著者
湯淺 太一 近山 隆 上田 和紀 森 眞一郎 八杉 昌宏 小宮 常康 五島 正裕
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本研究では,計算機システムが備えている広域性と局所性の両方に対応できる適切な計算量モデルとソフトウェアシステムの構築を可能にするために,計算連続体と呼ぶ概念に基づいて,さまざまな観点から,計算に関する既存概念の再検討,統合,および発展を図ってきた.主要な研究成果は次のとおりである.1.計算連続体モデルによる計算量解析本プロジェクトでは,単一計算機内のメモリ階層から計算機間のネットワーク遅延の差異までを,統一的に,かつ簡潔に表現できる計算量モデルとして「計算連続体モデル」を提案し,このモデルに基づいた計算量解析結果が,従来方法よりも現実の計算に近いものであることを示した.また,複雑な並列アルゴリズムに対しても,その振舞いが把握できるように,計算連続体モデルの仮想機械を設計し,実装した.2.並行言語モデルLMNtalに関する研究また本プロジェクトでは,階層グラフの書換えに基づくスケーラブルな並列言語モデルとしてLMNtalを設計し,このモデルの改良を進めてきた.このモデル上でプロセス構造の解析技術を確立するとともに,実用に供するプログラミング言語としての実装を行った.階層グラフ書換えは,多重集合書換え計算モデルや自己組織化に基づく計算モデルなどを特別な場合として含んでおり,既存の多くの計算モデルの架け橋となることが期待できる.3.局所性を重視した処理系実装方式の研究プログラミング言語の実装において,特に局所性を重視することによって,実行性能が飛躍的に向上することを実証した.その例として,階層的グループ化に基づくコピー型ごみ集めによる局所性改善をあげることができる.これは,スタック溢れに備えたキューを併用することにより,少量のスタックで大部分を深さ優先順にコピーするごみ集め方式のさらなる改良の提案であり,仮想記憶の局所性だけでなく,キャッシュの局所性も考慮した実装となっており,実際の計算機上で極めて効率の良い処理系を実現できる技術である.
著者
森 貴司 桑原 知剛 齊藤 圭司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.800-804, 2017-11-05 (Released:2018-08-06)
参考文献数
25

レーザー光などの高強度,高周波数の周期外場によって非平衡状態に駆動された系は様々な興味深い性質を示すことが知られている.周期外場による効果を積極的に用いることで平衡状態では実現が困難な新奇物性を探究しようという研究が,近年強相関電子系や冷却原子系の分野で活発に進められている.周期外場に駆動された量子多体系は豊富な物理現象を示すと考えられている一方,周期外場によって系はエネルギーを吸収し続け,ついには完全に無秩序な高温の状態に緩和していくことが予想される.近年の孤立量子系における熱平衡化についての理論的整理を通して,固有状態熱平衡化仮説(ETH)という考え方が熱平衡化を説明する有望な視点の一つを与えるものとして提案され,数値計算によってその妥当性が確かめられてきた.このETHの周期駆動系への自然な拡張(これをフロケETHという)は,熱的に孤立した周期駆動下での量子多体系は最終的に温度無限大の状態に行き着くことを予想する.この予想は,強相関電子系や冷却原子系で議論されている周期外場下での興味深い非平衡状態は実際には真の定常状態ではなく,有限の寿命を持った準定常な非平衡状態であることを示唆する.それでは,完全に無秩序な状態に行き着く前に,このような準定常的な状態が本当に存在するか,存在するとしたら,それを理論的にどう理解できるか,という問題は非平衡統計物理学の基礎論の観点から面白い問題である.また,周期駆動と多体効果によって創発した興味深い物性がどの程度の時間スケールにわたって持続するのか,つまりこのような非平衡状態の安定性を明らかにすることは新奇物性の探究の面でも重要である.我々は,フロケ理論の数学的に厳密な解析によって,これらの問題に答えることに成功した.具体的には,フロケ理論で重要な役割をするフロケハミルトニアンのマグナス展開の漸近級数的な性質を数学的に厳密に証明し,この漸近収束性が,興味深い非平衡準定常状態が長時間にわたって安定に存在することを保証することを明らかにした.さらに,そのマグナス展開の発散の仕方から,非平衡定常状態が持続する時間スケールの下限を評価することができる.これらの研究によって,高強度,高周波数の外場のもとで,量子多体系は準定常状態に緩和した後に真の定常状態に緩和する,二段階緩和過程(Floquet prethermalization)が普遍的に生じることが明らかになった.この準定常状態は,フロケハミルトニアンのマグナス展開を低次で切断することによって得られる,静的な有効ハミルトニアンのGibbs状態(熱平衡状態)によって記述される.したがって,周期外場によって駆動された系の新奇物性を探究するという目的を達成するための基本的戦略は,「対応する有効ハミルトニアンの熱平衡状態が望ましい性質を持つように,物理系と周期外場をうまく選ぶべし」,ということになる.
著者
森本 岩太郎
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.367-374, 1971 (Released:2008-02-26)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

