著者
大森 佐和
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1_80-1_108, 2017 (Released:2020-07-01)
参考文献数
37

本稿は, 世界金融危機以後になされた国際通貨基金 (IMF) の融資プログラムの改革を踏まえ, IMF加盟国における融資プログラムに関する米国の影響力が, 世界金融危機の前と後で変化したか否かを1992-2015年のIMF加盟国のデータベースを用い計量的に分析することを目的としている。分析の結果から, 世界金融危機前には, 米国はIMF融資プログラムの承認に有意な影響を与えていることが従来の先行研究通り示されたが, 世界金融危機後には, こうした米国の影響は顕著に減少したことが明らかとなった。また, 日本が米国から独立してIMF融資プログラムの承認に与える影響は, 世界金融危機前の期間のアジア地域においてのみ認められた。従って, IMFが世界金融危機以降に行ってきた改革は, 全ての加盟国を公平に扱うべきであるというIMFに対する批判に応える方向で変化するものとなっていると思われる。しかし, このようなIMF改革の努力の成果が, 米国の新大統領のもとでも継続するか, 今後引き続き検討が必要である。
著者
森 智也 高瀬 英希 高木 一義 高木 直史
雑誌
研究報告システムとLSIの設計技術(SLDM) (ISSN:21888639)
巻号頁・発行日
vol.2018-SLDM-183, no.27, pp.1-6, 2018-02-28

我々は,Linux を搭載できない消費電力の小さな組込みデバイスのための ROS ノード軽量実行環境である mROS の開発に取り組んでいる.本研究では,mROS におけるデバイス内のノード間通信を高速化する手法を提案する.従来の TCP ソケットを使用したデバイス内ノード間通信は効率が悪いため,タスク間で共有メモリを介したデータ通信を実現する.mROS 内のノード間通信を効率化することで,エッジデバイスにおける処理の高速化が実現できる.提案手法を mROS に実装し,ノード間通信時間について評価することで,提案手法の有効性を示した.さらに本稿では,分散ロボットシステムの開発事例を示し,mROS の有用性を考察した.
著者
佐藤 みほ香 杉本 恵子 森嶋 琢真 伊藤 マモル
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = 法政大学スポーツ研究センター紀要 (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
no.36, pp.55-58, 2018-03-31

本研究は,大学野球選手における24 時間のエネルギー消費量をポジション別に検討することを目的とした。大学野球選手4 名(外野手,内野手,捕手,投手)を対象に,生活時間調査法を用いて生活活動(起床時から就寝時まで)および練習中におけるエネルギー消費量を算出した。エネルギー消費量の計算式にはWeir 1949. を用いた。その結果,24 時間のエネルギー消費量は投手(3449 kcal),捕手(3229 kcal),外野手(3156 kcal),内野手(2842 kcal)の順に高値を示した。以上の結果は,大学野球選手における 24 時間のエネルギー消費量はポジションで異なることを示すものである。したがって本研究から得られた知見は,野球選手の練習前後におけるエネルギー摂取を考える際には,ポジションの差を考慮する必要性があることを新たに示唆するものである。
著者
花之内 健仁 松岡 連太郎 青木 僚汰 森田 崇裕 境 慎司
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.88, no.907, pp.21-00151, 2022 (Released:2022-03-25)
参考文献数
12

Ultrasound transmission gel has been normally used as a material fills the gap between the transducer of the ultrasound and patient’s skin. Alternatively, however, it can be used as a trial bioink for the 3D bio-printer, which is identified as one material for checking its printability at the preliminary phase. The purpose of this study was to clarify whether the ultrasound transmission gel can be used as the trial bioink. For this purpose, we investigated the viscosity of some kinds of the ultrasound transmission gel, and compared with commercially available one. And also we measured the width of the printed lines with the ultrasound transmission gel in comparison with the perspective width. According to our results, we concluded that the ultrasound transmission gel can be used as the trial bioink as long as selecting appropriate viscosity type.
著者
森下 綾子 谷口 裕子 滝野 長平 大滝 倫子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.5, pp.1027-1032, 2010-04-20 (Released:2014-11-28)

