著者
岩井 一郎 桑原 智祐 平尾 哲二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.16-21, 2008
被引用文献数
3

近年, カルボニル化と呼ばれるタンパク質の変性が角層で知られるようになったが, 肌への影響は不明だった。本研究では「角層の透明度」に焦点を当て, 角層タンパク質カルボニル化の影響とその対応法について検討した。まず粘着テープで採取した角層タンパク質のカルボニル基を蛍光標識し, 画像解析により数値化する方法を開発し, 外界の影響を受けやすい露光部 (顔面) 角層, 角層表層部で角層カルボニル化レベルが高いこと, <i>in vitro</i> UV照射により角層タンパク質がカルボニル化することを示した。さらに, 頬部角層カルボニル化レベルの高い女性では, 視感判定による透明感が低いことを示した。これらより, 外界の影響による角層のカルボニル化が透明感低下の一因と考えられた。実際に角層を<i>in vitro</i>でカルボニル化処理すると角層は不透明に白濁した。さらにアミノ酸L-リジンは角層カルボニル化を抑制し, ヒト皮膚においてもカルボニル化による透明感の低下を抑制した。これらより, 外界の悪影響による角層タンパク質のカルボニル化をL-リジンによって防ぐことで, 角層透明度を保ち, 肌の透明感を向上させることができると考えられた。
著者
Blumer Harbert George 桑原 司 山口 健一
出版者
鹿児島大学
雑誌
経済学論集 (ISSN:03890104)
巻号頁・発行日
no.66, pp.41-55, 2006-11
被引用文献数
1
著者
桑原茂夫著
出版者
河出書房新社
巻号頁・発行日
2007
著者
桑原 昭徳
出版者
山口大学
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13468294)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-16, 2007-03-25

2006年の10月初旬、6ヵ月後には定年退職をむかえる60歳のC教諭の2年国語授業を参観した。これが授業を通してのC教諭との最初の出会いとなった。学級の児童は12名なのだが、授業が始まる前に、子どもたちは教室の時計やチャイムの音を気にもしなかった。開始定刻に着席できず、学習準備もできなかった。端的に言えば、「学習規律」が指導されていない学級であり、授業なのであった。学年が始まってすでに半年が経過しているというのに、授業の指導技術の中でも最も基本的な「遅刻・私語・忘れ物」が克服されていないのであった。国語授業のなかで物語文を学習するための「学習方法」は考慮されているのだが、発問が子どもに理解されづらい。無限定の発問であるので、子どもたちが応答しようのない場合があった。結果として、会話を中心として展開され、わかりやすい物語であるにもかかわらず、子どもたちが登場人物に同化しながら、考えたことをきちんと発表することができなかったし、子ども自身が「わかった」という実感が持ちづらい授業となった。第2回目のC教諭の授業の参観は、筆者から申し出て10月20日となった。最初の授業参観から数えて、14日後のことである。この日、3時間目の音楽と4時間目の算数を参観することになった。算数は、授業の始まりから15分間をC先生が指導して、桑原と校長先生が参観した。残りの30分間の授業は、同じ教材を用いて桑原が指導して、C先生と校長先生が参観した。授業が終了した直後の10分間、校長室でC先生に助言する時間を持った。第3回目のC先生の授業の参観は、11月16日午後から開催されるB小学校の他学年の授業研究の日の4時間目に、筆者がC教諭の授業参観を希望するという形で実現した。この日の授業の始め方は、従来の子ども達とは違っていた。C教諭が「10、9、8」と声をかけると、子どもたちは一斉に「7、6、5、4」とカウントダウンの声を続けた。「3、2、1、ゼロ」で終わると、今度は一斉に「日直さん、お願いします」と言った。すると、日直の子どもが前に出て「気をつけ、れい、お願いします」と合図の声を発した。この声に合わせて、子どもたち全員が11時30分の定刻に、緊張感とともに授業を始めることがで?きたのであった。学習内容は掛け算九九の「6の段」であり、「6の段」の練習活動が展開された。学習規律の定着とともに、子どもたちの授業への参加の度合いや集中力は、約40日の中で明らかに向上した。第3回目の研究協議と私の指導講話の最後、それは同時に私の参加したB小学校における3回にわたる公式の授業研究の最後でもあったのだが、私は次のようにC先生とB小学校の先生方に呼びかけた。「どうかC先生、3月下旬の終業式まで、授業改善をしつづけてほしい。ほかの先生方はC先生を支えてあげてほしい」とお願いするとともに、「C先生が退職をされる最後の日まで、良い授業をしようとして努力され、笑顔とともにお辞めになった」という風の便りが、いつの日にか、私の耳に届くことを楽しみしていると伝えた。
著者
桑原 和之 小島 紀行
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.53-59, 1993 (Released:2015-08-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

