとの生活の中で、我々理学療法士に対する期待の声も高まっており、こうしたことは多職種協働を目標に掲げる我々が、なすべき役割を発揮するひとつのチャレンジなのかもしれない。今回、岐阜市内における保育園との1年を通じた関わりを経験したのでここに報告する。<BR><BR>【経緯】岐阜市内のA保育園はこれまで岐阜市が運営を担っていたが、市が推進する平成20年度の民営化改革より、これまで同市内において病院や老健を運営してきた当医療法人が管理・運営することとなった。同園は5歳児(年長)・4歳児(年中)・3歳児(年少)それぞれ1クラスと3歳未満児クラスを有する保育園であり、障害児の受け入れも積極的に進めている。また同園ではこれまで、いわゆる「体操教室」のような運動に特化する時間を設けておらず、園児の運動発達や身体能力に注目することが少なかった。そこで今回の民営化を機に園児への健やかな運動発達を誘導する一方法として理学療法士が派遣されることとなった。<BR><BR>【方法】同園内で隔週1回を基本とし身体を動かす楽しさと大切さを伝える「理学療法士による体操教室」を開催した。また通常の教室とは別に正常な運動発達をチェックする観点から、園児たち全員に対する運動機能評価(スポーツテスト)を行ない、子どもたちの運動能力の現状を確認した。得られた結果は保育士と共に分析を行ない、園全体で共有できるよう努めた。また同時に、日常の遊びや生活動作の中での運動発達状況を記録するシステムを構築した。さらに現在運動発達障害を有し病院などで治療を続けている子どもたちにおいては、担当の理学療法士との情報交換をしながら実際に保育園に来ていただき、園での日常生活における保育士の対応について指導もいただいた。<BR><BR>【説明と同意】今回の取り組みに関しては保育園側への十分な説明を行なうとともに、園児と保護者に対する理解と同意を得て計画的に実践にあたった。<BR><BR>【結果】スポーツテストの結果では全体的に当園の子どもたちの運動能力が低下傾向であることが確認された。中でもテニスボール投げや両足連続飛び越えのような全身の協応性を求められる項目でスコアが伸びなかったのは、これまで運動を指導されたことがない園児たちが今持ち合わせている基本的な運動能力を、発展的かつ巧に利用することが不得手であることをうかがわせた。また日々の発達を年間を通じて記録することは、客観的な変化を担当保育士が理解・共有することにつながり保育業務の一助となった。障害児への対応では、保護者との面談や通院先の担当理学療法士への訪問活動、担当理学療法士に日常生活での指導をいただくため園に招く活動などを通じ、これまで希薄であった保護者・保育士・担当理学療法士のつながりを強化する働きかけとなった。<BR><BR>【考察】少子化が進む現在、子どもたちの能力を伸ばすための働きに注力する保育園・幼稚園が増えてきている。医療法人がこうした運営を担うケースは今後増えてくると予想され、我々理学療法士に広がる新しい業界として展開される可能性が十分にある。そこでは、運動発達学的な視点をもとにした適切な運動能力評価、障害児を受け入れている園の担当保育士への指導、また該当児の治療を担当する理学療法士と保育士とを有機的につなげるパイプ役、など様々な役割が求められ、これまで障害に対するアプローチのみが主な生業であった我々が今後構築すべき新たな地平といえるのかもしれない。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】「多職種との協働」や「理学療法士としての職域の広がり」の観点から、今回のような新しい切り口での取り組みは、今後研究されるべき課題の投げかけという意味でも意義深いものであると考える。
著者
野田 智子 稲垣 千絵 柴垣 亮 池田 佳弘 西藤 由美 岸本 三郎
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.148-151, 2008

32歳,女性。初診の1年8ヵ月前の第2子妊娠時,近医にて疱疹状膿痂疹と診断された。今回,第3子妊娠約8ヵ月頃より体幹,四肢に紅斑,膿疱が出現。疱疹状膿痂疹の再発と診断し,活性型ビタミンD3軟膏及びステロイド外用剤を行い,出産後皮疹は軽快した。発熱等全身症状はなかった。
著者
山本 聡 辻 博治 原 信介 田川 泰 綾部 公懿 劉 中誠 澤田 貴裕 白藤 智之 田村 和貴 岸本 晃司 新宮 浩 赤嶺 晋治 岡 忠之
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.493-496, 1997
参考文献数
5
被引用文献数
4