32名の疥癬患者に対し,輸入したペルメトリンクリームを用いて治療した(9名の予防投与を含む).19名の疥癬患者は,ペルメトリンクリーム単独で治療を行い,1週間間隔で2回,頸部より下の全身に塗布,乳幼児では頭頸部を含め全身に塗布したところ,全例で治癒した.高齢者,角化型疥癬,プレドニゾロン内服などの難治が予測される4名の疥癬患者に対し,ペルメトリンクリームをイベルメクチンと併用して用いた.このうち3名はペルメトリンクリーム2回塗布で治癒したが,角化型疥癬の1名は3回塗布にて治癒した.角化型疥癬患者と密な接触機会があるため予防的にペルメトリンクリーム塗布を行った患者9名は,1回塗布し,6カ月以上発症せず予防効果を得た.32例全例で接触皮膚炎などの副作用は認められなかった.血液学的検査では検査を行った5症例については,塗布前後で肝機能障害,腎機能障害などは認められなかった.ペルメトリンクリームは高い殺虫効果を持つばかりでなく,毒性が低いため,妊婦,授乳婦,生後2カ月以上の乳幼児にも使用できる外用薬であり,本邦でも早期に認可されることが望まれる.
著者
中崎 公隆 諸橋 環 清水 翔一 河村 研吾 高橋 昌里 森岡 一朗
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.cr.2019.0164, (Released:2020-07-17)
参考文献数
11

症例は 9 歳男子.腹痛発作を主訴に受診し,左腎に高度の水腎症を認めた.当初無機能腎として腎摘出術も検討されたが,腎実質障害は可逆性と判断し腎盂形成術を実施したところ,著明な腎機能の改善が得られた.高度な水腎症で検査上無機能と判断される場合でも,不可逆性の組織変化を来す病態以外では腎温存術を検討する必要がある.
著者
磯 直樹 香川 めい 北村 紗衣 笹島 秀晃 藤本 一男 藤原 翔 平石 貴士 森 薫 渡部 宏樹 知念 渉
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、現代日本における文化と不平等の関係を、「文化がもたらす不平等」と「文化へのアクセスの不平等」という観点から、理論的かつ経験的に社会学の観点から分析する。すなわち、①文化が原因となる不平等とは何か、②文化資源の不平等な配分とは何か、という2種類の問題を扱う。これらの問題を研究するために、理論的には社会分化論として文化資本概念を展開させる。社会調査としては、関東地方で郵送調査とインタビュー調査を実施し、調査で収集されるデータを、多重対応分析の特性を活かした混合研究法によって分析する。
著者
高橋 正通 柴崎 一樹 仲摩 栄一郎 石塚 森吉 太田 誠一
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.51-59, 2020-06-25 (Released:2020-07-14)
参考文献数
58
被引用文献数
1

砂漠化防止や気候変動緩和のため乾燥地での植林活動が続けられている。乾燥地・半乾燥地土壌の保水性を高め,苗木の活着や成長を促すため,高吸水性高分子樹脂(superabsorbent polymer,SAP)が土壌改良に利用される。本総説ではSAPを添加した土壌の物理性,化学性,生物性を中心に基礎的知見をとりまとめ,効果的な使い方を考察する。SAP添加土壌は以下のような特徴がある。1)SAPによる保水量の増加は土性の影響が顕著で,埴質な土壌より砂質の土壌の方が保水量は増える。2)SAP添加土壌の水ポテンシャルはpF 2.5以下の水分が主で,永久萎凋点pF 4.2以上で保水される量は少ない。3)吸水と排水過程で大きなヒステリシスが認められ,排水過程の方が保水量は多い。4)塩類濃度の高い水には吸水性能が発揮できない。5)ち密な土壌に粒径の大きな膨潤したSAPを入れると,粗孔隙が増加する。6)SAPの吸水・膨潤時には粗孔隙が塞がれ,一般に透水性は低下する。7)SAPのイオン交換容量(CEC)は大きく,砂質土壌のCEC増加につながる。8)SAP施用により土壌が湿潤になり微生物バイオマスが増加する。9)施用SAPによる環境汚染の影響は小さい。以上のような特性から乾燥地においてSAPを有効に使うには,土壌の塩分が比較的少なく,砂質または粗孔隙の大きな礫質の土壌への施用が推奨される。通常,せき悪土壌は貧栄養なため,肥料と併用するには,SAPの適切な施用位置などの検討が必要である。
著者
伊坪 徳宏 井伊 亮太 森元 愛和 堀口 健 安井 基晃
出版者
日本LCA学会
雑誌
日本LCA学会誌 (ISSN:18802761)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.200-212, 2012 (Released:2015-05-09)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

