著者
中山 由紀子 松本 芳之
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.61-68, 2007 (Released:2008-01-10)
参考文献数
13

本研究は,コンピュータの音声ガイドが使用者に及ぼす影響を検証したものである。音声ガイドのあるコンピュータは自律的に作動し,使用者の課題に対する統制感を低下させるため,リアクタンスを経験する。そこで,使用者は統制感を維持するために,コンピュータの評価を低め,課題の失敗を外的要因,特にコンピュータに帰属するであろう。この考え方が実験で検証された。66名の男女大学生からなる被験者は,質問形式の問題を提示され,回答とは無関係に成功,失敗のフィードバックを受けた。文字呈示条件では,テキストは画面上に表示された。音声ガイド条件では,画面表示に加え,テキストは合成音声で読み上げられた。仮説通り,音声ガイド条件の被験者は,コンピュータに対する評価を低下させた。しかしながら,被験者が失敗すると,文字呈示条件では次回は成功すると予測したのに対し,音声ガイド条件では成功を予測しなかった。この結果は,統制感の低下を反映したものであると解釈された。
著者
松本 陽一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.95-109, 2012-03-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
56

自らが競争する領域(ドメイン)を決めることは経営戦略の重要な構成要素である.これまで様々な研究者がドメインの領域あるいは範囲を問題としてきたのに対して,本稿ではドメインが階層性をもち,たとえ同じ領域を選んだとしてもその階層性に対する認識は組織間で異なることを主張する.この分析視角の有効性を示すために,ここでは液晶テレビ分野におけるシャープとサムスン電子のドメインの階層性を比較分析する.
著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 阪野 朋子 松本 貴志子 山内 知子 山澤 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.86, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】セロリは18世紀中頃からサラダとして食されるようになった。現在は生食だけでなく,シチューなどの香味野菜や炒め物のアクセントとして幅広く利用されている。しかし,セロリは一般的に好まれない傾向がある。本研究では,セロリについて,生および加熱調理法別の嗜好性を明らかにし,好まれるセロリの調理法について検討した。【方法】セロリは中央部分を5mm幅に切って試料とした。試料は生と茹で・蒸し・焼き・揚げの各方法で火が通るまで加熱した。官能評価は,N女子大学生27名(平均年齢21.6歳)をパネルとして,5点尺度で色,香り,硬さ,味,歯触り,総合の6項目について分析型官能評価を採点法で,嗜好型官能評価を順位法で行った。データの統計処理は多重比較検定のTukey法とNewell & MacFarlaneで行い,統計的有意水準を5%で示した。さらに官能評価の結果に基づき,好まれるセロリ料理4品を提案した。【結果および考察】官能評価の採点法では,生と比較して茹で加熱は有意に色が薄かった。4種類の方法で加熱したセロリは生より有意に軟らかく,味が薄く,歯触りがないと評価された。香りと総合に有意差はなかった。嗜好型分析評価の順位法では,生と比較して茹で加熱の色と硬さが有意に好まれ,茹でと揚げ加熱の味が有意に好まれた。香り,歯触りおよび総合に有意差はなかった。したがって,セロリの色と味を薄くし,歯触りを弱く,硬さを軟らかくする茹で加熱法が,セロリの生および4種類の加熱法において最も好まれることが示された。この結果に基づき,セロリと豆のリボリッタ・鶏手羽元とセロリのトマト煮・夏野菜の冷やし茶わん蒸し・セロリのかき揚げを好まれるセロリ料理として提案した。
著者
松本 克彦
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.241-248, 1998-09-20 (Released:2010-03-12)

