著者
本多 慶大 工藤 卓
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第29回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.46, 2013 (Released:2015-01-24)

脳波と人間行動を遠隔計測可能なシステム,Air Brainを開発した.本システムの特徴は,いつでも・どこでも・誰でも容易に脳波と人間行動を計測することが可能であることである.汎用部品を用いて独自開発した小型脳波計とスマートフォンにより構成されているため,低コストで導入可能であり,更に広いエリアをカバーしたテレメトリーが可能である.小型脳波計とスマートフォンはBluetooth無線により接続し,スマートフォンの3G回線を介してインターネット上の外部保存領域へデータを保存することで計測場所の制約のない遠隔計測を実現した.また,スマートフォンは人間行動を識別するために高感度なセンサーやGPSシステムが組み込まれているため,これを利用して脳波と人間行動を同時に把握することが可能である.これらの特徴により広い分野への応用が見込まれる.Air Brainシステムを用いてα波の遠隔計測に成功し,市販の小型脳波アンプと同等の性能を有することを確認した.加速度センサーの出力値を同時計測することで,歩行状態と脳波を対応させて観測することが可能であった.また,Air Brainシステムを用いることにより,歩行直後数秒以内では,安静時と比較してα波が増大することを見出した.
著者
竹中 完 北野 雅之 工藤 正俊
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.255-264, 2017 (Released:2017-03-22)
参考文献数
39

慢性膵炎は悪性新生物の合併率が高く,非可逆性,進行性の予後不良疾患とされるが,従来の慢性膵炎診断基準は「高度の完成された慢性膵炎しか診断できない」という問題点があり,早期診断,早期治療導入による予後改善を目指し,本邦から世界に先駆けて「早期」慢性膵炎の診断基準が作成された.その特徴の一つに画像項目において,早期で慢性膵炎を診断する手段として多くの報告がなされているEUSに重きが置かれていることがあげられる.その所見の多くは新しいEUSによる慢性膵炎の分類・診断基準である,Rosemont分類から進行慢性膵炎の所見を除いたものが引用されている.
著者
樋口 洋平 石川 祐聖 工藤 新司 柏村 友実子 和泉 隆誠
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

花ハスの開花期・花型を決定する分子機構を明らかにするため、花芽・花器官形成関連遺伝子を単離し、発現動態を解析した。フロリゲン/アンチフロリゲンをコードするFT/TFL1ファミリー遺伝子を14種類同定した。このうち、FTグループ4種類、TFL1グループ4種類について開花特性の異なる2品種において遺伝子構造と発現パターンを比較した結果、NnFT2がフロリゲンとして機能する可能性、およびNnTFL1が抑制因子として機能する可能性が示唆された。花器官形成に関与するABCEクラス遺伝子(全12種類)の発現解析の結果、ハスの八重咲きはNnAG (Cクラス)の発現低下が原因である可能性が考えられた。
著者
岩崎 有良 石黒 桂一郎 大隅 敏光 相沢 敏晴 米沢 道夫 工藤 勲彦 杉村 文昭 鵜浦 達也 阿部 政直 林 貴雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.692-699, 1979-06-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
22

胃潰瘍および十二指腸潰瘍の再発について両者を比較しながら検討を行った.胃潰瘍の再発率は36.7%,十二指腸潰瘍は35.6%で,両群ともほぼ同様の傾向である.再発の傾向は両群に多くの共通点がみられる.即ち両群とも男性,治癒遷延例,初回開放例,多発例,および治療中止例に再発率が高い,また累積再発率も同様の傾向を示し,治癒後1年以内の再発は胃潰瘍50.8%,十二指腸潰瘍44.5%,2年以内では胃潰瘍75.0%,十二指腸潰瘍75.5%となっている.また胃液分泌能については両群とも活動期→治癒期→瘢痕期と潰瘍が治癒に向うごとに低下がみられるが,時相別に比較しても再発例と非再発例との間に差は認められなかった.両群を比較して大きな違いをみせたのは年代別の再発率で,胃潰瘍のピークが50歳代であるのに対し十二指腸潰瘍では29歳以下となっており,逆に再発率の一番低かったのは胃潰瘍では29歳以下に対し,十二指腸潰瘍;は60歳以上と非常に対称的であった.
著者
工藤 喜作
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1959, no.9, pp.26-34, 1959

