著者
中田 尚 津邑 公暁 中島 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 計算機アーキテクチャ研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.80, pp.97-102, 2005-08-03
被引用文献数
1

高度なマイクロプロセッサの研究・開発や, それを組み込んだ機器のハードウェア・ソフトウェア協調設計においては, その機能・性能を検証するためのcycle accurateなシミュレータが不可欠である.しかし, 既存のシミュレータは一般に低速であり, 開発の効率化の障害となっている.これに対して, スケジューリング計算の高速化や命令エミュレーションの高速化が提案され, 効果を上げている.一方, これらの実行時間短縮により, キャッシュシミュレーションの実行時間の割合が相対的に大きくなり, その短縮がシミュレーションのさらなる高速化のための課題となっている.本論文では, 個々のキャッシュに対して最適化されたシミュレータを生成することにより, キャッシュシミュレーションの高速化を図る.SPEC CPU95ベンチマークを用いて評価を行った結果, SimpleScalarのsim-cacheに対して, 最大14.1倍, 平均8.3倍のシミュレーション速度の向上が確認できた.
著者
坂口 幸弘 恒藤 暁 柏木 哲夫 高山 圭子 田村 恵子 池永 昌之
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.697-703, 2004-09-01
参考文献数
14

全国規模の実態調査を行い,ホスピス・緩和ケア病棟における遺族ケアの提供体制の現状を明らかこした.87施設から回答が得られ,回収率は90%であった.87%の施設が遺族ケアのニーズはあると認識し,84%の施設がすべての遺族を遺族ケアの対象と想定していた. 44%の施設では遺族ケアは勤務外で,手当は特になかった.30%の施設では遺族ケアのための教育を行っていなかった.1施設のみが,明文化された基準に基づくリスク評価を行っていた.56%の施設は専門家との連携を取つていなかった.半数以上の施設が,遺族ケア実施上の諸問題として,不十分な教育,組織体制の不備,時間の不足,人材の不足を経験していた.
著者
近藤 暁子
出版者
中部大学
雑誌
中部大学生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.21-28, 2007-03

大腿骨頚部骨折は、65歳以上の人口が約20%を占めるわが国において社会・経済的な問題である。2002年の患者調査によると大腿骨骨折の患者数は65歳以上で20,000人であり、年々増加の傾向にある。わが国の大腿骨骨折における平均入院期間は2002年の患者調査によると68.4日であり、これは他の先進諸国と比べるとかなり長く、患者は必要以上に安静期間を設けられ、自宅での元の自立した生活への復帰が遅れている可能性がある。また、わが国の人口は米国の約40%であるにもかかわらず、大腿骨骨折による全入院医療費は、米国の約1.6倍である。わが国では人口の高齢化とともに医療費は年々増大し、医療費の削減のために、2003年から、急性期の入院医療に対しても「DPC」(diagnosis procedure combination)という定額払いが導入され、入院期間を短縮しようという動きがある。また近年では、術後合併症を避けるためにも早期離床、早期退院が奨励され、クリティカルパスなどの導入により、退院時のアウトカムを低下させずに入院期間を短縮することは可能であるという報告は多くある。中には人工骨頭置換術の翌日から全体重をかけた歩行訓練を行うことで、入院期間が23.5日まで低下し、かつ退院時に歩行可能であった患者の割合は増加したという報告もある。一方で、わが国の長い入院期間は長期的に見ると必ずしも悪いとは言えない。スウェーデンに比べてわが国の大腿骨骨折による1人当りの医療費は高く(148対63万円)、入院期間は長いが(54対11日)、退院後自宅に帰る患者は多く(72%対65%)、骨折後120日に自立して外出できた患者の割合は高く(58%対45%)、死亡率は低かった(6%対12%)という報告がある。また、米国のように1〜2週間以下など極端に入院期間が短縮した場合は、高い再入院率(16〜32%)が報告されている。わが国の入院期間が短縮した場合、患者の短期的なアウトカムはよいと言えるが、患者の退院後の調査を行った研究はあまりなく、再入院率や、特に入院期間が短縮した場合の長期的なアウトカムは明らかになっていない。したがって、早期に退院した患者の退院後の歩行能力や居住地、再入院率、死亡率など、長期的なアウトカムについて明らかにする必要がある。その研究は年齢、骨折前の歩行能力、術式、依存症、術後日数、病院、家族・社会的サポートの有無、退院時歩行能力など、アウトカムに関連していると考えられる要因を統計的に調整する必要がある。術後の回復を説明する枠組みとしては老化理論が適切であると考えられる。もし早期に退院した患者が長期に入院していた患者に比べて同等、あるいはそれ以上のアウトカムを示していれば、患者は問題なく早期に退院し、骨折前の生活を早期に回復できると考えられる。また、入院期間の短縮により入院医療費の削減につながると考えられる。しかし、もし早期に退院した患者のアウトカムが長期に入院していた患者よりも低い場合は、入院期間の短縮は慎重に行うべきであり、リハビリテーションプログラムの改善も必要である。
著者
福元 暁 佐和橋 衛 安達 文幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.20, pp.31-36, 1999-04-23
被引用文献数
22