Red-necked Phalarope Phalaropus lobatus is a common spring and autumn migrant along the Japanese coast, and is also occasionally seen in small flocks inland. At about 9:00 PM on the night of September 13th, 1993, a flock of 100 Red-necked Phalarope strayed into Okoppe-cho Baseball Stadium (Monbetsu County, Eastern Hokkaido -44°28′N, 143°08′E). Presumably these birds had been attracted by the bright stadium lights (similar incidents have been recorded in the past for this species, but not during the last 20 years). The birds flew around the stadium, sometimes landing for brief intervals, for about 30 minutes before departing. Some of the birds crashed into the standium fence and were killed or injured. 6 of these were recovered as specimens to be measured and analyzed at the Natural History Museum and Institute. Chiba (specimen No. CBMZB1775-CBMZB1780). All of the recovered specimens were juveniles which had not yet molted into the 1st winter plumage. All specimens showed pale cream coloration from throat to breast, and diagnostic dark brown markings on the tertials. Juvenile feathers also remained on the mantle and wing-coverts. Observations at the stadium confirmed that no adults were present in the flock. Large flocks of Red-necked Phalarope, numbering from 1000-3600 individuals, are frequently observed during the spring migration period. These large flocks, however, are composed of adults, and flocks, however, are composed of adults, and flocks of juveniles number only in the low one-hundreds. This indicates that adults and juveniles migrate separately in spring. The data discussed here supports the contention that juveniles and adults also migrate separately in autumn, with juveniles leaving the breeding grounds later than adults. Unfortunately, age-composition data is not available for earlier incidents.
著者
阪 彩香 桑原 輝隆 イリス ヴィーツォレック
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2014-12 (Released:2014-12-17)

科学技術・学術政策研究所の大学ベンチマーキングシリーズの第2弾となる本調査資料は、この20年ほど研究論文において量的および質的な拡大を続けるドイツに焦点を当て、2つのアプローチから日本とドイツの研究活動の比較を行い、日本の大学システムの現在の状況や特徴を捉えた。アプローチ1は、組織レベルの大学システムの分析である。ドイツの個別大学の分野特徴や時系列での変化を把握した上で、日本とドイツの大学システムレベルでの構造の特徴を比較分析した。アプローチ2は、研究論文の責任著者に着目し、日本とドイツにおいて研究論文を生み出す研究活動を実質的にリードした研究者数を比較した。This research material in NISTEP University Research Benchmarking series reports the results of comparing the Japanese and German university systems based on scientific publications. We set Germany as a comparison country because Germany has expanded in research activities over these 20 years. This report consists of two parts. First, we developed the Research Activity Sheet of 68 German universities for analyzing their changing in characteristic and in time series, and identified the characteristics of the Japanese university system compared with Germany. Second, focused on corresponding authors in scientific publications, we also compared the number of corresponding authors in Japan and Germany.
著者
山口 惠三 大野 章 石井 良和 舘田 一博 岩田 守弘 神田 誠 辻尾 芳子 木元 宏弥 方山 揚誠 西村 正治 秋沢 宏次 保嶋 実 葛西 猛 木村 正彦 松田 啓子 林 右 三木 誠 中野渡 進 富永 眞琴 賀来 満夫 金光 敬二 國島 広之 中川 卓夫 櫻井 雅紀 塩谷 譲司 豊嶋 俊光 岡田 淳 杉田 暁大 伊藤 辰美 米山 彰子 諏訪部 章 山端 久美子 熊坂 一成 貝森 光大 中村 敏彦 川村 千鶴子 小池 和彦 木南 英紀 山田 俊幸 小栗 豊子 伊東 紘一 渡邊 清明 小林 芳夫 大竹 皓子 内田 幹 戸塚 恭一 村上 正巳 四方田 幸恵 高橋 綾子 岡本 英行 犬塚 和久 山崎 堅一郎 権田 秀雄 山下 峻徳 山口 育男 岡田 基 五十里 博美 黒澤 直美 藤本 佳則 石郷 潮美 浅野 裕子 森 三樹雄 叶 一乃 永野 栄子 影山 二三男 釋 悦子 菅野 治重 相原 雅典 源馬 均 上村 桂一 前崎 繁文 橋北 義一 堀井 俊伸 宮島 栄治 吉村 平 平岡 稔 住友 みどり 和田 英夫 山根 伸夫 馬場 尚志 家入 蒼生夫 一山 智 藤田 信一 岡 三喜男 二木 芳人 岡部 英俊 立脇 憲一 茂龍 邦彦 草野 展周 三原 栄一郎 能勢 資子 吉田 治義 山下 政宣 桑原 正雄 藤上 良寛 伏脇 猛司 日野田 裕治 田中 伸明 清水 章 田窪 孝行 日下部 正 岡崎 俊朗 高橋 伯夫 平城 均 益田 順一 浅井 浩次 河原 邦光 田港 朝彦 根ケ山 清 佐野 麗子 杉浦 哲朗 松尾 収二 小松 方 村瀬 光春 湯月 洋介 池田 紀男 山根 誠久 仲宗根 勇 相馬 正幸 山本 剛 相澤 久道 本田 順一 木下 承晧 河野 誠司 岡山 昭彦 影岡 武士 本郷 俊治 青木 洋介 宮之原 弘晃 濱崎 直孝 平松 和史 小野 順子 平潟 洋一 河野 茂 岡田 薫
出版者
日本抗生物質学術協議会
雑誌
The Japanese journal of antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.428-451, 2006-12-25
参考文献数
17
被引用文献数
37
著者
和久田 智靖 横倉 正倫 間賀田 泰寛 尾内 康臣 桑原 斉 山末 英典
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

