著者
清水 紀雄 浅見 重幸 小林 保 田子 晃
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク
巻号頁・発行日
vol.93, no.291, pp.59-66, 1993-10-22
被引用文献数
2

事務所などでのパーソナルコンピュータ、ワークステーション、およびそれらを相互に接続するローカルエリアネットワークの普及に伴って、無線LANの導入の要望が強くなっている。これに対応するために、2.4GHz帯スペクトル拡散無線LANシステム(無線LANアダプタ)を開発した。これは、無線リモートデータリンクブリッジとして動作し、コンピュータとはIEEE802.3標準規格(イーサネット)で接続する。この方式の無線LANは実装が容易で、2台のPCから大規模なLANにまで対応できる。室内での無線データ通信の課題、多重アクセスプロトコル、シミュレーションによる評価、および試作結果等について報告する。
著者
坊垣 和明 澤地 孝男 吉野 博 鈴木 憲三 赤林 伸一 井上 隆 大野 秀夫 松原 斎樹 林 撤夫 森田 大
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.63, no.505, pp.23-30, 1998
被引用文献数
41 14

Related surveys were carried out in summer of 1992 and winter of 1993 on indoor climate, life style and energy consumption in residential buildings, which are located in eight city areas of different climatic conditions. Indoor temperature was measured in each living room for at least a week with originally designed automatic temperature recorders, and life style factors were investigated with questionnaires. In this paper, daily mean living temperatures of each region and it's regional differences are described, and the reasons of regional differences of living room temperature are discussed. The main results are as follows ; (1)Regional mean living room temperature in summer depends on mean outdoor temperature. (2)Mean living room temperatures of Sapporo in winter are higher than those of other 6 cities of Honshu and Kyushu district for about 2-4 ℃. It is suggested that these differences depend on life style.
著者
澤村 誠 宗林 孝明
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

貝毒(下痢性)を惹き起こすオカダ酸を、抗原抗体反応を利用し、非標識で動作するバイオセンサで検出した。また、予備実験として同センサによりがんマーカーのCEA(癌胎児性抗原)を検出した。・バイオセンサの作製:平成17年度に作成したトランジスタ型センサから操作が容易でより安定して動作するダイオード型センサを作製した(特許出願済)。・検出法:センサのシリコン基板表面の酸化膜上に微細な電極を作製し反応場とし、抗体を固定化(物理吸着)し、ターゲットの抗原を滴下する。抗原抗体反応進行に伴い、ダイオードの電流・電圧特性を比較すると、反応の進行レベルに加え、動的特性がターゲットの濃度に依存して規則的に変化する。標準サンプルから検量線を作成すればターゲットを定量することができる。・効果:本研究は貝毒の抗原抗体反応の検出を非標識で行った最初の研究と思われる(従来、検出にはマウステストが行われているが、近年ELISA法による実験の成功例がある)。オカダ酸のような微小な分子が非標識で検出されたことは重要な発見である。尚、使用したバイオセンサは構造が簡素で、低電圧で安定動作し、操作が容易である。他の抗原抗体反応(CEA検出)にも応用できるが、可能性として酵素反応やDNAハイブリダイゼーションにも用いることができ、応用範囲が広い。・新発見:反応場上の抗原と抗体が形成する薄膜の動的電気伝導特性が変化することから、反応に伴い抗体の分子構造(水を含む)の大きな変化(conformal transition)を伴う電子状態の変化があることが予想される。このため、今後、細胞やウイルスなどの大型ターゲットの電子状態計測や細胞シリコン融合素子への応用が期待される。課題:(1)検出感度を他の検出法と比較すること(サンドイッチ法(ELISA)で検出できず)。(2)抗原抗体反応に要する時間の短縮。(3)夾雑物のある環境における検出実験。
著者
徳田 恵一 益子 貴史 宮崎 昇 小林 隆夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.1579-1589, 2000-07-25
被引用文献数
65