基地局から複数アンテナを用いて同一信号を送信する送信ダイバーシチは移動局受信機を複雑化することなく受信特性を改善できる. W-CDMA下りリンク用送信ダイバーシチには, 予め決められた順序パターンで複数アンテナから送信するPre-determine (PD) 型と, 移動局から送信されるAntenna Selection (AS) コマンドに基づいて送信アンテナを選択するFeedback (FB) 型とがある. PD型としてTime switched transmit diversity (TSTD)法, Orthogonal transmit diversity (OTD)法, Space time transmit diversity (STTD)法, FB型としてSelection transmit diversity (STD)法が提案されている. 本稿ではTSTD, OTD, STTD, STDによる下りリンク伝送特性を計算機シミュレーションにより比較検討している. その結果, TPCありの場合には送信ダイバーシチによる特性改善は小さいもののTPCなしの場合には平均BER=10^<-3>を満たす所要送信E_b/N_0を1-3.5dB程度改善できること, また, 低速フェージング領域ではFB型を, 高速フェージング領域ではPD型 (TPCなし) または送信ダイバーシチなし (TPCあり) を組み合わせて用いることが望ましいことが明らかになった.
著者
上野 智史 橋本 真幸 米山 暁夫 川田 亮一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.306, pp.127-132, 2009-11-19
被引用文献数
1

本論文では,ユーザの現在位置・方向情報の精度の改善を目的とした,ユーザ撮影画像と街並画像データベースの画像マッチング手法を提案する.GPSによる位置データを利用してユーザを道案内するナビゲーションサービスが普及しているが,高層ビル街などGPSによる位置精度が悪い場所においても精度の高い位置情報の提供が求められていた.これに対して,対象エリアの街並画像を事前に撮影しておき,ユーザの撮影画像とマッチングすることでユーザ位置・方向を推定する手法が考えられる.しかし,街並画像データベースの撮影間隔が離散的であることと高圧縮の画像であることにより画像マッチングの精度が低い場合があった.そこで本研究では,これらの街並画像データベースでも特徴点の対応関係を精度よく抽出する方式を提案する.本手法は,局所特徴量の対応点の検出時に複数の対応点候補を選択し,その後建物の幾何拘束を考慮して対応点を選択することで,従来の最近傍探索手法より精度よく正解対応領域を検出する.本手法により,従来のSIFTによる最近傍探索に比較して位置精度誤差が7%縮小し,方向推定精度が10%改善する.
著者
菅原 ますみ 八木下 暁子 詫摩 紀子 小泉 智恵 瀬地山 葉矢 菅原 健介 北村 俊則
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.129-140, 2002-06-30
被引用文献数
11