鈍的外傷による頸部気管完全断裂の2手術例を経験した。症例1は21歳, 男性。バイク乗車中転倒, チェーンにて頸部受傷。第1と第2気管軟骨間において完全断裂, 両側反回神経と食道の合併損傷も認めた。症例2は55歳, 男性。ショベルカーのアーム部にて前胸部, 頸部を受傷。第1と第2気管軟骨間において完全断裂, 両側反回神経と頸髄の損傷を認めた。両症例とも気管損傷に対しては気管端々吻合術を施行した。鈍的外傷による気管完全断裂症例は受傷早期の気道確保を確実に行えば, 比較的救命率の良い外傷であると考えられた。また, このような症例では気管のみではなく他臓器の合併損傷の可能性もあることが示唆され, 術中術後の充分な検索が必要と思われた。
著者
岸本 宗和 塩原 貫司 萩原 健一 今井 裕景 柳田 藤寿
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.931-939, 2012 (Released:2017-12-18)
参考文献数
27

1.セミヨン種ワイン発酵醪および醸造設備から乳酸菌を分離し,そのリンゴ酸分解能を検討した。前期醪から分離された22菌株中の18菌株に,後期醪から分離された24菌株すべてに,醸造設備から分離された10菌株中の1菌株,合計 43菌株にリンゴ酸の分解能が認められた。2.16S rDNAのPCR-RFLP解析および塩基配列解析の結果から,前期醪から分離されたリンゴ酸分解能を有する乳酸菌は,Lb. plantarumに,後期醪から分離された乳酸菌はO. oeniに,ワイナリー醸造設備から分離された乳酸菌はP. pentosaceusに分類される可能性が極めて高いことが示された。3.リンゴ酸分解率に及ぼすpHの影響について検討したところ,前期醪から分離された09Se-A1-4株はpH 2.9の条件下においても90%以上の高いMLF能を有していた。4.セミヨン種ブドウを原料とする小規模試験醸造において,09Se-A1-4株は速やかにMLFを生起し,さらには,クエン酸の消費が少ない特徴を有する菌株であることが認められた。
著者
白浜 龍興 大庭 健一 岸本 幸次 山田 省一 佐藤 亮五 中野 真 加藤 雅士 古川 一雄 長谷川 和子 村越 明子 箱崎 幸也 真方 良彦 中川 克也
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.881-890_1, 1988

著者らは昭和53年より厳しい環境の下で行われる,いわゆるレンジャー訓練の前後に上部消化管内視鏡検査を施行し,上部消化管に急性病変が認められることを経験している.9年間のレンジャー訓練生421名中,胃潰瘍36例(8.5%),十二指腸潰瘍25例(5.9%),胃十二指腸潰瘍5例(1.2%)を認めた,これらのうち急性胃潰瘍41例(5例は十二指腸潰瘍と併存)について検討した.単発30例(73.2%),多発11例(26.8%)で62病変であった.62病変のうち胃角小彎に29病変(46.8%)が認められた.内視鏡的経過観察をみると治癒に8週以上を要した治癒遷延例は6例(14.5%)で胃角小彎の潰瘍が4例,胃角部と胃体部の多発性潰瘍1例,胃角部から胃体部の帯状潰瘍が1例であった.この6例中4例が再発(同部位再発,再発誘因は演習)し,うち2例が慢性潰瘍化したと考えられた.
著者
岸本 千佳司 Chikashi KISHIMOTO
雑誌
AGI Working Paper Series = AGI Working Paper Series
巻号頁・発行日
vol.2019-03, pp.1-61, 2019-02

本研究は、台湾の「台達電子(Delta Electronics)」(以下、「台達」と略記)の事例研究である。台達は 1971 年に社員 15 人の町工場として創設され、その後ほぼ一貫して成長し、2017 年時点で、全世界で従業員数約 8 万 7,000 人、売上高約 73 億 4,500 万米ドルの大企業グループとなっている。主要製品は電源供給器をはじめとする各種電機・電子部品で、近年ではそれをシステムとして提供し、省エネ・低炭素化に資する電気エネルギーマネジメントのソリューション・ビジネスを展開している。 持続的な成長性の背景には、創業者の鄭崇華(Bruce C.H. Cheng)氏の経営哲学を反映した堅実な経営姿勢がある。本研究では、①ものづくり企業としての堅実性(主力製品・事業の変遷・拡充、海外展開、研究開発体制)、およびそれを支える②企業経営での堅実性(企業グループの組織運営、人材経営、環境経営)の 2 側面に分けて分析する。 分析の結果、①については、創業当初からの研究開発と品質管理の重視、それに基づく顧客への迅速な対応と手厚いサービス、そして早くから欧米顧客の開拓へと進んだ国際性の強さが見出された。これを土台に、1970 年代以降、様々な応用製品市場(家電、ICT、グリーンエネルギー、産業自動化、グリーン建築、EV 等)が次々と勃興してきたことを背景に、着実に製品の拡充・多角化を進めてきたのである。堅実さの表れとして、既存製品とのシナジーを活かしつつ、高付加価値・高利潤の市場を常に開拓し、しかも製品の性能向上にも継続的に取り組んできたことが指摘される。 ②については、グローバルに展開した企業グループ統合の仕組み、人を大切にし社員の学習と創意工夫を奨励する人材経営、および積極的な環境経営へのコミットメントが明らかとされる。とりわけ環境経営は、台達にとって、単なる時流に合わせた付随的な取り組みではなく、同社の経営理念である「環境保護 省エネ 地球愛護」(「環保 節能 愛地球」)を実現するための不可欠の一環として行われていることが示される。 最後に、近年本格化した大規模な経営改革についても分析する。これには、中国等の新興競合企業の追い上げを背景に、これまでの環境エネルギービジネスに加え、次世代産業(インダストリー4.0/ビッグデータ/5G/EV 等)勃興に伴うビジネスチャンスをつかみとろうとする狙いがあることを示す。新事業展開として、とりわけ、スマート製造ソリューションが今後の成長分野として期待されている。
著者
岸本 美緒
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.57, no.1・2, pp.171-200, 1976-01

