著者
高橋 徹 清水 裕子 井上 一由 森松 博史 楳田 佳奈 大森 恵美子 赤木 玲子 森田 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.252-256, 2007-10-01
被引用文献数
9

昨今の生命科学の進歩は薬理学の研究をより病態に応じた新薬の開発へと向かわせている.しかし,肝不全,腎不全,多臓器不全など,急性臓器不全は高い死亡率を示すにもかかわらず,その治療において決め手となる薬物は未だ開発されていない.これら急性臓器不全の組織障害の病態生理は完全に明らかでないが,好中球の活性化や虚血・再潅流にともなう酸化ストレスによる細胞傷害が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはヘムタンパク質からヘムを遊離させる.遊離ヘムは脂溶性の鉄であることから,活性酸素生成を促進して細胞傷害を悪化させる.この侵襲に対抗するために,ヘム分解の律速酵素:Heme Oxygenase-1(HO-1)が細胞内に誘導される.HO-1によるヘム分解反応産物である一酸化炭素,胆汁色素には,抗炎症・抗酸化作用がある.したがって,遊離ヘム介在性酸化ストレスよって誘導されたHO-1は酸化促進剤である遊離ヘムを除去するのみならず,これらの代謝産物の作用を介して細胞保護的に機能する.一方,HO-1の発現抑制やHO活性の阻害は酸化ストレスによる組織障害を悪化させる.この,HO-1の細胞保護作用に着目して,HO-1誘導を酸化ストレスによる組織障害の治療に応用する試みがなされている.本稿では,急性臓器不全モデルにおいて障害臓器に誘導されたHO-1が,遊離ヘム介在性酸化ストレスから組織を保護するのに必須の役割を果たしていることを述べる.また,抗炎症性サイトカイン:インターロイキン11,塩化スズ,グルタミンがそれぞれ,肝臓,腎臓,下部腸管特異的にHO-1を誘導し,これら組織特異的に誘導されたHO-1が標的臓器の保護・回復に重要な役割を果たしていることを示す.HO-1誘導剤の開発は急性臓器不全の新しい治療薬となる可能性を秘めている.<br>
著者
布目 光生 鈴木 優 森田 眞弘
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.6, pp.1-7, 2011-03-21

電子書籍を音声合成で読み上げる場合に,文書の書式特徴を活用してより聞きやすい朗読を実現するテキスト前処理手段を提案する.文を処理の基本単位とする従来の発話手法では困難な,タイトルや箇条書きと本文を区別したような読み方や,文書全体の構成や流れを考慮したような,自然な読み上げの実現を目指す.今回,具体的なアプローチとして,入力文書テキストの特徴量として論理構造をはじめとする抽出手段と,特にポーズ情報に関連したメタデータの推定手段,そして,音声合成エンジンへ提供するための XML 化,という一連のテキスト処理機能の試作と,ポーズ情報の付与精度評価を行った.本報告では,これらの手法と評価実験結果について述べる.We conduct feasibility studies for the development of a text preprocessing technique that uses document formatting features for improved natural speech synthesis with the aim of targeting e-book readers. In traditional text-to-speech (TTS) systems, it is difficult to implement a feature by which the different document elements such as the document body, title, and itemized forms are read in a suitable tone. We implement certain functionalities, namely a sentence characteristics extractor that determines the logical nature of a document element, a metadata estimator that generates pause information, and a transformer that converts these results to speech synthesis markup language, which a TTS system can process. Details about these processes and experimental results of a simple implementation of pause estimation are described in this report.
著者
領家 由希 森田 直子 中島 正洋
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.250-252, 2006-09