HMM(hidden Markov model)による時系列の統計的モデル化手法は, 特に音声認識における音声スペクトル列の統計的モデル化手法として広く成功を収めている.HMMは, 離散的なシンボル列を扱う離散分布HMMと、連続値をもったベクトル列を扱う連続分布HMMとに大別されるが, 実際の観測系列には, 離散的なシンボルと連続値が時間的に混在したものがあり, 従来のHMMでこのような観測系列をそのまま取り扱うことはできない.音声のピッチパターンは, このような系列の例である.この問題を解決するため, 本論文では, 可変次元の多空間上における確率分布に基づいたHMMを新たに定義し, 拡張されたHMMのモデルパラメータの再推定アルゴリズムを与えている.拡張されたHMMは, 離散分布HMM, 混合連続分布HMMを特別な場合として含み, 更に離散シンボルと連続値が時間的に混合した観測系列をモデル化することができる.
著者
林 政彦
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.99-110, 1999

従来から使われている鑑別手段では判断が難しい宝石については,新しい分析技術の開発あるいは従来の方法の応用によって,その鑑別を可能にすることが必要である。そこで,今日は現在広く使われているEDS,軟X線による透過像,FT-IRなどの分析機器を用い,現在流通している宝石の鑑別に成功した例をいくつか紹介する。今後はこのようなハイテク機器が宝石の研究に貢献するであろう。
著者
谷口 清英 坪田 典之 川口 仁 林 栄一 中元 賢武 前田 昌純
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1071-1076, 1991-12-20

症例は74歳男性.1期肺腺癌術後肝転移に対し,rhG-CSF併用chemotherapy(MVP療法:CDDP80mg/m^2,VDS3mg/m^2,MMC8mg/m^2,2週間隔,5クール)で画像上PR(PertialResponse)を得た.化療中のCEA値を経時的に測定した結果,腫瘍体積と有意の相関をみた.画像上PRであったがCEA値は完全に正常化した.このことは,縮小した塊状影が腫瘍の壊死組織である可能性を示している.本症例の血清CEA値は,予後判定のうえで再発の指標となり,抗腫瘍効果のマーカーとして鋭敏に反応した.血清CEA値は画像診断の限界を補う新たな化療効果判定方法になりうることが示唆された.
著者
西林 清茂 藤原 紀夫
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, 1983-12-15

この稿では解析例として, 某地下鉄工事における有限要素解析, 大阪の地下鉄工事における被圧水圧の測定とその処置, 岐阜市十六銀行ビル基礎工事に関する電気アナログ法について述べている。まず有限要素解析においては, 地盤を5つのケースに分けて解析し, 得られた結果がボイリングを起こす限界になったので, 排水工法を実施している。次に大阪の地下鉄工事の場合には, 井戸が滞水層を貫通している場合の揚水量計算式を用い, その結果と照らし合わせてウェルポイントを打設して, 被圧水圧と排水量の経日変化図を示している。電気アナログ法に関しては, 筆者らがよく行う方法で, ここでは, 施工場所が大量の湧水が懸念されるために, 有効かつ経済的な止水壁長を計画する目的で行った解析と実際の工事結果について述べている。ここで, 解析値は実測値より若干小さめの値となっているが, よく一致している。また滞水層厚に関して, 電気アナログ法を使い二次元解析を行い, 流量と滞水層厚の関係を掘削幅, 掘削深さを考慮して, グラフに表している。
著者
溝口 理一郎 來村 徳信 笹島 宗彦 古崎 晃司 林 雄介
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では,Webコンテンツの中から製造業における技術ドキュメントに焦点を絞り,工業製品に関する工学知識の融合とオープンな相互運用を実現する実用的な枠組みを開発することを目的とした.製造業の現場において爆発的に生産されデータベースなどに格納される工業製品関連知識の,記述コンテキストや独自概念体系への暗黙的依存性を,人工物に関する基盤的なオントロジーを核とした融合とオープンな相互運用性によって解決することを目指した.特に,平成18年度においては,製品ライフサイクルにおける製造と使用のフェイズに注目し,製造プロセスモデル,機能発揮プロセスモデル,ユーザ使用プロセスなどの関連性をプロセス間関係として捉え,オントロジー工学的に考察することを行った.まず,人工物の製品機能発揮プロセスと製造プロセスについて,両者の関係を,機能発揮の主体である人工物製品が製造プロセスの客体としての役割を果たすという役割(ロール)の違いとして定式化した.一般的なプロセス間関係を捉え,その特殊化として定義した.さらに,情報学研究で扱ってきた不具合プロセスとの関係を同様に定式化し,さらに関係を一般化した.また,ユーザ操作プロセスモデルとの関係性を分析し,ロールモデルとしては分散化されることを明らかにした.これらをまとめて,人工物関連プロセスの統合的モデル枠組みを構築した.また,それを支える人工物プロセスオントロジーを概念的に構築した.プログラム実装については,アノテーション枠組みの基礎的検討に加え,3次元的な人工物プロセス統合モデルビューアのプロトタイプを開発した.また,機能に関する一般オントロジー(一般機能オントロジー)を既存の機能定義をマッピングするための「参照オントロジー」として用いて,他の概念体系との具体的なマッピングとモデル構造の変換について検討した。
著者
小林 昭裕
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-12, 2003-12-30