Objective. Interests in the environmental assessment for events are increasing rapidly. Total emission of carbon dioxide have assessed in several large-scale events such as G8 summit in Toya lake, FIFA world cup in Germany and winter Olympic in Torino to perform carbon offset. The authors raised the several problems in the previous studies and carried out LCCO2 for Tokyo marathon. The result of this study proved that the expansion of the scope of LCA was critically important, because many types of products used in the event such as stands, temporary lavatory, fence, commemorative products influenced the total amount of CO2 emission.Materials and Methods. In the case of exhibitions, the collection of fundamental data might be harder than the case of the other types of event, because investigators have to contact a number of related people such as exhibitors, guests, organizer and representatives of event hall. Various types of products like creations, exhibits, equipment, and distribution media have to be covered in environmental assessment. This study evaluated total CO2 emission for “Eco-products 2010”. Inventory database was prepared in advance. The transition of CO2 emission was evaluated with the comparison with the calculated results for the past two years.Results and Discussion. Inventory analysis was carried out using CO2 intensities (i.e. CO2-kg/kg, CO2-kg/kWh, CO2-kg/1Million Japanese Yen) and activities units (e.g. kg, kWh, JY). CO2 intensities which involve direct and indirect CO2 emissions were prepared using input output analysis. All of the activities units were obtained by questionnaire to organizer, guests, and exhibitors. The total amount of CO2 emission including direct and indirect emissions was calculated as 4,610 ton. The environmental burdens of exhibitors occupied a half of total amounts. Creations, rental goods, staff’s activities and distribution media were key items which influence CO2 emissions emitted by exhibitors. The contribution of guests used by participants exceeded 40% of total emission. Most of this amounts come from transportation. The emissions from organizer and event site were relatively small. The transitions of CO2 emissions were depending on the related groups. Classification of total emission to each group would facilitate to understand their environmental performance and support the reduction of CO2 emissions by themselves.Conclusions. LCA for large-scale exhibition was carried out using CO2 intensity given by input output analysis. This approach enabled us to obtain the calculated result quickly. Temporary result was released to the public on the day of the event. Final result was obtained after the fixed data were provided to the practitioners. Through this process, it became possible to share environmental information among various stakeholders like guests and organizer effectively.
著者
大屋 友紀子 中村 眞須美 田畑 絵美 森園 亮 森 祥子 木室 ゆかり 堀川 悦夫
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.308-314, 2008 (Released:2008-07-14)
参考文献数
30
被引用文献数
12 11

目的:地域在住高齢者を対象とし,転倒,つまずき,ふらつきの既往の有無と下肢筋力測定を含む各種の易転倒性検査との関連性を分析することにより,易転倒性の新たな指標を模索し,より効果的な転倒予防の対策を検討する.方法:被験者は地域在住高齢者102名で,問診に加え,転倒リスクを評価する5つのパフォーマンステストを実施した.さらに,膝伸展筋力を測定し,時系列解析,周波数解析を行った.結果:転倒の既往を有する者(転倒群)は,非転倒群に比してつまずき(p<0.001),ふらつき(p=0.002)の既往歴がそれぞれ有意に多かった.周波数解析の結果では,転倒群では非転倒群に比して,有意に中心周波数が低く(p=0.025),より高周波成分が少ない波形(p=0.035)を示していた.また,時系列データの解析結果から,転倒群は非転倒群よりも最大筋力に至るピーク潜時が長かった.結論:転倒群は非転倒群に比して,膝伸展筋力のピークまでにより多くの時間を要し,筋力の発生の過程が緩やかであった.この結果は,転倒群は障害物回避行動などで転倒リスクが高いことを示しており,地域在住高齢者に対する新たな易転倒性の指標として有効と考えられる.転倒の予防対策として,最大筋力とともに筋の反応速度を高める運動が有用であることが示唆された.
著者
矢作 尚久 藤井 進 森川 和彦 川本 章太 加藤 省吾
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.79-97, 2021-06-30 (Released:2021-07-02)
参考文献数
61

The essence of digital transformation (DX) in healthcare is to technologize the "tacit knowledge of clinicians." In healthcare, the clinician's role is to accurately assess the patient's condition, determine the best course of treatment, and inform other healthcare professionals of what to do next. Then, the treatment process begins, and the patient finally leads to the behavioral change by the various healthcare players. Thus, since all treatment processes begin with the "tacit knowledge of clinicians," it is none other than the essential element of healthcare. Therefore, from the perspective of competitive strategy, it is also a key factor for innovation. Furthermore, it can become Japan's unique core competence when combined with the Japanese universal insurance system. This next-generation medical DX platform, centered on the "tacit knowledge of clinicians," will lead the world in the future as a cutting-edge intelligence system and as a brand-new universal health insurance model.
著者
田中 昭彦 森山 雅文 安永 純一朗 中村 誠司
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

唾液、血液など採取の容易な検体での解析を行った。今回、細胞から分泌される直径50-150nmの細胞外小胞の一つであるエクソソームはその内部にマイクロRNA(以下 miRNA)含むことが知られており、そのmiRNAに着目し、能動的に分泌されるエクソソーム内miRNAを検出することで、より精度の高い診断への応用を期待した。結果として、血液、唾液、うがい液からmiRNAを検出することが可能であった。疾患特異的な分子の確定にはいたらなかったが、非侵襲的に採取できる唾液やうがい液検体がSS等の口腔内疾患の検査法として有用である可能性を示した。