著者
森本 康裕 野上 裕子
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.600-604, 2009-07-01

脳神経外科手術時の血糖管理は,他の手術時とは異なるいろいろな側面を持っている。 ブドウ糖は脳で代謝される主な基質であり,低血糖は避けなければならない。逆に,高血糖状態で脳虚血が起こると神経学的予後を悪化させるという報告が多い。この両面から,脳神経外科手術時には血糖値に注意が払われてきた。血糖値の上昇を避けるため,手術中には糖を含まない輸液を用いるとされてきた。また,ブドウ糖投与は脳浮腫の原因となる。しかし,レミフェンタニルを使用するようになったことで,少量のブドウ糖負荷では血糖値を上昇させることはなくなった。近年,重症患者における厳密な血糖管理〔intensive insulin therapy(厳重血糖管理)〕が患者の予後を改善するとして注目されている。しかし,この厳重血糖管理については見直しがされてきている。さらに,急性脳障害患者への適応は議論の分かれるところである。 本稿では,脳神経外科手術時,特に脳障害患者に対するブドウ糖の投与と血糖コントロールについて,最新の知見を紹介したい。
著者
森 昭雄 大友 英一
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.45-48, 2001 (Released:2011-07-05)
参考文献数
11
被引用文献数
7
著者
森地 茂 清水 哲夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.13, pp.915-922, 1996
被引用文献数
1

現在, 都市高速道路では渋滞緩和対策の1つとして流入制御が行われているが, 一般街路への負荷が大きいこと, 事故発生時及び渋滞発生時のような非定常な交通状態に対処できない等の問題を抱えている。本研究は, ランプの待ちスペースに車両を滞留させながらリアルタイムに車両を流入させる手法の開発可能性を検討することが目的である。その際制御オプションの1つとしてピークロードプライシングを導入するが, これにより流入禁止時間を減らす工夫を試みる。このような制御には, 急速な求解が可能な最適化アルゴリズムが必要であるが, 本研究では遺伝的アルゴリズム (GA) の適用により, この問題の解決を試みる。
著者
伊藤 直人 森川 将行 飯田 順三 平尾 文雄 東浦 直人 岸本 年史 橋野 健一 南 尚希 中井 貴 中村 恒子 南 公俊 山田 英二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.983-985, 1998-09-15

高血圧を伴った神経ベーチェット病で,剖検によって死因がクモ膜下出血と診断された,まれな1例を経験したので報告する。クモ膜下出血の出血部は神経ベーチェット病の病変の中心である橋底側の動脈で,経過中に高血圧を併発していることもあり,神経ベーチェット病と高血圧およびクモ膜下出血との関連が示唆された。
著者
西川 純平 森田 純哉
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会研究会資料 先進的学習科学と工学研究会 93回 (2021/11) (ISSN:13494104)
巻号頁・発行日
pp.38-43, 2021-11-15 (Released:2021-11-15)

言語発達の過程で個々の子どもが抱える困難は多様である.とくに音声の認識を支える音韻意識という能力が未熟なとき様々な発話の誤りが表れる.個別の誤りへの対応では,それぞれのメカニズムの理解に基づく支援が重要である.このために,子ども個人の音韻意識に対応づけた認知モデルを利用する音韻意識形成支援システムの構築を目指す.とくに本研究では,子どもがもつ音韻意識の状態を推定する方法を検討する.
著者
志村 二三夫 森内 幸子 細谷 憲政
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.159-163, 1975-05-31 (Released:2009-11-16)
参考文献数
15

小腸のCa吸収に対するリジンならびにD3の影響を観察した。白ネズミはたん白質をアミノ酸混合物に置き換えたD欠乏飼料を用いて飼育した。白ネズミ体重の増加はリジン1.35%・D3投与群が比較的良く, これに続いてリジン1.35%・D欠乏群であり, リジン0.45%投与群の体重増加は比較的悪く, さらにD投与による差異は, ほとんどみられなかった。反転腸管を用いる45Ca輸送能は, D欠乏状態ではリジンの含有量による差異はみられなかったが, D3投与による増大効果は, リジン1.35%投与群はリジン0.45%投与群に比して大きかった。十二指腸粘膜のCaBPにも, 同様の傾向が認められた。小腸の45Ca吸収に対するリジンの促進効果は, Dを介して発揮されるものと考えられる。
著者
森田 英利
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.45, pp.S8-3, 2018