十七世紀は中世的桎梏を脱して自己の立場を確立しようとした哲学が、新しく勃興してきた数学的自然科学に喚起されて、「方法」の問題を積極的に取扱った時代である.この点スピノザも例外ではなく、幾何学的方法をもって自己の方法となした.単に幾何学の外面的な形式をその模範とし、最早証明せられない要素から、定義・公理を駆使して論証の体系を構成する外面的な方法と幾何学の内的な方法を哲学的認識に適用し、もって幾何学の内容とその内的合法則性或いは諸関係を哲学的存在の模範とする内面的方法があるとするならば、その両者ともスピノザの場合には幾何学的方法であった.外面的方法は周知の如くユークリッドを模範とし彼の主著エチカに於いて果されている.内面的方法に関しては彼の認識論の心身平行関係が等式と曲線との関係に於いて表現されていることから、デカルトの幾何学をその模範としていたことが主張されている.因みに彼はすでに一六五三年頃にはデカルトの幾何学を知っており、またそのテキストを二冊所有していた.だが幾何学的方法に関してのデカルトの影響は、単に心身関係を外面的に考察するだけでは充分ではない.むしろ精神と物体との内面的構造或いは内容から帰結されなければならない.この点彼の知性改善論の第二部を形成する定義論は、定義それ自身の論理-数学的構造を明らかにし、もって彼の実在的事物が如何に或いは如何なる幾何学によって構成されるかをその内面から示してくれる.<BR>スピノザに於いては形而上学的・物理学的・論理-数学的世界像は相互に区別されて考察され、またそれらから新しく再構成されることにより、その真の体系が樹立される.このため定義論は、物理学と並んでその体系樹立の一環として、彼がしばしば言明したところの真の観念による自然の再現の方法が, 如何なる論理-数学的秩序に基づいているかを示さねばならない.だが彼はよき定義の条件を知ることとその定義の発見法を知ることにその定義論を限定している.そして前者については定義の諸規則を設けて論じたが、後者に関しては充分に詳述せず、むしろ一種の混乱を惹き起しているように見える.しかしこれがためには知性についての充分なる知識を持たねば論及されないため、むしろこの問題は彼の認識論に於いて考察されねばならないものであろう.因みに彼の方法論は、知識の探求のための方法であるよりは、上述の如く体系を構成するための方法即ち自然を思想に於いて再現するための方法であるため、それは定義の発見を目指す方法というよりは、むしろ定義をその前提として出発する方法であった.彼が知性改善論に於いて挙げた定義の諸規則もその哲学の内面的要求より生じたものであり、その規則の適用は、結局その哲学を前提としそれを確証することに外ならない.<BR>定義に関してスピノザはアリストテレス・スコラ的な類・種差による定義を排した.この点彼はデカルトと軌を一にする.神をも定義しようとするスピノザは、アリストテレス派の論理学者の主張と同様に、最高類或いは最高の存在としての神が、類・種差によって定義されないことを認めた.しかし彼の場合、神が定義されなければ、それから生ずる他の一切の事物は理解されることも認識されることもできない.ここに彼はデカルトの影響をうけ、数学的な分類法・論理に基づいて、神並びに他の一切の事物を定義しようとする.かくて彼の定義論についての考察はその定義の論理的構造を明らかにし、もってそれを如何に実在的事物に適用したかを見なければならない.
著者
佐野 千絵 工藤 昌弘 中濱 正利 佐野 勇介 下村 景太 佐野 芳一 楢松 雅裕 橋本 視法
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.47-51, 2005 (Released:2005-07-29)
参考文献数
15

当院では膝前十字靭帯断裂に対しての再建術として,平成12年6月よりDouble-Looped Semitendinosus and Gracilis Graft(以下DLSTG)移植術を採用している。リハは術前より介入し,術後翌日より全荷重許可,膝装具不要,14日以内の独歩獲得を基本方針とするプロトコールを作成した。プロトコールを実施し,術後4ヶ月以降膝の安定性および全可動域の獲得,大腿部筋力の患健比(健側の80%以上)の回復,競技に必要な能力の獲得が確認され次第主治医が許可し,早期スポーツ復帰が可能となった。
著者
工藤 尚子 三浦 耕資 周東 千緒 村上 敏史 齊藤 理 的場 元弘
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.13-0014, (Released:2013-09-30)
参考文献数
9