本研究は,夫婦間の愛情関係が家族機能と親の養育態度を媒介として児童期の子どもの抑うつ傾向と関連するかどうかを検討することを目的として実施された。313世帯の父親,母親および子ども(平均10.25歳)を対象に郵送による質問紙調査を実施し,両親回答による夫婦関係と養育態度,および家庭の雰囲気と家族の凝集性,子どもの自己記入による抑うつ傾向を測定した。配偶者間の愛情関係と子どもの抑うつ傾向との間に相関は見られなかったが,家庭の雰囲気や家族の凝集性といった家族機能変数を媒介として投入した結果,両親間の愛情の強固さと家族機能の良好さが,また家族機能の良好さと子どもの抑うつ傾向とが関連することが明らかになった。また同時に,配偶者間の愛情関係は親自身の養育態度とも関連し,相手への愛情の強さと子どもに対する態度の暖かさや過干渉的態度との間に有意な関係が見られた。しかし,こうした養育態度のうち,子どもの抑うつの低さと関連が認められたのは,母親の養育の暖かさのみであり,父親の養育態度は子どもの抑うつ傾向とは関連しなかった。
著者
立木 実 森田 英一 山田 健二 方 暁東 小林 猛
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SCE, 超伝導エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.96, no.333, pp.25-30, 1996-10-30

Pulsed Laser Deposition(PLD)法に特有の, 液滴状粒子を排除するのに大変有効である一方, 活性成長種が基板に到達しにくい, 低圧での薄膜堆積速度が小さいという, 従来のエクリプスPLD法の弱点を克服することを目的として, 複数のリング状により遮蔽マスクが構成されるエクリプス・エンジェルPLD法を新たに提案し, シミュレーシヨン及び実験の両面から特性を評価した. その結果, YBa_2Cu_3O_xの成膜において雰囲気酸素圧0.1Torr以下の低圧域での堆積速度が向上し, フレーミングストリークカメラによるプルーム像の高速観察の結果, マスク構造の中心部を通ってくる発光粒子群が基板に到達できることを確認した.
著者
實示戸 雅之 池口 厚男 神山 和則 島田 和宏 荻野 暁史 三島 慎一郎 賀来 康一
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.467-474, 2003-08-05
被引用文献数
23

耕地土壌表面における窒素収支を,投入窒素量と収奪量の差から求めた土壌残存窒素が余剰降水量に全量溶けたと仮定する年間平均溶脱水窒素濃度推定値を用い,都道府県別に評価した.その結果,以下のことが示された.1.年間亜平均溶脱水窒素濃度推定値の全国平均は7.8mg NL^<-1>,北海道を除く府県平均で8.8mg NL^<-1>,北海道で2.9mg NL^<-1>である.都道府県間のばらつきが大きく,30mg NL^<-1>を超えるなど極端に高い県と,値がマイナスを示す県とに分かれた.2.溶脱水窒素濃度推定値が高い府県では家畜ふん尿窒素負荷が高い場合が多い一方で,これらを含む多くの県において化学肥料窒素施用量のみでは溶脱水窒素濃度推定値を説明できなかった.3.現状の化学肥料窒素施用量の3割を削減することで,平均溶脱水窒素濃度推定値の全国平均が7.8→5.4mg NL^<-1>(-31%)に,府県では8.8→6.3mg NL^<-1>(-38%)に低下した.4.高度処理が可能なふん尿について窒素成分を除去し系外に排出する効果はそれほど大きくないが,これは前提となる処理可能量自体の問題と思われる.5.すべての休耕地を利用することにより,溶脱水窒素濃度推定値が全国平均で7.8→5.9mg NL^<-1>(-24%),府県平均では8.8→6.6mg NL^<-1>(-25%)と大きな削減効果が,さらに化学肥料削減の併用でさらに大きな効果が推定された.6.ただし今回の試算は,都道府県単位としたこと,年間平均溶脱水窒素濃度の性格,アンモニア揮散を窒素負荷減少要因と見なしたことなど,重要な精度低下要因が内包されており,改善の余地が残されている.
著者
陸 暁光
出版者
神戸大学
雑誌
国際文化学研究 : 神戸大学国際文化学部紀要 (ISSN:13405217)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.107-130, 2006-01

