著者
鈴木 幹三 岸本 明比古 山本 和英 足立 暁 山本 俊幸
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.1004-1010, 1986

Ceftizoxime500mg (力価) を含有する新規の抗生物質坐剤CZX-Sの高齢者における体内動態および尿路感染症に対する有効性・安全性について検討し, 次の成績を得た。<BR>1) CZX-S500mg1回投与後の血清中濃度の平均は投与後30分で0.93μg/ml, 1時間で1.31μg/ml, 6時間後は0.40μg/mlであり, 半減期3.02時間であった。<BR>2) 尿中濃度は0~2時間37.9μg/ml, 2~4時間86.8μg/ml, 4~6時間43.0μg/mlであり, 投与後6時間までの平均尿中回収率は2.15%であった。<BR>3) 臨床成績は有効9例, やや有効2例で, 有効率81.8%であった。<BR>4) 細菌学的効果では, 13株中7株が菌消失し, <I>E.coli, E.aggiomerars</I>などに有効であった。<BR>5) 副作用は認められず, 臨床検査値異常は, 好酸球増多2例であった。<BR>以上の成績より, CZX-Sは抗生物質の経口または静脈内投与に制約・困難が伴う高齢者の尿路感染症に対し有効な薬剤と考えられた。
著者
郭 暁艶 上西 寛司 川井 泰 安田 成美 春日 元気 竹澤 志織 瀬戸 泰幸 西村 順子 北澤 春樹 齋藤 忠夫
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.129-135, 2014

ガセリシン T (GT)は,ヒト腸管より検出される乳酸桿菌 <i>Lactobacillus gasseri</i> により生産される二成分性バクテリオシンである。また,当研究室で分離したヒト乳児由来の GT 生産 LA158株を含む <i>L. gasseri</i> は,改良乳培地で良好に生育するものの,乳中に豊富に存在する二価金属イオンにより LA158株の GT 生産は抑制されることが知られている。本研究により,GT 生産株として最初に見出された,抗肥満効果を有する <i>L. gasseri</i> SBT2055は,MRS 培地にて二価金属イオン(Mg<sup>2+</sup>,Ca<sup>2+</sup>, Mn<sup>2+</sup>, Fe<sup>2+</sup> および Zn<sup>2+</sup>)の添加により濃度依存的に GT 生産が抑制されることが判ったが,LA158株における抑制濃度(Mg<sup>2+</sup> および Ca<sup>2+</sup>)とは異なっていた。また,200 mM の二価金属イオン添加では,良好に生育するにもかかわらず,GTの生産は完全に消失した。さらに,二価金属イオンのキレート剤で食品添加物であるクエン酸三ナトリウム(TSC)の添加によりGT 生産は回復した。以上の結果から,ヨーグルト製造においてスターターの生育を阻害せずに,GT 生産性のプロバイオティック <i>L. gasseri</i> 株を効果的に添加・利用出来るものと考えられた。
著者
梁 暁虹
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

この三年間、主に「三種音義」(『大般若経音義』(石山寺本)、『大般若経字抄』(石山寺本)、『大般若経音義』(無窮会本)の写本仏経音義)を資料として、漢字学、特に異体字比較研究の角度から研究してきた。その成果は、学術雑誌にて出版した論文が13篇、専著一冊、また国際学術会議で発表した論文が15点になる。その意義を特筆するとすれば、「三種音義」の学術的価値を国際的視野の下に仏教音義研究を位置づけつつ、その資料の重要性を広く学界に紹介することでもある。さらに、異体字研究を通して、漢字が東伝し、新羅や日本へ流入、発展、変遷した過程を跡付ける漢字の文化史を明らかにすることも兼ねる。
著者
寺田 暁彦 中川 光弘 大島 弘光 青山 裕 神山 裕幸
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1/2, pp.17-26, 2004