統合失調症は、20歳代に発病する主要な精神疾患である。症状には陽性症状(幻覚妄想)、陰性症状(感情の平板化など)、認知機能障害(記憶力障害など)があり、陰性症状と認知機能障害に対する治療法は未だ確立されていない。喫煙(ニコチン)が統合失調症の陰性症状や認知機能障害を改善させるという報告を手掛かりに、本研究では、PETを用いて統合失調症者のニコチン受容体と活性化ミクログリア結合能を測定することで、新たな創薬標的を創出することを目指す。
著者
桑原 浩一 井上 舞 安本 早穂子 鳥巣 雄洋 野口 絵理香 久保 久美子 田丸 静香 永田 保夫 田中 一成
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.17-00053, (Released:2018-01-30)
参考文献数
24

食塩の代わりにクエン酸塩を用いて調製する魚肉の新たな加熱ゲル化方法を開発し,本方法で調製した加熱ゲルがラットの血圧や脂質濃度に及ぼす影響を検討した。新規または従来法で調製した加熱ゲルをAIN-76組成の食餌に添加した。新規加熱ゲルの摂取は,高血圧自然発症ラットの血圧上昇を抑制させた。また,調製方法に関わらず加熱ゲルの摂取は,血清コレステロールおよび肝臓トリグリセリド濃度を減少させ,肝臓の脂肪合成酵素活性を抑制させた。新規加熱ゲルは,血圧上昇抑制および脂質代謝改善作用を有することが明らかになった。
著者
桑原 司 山口 健一
出版者
九州地区国立大学間の連携に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 = The Joint Journal of the National Universities in Kyushu. Education and Humanities (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.No.14, 2013-10-01

この論文は「経済学論集」(第80号2013年p115-125)に掲載された論文を査読により加筆修正し、「九州地区国立大学教育系・文系研究論文集」Vol.1, No.1(2013/10)に採択されたものである。
著者
桑原 昌則 近藤 史明 濱田 知幸 高橋 純一 竹中 奈苗 吉本 光広 宮野 伊知郎 北岡 裕章 土居 義典
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.893-899, 2014 (Released:2015-07-13)
参考文献数
7

症例は独居の80歳, 女性. 2012年10月下旬, 全身倦怠感, 食欲不振を主訴に近医を受診し経過観察入院となった. 入院後, 末梢静脈からの点滴による治療等で経過をみていたが, 前医入院第13病日より意思の疎通が困難となり, 第17病日には収縮期血圧が60mmHgまで低下したため当院救急搬送となった. 来院時, 血圧84/47, 脈拍数119/分で, 意識レベルはE3V4M5であり, 集中治療室にて治療管理となった. 心エコーでは左室収縮能はほぼ正常であり, 心原性ショックは否定的と思われた. 動脈血液ガスで, pH 7.311とアシドーシスを認め, 乳酸も130mg/dLと高値であったためビタミンB1欠乏の可能性を考慮し, フルスルチアミン150mgの静注後, フルスルチアミンの持続点滴を開始した. 入院翌日には血圧は安定し, 意識レベルも改善した. 後日, ビタミン投与前のビタミンB1値が8ng/mLと著明な低値であることが判明した. 第2病日から第6病日までフルスルチアミン50mg/日の持続点滴を行い, 第7病日よりフルスルチアミン100mg/日の内服投与により, 血圧, 意識レベルは安定して経過した. 今回, 独居の高齢女性で, ビタミンB1欠乏によるショック, 意識障害をきたした症例を経験したので報告する.
著者
木庭 顕 桑原 朝子 松原 健太郎 中林 真幸 山本 隆司 加毛 明 金子 敬明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