1945年8月9日,長崎にプルトニウム型原子爆弾が投下され多くの犠牲者が出た。原爆の放射線が人体に及ぼす影響を示すものとしてDS86やDS02という線量推定方式があるが,放射能に汚染された食料を摂取することなどで生じる人体放射能の影響については現在でも厳密な評価が難しいとされている。目的は長崎原爆被爆者の米国返還試料であるホルマリン固定臓器とパラフィンブロックを用いて,原爆放射線が人体に及ぼす内部被ばくの影響を病理学的に検討することであり,今回はその一環として,急性被爆症例における内部放射能の検出法について検討した。米国返還資料は被爆直後,アメリカと日本の科学者によって被爆者の病理標本や記録などが収集されたが,米軍によってアメリカに送られ日本にはほとんどのこらなかった。しかし,1973年,約2000点の資料が返還され,現在,長崎大学原研2号館に保存されている。その中に,旧大村海軍病院の剖検例5例のホルマリン固定臓器とプロトコールを見つけることができた。
著者
森田 健夫 山口 満 田所 嘉昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.2271-2279, 2004-12-01
被引用文献数
19

自動採譜の実現において,音楽信号の音高を推定する処理は最も重要であり,リアルタイムでの処 理が望まれている.本論文では,多重唱を対象とした計算量の少ない音高推定法を提案する.提案法は,1オクターブ12音名に対応するくし形フィルタを並列接続したシステムと,その出力値を利用することで音高を推定する.これは,くし形フィルタが対応する音の全周波成分を除去可能であること,更に,上述のシステムの最小出力を検出することで,入力中の1音を推定できることに基づいており,加減算主体の処理で簡単に実現される.実際の多重音を用いた評価実験を行った結果,従来法(トリー法,SVD法)より,約1/5から1/30の処理時間でほぼ同等の音高推定結果が得られた.
著者
須田 力 河口 明人 森田 勲
出版者
北海道大学大学院教育学研究科
雑誌
北海道大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13457543)
巻号頁・発行日
no.97, pp.1-25, 2005

豪雪地住民の冬季の身体活動の実態を明らかにし在宅での自発的なトレーニングによる体力の変化を検討するため,豪雪地帯の栗沢町,特別豪雪地帯の三笠市および士別市の中高年者を対象に,運動実施記録による調査(三笠市および士別市),無雪期及び積雪期の生活における身体活動の強度測定(三笠市),降雪始めと降雪終了期の2回の体力測定(3地域)を行った結果,⑴除雪の運動時間が歩行を上回ること,⑵無雪期の畑仕事,歩行,積雪期の歩行よりも除雪の運動強度が酸素摂取量,心拍数とも高いこと,⑶降雪始めに対して降雪終了期には男女共6分間歩行において有意な向上を示し,全般的に体力が向上したものの血圧値が増加傾向を示すなど,豪雪地域特有の特徴が浮き彫りにされた。これらの結果から,冬季間は運動不足により体力が低下するという問題が必ずしも妥当しない現実と除雪の効果と問題点を考慮した運動指導の必要性が明らかとなった。
著者
杉山 あかし 直野 章子 波潟 剛 神原 直幸 森田 均
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、テレビ放送を、個別の番組としてではなく、われわれが生きている環境を形作るものとして捉え、この環境の分析を行うことを目的としている。具体的主題は、「戦争と原爆の記憶」である。わが国では例年、8月前半に満州事変から第二次世界大戦に到る戦争についての特集番組が多く組まれ、人々の戦争観の形成に大きく寄与している。8月前半、1日~15日の地上波アナログの全テレビ放送を録画・内容分析し、現代日本における戦争・原爆に関するメディア・ランドスケープを明らかにする。本年度は、H.19年度、H.20年度に録画記録したデータを分析する作業を行なった。分析結果の一端として数量的分析によって得られた知見を以下に列挙する。(1)登場人物は日本人と推定される者がH.19年で89.7%、H. 20年で81.1%。これに対し連合国(アジア地域を除く)側と推定された者がそれぞれ9.4%、15.9%であった。朝鮮(当時地域名)・中国、その他の日本占領地を含むアジア地域の者はそれぞれ1%以下、2%以下と、ごく少ない。(2)日本人の描かれ方は、H.19年で74.0%、H.20年で52.8%が被害者として描かれており、加害者としての取り上げはそれぞれ8.1%、7.4%であった。(3)日本人が被害者として描かれる比率はかなり大きく変動しているが、これは描写の仕方が変化したためではなく、北京オリンピックの放送編成に対する影響であったと考えられる。ワイドショーはオリンピック一色であり、ドラマについては、この期間、特集的なものはほとんど放送されなかった。結果としてH. 20年に当該戦争を描いた番組は、ほとんどドキュメンタリー形式の番組であり、ドキュメンタリーで比較すれば、H.19年とH.20年で日本人の描かれ方(被害者的/加害者的)に大きな差はなかった。
著者
飯島 千絵 森田 武史 榎本 善太郎 山口 高平
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