滋陰とは陰を潤すという意味で, 結局は体液を補う方剤ということになる。このような方剤群を歴史を追って整理すると, まず金匱要略に麦門冬湯, 白虎加人参湯があり, また陰陽双補剤と考えられる八味丸がある。次いで和剤局方には清心蓮子飲があり, ほぼ同年代の小児薬証直訣では六味丸が八味丸の受方として独立する。その後明代に滋陰清熱の概念が確立するとともに, 多くの処方が現れるが, 代表的なものとしては万病回春の滋陰降火湯があげられよう。これらの滋陰剤の適応となる陰虚証の診断には, 望診でるい痩, 皮膚の乾燥, 問診で口渇,足腰の弱り, 粘稠な痰などがあるが, 舌苔の減少, 舌質の萎縮を主とする舌診所見が最も簡単である。陰虚証は老化, 糖尿病, 慢性炎症性諸疾患等に一般的に見られ, 今後の高齢化時代における漢方治療に極めて重要な意味を持つと考えられる。
著者
冨岡 公子 山田 全啓 宇野 健司 荒木 勇雄 廣畑 弘 永井 仁美 吉田 英樹 髙山 佳洋 今井 雅尚 濱田 昌範 松本 政信
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.473-482, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
13

目的 近畿圏内の各保健所が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第1波,第2波にどのように対応したかについて調査することを目的としたアンケート調査のデータを分析し,今後のパンデミック発生時の資料として提示する。方法 近畿圏内の63保健所を対象とし,近畿保健所長会が作成した「新型コロナウイルス感染症対策調査票」を2020年9~10月にメールで送付・回収した。COVID-19に関連した業務・医療資源・相談,業務継続計画における最繁忙期の業務見直し状況,COVID-19対応部署における増員数,感染症対策の課題とグッドプラクティス等を質問した。保健所管内人口(以下,人口規模)を3分位によって3区分し,COVID-19関連業務などと人口規模との関連を検討した。結果 57保健所から回答を得た(回答率90.5%)。COVID-19関連業務に関して,受診調整,検体搬送,患者搬送は,9割以上の保健所が担っていた。最も少なかった訪問検体採取においても77.2%であった。いずれのCOVID-19関連業務においても,保健所の人口規模とは関係なく役割を担っていた。業務継続計画における最繁忙期の業務見直し状況に関して,医療法に基づく立入検査とがん患者サロン・難病患者会は,5割以上の保健所が中止し,保健所の人口規模とは関係なく業務を中止していた。保健所や市町村が主催する研修会や会議,健康づくり事業,市町村職員の人材育成,学生実習受入は全体で2割程度が中止していたが,保健所主催の研修会や会議,地域医療構想調整会議,市町村職員の人材育成に関しては,保健所の人口規模が大きくなるほど中止した保健所が多くなる傾向がみられた。結核患者に関する事業や感染症発生動向調査事業を中止した保健所はなかった。結論 COVID-19パンデミックによって,保健所ではCOVID-19関連業務を担うことになり,半数以上の保健所が医療法に基づく立入検査や患者会を中止し,人口規模が大きい保健所では健康増進に関する市町村保健師等への教育や研修を中止する傾向があったが,コロナ禍においても,結核などのその他感染症対策は中止できなかった。感染症対策の課題において,多くの保健所が人員不足や大きな業務負担を指摘していた。COVID-19に関わる保健所業務の軽減および応援支援体制の整備を図るとともに,保健所の体制を強化・整備する必要がある。
著者
蔵原 晃一 松本 主之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.787, 2012-05-24

非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drug;NSAID)起因性腸病変は,NSAIDによって正常な小腸ないし大腸に惹起される粘膜病変と定義され,その存在部位から同小腸病変と大腸病変に分類される1)2). NSAID起因性腸病変の肉眼像や病理組織像は非特異的な所見にとどまるため,診断には,他の薬剤性腸炎と同様に,(1) 腸病変(潰瘍,腸炎)の確認,(2) NSAIDの使用歴の確認,(3) 他疾患の除外(病理組織学的,細菌学的除外診断を含む),(4) NSAIDの使用中止による病変の治癒軽快の確認,をすべて満たす必要がある1)~3).
著者
水本 智也 小町 守 永田 昌明 松本 裕治
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.420-432, 2013-09-01 (Released:2013-07-10)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

