著者
酒井 浩二 吉川 秀樹 徳田 仁子 松本 しのぶ 千葉 晃央 西川 潤 中木 直子 高見 茂
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.3, pp.180-187, 2023-10-16 (Released:2023-10-16)

大学設置基準改正で,2019年度から大学は学部等が連携して編成する教育課程「学部等連係課程」を置くことができるよう制度化された.本稿では,学部等連係課程の特色を概観し,本学で設置された学部等連係課程「人間健康学群」を事例として,設置の背景,連係学部,教育プログラムの特徴を概説する.社会課題の発見・解決力を修得して社会で活躍するための教育課程として,学部等連係課程の効率性と有効性を考察する.
著者
上野 健爾 土屋 昭博 河野 俊丈 伊達 悦朗 神保 道夫 柏原 正樹 松本 尭生 三輪 哲二
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

本研究は重点領域研究「無限自由度の可積分系の理論とその応用」の成果取りまとめのために行われた。平成4年度から5年間にわたって行われた本重点領域研究では無限自由度の可積分系の理論を中心に数多くの重要な成果が得られたが、これらの成果を有機的にまとめ、今後の研究へのひとつの指針を与えることが本研究の目指したものである。具体的には2次元格子模型、共形場理論、量子群、3,4次元トポロジー、無限自由度の可積分系と関係した代数幾何学に関してさらに研究を進め、今までに得られた成果をさらに高い立場から見直すことを行った。この結果、Calabi-Yau多様体のミラー対称性や量子コホモロジー群、量子群の表現と古典関数のq類似、3,4次元多様体の位相不変量などに関する研究において新しい知見が得られた。さらにこれらの成果は、非線型幾何学とも呼ぶべき新しい幾何学が背後にあることを強く示唆している。特に深谷のグループはCalabi-Yau多様体のミラー対称性を幾何学的に新しい見地から論じ、今後の研究に重要な一歩を踏み出した。また本年度の研究によって、神保のグループを中心に離散的Painleve方程式が幾何学的な構造を持つことが明瞭にされ、可積分系のもつ幾何学的構造の豊かさが改めて明らかになった。今後は、本重点領域研究の成果に基づき、非線型幾何学の建設へ研究が大きく前進していくことが期待される。
著者
榎本 一紀 松本 直幸 木村 實
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.89-94, 2013 (Released:2017-02-16)
参考文献数
12

絶え間なく変化する自然環境のなかで,雑多な情報から必要なものを判別し,過去の経験や現在の状況に照らし合わせて,将来の目標を見据えた最善手を打つことは,人間やその他の動物にとって,配偶者や食料,金銭などの報酬を効率よく得るために,また,危険や損失を回避するために必須である。ドパミン細胞は中脳の黒質緻密部,腹側被蓋野などに集中して存在し,線条体や前頭葉,大脳辺縁系などの広範な脳領域に投射しており,報酬を得るための意思決定や行動選択に関わる神経システムにおいて,重要な役割を担っている。過去の研究から,ドパミン細胞の活動は,刺激の新規性や,動機づけレベルなどと同時に,報酬価値情報を反映することが報告されている。ドパミン細胞は条件刺激に対して放電応答を示して,期待される報酬の価値を表現し,また,強化因子に対する応答は報酬の予測誤差を表現する。最近,筆者らはニホンザルを用いた研究によって,ドパミン細胞の活動が,学習によって,長期的な将来報酬の価値を表現することを明らかにした。この研究では,サルに複数回の報酬獲得試行を経てゴールに到達することを目標とする行動課題を学習させ,課題遂行中のドパミン細胞の活動を電極記録した。ドパミン細胞は,条件刺激(各試行の開始の合図となる視覚刺激)と,正または負の強化因子(報酬獲得の有無を指示する音刺激)に対して応答し,その応答の大きさは,目前の1試行だけの報酬価値ではなく,目標到達までの,複数回の報酬価値を表現していた。これらの活動は,強化学習理論に基づく一般的な学習モデルによって推定した報酬予測誤差(TD誤差)によってよく説明できた。また,このような報酬価値の表現は課題の学習初期には見られず,課題の構造に習熟してはじめて観測できることが確かめられた。以上のことから,ドパミン細胞は長期的な将来報酬の情報を線条体や前頭前野などに送ることで,意思決定や行動選択を制御していると考えられる。この結果は,目先の利益にとらわれず,目標に向かって意志決定や行動選択を行う脳の作動原理解明につながることが期待される。
著者
西尾 聡悟 寺上 伸吾 竹内 由季恵 松本 辰也 髙田 教臣
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.137-147, 2022 (Released:2022-06-30)
参考文献数
43
被引用文献数
1