愛媛県上黒岩岩陰遺跡出土の,縄文早期中葉に属する12~14歳の若年者1体の脛骨は,扁平度が強く,VALLOIS 法による脛指数は54.7を示した.これに対し,日本各地で得られた縄文後•晩期の同年齢者6体の脛指数の平均は77.7であり,扁平脛骨は1例もみられない.一般に扁平脛骨は思春期以後に発現する形質とされているので,上黒岩岩陰の若年者の扁平脛骨は,縄文早期人が後•晩期人よりやや早熟の傾向をもつことを物語るものとして注目される.この上黒岩の若年者の扁平脛骨では,骨幹の周径に対する横断面積の比率が,縄文後•晩期若年者の脛骨に比べて小さく,骨質の不足がうかがわれる.若年者の場合だけでなく,上黒岩岩陰の縄文早期に属する成人7体の脛骨も,各地で得られた縄文後•晩期の成人113体に比べると,骨幹が細い.脛骨骨幹横断形の変異が,下肢運動に対する脛骨の栄養学的•構築学的反応の表われであるとするならば,上黒岩岩陰の若年者の扁平脛骨は,縄文早期の生活条件が後•晩期に比べていっそうきびしかったことを反映するもののように思われ,興味深い.
著者
上田 拓文 門松 香一 森田 勝 本田 衣麗 保阪 善昭
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.194-199, 2006-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

口唇・口蓋裂は先天性外表疾患として比較的頻度の高い疾患である.本研究は平成17年11月から過去約13年間に, 昭和大学付属病院形成外科を未治療で訪れた1323例を対象に, 裂型・被裂側・被裂程度の分布および性別の関連について調査検討を行った.分類方法は裂型を口唇裂, 口唇口蓋裂, 口蓋裂に, さらに口唇裂および口唇口蓋裂は右側, 左側, 両側に分け, 口蓋裂は軟口蓋裂硬軟口蓋裂, 粘膜下口蓋裂に分けた.なお解析方法としてはクロス表の検定にはx2検定を用いた.その結果は以下のとおりである.1.口唇裂451例, 口唇口蓋裂450例, 口蓋裂単独422例であり裂型は一様に分布していた.2.口唇裂男性253例, 女性198例, 口唇口蓋裂男性285例, 女性165例, 口蓋裂単独男性163例, 女性259例であり口唇裂, 口唇口蓋裂は男性に多く口蓋裂は女性に多かった.3.口唇裂は左側: 右側: 両側≒6: 3: 1であった.4.口唇口蓋裂は左側: 右側: 両側≒5: 2: 3であった.5.口唇裂の被裂程度は完全: 不全 (痕跡を含む) ≒1: 3であった.6.口唇口蓋裂の被裂程度は完全: 不全 (痕跡を含む) ≒3: 1であった.
著者
髙森 真紀子 大久保 順一 藤井 純一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.2, no.J2, pp.113-120, 2021 (Released:2021-11-17)
参考文献数
9