In this paper, the authors describe remarkable thermo-activities especially at the fumaroles B on the southwestern cliff of the summit dome on Tarumae volcano, which unusually occurred soon after the Tokachi-oki erathquake that took place on Sep. 26 2003 (MJMA 8.0). The unusual thermoactivities include (1) increase in gas flux, (2) weak glow witnessed by the high-sensitive camera in the nighttime with positions moving night by night, and (3) ash ejection of about 24m^3. Since the high-sensitive cameras can detect thermal radiation, the observed glow would be evidence for high-temperature of rock surface. It is considered that the Tokachi-oki earthquake would affect the volcano to eject a large amount of high-temperature gas, which resulted in the weak but unusual glow and ash deposits of the order of 10m^3 in volume.
著者
豊田 暁
雑誌
大妻女子大学紀要. 文系
巻号頁・発行日
vol.32, pp.95-104, 2000-03
著者
植草 義徳 鍋師 裕美 堤 智昭 蜂須賀 暁子 松田 りえ子 手島 玲子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.177-182, 2014-08-25 (Released:2014-09-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1 6

本研究では,食品を介した放射性物質の摂取量の実態を把握することを目的とし,マーケットバスケット(MB)試料(平成24∼25年)および陰膳試料(平成24年)を用いて,放射性セシウムの一日摂取量(Bq/day)および1年当たりの預託実効線量(mSv/year)を推定した.MB試料および陰膳試料から推定された放射性セシウムの年当たり預託実効線量の最大値は,それぞれ0.0094および0.027 mSv/yearであり,福島県近辺地域においてやや高い値を示す傾向が見られた.しかしながら,いずれの試料においても,放射性セシウムによる年当たり預託実効線量は,平成24年4月より施行された新基準値を定める根拠となった1 mSv/yearと比較して極めて小さい値であることが明らかとなった.
著者
畔田 暁子 鈴木 佳苗
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.85-88, 2012

本研究の目的は,美術科の鑑賞学習の授業において利用できる可能性がある学習コンテンツの1つであるウェブ上の画像に関して,鑑賞学習の授業での現在の利用状況,利用の際に必要な機器や機能・要素,教員の意識と利用の際の課題を明らかにすることである.現職の中学校美術科担当教員を対象として質問紙調査を行った結果,1)ウェブ上の画像は第3学年対象の鑑賞学習の授業において利用頻度が高い傾向があり,2)いずれの学年の授業においても「絵画など平面作品」の画像が利用されることがもっとも多く,3)美術科担当教員は,ウェブ上の画像には画質とともに「歴史・文化的背景」や「素材や技法の説明」などの情報が必要だと考えていることが示された.
著者
横山 良平 伊東 弘一 湯浅 芳郎 陸 暁茜
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.60, no.573, pp.1759-1766, 1994-05-25
被引用文献数
1

An optimal unit sizing method is developed for hybrid power generation systems utilizing photovoltaic and wind energy. Equipment capacities and electric maximum demand are determined so as to minimize the annual total cost and annual energy consumption from the viewpoints of economy and energy conservation, respectively. This optimization problem is considered as a multiobjective one, and a discrete set of Pareto optimal solutions is derived numerically using the weighting method. Two systems interconnected with the electric power grid are inventigated : one has the option of reverse power flow into the grid, and the other, no option. By carrying out some case studies, the trade-off relationships between the two objectives are clarified, and optimal values of equipment capacities are determined. The effect of electricity deficit on unit sizing is also investigated.
著者
岡 敬 茅暁陽 今宮 淳美
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.86, pp.87-90, 2003-08-18
被引用文献数
2

現在に存在する全ての物質に備わっている性質として 「劣化」というものがある.劣化は物質がそれをとりまく物理的 また化学的な環境に応じて外見や構成が変化することをいう。物体をCGで作成する際にその物をよりリアルに見せるためには このような「汚れ」や「劣化」の表現を欠かすことはできない.しかしながら このような効果を手作業でCGオブジェクトに追加していくのは大変な時間と手間を要する.そこで 本稿では劣化の視覚効果を自動生成するツールの開発を目的とし その1例として「紙の劣化」を取り扱う.All materials have an inherent tendency to change their appearance or properties during the interaction with their environment. Simulating such weathering effects is now recognized to be one of the most important technique realistic image synthesis. This paper proposes a new technique for modeling the weathering of paper. A typical weathering effect of paper is the color degradation due to the exposure to light. This paper proposed a new technical for modeling such color degradation of various paper based on an observational model established through experiments.
著者
中村 慶春 恩田 昌彦 内田 英二 井上 松応 山村 進 松谷 毅 丸山 弘 横山 滋彦 石川 紀行 田尻 孝 山下 精彦 山口 敏和 憚 暁青
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.2848-2852_1, 1996-12-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
15