近年,Linked Dataが情報流通基盤として注目されている.しかし,日本語に対応したLinked Dataは少なく,情報サービスへの適用方法は十分に研究されていない.本研究では,地理・位置データを中心として,高速道路,飲食店,交通規制,イベント,口コミ,天気など,様々なデータについて,更新性を考慮した日本語Linked Data構築方法およびそれらを利用したモビリティサービスを提案する.
著者
伊勢 雄也 森田 達也 前堀 直美 轡 基治 塩川 満 木澤 義之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.213-218, 2010 (Released:2010-08-13)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

現在, 麻薬及び向精神薬取締法施行規則が改正され, 麻薬小売業者間での麻薬の譲渡/譲受が可能となったが, その制度の問題点については明らかにされていない.本研究は, この制度の普及と運用上の障害を明らかにすることを目的として行われた. 全国3,000施設の薬局の薬剤師に対して質問紙による郵送調査を行い, 1,036施設より回答を得た. 麻薬小売業者間譲渡許可免許を取得することにより麻薬が取り扱いやすくなる, またはなったと回答した施設は全体の20.2%であった. 取り扱いやすくならない, またはならなかった理由として, 手続きの煩雑さに関する問題のほかに, 麻薬の譲渡/譲受の規制についての問題点が挙げられた. 以上の結果より, がん患者の除痛を適切に地域で行えるよう薬局が機能するためには, 他の医薬品と同じように「医薬品販売業者への返品を可能にする」, または「備蓄薬局からの継続的な譲渡を可能にする」などが必要であることが示唆された. Palliat Care Res 2010; 5(2): 213-218
著者
森田 邦久
出版者
大阪大学
雑誌
待兼山論叢. 哲学篇 (ISSN:03874818)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.21-31, 2005-12-25
著者
森田 哲夫 吉田 朗 杉田 浩 小島 浩 馬場 剛
出版者
群馬工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

交通、土地利用、民生等の分野における多様な施策が都市活動に与える影響を予測し、都市活動の変化が環境、生活の質、経済に与える効果を多面的に定量評価する統合型のモデルシステムを開発した。本研究では、全体モデルシステムの要素モデルである水環境評価モデルと生活の質評価モデルを改良し、全体システムに組み込むことにより、都市環境施策が水環境、生活の質に与える影響についてケーススタディを行った。
著者
森田 優己
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.65-77, 2003-03-31

グローバル経済化の進展によって,地方の公共交通は危機に瀕している。規制緩和政策の下,交通事業者の撤退をはばむものはなく,国民の交通権を守るべき国は後景に退き,その役割は,地方自治体に重くのしかかっている。地方自治体には,地域住民の交通権を守るべく,地域特性に応じた対応策をたてることが期待される。しかし,地方自治体には,地域交通政策の立案・実施に必要な権限も財源もないのである。このような状況下において,鉄道の活用を地域交通政策の柱として位置づけたのが,北勢線沿線自治体である。本稿では,近鉄による北勢線廃止の申し出から地方自治体による存続決定に至る過程を検証することによって,グローバル経済下における地方自治体の地域交通政策の課題を整理した。
著者
森田 一三
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.688-706, 1996-10-30
参考文献数
34
被引用文献数
16