昨年度に予告したとおり本年度は公共団体の問題に活動を集中した。その集大成は3月にKinch HoekstraとLuca Ioriを迎えて行われた「ホッブズとトゥーキュディデス」に関する研究会であり、事実上の締めくくりとなるに相応しい濃厚な二日間であった。つまり古典古代と近代をまたぎ、また国際間の衝突もテーマであったから国家間の問題、近代国家共存体制外の地域の問題、をも視野に入れた。ホッブズはまさに枢要な交点である。そのポイントで、公共団体立ち上げの条件を探った。ゲスト二人の報告は或る雑誌に翻訳して発表の予定である。また、研究代表者自身、この研究会に至る中で同時並行して一本の論文をまとめ、『国家学会雑誌』に発表した。後者は、このプロジェクトが深くかかわってきた法人理論がホッブズにとって有した意義をも論ずるものである。また、ともに、自生的な団体と深く関係するメカニズムである互酬性を、そのメカニズムの極限的なフェイズをホッブズがいかに利用しつつ克服するか、を追跡した。こうした考えをホッブズはトゥーキュディデス読解を通じて獲得した。彼が同じく翻訳したホメーロスを含め、ギリシャの社会人類学的洞察をバネにしたことになる。こうした見通しは、本研究会が遂行してきた広い比較史的視野を有して初めて持つことが可能になる。その意味では、今回の成果は、公共団体をターゲットとしてきた本年度の活動のみならず、全期間の活動の凝縮点である。付言すれば、教育目的ながら野心的な内容を含む拙著『現代日本公法の基礎を問う』も同一の軌道を回る惑星である。
著者
桑原 隲蔵
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-62, 1924-07
著者
"シブタニ タモツ 木原 綾香 奥田 真悟 桑原 司"
出版者
鹿児島大学
雑誌
Discussion papers in economics and sociology (ISSN:1347085X)
巻号頁・発行日
vol.1301, (Released:2016-10-28)

"タモツ・シブタニ著, 木原綾香, 奥田真悟, 桑原司訳"
著者
北谷 秀樹 梶本 照穂 河野 美幸 小沼 邦男 野崎 外茂次 桑原 正樹
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.884-890, 1996-10-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
16

小児の包茎への対応には,社会・文化的背景も考慮に入れる必要がある.そこで小児の包茎の治療指針の一助にする目的で男児をもつ父母の意識調査を行った.対象は当科関連の産院で男児を出産した1466家族で,封書によるアンケート方式で行った.また,当大学病院の看護婦330名にも同様のアンケートを行った.質問内容は,どのような状態を包茎と考えるか,どんな害があると考えているか,どのように対処したのか等に加え父親自身の体験も聞いた.その結果,父母からは420通の回答(有効回答率 : 31.5%)を,看護婦からは98%の回答を得た.回答者の3分の2は真性包茎の状態を包茎と考えていた.また包茎の害は不潔,亀頭包皮炎,早漏の原因,結婚生活の支障,等が多数を占めたが,その認識には父親,母親,看護婦の間で違いが見られた.父親の50%が中学生の頃に,25%が高校生の頃に亀頭が露出するものだと思っていた.父親の33%がかつて自分が包茎ではないかと悩んだことがあり,その平均年齢は15.2歳であった.この調査の結果から,亀頭の露出時期には個人差が大きく,多くは中学生頃から始まるものと推察される.従って,小児の包茎が病的か正常範囲内かの判定は思春期以降に行われるべきで,幼小児期の手術適応は一定の臨床症状のあるものに限るべきであるとおもわれる.今後,社会的な面を含めた検討が必要である.
著者
黒田 藍 村山 洋史 黒谷 佳代 福田 吉治 桑原 恵介
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.284-296, 2022-04-15 (Released:2022-04-26)
参考文献数
35

