著者
森谷 菜穂子 高橋 加津美 丸山 俊明
出版者
山形大学
雑誌
山形大学高等教育研究年報 : 山形大学高等教育研究企画センター紀要
巻号頁・発行日
vol.4, pp.33-44, 2010-03-31

はじめに 山形大学附属博物館(以下当館と記す)では通年の事業として,特定のテーマに沿った「特別展」と一般市民を対象とした「公開講座」をそれぞれ年に一度開催している。近年,大学法人化にともなって当館にも地域貢献や社会連携の課題が課せられている。このような社会背景や学内環境の変遷のもと,昭和50年代から30年以上にわたって継続されてきたこれらの事業も一大転機を迎えることとなった。本稿は,初めて学外との連携において行なわれたこれらの事業について報告するものである。開催概要については文末の図表1・2にまとめたのでご参照願う。平成19年度の開催当初から3年間,ただただ無我夢中で振り返る暇もなかったが,ここで一区切りつけて反省することによって,高等教育研究機関のひとつであると同時に,地域に開かれた社会教育施設を目指す当館の課題が明らかになると思われる。
著者
丹野 智博 堀江 和正 小林 高彰 森田 昌彦
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2013-BIO-34, no.25, pp.1-5, 2013-06-20

層状ニューラルネットにおいて,入力するアナログ値を多次元の 2 値パターンに変換すると,多変数関数近似器としての性能が大きく向上することが報告されている.本研究では,このパターンコーディングをパターン分類問題に適用した場合の有効性について検討する.2 次元 2 クラス分類問題を対象として数値実験を行った結果,単純パーセプトロンに適用してもあまり効果はないが,さらに多層化する (多層パーセプトロンに適用する) か,選択的不感化を行うことによって,非常に複雑な決定境界を容易に学習できるようになることがわかった.また,境界の複雑さを表す指標を提案し,それが分類誤差と高い相関をもつことを示した.この指標は,パターンコーディングを適用すべきか,どの分類器を用いるべきかを判断するのに有用だと考えられる.
著者
山森 一人 阿部 亨 堀口 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.350-353, 1997-01-25
被引用文献数
4

ニューラルネットワークにより実用規模の問題を解くためには, 並列学習法による高速化が必要である. 本報告では, 超並列計算機上に3種類の並列学習アルゴリズムを実装し, その性能について議論する.
著者
山森 一人 堀口 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.370-377, 1998-02-25
被引用文献数
8

ニューラルネットワークを用いた情報処理は制御やパターン認識などの分野で広く応用されている.しかし, 問題が大規模化するに従ってニューラルネットワークの学習に必要な時間が膨大になる.近年, 大規模ニューラルネットワークの学習を並列計算機を用いて高速化する研究が盛んに行われるようになった.しかしながら, これらの並列化手法は並列計算機のアーキテクチャに強く依存している場合が多く, 誤差逆伝搬学習法の並列化性能については十分に検討されていない.本論文では, 誤差逆伝搬法がもつ3種類の並列性を利用した並列学習モデルを解析し, その並列学習速度について詳しく検討する.これらの並列学習に関する解析結果を用いて実際の並列計算機上へ各モデルを実装して並列学習法の性能評価を行う.
著者
岡田 浩之 アツアンヤ 亜伊子 大森 隆司
出版者
玉川大学工学部
雑誌
玉川大学工学部紀要 (ISSN:03715981)
巻号頁・発行日
no.47, pp.11-17, 2012

機械情報システム学科におけるPBL プロジェクトは上級生から下級生までのグループによって、知能ロボットに関するプロジェクトの計画立案から製作、発表まで自分たちで行い、その問題を解決する過程を通して、問題解決力、チームワーク、リーダシップ、プレゼンテーション力、コミュニケーション力など、社会に出て必要とされる技術者としての人間力を育てることを目的として開講された。本稿ではPBL プロジェクトの活動拠点であるロボット工房における様々取り組みを紹介する。
著者
塩見 淳 岩間 康夫 橋田 久 高山 佳奈子 安田 拓人 齊藤 彰子 古川 伸彦 中森 喜彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