膵癌を疑われた33例に対して, 十二指腸乳頭括約筋を弛緩させるためにニトログリセリン舌下錠を投与し経口的膵管内視鏡検査を施行した. 最大2錠 (0.6mg) の投与により外径2.2mmの膵管鏡は容易に乳頭を通過しえた (29/33, 87.9%) . 通過不能の4例はすべて膵頭部癌症例で, カニュレーションを深く行えず十分にガイドワイヤーを留置できなかったことが原因であった. 乳頭通過後に膵管内を尾部あるいは病変まで観察できたものが29例中23例であった. 血圧の変動はニトログリセリン非投与群と比し有意差を認めず, 合併症は1例も経験しなかった. ニトログリセリン投与は簡便かつ安全で, 確実に乳頭を開大させることが可能で, 経口的膵管鏡検査において有効な方法と思われた.
著者
山崎 洋一 三上 雅樹 中村 謙太郎 大塚 真吾 白井 暁彦
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.29, 2015

ロボットの非言語表出を用いた遠隔非同期インタラクションのための個人の存在感の圧縮、展開手法を提案する。個人の存在感を表す表現として、ロボットの非言語表現による個人の特徴情報表出、感情情報表出を検討する。本手法は惑星間通信や山間地域への介護移住のように通信帯域、時間遅延によりリアルタイムのインタラクションが困難な状況において有効である。
著者
花田 英夫 岩田 隆浩 菊池 冬彦 劉 慶会 松本 晃治 浅利 一善 石川 利昭 石原 吉明 野田 寛大 鶴田 誠逸 Petrova Natalia Goossens Sander 原田 雄司 佐々木 晶 並木 則行 河野 裕介 岩館 健三郎 亀谷 收 寺家 孝明 柴田 克典 田村 良明 矢作 行弘 増井 亘 田中 孝治 前島 弘則 洪 暁瑜 平 勁松 艾力 玉〓甫 Ellingsen Simon Schlüter Wolfgang
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.203-221, 2009-07-25
被引用文献数
5

The Japanese lunar explorer SELENE (KAGUYA), which has been launched on Sep. 14th, 2007, utilizes VLBI observations in lunar gravimetry investigations. This can particularly improve the accuracy of the low degree gravitational harmonics. Combination of ground based VLBI observations and Doppler measurements of the spacecrafts enable three dimensional orbit determinations and it can improve the knowledge of the gravity field near the limb. Differential VLBI Radio sources called VRAD experiment involves two on-board sub-satellites, Rstar (Okina) and Vstar (Ouna). These will be observed using differential VLBI to measure the trajectories of the satellites with the Japanese network named VERA (VLBI Exploration of Radio Astrometry) and an international VLBI network.<BR>Two new techniques, a multi-frequency VLBI method and the same-beam VLBI method, are used to precisely measure the angular distance between the two sub-satellite radio sources Okina and Ouna. The observations are at three frequencies in S-band, 2212, 2218 and 2287 MHz, and one in X-band, 8456 MHz. We have succeeded in making VLBI observations of Okina/Ouna with VERA and the international network, and have also succeeded in correlating of signals from Okina/Ouna, and obtained phase delays with an accuracy of several pico-seconds in S-band.
著者
渋江 公尊 原島 伸一 中本 裕士 浜崎 暁洋 稲垣 暢也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.1794-1796, 2013-07-10 (Released:2014-07-10)
参考文献数
5
被引用文献数
1

水様下痢と嘔吐を繰り返し,膵尾部原発ガストリノーマの診断にて膵体尾部・脾臓・肝外側区域切除術および胆嚢摘出術を受けた.術後2年を経過した頃から低血糖発作が頻発.血清インスリン値高値でありインスリノーマの併発が疑われた.局在診断に68Ga標識DOTATOCを用いたPET/CTを施行し,アログリセムによる治療を試みた症例を経験したので報告する.
著者
金丸 友 中村 伸枝 荒木 暁子 中村 美和 佐藤 奈保 小川 純子 遠藤 数江 村上 寛子 Kanamaru Tomo Nakamura Nobue Araki Akiko Nakamura Miwa Sato Naho Ogawa Junko Endo Kazue Murakami Hiroko カナマル トモ ナカムラ ノブエ アラキ アキコ ナカムラ ミワ サトウ ナホ オガワ ジュンコ エンドウ カズエ ムラカミ ヒロコ
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.63-70, 2005-06-30
被引用文献数
2