日本で「超人気」と言われている村上春樹の「ノルウェイの森」は、90年代以来、中国でも「村上熱」というブームになっている。googleで調べると、同小説の標題は、中国のページで日本より数倍大きな「森」になっている。同小説が中国に対しても意味深い「森」であると見られる。なぜ中国でも「森」のブームになっているのか、その意味は何か。今まで中国学界ではいろいろな説が出ていたが、「性愛」と言う話題がほとんど避けられてきた。同小説が「100%の恋愛小説」とよく言われているように、「性愛」と言う話題につかなければ「森」に隠されている魅力と意味とは解明し難いのである。中国学校教育では性科学に関する知識が数十年来ほとんどゼロで、一番使われている中国語辞書にも性関係語彙は日本語辞書と比べて極少ない。同小説には性知識が多いし、しかも文学的な表現で現されている。青少年にとって性知識を紹介する教科書らしいものとも言えば、このブームの要因のひとつであろう。性愛と言うことは時代によってその観念とルールが変化しているらしい。特に消費時代において、これをどう考えべきか、どうあることが人間に相応しいのか、今の中国社会にも簡単な問題ではないようである。「森」にその新しい問題が率宜でしかも多岐にわたって議論されているから、特に中国の消費能力ある男性と女性との間で魅力がもたている原因があると思われるか。150年前のマルクスは「完全な人間」と言う言葉をよく使っていた。「森」には「不完全な人間」という言葉が偶然ではなく多箇所に見え、自殺した少女主人公の悲劇な運命を解明するキーワードとも言える(どこまで「不完全」か、なぜ「不完全」になったか)。マルクスが関心の対象としていた社会問題は性愛を主とするものではないが、「森」が主題としている問題は主に性愛である。してみれば、「森」は消費資本主義における新人間の難題を物語としていると言えよう。
著者
水野 昇治 水野 暁子 鈴木 隆宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, 1997-03-06
被引用文献数
1

手話辞典にはぺーパーべース 1),2) のものとパソコンベース 3) のものがすでに発刊されている。「写真手話辞典」1) は、1単語当たり最大4コマの写真を利用し, 動きを矢印で表示し、単語によっては、ズームインしたり、複数の方向から撮影したりしているが、動きが速い、単語に関しては、動きの感覚が掴みにくくわかりにくい。「イラスト手話辞典」2) は1単語2コマであるが、コマの抽出が適切で、単語によっては、正面以外からのイラスト、あるいは部分的に拡大したイラストを用い、かなりわかりやすいが、2コマであるためわかりにくい単語があるのはやむをえない。CD-ROM 単語集 3) は、パソコンで動画表示していので、写真やイラストよりわかりやすいときは多いが、照明、モデル衣服の色、背景色が不適切なためわかりにくい単語がある。まだフレームレートが低いときも多く、かつ一方向だけからの撮影に限っているため、少し動きが複雑で速い単語は極めてわかりにくい。
著者
于 暁軍
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.115-134, 2004-12-09

中国経済は、改革開放の政策を実施して以来、輸出主導経済を牽引力に、20年間著しい成長を遂げてきた。経済規模が既に世界7位まで浮上してきた。その背景には、ドルに対する固定相場制を採用していることがある。そのために、外貨準備が年々増加し、世界第2位のドル保有国となっている。近年、通貨の人民元のレートに関する議論が盛んに行われてきた。特に、アメリカが双子の赤字を抱えており、一方、国内でインフレが進んでいる状況の中で、現行の固定レート(1ドル=8.27元)を維持できるかどうかという疑問が出ている。第一章では、(1)人民元の交換性、(2)人民元レートの運営と為替需要、(3)為替運営と金融政策、(4)為替市場の仕組みと人民元レートの決定メカニズムなどを中心に、中国現行為替管理の仕組みにおいて人民元需給要因などから人民元レートの決定メカニズムを明らかにする。第二章では、(1)人民元レートの推移、(2)人民元レートの管理から生じる問題、(3)金融国際化に向けた為替制度の見直し、(4)今後の為替運営の展望などを中心に、現行の為替相場制度は抱えている様々な問題を分析し、WTO加盟後、安定的な経済成長を維持しながら、柔軟性のある為替制度をどのように選択することを議論する。
著者
大川 耕一 安藤 英浩 福元 暁 佐和橋 衛 安達 文幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.20, pp.25-29, 1999-04-23
被引用文献数
1