人の死亡・傷害などの結果が発生する事態となっているにもかかわらず、これに気がつかずに救助を行わず、結果を発生させた者は、どの範囲で刑事責任を負うのかについて、また、そのような者が複数存在する場合、誰が責任を負うのかについて考えた。当該の者が結果を予見し回避できたか(注意義務の存在)を検討し、次に結果を回避する地位や権限を有していた者(作為義務の存在)を選び出すこと、その選び出しは特定の者に一定の行為をせよと強制することになるので、十分な根拠づけを必要とすること、情報の開示を怠ることを処罰する特別法の創設も考えられることを明らかにした。
著者
高橋 延匡 SHAPIRO Stua RALSTON Anth KERSHNER Hel SELMAN Alan 中森 眞理雄 大岩 元 都倉 信樹 牛島 和夫 野口 正一
出版者
東京農工大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

わが国の大学の情報処理教育のカリキュラムは米国に比べると著しく遅れているというのが通説であった。本研究代表者および分担者は情報処理学会の「大学等における情報処理教育の改善のための調査研究」で中心的な役割を果たし,コンピュータサイエンスのモデルカリキュラムJ90の作成に貢献した。しかし,J90を各大学で具体化して実現するには,授業時間配分や担当教員の割り振りなど多くの問題を解決しなければならないことが明らかになった。そこで,本年度は,米国で,過去にコンピュータサイエンスのモデルカリキュラムを各大学で具体化して実現する際にどのようにしたかを調査することにした。まず,予備調査として,ACM(米国計算機学会)が1988年に発表したコンピュータサイエンスの見取図である9行3列のマトリクス(以下では「デニング図」と呼)をカリキュラムの評価に使うことが可能かどうかを検討した。デニング図の各行は1アルゴリズムとデータ構造,2計算機アーキテクチャ,3人工知能とロボティックス,4データベースと情報検索,5人間と計算機のコミュニケーション,6数値的計算と記号的計算,7オペレーティングシステム,8プログラミング言語,9ソフトウェアの方法論とソフトウェア工学に対応する。デニング図の各列は(1)理論,(2)抽象化,(3)設計に対応する。個々の大学のコンピュータサイエンスのカリキュラムについて,その各授業科目をデニング図の27(=9×3)の枠にあてはめてみることにより,そのカリキュラムの特徴が明らかとなる。さらに,もう一つの予備調査として,ACMが1991年に発表したコンピュータサイエンスの頻出概念について,カリキュラム評価の手法として使うことが可能かどうかを検討した。ACMの頻出概念は(A)バインディング,(B)大規模問題の複雑,(C)概念的および形式的モデル,(D)一貫性と完全性,(E)効率,(F)進化とその影響,(G)抽象化の諸レベル,(H)空間における順序,(I)時間における順序,(J)再利用,(K)安全性,(L)トレードオフとその結果,の12から成る。検討した結果,ACMの頻出概念はきわめて重要なものを含んでいるが,(a)これら12個の概念は互いに独立であるか,(b)これら12個の概念はコンピューサイエンスを完全に覆っているか,についてさらに詳しく検討する必要があることがわかった。以上の予備調査を行った上で,米国ニューヨーク州立大学バッファロー大学計算機科学科を訪問し,共同研究を行った。研究の方法は,デニング図を含むカリキュラム評価方法やコンピュータサイエンスの頻出概念について,日米双方の研究代表者・分担者が見解を述べ,互いに賛否の意見を出し合う,という形で行った。この過程で,バッファロー大学ではデニング図を用いて自己点検・評価を行っていることが示された。ACMの1991年報告書では「広がり優先方式」(以下,「BF方式」と呼ぶ)によるカリキュラム編成方式が紹介され,それを実現するために多数の「知識ユニット」が提案されている(もちろん,それらの知識ユニットを組み合わせて,学問体系に沿って教える伝統的なカリキュラムを編成することも可能である)。このBF方式カリキュラムについても議論した。米国分担者達はBF方式カリキュラムを試みたが,現在は伝統的なカリキュラムに復帰しつつあるという見解であった。ACMのSIGCSE研究会の研究発表の内容を調べた結果,非BF方式カリキュラムに対する支持が強いことが確かめられた。もっとも,教育は必然的にBF的面を有するものであり,BF方式カリキュラムが妥当であるか否かという問題は,知識ユニットをどの程度の大きさにするのが適切であるかという問題に帰着され,今後の検討課題となった。本研究の期間中に,ACMのSIGCHI研究会から人間と計算機のコミュニケーションを主題とするカリキュラム案が発表された。このカリキュラム案に伴って紹介されている演習課題についても検討した。この分野は日本が大きな貢献をすることが可能な分野であり,今後の研究課題とすることにした。
著者
森脇 広 松島 義章 町田 洋 岩井 雅夫 新井 房夫 藤原 治
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.253-268, 2002-08-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
39
被引用文献数
3 7