自然公園における過剰利用抑制策として車両規制が各地で導入されている。車両規制の実施には利用者の理解が不可欠であり,利用者から見た車両規制の評価を踏まえ,現在の車両規制制度の課題を検討する必要がある。本研究では,1997年から車両規制を導入した大雪山国立公園高原沼めぐり地区および1999年から車両規制を導入したカムイワッカ地区を事例に,1999年〜2001年の3ヵ年にわたる車両規制に対する利用者の評価をもとに,利用者の車両規制に対する支持に関与する要因を捉え,利用規制に対する利用者からの支持・理解を得るための課題について検討した。また,3ヵ年にわたる調査結果から,調査手法上の課題について検討を加えた。
著者
斉藤 浩子 石川 尚子 大久保 みたみ 大関 政康 大竹 美登利 唐沢 恵子 川端 博子 高崎 禎子 武田 紀久子 林 隆子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.1029-1041, 1991-12-15
被引用文献数
3

The following are the results of an investigation of personal networks of the elderly gathered from members of the Senior Citizen's Club in O^^^me City, Tokyo. (1) The frequencies of contacts with grown-up children living on their own, neighbors, close friends and relatives were surveyed. (2) The most frequent contacts were found with neighbors, followed by close friends, grown-up children living on their own and relatives. (3) Males without spouses show a tendency towards less frequent contact with children who live on their own and relatives, however, they have close relationship with neighbors. (4) Females have contacts with their close friends more often than males. Both males and females without spouses have more frequent contacts than people with spouses. (5) Among the people who make up personal networks of the elderly, excluding their own children, the most chosen by the aged were peer members of the Senior Citizen's Club, followed by neighbors, relatives, friends with same hobbies, siblings, school-maltes and friends from their place of work. (6) Most people seemed to be satisfied with their personal network. (Received November 29, 1990)
著者
小林 潔
出版者
日本スラヴ・東欧学会
雑誌
Japanese Slavic and East European studies (ISSN:03891186)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.87-102, 2004-03-22