オピオイドの全身投与で十分な鎮痛が得られなかった2 例のがん性痛患者に対して,くも膜下モルヒネに高用量のブピバカインを併用し良好な鎮痛を得たので報告する.症例1:72 歳の男性で,肺がんの腸腰筋・大腿筋群転移による下肢の痛みに対し,くも膜下鎮痛法を施行した.モルヒネ単独で十分な鎮痛が得られずブピバカインを最大94 mg/日で併用し,痛みはverbal rating scale で4 から1~2 へ軽減した.症例2:64 歳の女性で,直腸がんの皮膚転移による陰部,大腿の痛みに対し,くも膜下鎮痛法を施行した.モルヒネ単独で十分な鎮痛が得られずブピバカインを最大66 mg/日で併用した.レスキュードーズ使用時に下肢のしびれ,低血圧を認めたが,レスキュードーズの調整で軽減し,痛みはnumerical rating scale で10 から2~5 へ軽減した.くも膜下モルヒネの効果が不十分ながん性痛の患者において,ブピバカインを加え,副作用や合併症に注意しながら高用量まで漸増することで,患者満足度の高い優れた鎮痛が得られた.
著者
工藤 遥 田村 俊明
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

架空の存在でありながら世界中の神話に登場し、現代においてもファンタジーには欠かせない存在であり続けている竜・龍・ドラゴン。人間は彼らに対してなぜこれほどにまで興味を抱いてきたのか。そして、人間は彼らに何を投影しているのか。ここでは歴史を通して様々な姿に描かれてきた竜を追い、現代における竜のキャラクター性に目を向けることで、人間と竜との関わり、またその背後に潜む人間の自然に対する意識の変化を考察する。
著者
工藤 洋
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.175-183, 2017
被引用文献数
5

<p>アブラナ科のタネツケバナ属(<i>Cardamine</i>)は約200種からなる。日本の農耕地に見られるのがタネツケバナ,オオバタネツケバナ,ミチタネツケバナの3種である。これらの種を対象に,生活史,生態,進化,系統地理,外来植物,形態形成,ゲノムといった様々な観点の研究がなされてきた。本総説では,これまでの研究を概観し以下の点を論じる。①タネツケバナは<i>C. flexuosa</i>とは別種である。②タネツケバナの学名は<i>C. occulta</i> Hornem.である。③タネツケバナは外来種として世界の温帯圏に広がっている。④オオバタネツケバナの学名は<i>C. scutata</i> Thunb.である。⑤オオバタネツケバナは倍数化によるタネツケバナ属多様化の典型例である。⑥日本のオオバタネツケバナ集団には地理的遺伝構造がある。⑦ミチタネツケバナはヨーロッパ原産の外来植物である。⑧ミチタネツケバナのゲノムが決定し,モデル植物としての基盤が整備されている。⑨ミチタネツケバナの雄しべ数は温度に依存して変わる。これらの研究は,近縁種の分類と同定,農耕地への適応,外来雑草の侵入といった,雑草学研究にとって重要な課題を含み,研究の展開が期待される。</p>
著者
工藤 敏之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.173, 2019 (Released:2019-02-01)
参考文献数
4

ボノプラザンは新しい作用機序を持つプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor: PPI)であり,我が国においてのみ販売されている.PPIであるエソメプラゾールは,CYP2C19の活性を阻害することが知られており,CYP2C19基質であるジアゼパムなどが併用注意とされているが,ボノプラザンの添付文書にはCYP基質との相互作用の記載はない.チエノピリジン系抗血小板薬であるクロピドグレルおよびプラスグレルは,消化管出血のリスクを増大させることが知られているため,その予防のためにPPIを併用することが推奨されている.一方で,クロピドグレルはCYP2C19およびCYP3A4に,またプラスグレルは主にCYP3A4によって活性体に変換されるプロドラッグであることから,併用薬による代謝阻害に基づく抗血小板作用の減弱が懸念される.本稿では,クロピドグレルおよびプラスグレルの薬効に及ぼすエソメプラゾールおよびボノプラザンの影響について臨床薬物相互作用試験により検討した例を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Abraham N. S. et al., Am. J. Gastroenterol., 105, 2533-2549(2010).2) Kagami T. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 103, 906-913(2018).3) Nishihara M. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 104, 31-32(2018).4) Kagami T. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 104, 33-34(2018).
著者
小島 康夫 工藤 弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