ニホンナシの育種は農研機構および全国の県の試験場で行われている.育種において最も重要な形質は黒星病抵抗性であり,生理障害の発生少,収量性,早生性,高糖度,自家和合性なども重要な育種目標となっている.近年温暖地においてナシの発芽不良が問題となっているため,温暖地でも安定栽培可能な品種の開発が求められている.そのような中で,黒星病抵抗性,自家和合性,黒斑病抵抗性,早生性,果皮色についてはDNAマーカーが開発され現場の育種に利用可能となっている.しかしながら, これらの形質は遺伝の顕性と潜性 (優性と劣性),質的形質と量的形質,対立遺伝子に異なる複数の効果があるなどの特徴があるため,効率的な選抜のためにはそれぞれの形質の遺伝様式を十分に理解したうえでDNAマーカーを使う必要がある.本総説ではニホンナシの育種に重要な59品種のこれらの形質の表現型と遺伝子型データベースを公開し,それぞれの形質の遺伝様式と利用技術についてとりまとめ解説する.
著者
向井 大喜 村上 忠幸 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.455-464, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本研究では,高校生の探索的な科学的問題解決における,仮説形成の到達段階を評価する指標の開発を目指した。そこで,仮説形成プロセスのモデルを設定して評価指標を作成し,高校生に実践された探索的な科学的問題解決を実際に評価した。その結果,活動が進展している学習グループには以下の(1)~(3)が認められた。(1)実験素材への「操作」を通して「要素の抽出」が生じた。(2)要素に説明付けすることで「説明仮説の生成」が生じた。(3)説明仮説から演繹することで「作業仮説の生成」が生じた。しかし,停滞している学習グループでは,「要素の抽出」が繰り返され「説明仮説の形成」へ進まず,演繹的探究への移行が起こらなかった。このことより,本研究で提案する指標には,仮説形成の段階を評価できる可能性があることが明らかになった。
著者
石倉 英樹 落合 秀俊 山口 朗央 松本 智博
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.909-911, 2015 (Released:2016-01-09)
参考文献数
9
被引用文献数
1

〔目的〕血液透析患者は日常生活活動能力低下や生命予後に対する危険因子となる血液透析後の起立性低血圧に着目して,運動療法の効果を検討することとした.〔対象〕外来血液透析患者のうち,運動療法を開始した10名とした.〔方法〕血圧測定を血液透析中の運動療法開始前,開始2週後,4週後に実施した.運動療法として両下肢のストレッチング・筋力増強運動を20分間実施した.〔結果〕起立時に低下する収縮期および拡張期血圧の低下量が運動療法開始4週後に有意ではないものの減少する傾向があった.〔結語〕血液透析中の運動療法は自律神経障害と起立性低血圧を改善する可能性がある.
著者
松本 恵
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.75-80, 2021-04-01 (Released:2021-06-26)
参考文献数
27

スポーツによって身体活動量が増加すると,活動量に見合った適切なエネルギー・各栄養素の摂取量を考慮することが必要になる.また,厳しいトレーニングを実施するエリートアスリートでは怪我や疾病を予防するために,特定の栄養素の過不足に留意する必要がある.とくに,アスリートの慢性的な摂取エネルギー不足は将来にわたっての疾病に関わることが明らかとなり,大きな問題である.一方,トレーニングや試合スケジュールに合わせた栄養素の摂取の工夫について研究が進んでおり,パフォーマンスを向上させる目的のサプリメントの開発も盛んである.サプリメントの使用にあたってはドーピングコントロールとの関係やジュニア選手への教育不足など問題点も多い.今後,スポーツ現場での栄養摂取はより,個人への対応を必要とし,多くのエビデンスの蓄積が望まれる.
著者
松木 祐馬 松本 芳之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.141-143, 2020-12-18 (Released:2020-12-18)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