公共空間利活用によるまちづくりが注目される中,都市空間における行動観測のニーズが高まっているが,その解析作業は計測員によるビデオ観測や目視記録に依存しており,膨大な労力を要する.本研究は,歩行者の流動をより簡便,短時間で解析可能とすることを目指し,深層学習による物体検出技術と物体追跡技術を応用し,特に屋外の都市空間を想定した人流解析技術を低コストで開発したものである.三鷹駅北口地域での社会実験におけるビデオデータと人手による人流解析結果をもとに,実務での活用を想定した「メッシュ」や「丸め閾値」プログラムを設定し,AI解析における精度を検証した.結果,人手調査の1/4の解析時間で人流の傾向を概ね正確に把握でき,活用可能性が見いだされるともに,カメラ設置方法や映像のゆがみ補正の必要性など,実務で活用するための課題を明らかにした.
著者
森口 裕之
出版者
京都市立堀川高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

プランクトン個体を発見し、捕獲し、個別の個体を飼育しながら追跡観察できる実験系を開発することで、学校における「プランクトンの観察」をその場限りに終わらせず、そのライフサイクルを実験を通して学ぶことができる学習へと発展させることを意図して、簡易なプランクトン個体単離飼育容器を開発した。容器の素材には、透明性や加工性などに優れるシリコーンゴム(PDMS : Polydimethylsiloxane)を用いた。スライドガラスにセロハンテープや寒天の小片を貼り付け、それらを凸版の鋳型としてPDMSを硬化させることで凹部を型取りし、鋳型から剥がしたPDMS小片を別の平坦なスライドガラス上に貼り付けることで、プランクトンを流す流路や、そこから分岐したプランクトンの飼育部屋などを作り込んだ透明なデバイスを多数製作した。ここで、市販のセロハンテープの小片1枚を鋳型にすると高さ50μm前後の流路が成形され、セロハンテープを重ねる枚数を調整することで飼育対象とするプランクトンのサイズに応じた高さの流路を作製できた。例えば、2枚重ねたセロハンテープを鋳型とした場合には、ゾウリムシ(Paramecium caudatum)の個体が余裕を持って通過し、縦方向には回転できないが横方向には回転できる程度の高さの流路が作製された。デバイス内の流体の駆動・操作は、「紙縒り」に水を吸わせる方法(毛細管力による方法)やシリコーンチューブ等を介して空気圧を操作する方法、流路出入口上に設けた液貯めの水面の高さの差による静水圧による方法等のほか、流路に刺し込んだガラス管マイクロピペットによる吸引や、二流路型のガラス管マイクロピペット(θ管)を用いた培養液の交換も可能であることを確認し、実際にゾウリムシの個体を飼育部屋に単離し、少なくとも1週間、飼育しながら顕微鏡観察を続けることが可能であることを確認した。
著者
鈴木 紅葉 小林 勇太 高木 健太郎 早柏 慎太郎 草野 雄二 松林 良太 森 章
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2118, (Released:2022-10-25)
参考文献数
48

森林の再生は、気候変動や生物多様性の損失などの社会課題に対する有効な手段の一つである。北海道知床国立公園内の森林再生地では、本来の潜在植生である針広混交林の再生を目指した森林再生活動が実施されている。ここでは、科学的知見をもとに合意形成し、管理手法を実践しながら改善する適応的管理のアプローチが取り入れられている。本稿では、この森林再生活動の成果を航空機レーザ測量およびドローン写真測量を用いた林冠構造解析によって評価した。具体的には、植栽地における樹冠高と構造的多様性、代表的な森林タイプにおける 2004年から 2020年までの 16年間の森林成長量を算出した。その結果、在来種の植栽地では他の森林タイプよりも顕著な森林成長が見られたものの、構造的多様性の回復は遅いことがわかった。このことから、活動開始から約 40年が経過しても未だ構造的多様性の回復には至っていないことが示唆された。当地での適応的管理に基づく森林再生活動の内容を紹介し、森林再生のあり方を議論することで、他地域における参考情報を提供したい。
著者
高橋 佳史 大森 浩志 小池 誠 佐藤 仁俊 北角 泰人 田窪 健二
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.3089-3093, 2011 (Released:2012-07-24)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