<p>Lederbergは「宿主とその共生微生物はそれぞれの遺伝情報が入り組んだ集合体である"超有機体"として存在していると考えるべき」と提唱しているが、そのタイミングが2003年のヒトゲノム解読完了以前であることは興味深い。その後、Gordonらのグループにより次世代シークエンサーによる細菌ゲノムの16SリボソームRNA遺伝子領域を用いた腸内細菌叢の網羅的な解析により"肥満腸内細菌叢"の考え方が発表された。</p><p>また、1945年にReyniersによって無菌動物飼育装置が開発され、無菌動物を飼育できると同時に、ノトバイオート動物の確立が可能となった。その結果、インターロイキン-2ノックアウトマウスにおいて、SPFマウスでは潰瘍や炎症を起こすが無菌マウスでは潰瘍や炎症は起きないことやがん自然発症モデルマウスを、無菌化するとがんを発症しないことが報告された。無菌マウスでは、様々な組織や免疫系の異常や未発達であることがわかってきた。Hondaらの報告によると、ヒト腸内細菌叢による17型ヘルパーT細胞の誘導は、腸内細菌の強い接着は必須であった。また、制御性T(Treg)細胞も無菌マウスではほとんど誘導されず、抗生剤投与したマウスではTreg細胞数が激減することから腸内細菌の関与が考えられ、無菌マウスにヒト腸内細菌叢を投与しTreg細胞誘導能によりスクリーニングした結果、<i>Clostrdium</i>属細菌によってTreg細胞が強く誘導されていることが明らかとなり、これらの菌株群をマウス大腸炎モデルとアレルギー性下痢モデルマウスへの経口投与によりその症状を緩和させている。唾液細菌叢の<i>Klebsiella pneumoniae</i>が腸管に定着することで1型ヘルパーT細胞を誘導し、そのため慢性炎症性腸疾患の発症する原因となっている可能性が、ノトバイートマウスとSPFマウスの比較に加え抗生物質処理での結果から導かれている。</p><p>以上、Gordonらの2006年の報告に端を発しての約12年間に各種疾病や生体影響と腸内細菌叢との関係が次々と明らかにされてきた一連の報告について概要する。</p>
著者
香月 正明 鳥山 彩 田嶋 芙紀 窪田 敏夫 森内 宏志 入倉 充
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.129-134, 2020 (Released:2020-10-26)
参考文献数
5

交付された処方せんは,比較的病院の近くにあり患者の利便性が高い,門前薬局に持ち込まれることが多い.近年,厚生労働省は,かかりつけ薬局の利用を推進している.そこで本研究は,保険薬局はどうあるべきか,患者は何を基準に保険薬局を選択しているのかを明らかにするために,アンケート調査を実施した.その結果,保険薬局を選ぶ基準として,「場所(立地)」と回答した方が最も多い結果となったことより,かかりつけ薬局の利用が推進されているものの,いまだ病院に近いという立地条件を保険薬局の選択基準としている方が多いと考えられる.また,かかりつけ薬局に求めるものを調査したところ,「対応が親切,丁寧である」という意見が多かった.これらの結果より,患者から選ばれるかかりつけ薬局になるためには,医薬品,健康などに関する知識は当然のことながら,患者ニーズに沿った相談に応じることが重要になると考えられる.
著者
加藤 智章 新田 秀樹 西田 和弘 石田 道彦 稲森 公嘉 田中 伸至 石畝 剛士 国京 則幸 関 ふ佐子 原田 啓一郎 水島 郁子 石畝 剛士 片桐 由喜
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の研究成果として、各国の診療報酬体系は原価計算に基づく報酬設定というスタイルを取っていない点で共通であるという知見を得た。ここで日本の診療報酬体系は統一的で極めて精緻なシステムを構築していることが理解できたものの、医療保障を実現するための供給サイドに対しては、診療報酬に偏重しているため、医療施設等のスクラップアンドビルドに柔軟性を欠くとの仮説を獲得するに至った。このため、本研究はテーマを、医療施設をはじめとする医療保障体制全般にシフトチェンジし、基盤(A)の研究に転換することとした。
著者
原 由起代 稲葉 順子 東野 哲也 鳥原 康治 森満 保
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.543-547, 1994-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
6

後天性外耳道閉鎖症は, 炎症性, 外傷性, 術後性の3つに分類できる. 炎症性外耳道閉鎖症とは感染後に外耳道に線維性閉鎖を来たすものである.今回われわれは, 外傷や手術の既往のない後天性外耳道閉鎖症3例5耳を経験した. 3耳に中耳炎, 2耳に慢性外耳道炎の既往があつた. 今回の症例では真珠腫の合併例は認めなかつたが, 文献的には真珠腫合併の報告例があり, この場合早期に手術的治療が必要であると考えられた.病理組織学的には, 4耳中3耳に線維脂肪組織, 1耳に慢性炎症細胞の浸潤を認め, 両者は異なつた病態であることが示唆された.
著者
倉田 信彦 蜂須賀 丈博 栃木 宏介 鹿野 敏雄 橋本 好正 森 敏宏
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.569-577, 2016-06-01 (Released:2016-06-17)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