80,70,60歳世代の者について保有歯数に影響を及ぼす過去の食事・生活習慣や口腔の状況について世代別に調査検討を行った。80歳世代については愛知県常滑市における8020調査,70,60歳世代については岐阜県山岡町における住民歯科健康診査の合計319名を調査対象とした。その結果,80,70および60歳世代のいずれも共通して影響するものと,世代ごとに影響が異なる因子に分けられた。すなわち80,70,60歳世代に共通して保有歯数に影響していたものは,男性の小学生時の「母親のしつけ」,20歳時の「甘味嗜好」,40歳時の「歯肉出血」,60歳時の「歯肉腫脹」,「歯磨回数」,女性の40歳時の「歯肉腫脹」,60歳時の「歯肉腫脹」であった。一方,世代で変化するものとして,男性では20歳時の「歯肉出血」,40歳時の「間食回数」,「かかりつけの歯科医院」が80歳世代に比べ70,60歳世代への影響が大きく,40歳時の「歯磨回数」が60歳世代に比べ80,70歳世代への影響が大きかった。また,女性では小学生時の「歯磨回数」が60歳世代に比べ80,70歳世代への影響が大きく,60歳時の「甘味嗜好」が80歳世代に比べ70,60歳世代への影響が大きくなっていた。
著者
森田 直子 高村 昇 工藤 崇
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本課題研究期間において、小型加速度・温度・心電図感知機能に線量モニタリングを搭載したの個人用モニタリングセンサーの開発を行い、システム構築を完成させた。このモニタリングセンサーを用いて、2011年3月11日発生した東北地方太平洋沖地震に端を発して発生した福島第一原子力発電所事故における本学からの救援活動の際、現地で活動した本学から派遣の医療関係者の生体情報管理に応用した。また、本学内に設置の精密型ホールボディ-カウンターを用いて、福島に滞在した長崎からの派遣者の内部被ばくを測定した。特に、事故後初期に測定した被験者からは、短半減期のヨウ素-131をはじめ、ヨウ素-132やテルル-132も検出され、初期の段階での内部被ばくの状況を判断するための非常に重要な結果が得られた。
著者
馬場 二夫 森田 茂 杉田 たき子 石綿 肇
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.51-53, 1995-10-01

陶磁器製の食器からの鉛とカドミウムの溶出濃度の調査と,アメリカ食品医薬局(FDA)により提案された鉛の規制値案への適合率を調べる目的で,以下の実験を行った.溶出条件は,わが国の現行試験法(国際標準化機構,ISO,でもほぼ同一条件)である4%酢酸を用いて25℃で24時間の条件で実験をおこなった.鉛およびカドミウムの測定はICPによった.実験に用いた83種の市販試料のうち,鉛の溶出は44試料で,また,カドミウムの溶出は26試料で認められた.試料内側(食品と接触する面)から溶出した鉛の平均値±S.D.,最高値,最低値はそれぞれ0.48±1.32, 8.78, 0.00 μg/cm^2であった.カドミウムでは,それぞれ0.01±0.03, 0.25, 0.00 μg/cm^2であった.鉛の溶出は,ゆう薬のある54試料中16試料で,また,ゆう薬の無い29試料全てで認められた.平均値は,前者で0.04±0.18 μg/cm^2,後者では1.28±2.00 μg/cm^2であった.カドミウムの溶出は,ゆう薬のある54試料中9試料で,また,ゆう薬の無い29試料中17試料で認められた.平均値は,前者で0.00±0.01 μg/cm^2,後者では0.03±0.05 μg/cm^2であった.本実験に用いた83試料中1試料で規格値(抽出液中5 ppm)を超える7.37 ppmの鉛が溶出した.これらの結果は,約20年前に同一溶出条件の下で行われた調査結果と比べ,1/10またはそれ以下であった.以上の結果を,わが国の現行規格(ISOの規格案も同じ)に従って分類してTable 3に示した.違反事例の1試料を除き,最高値でも規格値よりかなり低濃度であった.また,深さが2.5cmを超える73試料のうち57試料(78%)では鉛の溶出がFDAの規格案である0.1 ppm以下であった。