北海道に生育する植物一特に樹木を中心として、そのアレロパシー作用の有無を検討した。この研究では主にアレロパシー効果を種子発芽と幼杯軸の伸長に対する阻害作用に基づいて評価を行った。北海道における樹木では、グイマツ、シンジュ、ヒバ、サトウカエデ、ナナカマド、ホオノキ、ハリエンジュに強いアレロパシー活性が認められ、次いでクルミ科4種(オニグルミ、ヒメグルミ、サワグルミ、クログルミ)、カツラ、トドマツ、ミズナラにある程度の活性が認められた。草本では、クマイザサ、ラワンブキ、ミジバショウに強いアレロパシー活性が認められたこれらのうち、ナナカマド、クルミ、シンジュ、ササ、フキについて、アレロパシー活性の季節的変動、組織部位(例えば葉と茎と根など)による変動、活性成分と思われる物質の検索について、さらに詳しく検討を行った。ササについては、多年生のために季節的な変動は少なく、通年にわたりアレロパシー活性が認められた。ササの新芽には活性が認められない。部位の比較では、葉、茎に関して極性の高いフラクション(酢酸エチル可溶部やエタノール可溶部)に強い活性が認められ、根ではエタノール可溶フラクションとともに、極性の低いヘキサン可溶部でも強い活性を示した。フキでは秋に採取した根に活性が示され、ヘキサン可溶部からアレロパシー物質含むフラクションを特定することができた。ナナマカドでは、果実とともに葉にも強い活性が認められた。特に秋に強い活性が示されている。同様に、ミズナラでも秋に強い活性が示され、根、樹皮、根ともに活性があることを示した。一方、シンジュでは、秋よりも春から夏にかけて強い活性が示され、特に根に活性成分が多く含まれることが示唆された。
著者
工藤 優香 益子 宗 山中 敏正
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-18-00018, (Released:2018-06-15)
参考文献数
15