O.O.ローゼンベルク(1888-1919年)は、大正時代に来日し漢字研究および仏教研究に従事したペテルブルク東洋学派の日本学者である。仏教学者シチェルバツコイの高弟で、日本語はペテルブルク大学で黒野義文に、ベルリンで元東京大学教授ランゲおよび辻高衡に学んだ。1912年〔明治45年〕に来日。これは師であるシチェルバツコイの意向であった。シチェルバツコイは当時、日本をも含めた各国の研究者と倶舎論(5世紀の仏教書)研究を推進しており、日本に残る伝統的な教学を学ばせるためにローゼンベルクを東京に派遣したのである。留学時の指導教授は姉崎正治、専門の仏教研究では、シチェルバツコイとともに倶舎論研究グループを形成していた荻原雲来が指導に当たった。日本の同僚とも親しくつきあい、また同時期に留学していた同窓の日本研究者ネフスキーやコンラットとも交流を続けている。また、ドイツ東洋文化研究協会(OAG-Tokyo)で仏教論を発表したほか、日本の学界に向けて倶舎論研究上の問題点について問う文書を公開している仏教研究を続ける一方、彼は、外国人にとっても使いやすい用語辞典と漢字典が無いことを嘆き、これらの制作を決意し、日本人と協力しつつ在日中に2つの辞書を実際に刊行した。1つは、仏教研究に必要な術語、日本史、神道の用語を集めた一種のコンコーダンス『佛教研究名辞集』(1916年〔大正5年〕)である。ここでは術語は漢字毎に排列されており、発音を知らない外国人でも検索しやすいものになっている。また、中国語音、対応する梵語術語を掲げ、語の解説に関しては別の然るべき便覧への参照指示がつけられている。もう1つは、外国人にとって日本語学習のネックとなっている漢字を解説した字典『五段排列漢字典』(1916年〔大正5年〕)である。ここで彼は従来の部首引きを批判し、ペテルブルク中国学の伝統に基づいた新たな漢字分類法を提唱、それに基づいて漢字を排列している。これは漢字の図形的要素に注目した分類であった。1916年〔大正5年〕に帰国。ペテルブルク(ペトロダラート)大学でエリセーエフらと日本研究に従事する中で、1918年、日本・中国の伝続的教学の知見と倶舎論研究に基づいて博士論文『仏教哲学の諸問題』を執筆する。ここで彼は、仏教の基本概念である「法(ダルマ)」について詳細な分析を行った。翌1919年に亡命、31歳でレヴァル(タリン)にて死去した。没後、彼の博士論文は、独訳されて世界の東洋学者に影響を与えることとなった。日本の和辻哲郎もローゼンベルクの独訳論文を活用しつつ仏教研究を行っている。独訳からの重訳で日本語訳も刊行され、ローゼンベルクのこの著作は現在の日本の仏教学界でも基本文献とみなされている。ローゼンベルクが提唱した漢字排列方法は、ソ連・ロシアで刊行される中国語辞書で採用され、今日まで用いられている。また、アメリカでもローゼンベルク方式を採用した漢字字典が刊行されている。ローゼンベルク方式は今なお生きているのである。ローゼンベルクは、仏教学及び漢字研究に於いてアクチュアルな意義を有する業績をあげた。この意味でロシア東洋学史上の重要人物である。また、その業績は、在日中の研鑽の結果であり、日露の学者の協同の成果でもあった。日露文化交流史上でも価値ある存在であり、その生涯と業績について更なる研究が侯たれる。
著者
飯尾 和彦 木村 聡宏 小林 透 忠海 均
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.49, pp.7-14, 1997-05-23

既存の非SGML文書をSGML文書に変換するためにはDTDに従って多くのタグを人手で文書に埋め込む必要がある。これは、コストがかかり、SGML普及上の大きな問題点となっている。本論文では、既存の非SGML文書をSGML文書に変換する方式とその評価結果について述べる。変換方法は、以下の通りである。()テキスト文書に簡単なタグつけを施す。この結果できた文書を一次変換文書と呼ぶ。()これらのタグと一次変換文書に現れる位置や特徴を手がかりとして、SGML文書へ自動変換する。本方式により、SGMLの経験者がSGMLエディタを利用してSGML文書に変換するような場合と比較しても1/4?1/3の時間でタグつけできることが実験から明らかになった。It is needed to be put many tags into papers when we want to convert non SGML document into SGML document. However it is costly and is one of main problems for utilizing SGML. This paper describes the method to convert non SGML document into SGML document and the evaluation of it. The method is followings: (i) Insert small tag set into text. The resulting document is called first translated document. (ii) Translate first translated document into SGML document automatically by analyzing these tag, location and features. It is found that even SGML expert can convert document three or four times effectively than using SGML editor by using this method.
著者
山本 修吾 林 豊彦 中山 貞夫 伊藤 建一 鈴木 禎宏 古賀 良生 宮川 道夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.96, no.257, pp.101-108, 1996-09-25
被引用文献数
14