本研究は,慢性疾患をもつ学童・思春期患者の自己管理およびそのとらえ方の特徴と影響要因を明らかにし,看護援助に有用な枠組みを構築することを目的とし,Patersonのmeta-studyの方法を用いて26文献を分析した。その結果以下のことが導かれた。慢性疾患の学童・思春期患者の自己管理のとらえ方には,「本人の望む生活」と「疾患の理解・適切な療養行動」のギャップの大きさが影響していた。ギャップが大きな患者は,生活と療養行動の両者を大切なものと考え葛藤を感じており,ギャップが小さい患者は肯定的・葛藤のないとらえ方であり,ギャップが不明瞭な患者は受け身・不確かにとらえており,「疾患の理解・適切な療養行動」を受け入れられない患者は,否定的にとらえていた。葛藤を感じている患者は,親や友達からのサポートを得て「主体的・問題解決」の自己管理を行っており,療養行動を適切に行いながら本人らしい生活を送っていた。肯定的・葛藤のない患者のうち親や友達からのサポートを得ている患者は,時間の経過により自己管理に慣れ療養行動を適切に行っていたが,親や友達からのサポートが不足していると,「受け身・逃避・否認」の自己管理となり,不適切な療養行動によって症状が悪化したり生活に不満をもっていた。受け身・不確か,または否定的にとらえていた患者は,親や友達からのサポートが不足しており,「受け身・逃避・否認」の自己管理となり,不適切な療養行動によって症状が悪化したり生活に不満をもっていた。「本人の望む生活」と「疾患の理解・適切な療養行動」のギャップの大きさと,親・友達からのサポートをアセスメントし,看護援助を行っていく重要性が示唆された。The purpose of this study was to investigate the characteristics of self-care and associated perceptions among Japanese school-aged children and adolescents with chronic conditions and influencing factors, and to develop a framework for effective intervention, analyzing 26 articles using meta-study. The following results were obtained: 1) Perceptions of school-aged children and adolescents with chronic conditions were affected by size of the gap between 'The daily life desired by the child' and 'Performing self-care properly'. Children displaying a large gap experienced conflict, those with a small gap were no conflict, and those with an unclear gap were passive and uncertain. Children denying 'Performing self-care properly' were negative. 2) Children who got support from parents and friends could live as they wished, continuing self-care properly with or without conflict. 3) Children with an unclear gap and children denying 'Performing self-care properly' were unable to get support from parents and friends, and were unsatisfied with their life and displayed poor self-care. Assessments of size of the gap between 'The daily life desired by the child' and 'Performing self-care properly', and support from parents and friends appear important.
著者
米山 暁夫 柳原 広昌 笹野 義二 中島 康之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.74, pp.9-14, 2002-07-26
被引用文献数
1

本稿ではシーンの変化とシーンの特徴に適応したMPEG-4ビデオ符号化アルゴリズムを検討したので報告する。本提案では入力画像数枚をプリロードし、そのプリロードした画像のマクロブロック(MB)毎の画面内アクティビティおよびこのアクティビティを利用した動き特徴の解析により最適なI P B-VOPの配置を決定することを目的としている。通常はこれらの情報の取得には演算量の増大が避けられないが、本方式では一般的なエンコーダで利用される情報を活用するため、演算量の増大を抑えた符号化が可能となる。In this paper, we propose an encoding algorithm for MPEG-4 video encoding. In our proposal, predetermined number of input pictures are preloaded. Then picture characteristics are analized and appropriate VOP types (I, P, B) are determined before encoding. Since the processing speed of the proposed algorithm is almost equal to that of the conventional MPEG-4 encoder without adaptive VOP types control, fast encoding can be realized with better picture quality than that of without the control of VOP types.
著者
三好 順也 高橋 暁 三島 康史
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.199-206, 2012 (Released:2013-12-05)
参考文献数
36
被引用文献数
2