腎移植後に悪性腫瘍の罹患率が上昇することがわかってきたが,手術や周術期管理に関する報告は少なく,周術期の最適な免疫抑制療法,腎機能への影響,術後合併症などはわかっていない.我々は腎移植患者における直腸癌3例,膵腫瘍1例(1例は同時性重複腫瘍)の手術を経験した.周術期に経口摂取が不可能となる消化器癌手術であっても,免疫抑制剤を周術期は静注とし,術後早期に経口へと切り替えることで,特に腎機能を悪化させずに管理可能であった.ステロイド長期内服に伴う創傷治癒遅延,縫合不全などは大きな問題とならなかったが,1例に回盲部炎,クロストリジウム腸炎を認め,免疫抑制剤が関与している可能性があった.感染に対しては,より慎重かつ迅速に対応する必要がある.また,通常とは異なる術後合併症が起こる可能性があるため,移植医療に従事していない科が手術を担当している場合は,密に連携をとって周術期管理を行うべきである.
著者
西堀 すき江 小濱 絵美 加藤 治美 伊藤 正江 筒井 和美 野田 雅子 亥子 紗世 廣瀬 朋香 羽根 千佳 小出 あつみ 山内 知子 間宮 貴代子 松本 貴志子 森山 三千江 山本 淳子 近藤 みゆき 石井 貴子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】昭和50年代までは『尾張の嫁入りは派手』といわれ,花嫁道具一式を積んだトラックに紅白幕をかけて嫁ぎ先へ運んだり,菓子撒きをしたり,豪華な料理や引き出物を用意した。このような,一世一代の行事は派手に祝うが,通常は倹約をし質素な生活をするのがこの地方の特徴であった。</p><p>【方法】愛知県を(1)名古屋市,(2)尾張水郷(海部),(3)尾張稲沢(尾張北部),(4)愛知海岸(知多,西三河・東三河の海岸,渥美),(5)西三河・安城,(6)東三河・豊橋,(7)愛知山間・奥三河の7地区に分け,聞き書き調査と料理の撮影を行った。聞き書き調査は,平成24・25年,料理の撮影は平成27年に行った。聞き書きは,各地区に長年暮らし,その地域の家庭料理を伝承されている方を調査対象者とした。撮影に当たっての料理作成は,聞き書き対象者や各地区で伝統的家庭料理の保存活動を行っている団体・個人などに依頼した。先の調査を収録した『日本の食生活全集23 聞き書 愛知食事』を参考にした。</p><p>【結果および考察】名古屋を含む尾張地区では稲作や野菜栽培が盛んで,副菜も地場でとれた野菜を生で食す以外に乾燥させたり,漬物にしたりして利用した。また,名古屋コーチンに代表される養鶏が盛んで,なんぞ事の時に鶏肉(かしわ)や卵が食された。海岸地区は伝統野菜の蕗をはじめ種々の野菜が栽培され,小魚や海藻の佃煮も多く利用されていた。三河の安城地域は,不毛の台地安祥(あんじょう)ヶ原と言われていたが,明治用水建設後は日本のデンマークと称されるようになり,農作物が豊富に栽培された。大豆・落花生も畦に作られていた。愛知山間部では山菜やきのこ,川魚などで佃煮を作り常備菜としていた。へぼなどの昆虫食も利用していた。</p>
著者
加地 正郎 森口 正 吉住 孝之
出版者
大道学館出版部
雑誌
臨牀と研究 (ISSN:00214965)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.p3958-3970, 1985-12
著者
坂本 達則 菊地 正弘 中川 隆之 大森 孝一
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.147-150, 2020 (Released:2020-11-28)
参考文献数
6

耳管や破裂孔の周辺構造の内視鏡下局所解剖を明らかにするために,骨標本の観察およびカデバダイセクションを行った。破裂孔は蝶形骨,側頭骨,後頭骨に囲まれた不整形の穴である。内視鏡下に上顎洞後壁を除去すると,翼口蓋窩で顎動脈の分枝を確認できる。蝶形骨前壁の骨膜を切開すると,翼突管,正円孔を確認できる。蝶形骨の翼状突起基部・内側・外側翼突板を削開すると耳管軟骨が露出される。耳管軟骨は耳管溝と破裂孔を充填する線維軟骨に強固に癒着している。内視鏡で手術操作を行うとき,翼突管および破裂孔よりも尾側での操作を維持することで内頸動脈・海綿静脈洞の露出・損傷を防ぐことが出来ると考えられた。