Recently, natural language processing research has begun to pay attention to second language learning. However, it is not easy to acquire a large-scale learners' corpus, which is important for a research for second language learning by natural language processing. We present an attempt to extract a large-scale Japanese learners' corpus from the revision log of a language learning social network service.This corpus is easy to obtain in large-scale, covers a wide variety of topics and styles, and can be a great source of knowledge for both language learners and instructors. We also demonstrate that the extracted learners' corpus of Japanese as a second language can be used as training data for learners' error correction using a statistical machine translation approach.We evaluate different granularities of tokenization to alleviate the problem of word segmentation errors caused by erroneous input from language learners.We propose a character-based SMT approach to alleviate the problem of erroneous input from language learners.Experimental results show that the character-based model outperforms the word-based model when corpus size is small and test data is written by the learners whose L1 is English.
著者
水越 興治 及川 みどり 伊藤 夕子 小林 和法 今村 仁 松本 克夫
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.262-268, 2007-12-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
6
被引用文献数
5 2

本研究では10代から50代の, 248名の日本人女性の顔面を対象とし, 目立つ毛穴の実態調査を行った。その結果, 20代から30代で目立つ毛穴には角栓が存在し, 角栓の組成を分析した結果, タンパク質成分が約7割を占めることが判明した。一方40代以降では角栓が存在せずに開大した状態の目立つ毛穴が存在することが明らかとなった。また毛穴の開口部面積は10代から20代と, 30代から40代で各々急増するという, 2段階の変化を示す一方, 皮脂量との関連性は年齢とともに低下した。これらの結果から, 若年層では毛穴は角栓が詰まることによって目立ち, 年齢とともに毛穴の中に角栓が存在しなくなっても目立つ構造に変わっていくことが推察された。この調査結果から目立つ毛穴に対するケア方法は画一的ではなく, その性状, 年齢に応じて異なるべきであることが示唆された。
著者
松本 昇
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.121-126, 2020 (Released:2021-08-05)
参考文献数
32

Network analysis for psychopathology, introduced by Kashihara (2019), has the potential to greatly transform the research and treatment of psychiatric disorders. This paper discusses how we integrate the literature on cognitive and clinical psychology into the network analysis. Most network analysis in psychiatric disorders has used the data obtained from questionnaires, although incorporating the experimental tasks used in cognitive and clinical psychology into the assessment is worthy for clarifying the mechanisms that underlie psychiatric disorders. However, some issues arise when the data obtained from the experimental tasks are used in network analysis. These barriers indicate new issues that cognitive and clinical psychologists need to solve in the future.
著者
松本 武夫
出版者
農業技術協會
雑誌
農業技術 (ISSN:03888479)
巻号頁・発行日
vol.28, no.12, pp.533-536, 1973-12 (Released:2011-03-04)
著者
小倉 和幸 新井 彰 定金 晃三 松本 桂
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第3部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.75-89, 2014-09

我々は大阪教育大学天文台51cm反射望遠鏡(以下51cm望遠鏡)における分光観測システムを構築した。これまで51cm望遠鏡を利用した撮像・測光観測によって様々な成果を挙げてきた。51cm望遠鏡での撮像・測光観測に加え分光観測が可能になればさらに学生の研究テーマが広がるとともに,設置から20年が経過する51cm望遠鏡の利用価値を大幅に高めることにつながる。そこで我々は小型望遠鏡での使用を想定して開発されたLHIRES IIIを用いて分光観測システムの構築に向けて機材の調節と試験観測を行った。その結果,明るい天体についてのスペクトルを得ることができた。本稿ではオリオン座δ星といっかくじゅう座V959 (2012年いっかくじゅう座新星)のスペクトルを用いて分光観測システムの性能を概算した。その結果,連星系のスペクトル変化や,明るい新星のスペクトルを観測可能であることが示せた。いくつかの課題点は残るが51cm望遠鏡による分光観測の基礎が構築できた。We developed a spectroscopic observation system of the 51cm telescope as an additional means of astronomical observation at Osaka Kyoiku University. While the 51cm telescope has been used for photometric observations and yield many scientific results, we can naturally expect that spectroscopic observation should bring more valuable information on astrophysics for us. We use LHIRES III sectrograph to construct the system of spectroscopy, and obtained optical spectra of some bright astronomical objects. We evaluated the performance of the system, especially by using the spectra of δ Ori and V959 Mon (Nova Mon 2012). Those tests indicated that we were able to obtain essecial informations required for astrophysical researchs of binary systems and classical novae, and the system is a promising tool for spectroscopic investigations of relatively bright objects by the 51cm telescope.