The theory of “cognitive dissonance” is one of the many topics related to customer satisfaction research. Some research used “free-choice paradigm” which is known to present threats to people in post-decision. However, most of the experiments focus only on theoretical frameworks, leaving aside consumer decision making. Therefore, this paper aimed to clarify the effect of online reviews on post-decision cognitive dissonance. In the experiment, participants were asked to choose the best item from nine earphones, each one of them had online reviews which were manipulated by an experimenter. When some participants saw some reviews which supported their decision, they justified their choices. In contrast, when some participants saw some reviews which unsupported their decision, they didn't only justify but also showed some unpleasant feelings towards the reviews. To conclude, some consumers were strongly influenced by online reviews after purchase.
著者
工藤 慎太郎 中村 翔
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】外側広筋(VL)の滑走性の低下は,膝屈曲可動域制限や,VLの伸張性の低下を惹起するため,臨床上問題となるが,その計測手法は確立されていない。一方,超音波画像診断装置(US)は,運動器の形態や動態を高い再現性のもと計測できる(佐藤,2015)。我々は膝自動屈曲に伴い,VLが後内側に滑走することを示している(中村,2015)が,この動態が筋の硬度や張力,疲労など,どのような要素を反映しているかは不明である。我々はVLの動態に合わせた徒手的操作により,VLの伸張性や圧痛と共に,筋の動態が改善することを明らかにしている(中村,2015)。そこでVLの動態には筋硬度や圧痛が関係していると仮説を立てた。本研究の目的はVLの膝屈曲運動時の動態が筋の柔軟性や圧痛を反映しているか検討することである。【方法】健常成人男性20名40肢(平均年齢20.0±2.3歳,身長167.4±5.8cm,体重59.9±6.9kg)とした。USにはMy-Lab25を用い,自動屈曲運動時のVLの後内側への変位量(VL変位量)を計測した。測定モードはBモード,リニアプローブを用い,腹臥位にて大腿中央外側にてVLと大腿二頭筋を短軸走査で確認し,プローブを固定した。膝関節完全伸展位から90度屈曲位までの自動運動中のエコー動画から,完全伸展位と90度屈曲位の画像を抽出しVL外側端が移動した距離をVL変位量としてImage-Jを用いて計測した。また筋硬度,圧痛を大腿中央外側にてそれぞれ筋硬度計,圧痛計を用いて計測した。さらに,自作した装置に徒手筋力測定器を設置し,膝他動屈曲時の抵抗力(以下,抗力)を測定した。VL変位量と筋硬度,圧痛,抗力の関係性を検討した。統計学的処理にはR2.8.1を使用し,Spearmanの順位相関係数(有意水準5%未満)を用いた。【結果】VL変位量と抗力はr=0.51と有意な相関関係を認めた。またVL変位量と筋硬度はr=0.71と有意な相関関係を認めた。一方,VLの動態と圧痛は有意な相関関係を認めなかった。【結論】本研究の結果,VL変位量はVLの筋硬度を反映するが,圧痛の程度は反映しないものと考えられた。抗力は筋の長軸上に発生する弾性力を示すのに対して,筋硬度計による計測は,筋以外の皮下組織や皮膚の硬度も反映する(Ichikawa, 2015)。我々の先行研究では,大腿外側の筋硬度計を用いた計測は,VLの硬度と相関を認めず,周囲の結合組織の硬度と相関を認めた(洞庭,2015)。つまり,大腿外側部の筋硬度計による硬度は皮下組織や外側筋間中隔などのVL周囲の結合組織の硬度を反映していると考えられる。筋周囲の結合組織は隣接する筋間との滑走性を保証する。すなわち,VL変位量はVLの硬度とともに,周囲組織との滑走性を反映するものと考えられた。蒲田らは筋間の滑走性の重要性を指摘しているが,定量的測定は困難であった。USによるVLの動態評価はVL周囲の滑走性を定量的に測定でき,今後の外傷予防や疼痛発生機序の解明に有効になる可能性がある。
著者
河野 啓子 工藤 安史 後藤 由紀 中神 克之 畑中 純子
出版者
日本産業看護学会
雑誌
日本産業看護学会誌 (ISSN:21886377)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-7, 2019-10-02 (Released:2019-11-21)
参考文献数
7
被引用文献数
2

目的:本研究は,産業看護職のコンピテンシー尺度を開発し,信頼性・妥当性を検証することを目的とした.方法:産業看護職375 名に無記名自記式質問紙調査票を配布し,回収数211(回収率56.3%)を分析対象とした.まず,我々が事前の研究で明らかにした40 項目を基に項目分析, 因子分析を行い,尺度項目を決定した. 次に,これらの表面妥当性,構成概念妥当性,基準関連妥当性,信頼性を検証した.結果・考察:36 の項目が尺度項目として決定され,すべてで通過率が97%を超えていたことから表面妥当性が検証されたと考える.また,因子分析の結果抽出された「産業看護を遂行する力」「創出する力」「自己成長する力」はコンピテンシーの条件と一致したことから構成概念妥当性は担保され,尺度合計点数と産業看護経験年数との相関がr=0.318 であったことから基準関連妥当性も示唆されたと考える. クロンバックα係数は3 つの因子すべてが0.9 以上だったことから信頼性が検証されたと考える.結論:我々が開発した産業看護職のコンピテンシー尺度は,信頼性・妥当性が検証された.
著者
中川 敦寛 工藤 大介 園部 真也 麦倉 俊司 久志本 成樹 冨永 悌二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.955-963, 2021-09-10

Point・現在の神経集中治療では二次侵襲を最小限にとどめ,生体の自己回復能力を最大限に引き出す環境を作ることに主眼が置かれている.・神経学的所見やモニタリングから得られる情報を統合し,頭蓋内圧亢進を的確に評価して治療のタイミングを逃さない.・今後,インフォマティクスなどがモニタリングや管理の質の向上を支援することが予想されるが,生理学,病態生理を深く理解することが本質であることには変わらない.