This study examined the effect of personality similarities on interpersonal attraction, focusing on the characteristic personality traits of persons evaluated by study participants. A total of 373 university students evaluated the attractiveness of four “stimulus persons,” described as scoring highly on each of the Big Five traits. For high-extraversion and high-agreeableness stimulus persons, the greater their similarity in characteristic personality traits to the evaluating participant, the higher the interpersonal attraction was rated. These results suggest that similarities in characteristic personality traits play an important role in the similarity effect in personality.
著者
室田 昌子 北島 謙吾 岩脇 陽子 滝下 幸栄 松本 賢哉
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.4_83-4_95, 2014-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
20

アーユルヴェーダを基盤とした専門的な頭部へのマッサージ技術(ヘッドトリートメント)が心身に与える影響を明らかにする。対象者は健康な女性25名である。洗髪後に5分間,坐位を保つ統制群,ヘッドトリートメントを行う介入群Ⅰ,アロマオイルヘッドトリートメントを行う介入群Ⅱの3群を,同一対象者に1週間以上の間隔をあけて行った。生理学的指標として腋窩温,血圧,LF/HF,ストレス値を,心理学的指標として倦怠・活動的快・非活動的快,STAI状態不安を測定した。 その結果,統制群に比べてヘッドトリートメントおよびアロマオイルヘッドトリートメントは,副交感神経優位の傾向が示唆され,倦怠感や不安が減少し,のんびり感が増加した。とくに爽快感の獲得および倦怠感の軽減の持続は,アロマオイルヘッドトリートメントに特徴的であった。以上のことから,ヘッドトリートメントおよびアロマオイルヘッドトリートメントのリラクセーション効果が示唆された
著者
松本 修一 朴 泰輝 川嶋 弘尚
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.991-998, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3

地球温暖化対策の一手法として,自動車から排出される二酸化炭素量をエコドライブ走行を行うことによって削減しようという試みがある.エコドライブ走行は,発進時における緩やかな加速や,走行時の加減速を減らすなどの運転行動によって低燃費を実現する手法である.エコドライブ走行の有効性に関する検討は,単一車両による評価がほとんどであり,複数台の車群に関しては未だ不十分である.本研究では,ドライビングシミュレータと交通シミュレータを相互接続した実験環境を用いて,一般街路における車両追従時のエコドライブ走行が燃料消費量削減に与える影響などを定量的に評価する.
著者
松本 直樹 和田 孝志 中谷 加奈 里深 好文 水山 高久
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.3-11, 2012-09-15 (Released:2015-08-03)
参考文献数
19
被引用文献数
5

Debris flow is composed of mixed-size gravel, and the grain size distribution and concentration of sediment strongly affects the flow behavior. To predict more accurate debris flows, we need a numerical model that considers mixed-size gravel and can describe sediment sorting. We propose a more accurate method for predicting mixed-size debris flow behavior, from torrents to alluvial fans. We combined a debris flow model that can describe sediment sorting with an integration model, and proposed an integrated model for mixed-size gravel. Applying this model, we simulated debris flow on a virtual watershed under different conditions of inflow sediment distribution. Our results showed that an integrated model for mixed-size gravel provide a more rational description of debris flow in torrents and alluvial fans than models of uniform-sized gravel.
著者
大保 義彦 上山 健一 村岡 新一郎 亀井 健二 松本 啓
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.59-63, 1991-01-15

【抄録】 口内清涼剤“仁丹”の長期間の過剰摂取により,顔面,爪床を中心に,青灰色の銀沈着を来たし,銀皮症を呈した精神分裂病の1例を経験したので報告する。入院時検査で,血中に高濃度に銀が存在しており,鼻唇溝部および左上腕内側部の病理組織検査で,真皮上層にびまん性に異色小顆粒の銀沈着が認められ,毛包周囲および汗腺基底膜部に特に著明であった。また,本症例は経過中に全身けいれん発作があり,脳波検査で,2〜4Hzの不規則な棘徐波複合が,広汎性に持続的に認められた。発作の原因としては,長年にわたる多量の銀摂取による中枢神経系への銀沈着による脳の器質的変化が考えられた。
著者
松本 健作 森 勝伸 下村 通誉 小野寺 光二 南雲 洋平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_1117-I_1122, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
12