姶良カルデラ北西縁の平野を対象に,完新世の地形発達および相対的海水準変動,地殻変動を,地形と堆積物の観察,14C年代測定,テフラ分析,考古遺跡,貝化石と珪藻化石の分析結果にもとづいて検討した.3面に区分される完新世海成段丘は,それぞれ7,300cal BP(6,500yrs BP)~3,500yrs BP,3,000~2,000BP,古墳時代(1,500cal BP)以降に形成された.姶良カルデラ周縁では,カルデラ中心部へ向かって傾き上がる傾動隆起が生じ,その隆起量は7,300cal BP(6,500yrs BP)以降,最大10m以上に達する.この地域の海面高度は8,700cal BP(8,000yrs BP)頃には現海面高度にあり,現海面上4~5m(8,500~8,400cal BP:7,700yrs BP頃),現海面上6m(8,100cal BP:7,300yrs BP頃)を経て,7,300cal BP(6,500yrs BP)頃に現在の海抜12mの高さに達した.その後,海面は次第に低下し,現海面上5~7m(3,000~2,000yrs BP),現海面上2~3m(1,500cal BP)を経て現在に至った.この特異な相対的海水準変動は,姶良カルデラの火山活動に伴う地殻変動が影響しているとみられる.8,100~8,000cal BP(7,200~7,300yrs BP)には,海進は内陸深く及び,溺れ谷が形成された.この時期,米丸マールを形成したベースサージは,別府川流域の内湾を大きく埋積した.その後,汀線は段階的に前進し,縄文時代後期(3,500yrs BP頃)には現在の海岸に近い位置にまで達した.約8,000~7,000cal BP(約7,300~6,000yrs BP)の時期に,池田カルデラ,桜島,鬼界カルデラでも大規模な噴火が起こり,縄文海進最盛期に形成された南九州のリアス式海岸は急激に変化した.
著者
吉野 正純 佐藤 哲生 北田 徳蔵 古川 左近 染谷 幸雄 橋詰 和宗 森地 敏樹
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1048-1053, 1987-12-25 (Released:2010-11-26)
参考文献数
15