症例は68歳,女性.8年前に悪性リンパ腫と診断され,化学療法と末梢血幹細胞移植施行後に再発したが,長期間のプレドニゾロン内服による治療で寛解状態にあった.2週間前からの食欲不振を主訴に当院を受診.腹部CTで小骨盤内の直腸周囲に腸管外ガスを認め,直腸穿孔の診断で緊急手術施行した.穿孔の原因は病理検査によってサイトメガロウイルス(CMV)腸炎と確定診断した.すでにガンシクロビル内服中であったため,同薬を増量したが,CMVアンチゲネミアの陰性化は得られなかった.2カ月後に症状が再燃したが,全身状態が不良であったため保存的治療を行い,手術加療は回避できた.以後の治療は再燃を防止するため,ガンシクロビル内服維持療法とし,在宅療養へ移行した.免疫抑制患者の消化管穿孔では同疾患を積極的に疑い,早期の抗ウイルス剤投与が望まれる.
著者
森田 克己
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement1, pp.73-78, 2003 (Released:2010-08-25)
参考文献数
3

自然界には様々な分岐パターンがある。河川と樹木の分岐パターンはその代表的な例として挙げることができる。分岐パターンは自然界の複雑な条件の関与により様々な形状を示すが、ある規則に従って形成されることが知られている。本稿では、種々の分岐パターンのうち、植物の生長における葉序の螺旋パターンに注目した。例えば、樹木の軸に対する柄あるいは茎の配列あるいは、サヤエンドウの軸に対する蔓の関係等に螺旋の分岐パターンが確認できる。本稿では植物の形態イメージをベースにして、独自の造形イメージにより、CGを用い数理造形的に分岐パターンを生成した。螺旋の分岐パターンを生成するアルゴリズムは1.平面曲線の生成2.旋回条件の設定3.チューブ状螺旋の生成である。螺旋の分岐パターンを生成する条件を次の通り設定した。第1に、平面曲線を生成するために、螺旋の種類・分岐段階・分岐数・分岐間隔・分岐位置をパラメータとして設定した。第2に、旋回条件の設定をするために、旋回形状・旋回数・旋回方向をパラメータとした。本稿では、旋回数に対する分岐数の関係に着眼し、旋回分岐比を定義して、分岐パターン生成の基準とした。以上の設定より螺旋の分岐パターンのバリエーションを生成し、検討を加えた。
著者
川森 めぐみ Megumi Kawamori
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.13, pp.163-178, 2015-03

『留学生のためのストラテジーを使って学ぶ文章の読み方』は、社会科学系の入門書、教科書、論説文を読むために必要なストラテジーを学ぶ教科書である。本稿は、この教科書を使い、一斉授業とともに自律学習も行なえるよう構成した授業の実践報告である。まず、読解ストラテジーに関する先行研究をたどる。次に、授業や教科書の概要を記す。最後に、授業の成果を報告する。学習者のノートおよび要約の分析を行なった結果、読解ストラテジーの明示的な使用による読解力向上が認められた。また、学習を自己管理する自律学習も確実に行なえたといえる。実践報告(Practice Report)
著者
高橋 良 森山 寛 吉見 充徳 浜田 雅之
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.417-426,3, 1976-08-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
8

Reported here are the results of our study on septal deviation, sella turcica angle and shape of skull in 35 artificially deformed skulls of old Maya people.It has been known that gradual enlargement of the skull vault due to development of the brain during human evolution has caused deviation of the nasal septum in man.The authors studied the artificially deformed skulls and concluded that artificial deformation of the skull also influenced the shape of the nasal septum in various ways.
著者
森 健太郎
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.524-530, 2011-07-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
9

頭蓋底外科練習用モデルの作製方法について報告した.削開可能な市販の頭蓋骨モデルを基に,海綿静脈洞の内外壁をシリコーン製の硬膜2層構造で再現するとともに,人工脳神経や人工内頚動脈を再現した.Periosteal bridgeを人工骨膜で再現したり,動眼神経を前床突起の外下方に留置するなど,頭蓋底外科に重要な構造物の再現に留意した.電線を用いて椎骨脳底動脈を再現し,シリコーン製の小脳テントを再現した.これらの構造物を作製しながら,頭蓋底外科に必要な3次元的解剖の理解が可能である.
著者
武田 輝之 宗 祐人 森光 洋介 大津 健聖 岸 昌廣 八坂 太親 辛島 嘉彦 寺部 寛哉 佐々木 英 下河邉 正行
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.2614-2620, 2017 (Released:2017-11-20)
参考文献数
36