目的 孤立や孤独を防ぎ,かつ食事を確保する方策として食支援活動が行われてきたが,その実践に関する学術的知見は乏しい。本稿では,住民がボランティアで食支援活動を行う地域食堂のコロナ下での活動プロセスを記述し,地域食堂の活動継続が利用者や住民ボランティアにもたらした効果について予備的に検証することを目的とした。方法 本研究は東京都内の独居高齢者が多く居住する大規模団地にて,飲食店と同水準の食品衛生管理体制のもと運営されている地域食堂「たてキッチン“さくら”」で筆頭著者が実施するアクションリサーチの一部である。2020年2月から同年5月までの地域食堂の活動を報告対象とした。活動プロセスは運営の活動記録,運営メンバーと住民との対話記録,活動時の画像記録を用いて記述した。地域食堂の利用住民10人と住民ボランティア6人との対話記録をKJ法に基づき分類し,彼らが認識する地域食堂の活動継続がもたらした効果を評価した。活動内容 対象期間中に地域食堂の役員や住民ボランティアは定期的に会議等を行い,市民向け新型コロナウイルス感染症対策ガイドや保健医療専門職の助言,利用者の意見等を参考にしながら,運営形態の検討と修正を続けた。結果として,地域食堂は高齢住民ボランティアが中心となって住民の食と健康を守るために週5日の営業を継続した。店頭の販売個数は形態変更に伴い5月に半減した一方(2020年2月4,670個,同5月2,149個),各戸への配食数は需要の増加に伴い3月以降増加した(2020年2月301個,同5月492個)。事後評価の結果,地域食堂の新型コロナウイルス感染症対策は外食業の事業継続のためのガイドラインを遵守していた。活動継続の効果として,地域食堂利用者では〈食の確保〉,〈人とのつながり〉,〈健康維持増進〉の3つのカテゴリー,住民ボランティアでは〈社会とのつながり〉,〈健康維持増進〉の2つのカテゴリーが抽出された。結論 住民ボランティアが,住民の食と健康を守るとの活動理念を確認しながら,新型コロナウイルス感染症の対策情報等を参照し,ステークホルダーを巻き込み,一般に求められる水準の感染症対策を取り入れて食支援活動を継続していた。この取組継続は,住民の食確保や健康支援に加え,住民同士のつながり維持に役立ったことが示唆された。
著者
泉 千尋 藤森 一真 金森 貴洋 桑原 洋平 西谷 彰紘 鈴木 学 菅原 誠一 太田 真之 佐藤 宏行 林 健太郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.173-182, 2021-12-23 (Released:2021-12-24)
参考文献数
11

心房性頻脈性不整脈(AT/AF)のburdenを減少させる機能として,第2世代心房抗頻拍ペーシング(A-ATP)の有用性が報告されているが,導入後に治療が有効となる症例の特徴は明らかでない.そこでわれわれは,A-ATP(Reactive ATP, メドトロニック社製)作動症例22名の患者背景,心内心電図,12誘導心電図,エコー所見,BNPから治療が有効となる因子を検討した.AT/AF burdenの50%以上減少をA-ATP有効と定義し, AT/AF burden<5%の症例とAT/AFのエピソードが1件のみの症例は治療有効性の判断が困難なため,10名を除外した.有効群(5名)は無効群(7名)と比較して,心内AT/AF average tachycardia cycle length(AvCL)>300ms(28.6% vs 5.2%,p<0.05)および規則的なAT/AF(71.9% vs 48.5%,p<0.05)が多く,AT/AFに対するカテーテルアブレーション(CA)またはMaze手術既往が多かった(80% vs 14%,p<0.02).また,12誘導心電図において有効群はf波のCLが無効群より延長していた(220.5ms vs 141.4ms,p<0.05).A-ATPは延長したAT/AF AvCL,または規則的なAT/AF症例で有効であり,CAやMaze手術の既往,12誘導心電図のf波CL延長が植込み前に観察可能な有効性の予測因子として有用な可能性がある.
著者
宮田 翔平 赤司 泰義 林 鍾衍 呉 楊駿 田中 勝彦 田中 覚 桑原 康浩
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.257, pp.11-20, 2018-08-05 (Released:2019-08-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2

建築物の熱源システムにおいて,設計性能を発揮できなくなる要因である不具合を明らかにする不具合検知・診断は非常に重要である。本研究は物理モデルと機械学習により熱源システムの不具合検知・診断を行うことを目的とする。本報では未知の不具合を有する熱源システムを対象として,機械学習の一手法である畳み込みニューラルネットワークによる不具合検知・診断を試みた。そのための学習・テストデータとしては,該当システムに対する詳細なシミュレーションにより 6 種類の不具合状態を再現し,適切なラベルをもつように作成されたデータベースを利用した。十分な学習データ量を用いることで高い精度で検知・診断できることを確認した。