Heng ch’an so yen is a collection of family precepts left to posterity by Chang Ying, 1638-1708, a scholar who served and was close to Emperor, K’ang-hsi. The text emphasizes the security of investment in land as compared to that in commerce and discusses the secret of making the former more profitable. The author came from one of the influential famines native to T’ung-ch’eng County, An-ch’ing Prefecture, Anhwei Province, and one of his sons, Chang T’ing-yü, 1672-1755, later became a powerful minister in the reigns of Yung-cheng and Ch’ien-lung.At the time of writing Heng ch’an so yen, it seems, Chang Ying was the owner of more than one-thousand mou of cultivated lands, and his income consisted mostly of the proceeds from the rice collected as rent from the lands and sold for cash. It is a safe guess that his yearly income from the lands, after deducting expenses necessary for reproduction and livelihood and tax duties, amounted to a sum in silver enough for purchasing more than one-hundred mou. Thus it was possible for him to expand steadily the lands he owned.In spite of such highly secure nature of the management of his lands, Chang Ying could not help warning his descendants in his precepts against the danger of their downfall through selling away the lands. It was because he had witnessed too many of such unfortunate examples, in which the sons of a landowner would fall into poverty caused by the thin profit margin on land management, or be ruined after selling away their land holdings and going into commercial activities seeking higher profit. Low profitability of investment in land was a frequent subject of discussion in Ch’ing Chinese literature. It is interesting to note that Chang Ying hardly considered it relevant to discuss the heavy tax burden and the anti-rent resistance by the tenants, two great problems in the Yangtzekiang Delta, but regarded the low profitability as mainly caused by the poor crop resulting from the landowner’s neglect of the land management and the lower price of grain in comparison to other commodities. Moreover, he felt that the two main causes of difficulty could be overcome if the landowner stopped living in town and returned to the countryside so that his lands would be put to optimum use to make him self-supporting in livelihood. Such a view of Chang Ying’s appears to reflect the economic situation at T’ung-ch’eng, where market economy had not yet penetrated the countryside at that time.
著者
岸本 三香子 海野 知紀 田中 敬子
出版者
一般社団法人 日本食物繊維学会
雑誌
日本食物繊維学会誌 (ISSN:13495437)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.23-31, 2007

健常な女子学生38名(年齢19.8±0.9歳)を対象に,難消化性デキストリン(食物繊維4.2g)を含有したデザート飲料を摂取することによる排便状況に及ぼす影響を検討した。対象者を2群に分け,シングルブラインド・クロスオーバー試験を実施した。飲料摂取試験は全7週間であり,非摂取(I 期:1週間),飲料摂取(II 期:2週間),非摂取(III 期:1週間),飲料摂取(IV期:2週間),非摂取(V 期:1週間)とした。対照飲料は試験飲料に配合した難消化性デキストリンを含まない飲料を用いた。試験期間中,排便状況に関するアンケートを毎日,また健康状態に関するアンケートを1週間ごとに記入させた。その結果,便秘傾向者(n=12)において試験飲料の摂取により非摂取期間と比較して排便日数,排便回数,排便量いずれにおいても有意に増加した。さらに,難消化性デキストリンを配合した飲料は対照飲料摂取期間と比較して排便日数は有意な増加が認められた。また,愁訴発現からみた身体的・精神的健康状態調査からも,飲料摂取により便秘の改善はみられた。