症例は74歳,女性.主訴は貧血と黒色便.貧血の原因検索目的に施行した腹部造影CT検査で,空腸に限局性の壁肥厚・周囲のリンパ節腫脹を認めた.経口的ダブルバルーン小腸内視鏡検査では,空腸に全周性の潰瘍を認めた.潰瘍辺縁はやや厚みがあり,辺縁は整で,壁伸展も良好であった.潰瘍底には露出血管を伴っており,クリッピングによる止血術を行った.生検病理組織所見よりT細胞性リンパ腫と診断した.小腸部分切除術より得られた切除標本から,腸管症関連T細胞リンパ腫Ⅱ型と診断した.消化管出血を契機に診断しえた腸管症関連T細胞リンパ腫の一例を経験したので報告する.
著者
菅原 亨 郷 康広 鵜殿 俊史 森村 成樹 友永 雅己 今井 啓雄 平井 啓久
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第25回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.14, 2009 (Released:2010-06-17)

哺乳類の味覚は,基本的に甘み・酸味・苦味・塩味・うま味の5つを認識することができる。その中で苦味は,有毒な物質の摂食に対しての警告であり,ほぼすべての動物が苦味物質に対して拒否反応を示す。一般に苦味は,有害物質の摂取に対する防御として進化してきたと考えられている。一方,チンパンジーにおいて寄生虫感染の際に自己治療として植物の苦味物質を利用することが知られている。苦味は薬理効果のある植物の認識としての役割も併せ持つことを示唆している。我々は,霊長類における苦味認識機構の進化・多様化に興味を持って研究をおこなっている。 苦味は,七回膜貫通型構造を持つ典型的なG蛋白質共役型受容体の1種であるT2Rを介した経路で伝わる。T2Rは,舌上皮の味蕾に存在する味細胞の膜上で機能しており,全長およそ900bpでイントロンがない遺伝子である。近年の研究で,T2Rは霊長類ゲノム中に20~40コピー存在していることがわかっている。特徴的なことは,その遺伝子数がそれぞれの生物種で異なることである。これらの種特異性は,採食行動の違いと関連があると考えられる。また,ヒトやチンパンジーでは,味覚に個体差があることが知られているが,その要因はT2R遺伝子群の1つであるT2R38の一塩基多型(SNP)であることが明らかにされている。T2Rの機能変化は,個体の味覚機能に直接影響を与えると考えられる。 本研究では,46個体の西チンパンジーでT2R遺伝子群の種内多型を解析した。T2R遺伝子群の進化や個々のT2R遺伝子のSNPを解析し,チンパンジーにおける味覚機能の進化や採食行動との関連性を考察した。
著者
力丸 真美 谷野 功典 福原 敦朗 佐藤 俊 二階堂 雄文 佐藤 佑樹 東川 隆一 福原 奈緒子 河俣 貴也 梅田 隆志 森本 樹里亜 小泉 達彦 鈴木 康仁 平井 健一郎 植松 学 峯村 浩之 斎藤 純平 金沢 賢也 柴田 陽光
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1_2, pp.85-88, 2018-10-25 (Released:2019-04-02)
参考文献数
15

キノコの屋内栽培では大気中に大量の胞子が浮遊しており,高濃度のキノコ胞子を繰り返し吸入することで感作され,Ⅲ型,Ⅳ型アレルギーの機序により過敏性肺炎を発症する.診断には臨床経過や画像検査所見,環境誘発試験,沈降抗体反応やリンパ球刺激試験など免疫学的所見と病理学的所見の結果を総合的に判断することが重要である.今回我々はナメコ,シイタケ栽培者に発症した過敏性肺炎の2症例を経験したので報告する.
著者
福田 清人 森 直樹 松本 啓之亮
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第29回 (2015)
巻号頁・発行日
pp.3O16in, 2015 (Released:2018-07-30)

近年, 絵画や音楽, 小説のような人間の感性に基づく創作物を計算機に自動生成させる試みが, 人工知能研究における重要な課題となっている. その中で小説の自動生成については, 既存の小説のストーリーを利用した研究がほとんどであり, 生成される小説が既存の小説に大きく依存してしまうことが問題点として挙げられる. 本研究では既存の小説に依存しないストーリーを自動生成する手法を提案し、その有効性を示す.