陸から海へ流入する栄養塩負荷は,その一部をノリ養殖によって回収・利用されており,海から陸へのフローの一つとしての役割を担ってきた。しかし近年,各地でノリ色落ちの被害が頻発しており,顕著な生産量の低下を招いている。そこで瀬戸内海の東部に位置し養殖ノリの産地である備讃瀬戸海域を対象として,養殖被害の生じやすい地区を明らかにするとともに,ノリ漁場への栄養塩供給に着目し,ノリ生産密度との関係について解析を行った。その結果,岡山県側では大きな変動は確認されないものの,生産規模の大きい香川県東部では2002年度に生産量の落ち込みが確認された。1995~2006年の2月における溶存態無機窒素の平均濃度からは,色落ち被害の始まる3μg-at L-1を全域で下回っており,備讃瀬戸海域はノリ養殖被害の発生する可能性の高い海域であることが考えられた。また備讃瀬戸東部の東讃地区は,平均潮流流速10 cm sec-1に満たないほどに潮流が弱く,栄養塩の供給不足となる可能性が高い海域であると考えられた。さらに栄養塩フラックスに対して,単位面積あたりのノリ生産量の大きい香川県東部で養殖被害が生じていたことから,栄養塩供給と生産密度のバランスはノリ養殖被害発生の一要因であることがわかった。
著者
畑中 陽子 玉腰 暁子 津下 一代
出版者
Japan Society for Occupational Health
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.141-149, 2012
被引用文献数
12

<b>目的:</b>20歳代のBMIやその後の体重変化が,40歳代での高血圧・糖尿病の服薬率・有病率や医療費に及ぼす影響を検討する.<b>対象と方法:</b>1989年時点で20歳代の男性10,125人を対象とし,BMI区分別,およびBMI区分と20年間の体重増減の組み合わせ別に40歳代の高血圧・糖尿病の服薬率・有病率と医療費について分析した.BMI区分別の服薬率,有病率,受療率をロジスティック回帰分析により,平均医療費を共分散分析により,1989年時点の年齢,ならびに20年間の体重変化の程度を調整して検討した.<b>結果:</b>20歳代から40歳代にかけて20年間で平均7 kgの体重増加を認めた.40歳代の高血圧服薬率・有病率,糖尿病服薬率・有病率のいずれも20歳代のBMI区分が高くなるほど有意に上昇し,BMI 18.5–19.9の群に比べ25.0以上の群では高血圧有病率は6.81倍,糖尿病有病率は16.62倍であった.40歳代の外来医療費,総医療費も同様に20歳代のBMI区分が高くなるほど高額となり,1人当たり平均総医療費はBMI 18.5未満の群の818.7円から25.0以上群の5,311.5円に増加した.さらに,20歳代のBMIが20.0–21.9,22.0–24.9であっても20年間に体重が10㎏以上増加した場合には40歳代の高血圧・糖尿病のリスクが増加した.<b>考察:</b>20歳代のBMIが高い区分ほど40歳時の高血圧や糖尿病の有病率は上昇し,同様に医療費も増加した.20歳代でBMI 25.0未満の場合でも,20歳代のBMI区分とその後の体重増加に依存して有病率が高くなった. 終身雇用を基本とした日本企業における保健活動では,若年期からの肥満対策はもちろん,肥満でない人も含めて体重コントロールができるよう支援することが重要である.
著者
吉村 巧朗 亀井 靖高 上野 秀剛 門田 暁人 松本 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.307, pp.85-90, 2009-11-19
被引用文献数
1

デバッグ作業は,作業に従事する開発者ごとに効率に大きな違いが見られる.デバッグにおける開発者の行動から効率に影響を与えている要因を明らかにできれば,教育や支援に役立てることができる.そこで本研究では、デバッガを使用したデバッグ行動について分析し,上手な人と下手な人の間にどのような差異が存在するのか明らかにすることを目的とした.そのアプローチとして,多くのデバッガが実装しているブレークポイント機能に着目し,その使用履歴よりプログラマの特徴を分析した.150行程度のJavaプログラムを題材とした実験の結果,次のような知見が得られた.デバッグの下手な人は,連続した行にブレークポイントを設置する傾向がある.また上手い人には,ブレークポイントを用いた実行を頻繁に行う傾向がある.