河川環境に生息する生物として,河川伏流水に生息する地下水生生物に着目し,地下水観測孔を用いた観測手法の有効性の検証およびその生息環境因子について考察した.通常は孔内水位や地下水流向・流速という物理因子を観測するために河川近傍に設置された地下水観測孔内では,多数の地下水生生物の観察が行える可能性が高く,観測手法として極めて有効であることを示した.また,僅か30 m離れた2つの観測孔における生息状態が大きく異なっていることから,両孔の地盤特性,孔内水の含有イオン,水温等を調査し,地下水生生物の生息実態におよぼす水質特性を示すとともに,その両孔間における水質の差異を生じさせている要因が地盤の粗密からくる地下水の流動性の差異である可能性を指摘した.
著者
濵砂 良一 川井 修一 安藤 由起子 伊東 健治 倉島 雅子 西村 敬史 山口 隆正 吉村 誠 小林 とも子 村谷 哲郎 松本 哲朗
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.1-7, 2011-01-20 (Released:2015-04-06)
参考文献数
14
被引用文献数
3 1

Real-time PCR 法を用いてChlamydia trachomatis(クラミジア)およびNeisseria gonorrhoeae(淋菌)を検出するAbbott RealTime CT/NG assay(realtime 法:アボットジャパン)の有用性を,女性子宮頸管スワブ検体,女性初尿検体,男性初尿検体を用いて検討した.対象は北九州市内の産科・婦人科施設,泌尿器科施設,皮膚泌尿器科施設を受診し,子宮頸管炎または尿道炎が疑われた患者,女性88 名,男性100 名である.これらの検体をBD プローブテックET CT/GC(プローブテック:日本べクトン・ディッキンソン)と比較した.クラミジアに対する全検体の陽性一致率は97.1%(66/68),陰性一致率は99.0%(206/208),淋菌に対する全検体の陽性一致率は100%(33/33),陰性一致率は100%(243/243)であった.女性の子宮頸管スワブでは3 検体の不一致例が,男性初尿では1 検体の不一致例があった.女性初尿においては2 検査間の不一致例はなかったが,子宮頸管スワブと初尿との間にrealtime 法で3 症例,プローブテックで4 症例の不一致があった.realtime 法とプローブテックの不一致例のうち3 検体でアプティマCombo 2 クラミジア/ゴノレア(富士レビオ)による再検査を行い,すべて陽性であった.女性では子宮頸管スワブ,初尿のいずれかのうち2 つ以上の検査で陽性の場合,男性では初尿で2 つ以上の検査で陽性の場合,「真のクラミジア陽性」症例と仮定すると,realtime 法における子宮頸管スワブ,女性初尿,男性初尿の感度はそれぞれ94.4%,77.8%,97.4%であった.これに対しプローブテックではそれぞれ88.8%,77.8%,100%であった.淋菌に対する感度はいずれの検査でも100%であり,realtime 法は女性の子宮頸管スワブ,男性の初尿を用いると,淋菌,クラミジアに対してプローブテックと同等かそれ以上の有用性を示した.
著者
三瓶 良和 松本 一郎 大平 寛人
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年,蛇紋岩化作用に伴って発生する水素の意義が見直され,地球有機物圏は下部地殻~上部マントル域に飛躍的に広がろうとしている。その発見は生物地球化学的視点から始まったが,メタンおよびプロパン以上の無機起源中~長鎖炭化水素も見つかり地球内部炭素循環の理解の変革が求められている。それら超深度炭化水素・有機物は濃度的には希薄だが地球規模での総量は膨大であり,また炭化水素は移動して集積することができるため新たな炭化水素資源域として見直される可能性も高い。本研究では新たな未解明フロンティアである地下超深部での有機物の特徴と組成,その濃度,炭素の起源,炭化水素生成プロセス等についての解明を行う。