生乳中の細菌数の測定で, Breed法の適用性の限界, 並びにBreed法による直接鏡検個体数 (全菌数) と標準平板培養法による生菌数との関係を, 別報のBactoscan 17600 (A/S N. Foss Electric, Denmark) の性能試験で得た成績を用いて検討した.生乳305点で, Breed法で求めた全菌数の対数値とBactoscanのインパルスのそれとの相関係数は, 0.936であったが, これをBactoscanのインパルス1000 (約50万/mlの細菌数に相当) 以下の場合, 1000~10000の場合, 10000以上の場合に分けると, それぞれ, 0.491 (n=70), 0.809 (n=144), 0.824 (n=91) となり, 最初のものは, 著しく低い値を示し, Breed法の適用性の限界が示唆された. また, Bactoscanのインパルスで1000以上を与える試料について, 全菌数の対数値と生菌数のそれとの相関係数は0.819であった. 生菌数を何倍すれば, 全菌数に見合う数値になるか調べるため, 生菌数に種々のファクターを乗じた値を求め, 対応する全菌数の, この積に対する比率の度数分布を比較した. この結果, ファクターが3.5の場合, 全菌数/(生菌数×ファクター) で計算される比が0.33~3.0の範囲に入る試料の (点数の) 割合が84.7%と最大となり, かつヒストグラムの形も左右対称に最も近かった. 即ち, 生菌数に, 3.5を乗じた値で, 直接鏡検個体数のオーダーを把握できることが明らかとなった. そして, この値は生乳中に分布する細菌の菌塊 (コロニーの形成単位) の平均個体数に相当すると考えられる.
著者
道廣 睦子 小林 廣美 若井 和子 佐藤 静代 齋藤 智江 竹内 美樹 森崎 由佳
出版者
徳島大学医学部
雑誌
JNI : The Journal of nursing investigation (ISSN:13483722)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.20-27, 2012-03

本研究は看護大学生のボランティア活動の実態を把握し,ボランティア活動の継続意志と,ボランティア活動成果・継続動機との関連を明らかにすることを目的とした.調査対象者はA県B大学看護学科学生1・2・3年生の230名で質問紙調査を実施した.有効回答は162名であった.看護大学生の約8割が大学入学前にボランティア活動の経験があり,大学入学後ボランティア活動をしていない学生は全体の8割で,理由として機会がない,忙しくて時間がない,アルバイトしている等があげられた.ボランティア活動を継続したい学生ほど,人生が明るく喜びが広がるなどの意欲向上や人間関係の広がりがあるなどの成果を認識しており,ボランティアの継続動機につながっていた.しかし,多くの学生に継続意志があるにも関わらず,大学入学後にボランティア活動をしている学生は約2割であった.「機会がない」を理由にしている場合は機会があれば積極的に活動することにつながることが考えられる.ボランティアの情報提供を行い,ボランティアの活動成果が実感できるような働きかけが必要であることが示唆された.
著者
森脇 広 新東 晃一 小林 哲夫
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.329-338, 1991-12-25 (Released:2009-08-21)
参考文献数
63

This paper outlines the previous studies of many Quaternary gigantic pyroclastic flow deposits widely distributed in Kyushu in terms of Quaternary studies: (1) age, distribution, and source, and (2) influence on the Jomon Culture of Kyushu in the Holocene and on late Pleistocene slope erosion of Yaku and Tane islands.Seven gigantic pyroclastic flows are recognized in the late Pleistocene: Koya (source: Kikai caldera, age: 6, 300yBP), Ito (Aira caldera, 21, 000-22, 000yBP), Aso-4 (Aso caldera, 70, 000yBP), Nagase (Kikai caldera, 75, 000yBP), Ata (Ata caldera, 85, 000yBP), Aso-3 (Aso caldera, 105, 000yBP) and Torihama (Ata caldera, 100, 000-150, 000yBP) pyroclastic flows. Co-ignimbrite ash falls associated with all of them are found in distal areas more than 1, 000km distant from their sources. The ages, estimated by stratigraphic positions of those ash falls as well as radiometric datings, indicate that the eruptions of gigantic pyroclastic flows concentrate in the early stage of the late Pleistocene. Those pyroclastic flows showing circular distribution extend to a distance of 100-150km from the source.In contrast, the age, distribution, and source of middle-early Pleistocene gigantic pyroclastic flows are not sufficiently clarified, except for the Aso-2, Aso-1, Kakuto and Shimokado pyroclastic flows in the late stage of the middle Pleistocene.A clear difference in Jomon pottery between the layer above K-Ah ash associated with Koya pyroclastic flows and that beneath it, is widely recognized in Kyushu, suggesting that Koya pyroclastic flows eruption played an important role in the change in Jomon culture.We can often recognize slope deposits, including blocks of Nagase pyroclastic flows deposits in Yaku and Tane islands. This may suggest that unstable conditions occurred on the slopes over a wide area around the Kikai caldera owing to this eruption.
著者
入江 正之 小松 幸夫 長谷見 雄二 田辺 新一 輿石 直幸 小松 幸夫 長谷見 雄二 田辺 新一 輿石 直幸 田中 彌壽雄 山森 誠 島田 斉 宗田 進史
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