本論文は, 人工膝関節置換術(total knee arthroplasy, TKA)により人工膝関節に置換した膝関節運動の術中測定について述べたものである. この測定のために, 術中計測に必要な滅菌, 操作性, 精度の諸条件を考慮し, 著者らは高分解能リニアCCDカメラを用いた光3次元測定装置を開発した. 二つの人工関節コンポーネントに各4個, 計8個のLEDを取り付け, その3次元位置を左右3台, 計6台のCCDカメラを用いてサンプリング周波数100Hzで測定する. カメラキャリブレーションの後, 精度評価実験を行った結果, LED位置の測定誤差は0.24mm以内, 空間分解能は0.06mmであることが明らかとなった. また切断肢を用いた予備実験から, 本システムは術中測定に必要とされる操作性と精度を十分に備えていることが判った.
著者
小林 和男 飯山 敏道 藤本 博巳 酒井 均 平 朝彦 瀬川 爾朗 古田 俊夫
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1988

本補助金による2年度にわたる集中的な研究によって西南日本沖(南海トラフ陸側斜面)の海底湧水帯の位置が精密に同定され、その実態がはじめて詳しく解明された。シロウリ貝群集が湧水帯上に集中して生息することは1985年のKAIKO計画においてすでに推定され、世界の他海域(バルバドスやオレゴン沖)でも証拠が挙がっていたが、今回現場での海底下鉛直温度勾配測定によって1年数mに及ぶ湧出水がシロウリ貝群集直下の径1m程度の範囲に集中して存在することが明瞭に示された。この湧出水はやや、深部からもたらされたメタン、硫黄等を含み貝の生育を助ける共生バクテリアの餌となると共に、酸素に富んだ表層間隙水により酸化されて炭酸カルシウムをつくり、周囲の堆積物の間隙を埋めて堆積物を固結させる働きをすることがわかった。湧水帯が集中する海溝付加帯の変動前面(水深3800〜3600m)でも1m弱の軟い堆積物の下に固化した砂泥の存在が推定され、海底にもいくつかの堆積物チムニ-が顔を出していることが曳航テレビと潜水船で観察されて試料採取にも成功した。この地点では3ケ月にわたる地殻熱流量と海底電位差の連続測定が行われ、有意な時間変動を検出している。一方、変動前面の上方に当るバックスラスト域(水深2000m)では小さなシロウリ貝群集が発見されスラストに沿う小規模の湧水が推定されるが、それ以外の海底には貝殻を含む固結した堆積物が露出し侵食を受けていることが判った。前面域で堆積し固化したものがしだいに上方に押し上げられて一部が露出するがほとんど地層内にとり込まれて行く一連の過程が1地域で観察されたことになり、プレ-ト沈み込みに伴う海溝付加帯の生成と成長についてこれまで古い地質時代の地層について推定されていたできごとが、現に海底で起こっているようすをありのまゝにとらえることができた点で日仏協力KAIKO-NANKAI計画の一環としても価値の高い成果である。
著者
小林 龍馬
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.157-191, 1987
著者
森垣 孝司 九郎丸 正道 金井 克晃 向山 満 本道 栄一 山田 純三 アグングプリヨノ スリハディ 林 良博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.773-779, s・iii-s・iv, 2001-07
被引用文献数
14

ジャワオオコウモリとコキクガシラコウモリの精上皮周期を光学顕微鏡下で観察し, 両種の精子形成における特徴を比較した. ジャワオオコウモリでは精上皮周期は11ステージに分類され, 精子形成は13ステップに区分されたのに対し, コキクガシラコウモリでは精上皮周期は10ステージに, 精子形成は13ステップに区分された. また, 形態にわずかな違いが見られるものの, 両極の先体の形成における特徴は非常によく似たものであった. ジャワオオコウモリではステップ7以降で先体が徐々に伸長, 扁平化し, 最終的にスコップ状の形になるのに対し, コキクガシラコウモリではステップ8以降に先体が伸長, 扁平化してわずかに退縮し, 精子放出直前には先体が細長いへらのような形になった. この両種で見られた先体の伸長と扁平化は食虫目の動物種でも認められており, この特徴は翼手目と食虫目の近縁性を反映するものだと推測された.