W-CDMA 5fMHz帯域における3マルチコード多重による2-Mbps伝送特性をハードウェアフェージングシミュレータを用いる室内実験により測定した. SF=4と小さいためにパス数か増大するにつれてマルチパス干渉で特性が劣化するものの, マルチパス数が2の時に2ブランチアンテナダイバーシチ, 2フィンガ/アンテナRake受信を用いることにより所要E_b/N_0=約8dBで平均BER=10^<-6>以下を実現できることを示した.
著者
門田暁人 佐藤慎一 神谷 年洋 松本 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.2178-2188, 2003-08-15
被引用文献数
19

ソフトウェアに含まれるコードクローン(重複するコード列)は,ソフトウェアの構造を複雑にし,ソフトウェア品質に悪影響を与えるといわれている.しかし,コードクローンとソフトウェア品質の関係はこれまで定量的に明らかにされていない.本論文では,20年以上前に開発され,拡張COBOL言語で記述されたある大規模なレガシーソフトウェアを題材とし,代表的なソフトウェア品質である信頼性・保守性とコードクローンとの関係を定量的に分析した.信頼性の尺度として保守工程で発見された「フォールト数/LOC(Lines of Code)」を用い,保守性の尺度として「モジュールの改版数」を用いた.分析の結果,コードクローンを含むモジュール(clone-includedモジュール)は含まないモジュール(non-cloneモジュール)よりも信頼性(平均値)が約40%高いが,200行を超える大きさのコードクローンを含むモジュールは逆に信頼性が低いことが分かった.また,clone-includedモジュールはnon-cloneモジュールよりも改版数(平均値)が約40%大きく(すなわち,改版のためにより多くの保守コストが費やされてきた),さらに,モジュールに含まれるコードクローンのサイズが大きいほど改版数がより大きい傾向にあることが分かった.Existing researches suggest that the code clone (duplicated code section) is one of the factors that degrades the design and structure of software and lowers the various quality attributes. However, the influence of code clones on software quality has not been quantitatively clarified yet. In this paper, we quantitatively analyzed the relation between code clones and the software reliability and maintainability of twenty years old software, which is written in an extended COBOL language. We used the number of faults per LOC (Lines of Code) as a reliability metric, and the revision number of modules as a maintainability metric. As a result, we found that modules having code clones (clone-included modules) are 40{%} more reliable than modules having no code clone (non-clone modules) on average. Nevertheless, the modules having very large code clones (more than 200 SLOC) are less reliable than non-clone modules. We also found that clone-included modules are 40{%} less maintainable (having greater revision number on average) than non-clone modules; and, modules having larger code clone are less maintainable than modules having smaller code clone.
著者
梶原 栄二 重田 暁子 堀内 浩幸 松田 治男 古澤 修一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.607-614, 2003-05-25
被引用文献数
21

鶏ではファブリキウス嚢(BF)がB細胞の分化に重要な組織であるが,一部の哺乳動物では回腸バイエル氏板(PP)などのgut-associated lymphoid tissue(GALT)が嚢相当組織であると考えられている.鶏GALTにはPPも存在するし,また盲腸扁桃(CT)などの存在も知られている.しかしながら,これらの組織とBF濾胞でのB細胞発生の関係は検討されていない.そこで本研究では胚発生におけるPP,CTとBF濾胞形成を免疫組織化学的染色により比較した.その結果,BFでは13日胚でMHC class II陽性細胞のリンパ濾胞への移入開始と少数のB細胞の集族が,15日胚以降でB細胞のさらなる濾胞移入が観察されたが,同じ13日胚でMHC class II陽性細胞の集族,Bu-1陽性細胞およびIgM陽性細胞の出現(PPとCTの原基)が腸管で初めて観察された.15日胚ではMHC class II陽性細胞,Bu-1陽性細胞およびIgM陽性細胞の数も増加した.これらの胚発生時期のPPの出現は,メッケル憩室付近と盲腸・回腸分岐部付近の2箇所に限定されていた.さらに,BF濾胞形成を完全に阻害させた場合でもPPとCTの原基が観察された.本研究により,鶏のPPやCTの形成はBF濾胞形成や外来抗原の刺激に依存することなく,胚発生の段階でBF濾胞形成と平行して行われている事が明らかになった.