スペイン、カタルニャ州のファッチェス離村集落にある18世紀末建設の伝統的石造民家マジア残存遺構の修復・再生の第二段階の完成、建築材料・工法分析、および温熱環境および室内空気質等の環境工学的計測のまとめ、建築作品「実験装置/masia2008」として紹介し、更にひとつを建築デザインワークショップ棟に、もうひとつをマジア農民資料館棟とした。この研究対象のある当該市庁を介した日本とスペインの国際的学術文化交流の実現を果たした。
著者
益田 裕充 鈴木 康浩 藤本 義博 片平 克弘 森本 信也 久保田 善彦
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究はPLCとDBSの理論に基づいて、教師の資質・能力形成のプロセスを明らかにし、理科授業を通して学び続ける新たな教師教育プログラムを開発することである。研究の成果として、理科授業の「問題解決の過程」をコアにした授業カンファレンス、リフレクションのプログラムが、「集団としての一般化」、「課題解決の連動性・適応性」を高めることが明らかとなった。
著者
橋本 俊顕 森 建治 原田 雅史
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

自閉症には脳の器質的障害があり、「心の理論」、実行機能、中枢統合機能などの機能不全が生じ社会性の障害、コミュニケーションの障害、想像力の障害の3徴候を示すと推測されている。このことから、社会のルール、特に明文化されない暗黙の了解、道徳的、倫理的事柄の把握が困難である。さらに、学校生活での問題行動や日常生活においての様々なトラブル、触法行為を起こしてしまうことも報告されている。本研究では自閉症児に見られるこのような問題行動と脳機能の関係を明らかにするために、倫理・道徳的場面を画像として課題負荷し、良い、悪いの判断を求め、その情報処理の過程の脳活動をfMRIを用いて測定した。対照は無意味図形とした。刺激は課題負荷45秒-コントロール課題45秒を2回、1シリーズ3分の構成のbox-carデザインで行い、判断できた合図は右手でスイッチを押させた。対象は高機能自閉症男児7名(11〜17歳)と健常男児3名(13歳)、健常成人7名、非自閉症のてんかん、Sotos症候群各1例の計19名である。検査に際しては保護者及び被験者に十分に説明し納得と同意を得た。健常者では側頭・後頭境界部〜側頭葉中部(左>右)、左右前頭葉背外側および前内側に活動性の亢進が見られた。高機能自閉症では前頭葉背〜腹(左<右)、前頭葉全部内側、頭頂葉〜側頭・後頭境界部〜側頭葉前部(左<右)に活性が見られた。その他、左中心前回、右前頭葉腹側および正中部に活性が見られた。自閉症と健常児の間では課題の正答率に差はなかった。課題の正答率に差がなかったがこれは課題内容が簡単であったことが想定されるが、実際の場面とこのような課題負荷では情動の影響が異なっていること、自閉症ではいかに行動すべきか解っているが実際に採るべき行動が採れない解離現象があることから、差が出なかったとも考えられる。fMRIの結果から自閉症では課題処理の系が健常者と異なることが想定されるが、さらに例数を増やし、課題の工夫をして検討することが必要である。
著者
鈴木 祥之 小松 幸平 下川 雄一 中尾 方人 北守 顕久 秦 正徳 中治 弘行 森 拓郎 須田 達 松本 慎也 向坊 恭介 向井 洋一 山田 耕司 後藤 正美 斎藤 幸雄 斎藤 幸雄 棚橋 秀光
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

伝統構法木造建築物では、仕口・接合部や耐力壁など構造ディテールの性能評価を含めた総合的かつ合理的な構造設計法は、いまだ確立されていない。本研究では、木材のめり込みなどによる仕口・接合部の耐力発現のメカニズムおよび土塗り壁や木造軸組の力学特性や破壊性状を実験的かつ解析的に解明するとともに、構造ディテールに基づく伝統木造建築物の設計法に適用するための評価手法を開発した。
著者
永田 真吾 東原 文子 高木 渉 大森 理佐
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.28, pp.324-327, 2012-08-25

小学校3年生が習得する程度の動作語の理解が困難な軽度知的障害者4名を対象に、動作語の指導を行った。指導にあたり動作語の意味を寸劇で表わすビデオ教材を作成した。これを用いて小集団指導したところ、教材視聴後にディスカッションを進めていく中で、一人ひとりの意見が不充分であっても、指導者の発問に対して4名で意見を出して練り上げていくことにより、単語の意味を構成する要素を満たしていくことが示された。
著者
永田 奈々恵 藤森 功 柏木 香保里 宮本 悦子
出版者
公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

プロスタグランジンなどの脂質(脂肪酸)は睡眠調節に関与することが知られている。一方で、睡眠は疲労回復や記憶の定着などに重要とされるが、これら睡眠の生理的意義の分子機構は解明されていない。本研究では、マウス大脳皮質でのmRNA発現レベルが明期と暗期で変動する脂肪酸輸送タンパク質brain fatty acid binding protein (FABP7の相互作用タンパク質としてGlycoprotein M6a (GPM6a)を同定した。更に、両タンパク質がマウス脳でも相互作用していることを確認し、FABP7とGPM6aがマウス脳で相互作用し機能している可能性を示した。
著者
福田 裕美 森田 健
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
no.15, pp.195-198, 2002-06-20
参考文献数
4

The purpose of this study was to investigate the effect of an intruder and partitions on personal space with reference domains of demonstrative pronouns and physiological responses. 1) The person's psychological territory could be expressed with demonstrative pronouns. 2) An intruder on personal space caused a decrease in the "kore" area and increase (p<0.01) in CV_<R-R> levels. 3) The "kore" area and BPmin tended to decrease (p<0.05) in the group who felt decrease in mental pressure because of setting a partition on personal space. 4) Mental pressure was not always in accord with the feeling of avoidance.
著者
森田 愛子 藤井 真衣
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.12, pp.269-277, 2012

本研究の目的は,どのような領域の子どもの発達に保護者が気づきやすいかを調べること,保育者を基準としたときの,保護者の気づきやすさについて検討すること,様々な種類の行動の発達に育児がどの程度影響すると保護者が思うかを検討することであった。6 領域20 項目の発達チェック項目に関し,保育園・幼稚園の3 歳児クラスの保護者72 名と保育者7 名,4 歳児クラスの保護者114 名と保育者3 名から質問紙で回答を得た。主な結果は以下のとおりである。保護者は生活技術の発達に最も気づきやすかった。3 歳児クラスの保護者は,言語理解の発達に比較的気づきにくいことがわかった。また4 歳児クラスの保護者は対人技術の発達について他の領域より比較的気づきやすいこともわかった。保育者の気づきやすさと比較しても,保護者の気づきやすさの得点は高いケースが多かった。ただし社会性の発達については,保育者のほうが気づきやすい傾向がみられる。育児の影響については,3 歳児・4 歳児クラスのいずれの保護者も,生活技術については,育児の影響が大きく,粗大運動の発達については育児の影響が小さいとみなしていた。