著者
佐藤 直樹 大屋 美那 渡辺 晋輔 山口 惠里子 大屋 美那 渡辺 晋輔 小針 由起隆 萬屋 健司
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ローマで活動した外国人芸術家たちの風景画を中心としたデータベースは、総データ件数が2996点にも達し、今後の美術史研究に有用なツールとなった。3年間にわたる本研究課題の研究成果は、論文集『ローマ-外国人芸術家たちの都』(竹林舎)として2013年秋に刊行予定である。本書以降、「近代都市と芸術」シリーズとして7巻の刊行が続くこととなり、19世紀の都市と芸術に関して新しい視点を美術史学に提供することが期待される。
著者
國分 尚 安藤 敏夫 渡辺 均 塚本 達也 MARCHESI EDUARDO
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.207-219, 2000-02-28

既に報告したウルグアイにおけるPetunia axillaris subsp. axillarisとsubsp. parodiiの中間型の由来について考察するため,野生種子由来のsubsp. axillarisとsubsp. parodiiから正逆組み合わせのF_1,さらにF_2個体を育成し,花器形態の遺伝様式を調査した。特に,ウルグアイの2亜種を区別する重要な形質でありながら,今まで無視されてきた雄ずいの状態(2強または4強)に注目し,以前の研究者にも取り上げられている花筒長および花冠径とともに計測した。また,花筒長/花冠径比と,Kokubun et al.(1997;植物分類,地理48巻:173-185)の判別関数Z_<12>による判別得点を2次変数として分析に供した。その結果,各形質は量的に遺伝していたが,4強雄ずいはF_1個体には現われず,F_2になって初めて出現し,あたかも劣性遺伝子のようにふるまった。Subsp. axillarisとsubsp. parodiiよりも分散が大きく,それはsubsp. axillarisを母親にしたF_1個体にも継承された。F_1,F_2個体とも,計測値はおおむね両親の値の範囲に分布した。正逆の組み合わせを比較した場合,計測値は母親の値に近く,特にsubsp. axillarisを母親とした場合,subsp. axillarisとF_1・F_2個体の値の分布に重なりが見られた。このことは判別得点についても言え,前報でsubsp. axillarisと判定された群落の中にもsubsp. parodiiの遺伝子が浸透している可能性が示唆された。F_2個体では花筒が長いほど4強雄ずいに近くなる(subsp. parodiiに似る)傾向が示された。Colonia州のLa Plata川沿いに見られた中間型は本研究で得られたF_2個体の一部に似ており,この中間型が雑種起源である可能性が認められたが,FloresおよびSoriano州のNegro川下流域に見られた小輪の花をもつ中間型はsubsp. axillarisとsubsp. parodiiの交雑だけで説明することは難しいと思われた。
著者
入澤 千晶 石郷岡 学 渡辺 博幸 石井 延久 鈴木 騏一 菊地 悦啓
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.1193-1196, 1990-10

We have experienced 2 cases of intracavernous induration after injuries to the external genital parts caused by a motorcycle tank. Case 1. A 28-year-old male was admitted to our department complaining of painless indurations of the penile radix. Cavernosography showed segmental filling defect in left corpus cavernosum. Because erectile disturbance was noted, resection of the induration was carried out. Microscopic section of the excised tissue showed only fibrosis. Case 2. A 20-year-old male visited our clinic with chief complaints of induration of the penile radix and erectile disturbance. Corpus cavernosography demonstrated filling defect in bilateral corpus cavernosum. We recommended the resection of the indurations, but the patient refused. A brief review on etiology and therapy of intracavernous fibrosis was made.
著者
上田 実 入江 一浩 渡邉 秀典 品田 哲郎 小林 資正 叶 直樹 岡本 隆一 松永 茂樹 井本 正哉 半田 宏 渡辺 肇 佐々木 誠 木越 英夫 西川 俊夫 石橋 正己
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

共同研究による本学術領域の推進により、多くの天然物の標的決定が行われた。これは、天然物化学者と生物学者の共同研究によって、ビーズテクノロジーの天然物への応用が拡大したこと、ならびに数多くの標的同定法が試行されたためである。これらの成果によって、多くの天然物が種標的と同時に複数のオフターゲットと結合することが明らかになった。天然物リガンドは、従前の理解のように、生体内において「鍵と鍵穴」の様に極めて特異性の高い作用機構を持つのではなく、生体内で「鍵束」のように機能し、複数の錠前と相互作用することを示している。本領域の研究成果によって、天然物リガンドの作用に関する理解は大きく変化したと言える。
著者
渡辺 朝一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.S5-S11, 2014 (Released:2014-05-01)
参考文献数
26

ハゴロモモ(フサジュンサイ) Cabomba caroliniana は,北米大陸南東部と南米原産の沈水植物である.水槽植物として世界各地に持ち込まれ,日本列島でも,本州,九州,四国,北海道に定着している.しかし,被害に係る知見が不足しているために,特定外来生物種ではなく要注意外来生物種となっている.そこでハゴロモモと水鳥類の関係を明らかにするために茨城県清水沼で2011年4月から2012年3月にかけて調査を行なった.その結果,コハクチョウ,オオハクチョウ,オカヨシガモ,ヨシガモ,ヒドリガモ,マガモ,オオバンがハゴロモモの水中茎および沈水葉を採食していることを確認した.今後は水鳥がハゴロモモの分布拡大にどのようにかかわっているか,水鳥による摂食がハゴロモモにどのような影響を与えるのかについての調査が必要である.
著者
堀内 清華 石黒 精 中川 智子 庄司 健介 永井 章 新井 勝大 堀川 玲子 河合 利尚 渡辺 信之 小野寺 雅史
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.526-532, 2012 (Released:2012-12-31)
参考文献数
13
被引用文献数
3

IPEX(immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, and X-linked)症候群は1型糖尿病や甲状腺機能低下症などの多発性内分泌異常,難治性下痢,易感染性などを主症状とし,転写因子forkhead box P3(FOXP3)遺伝子の変異による制御性T細胞の欠損や機能低下を原因とするX連鎖性の原発性免疫不全症である.1型糖尿病,甲状腺機能低下症に難治性下痢を合併し,IPEX症候群と考えられた12歳女児例を報告する.患児は10歳時から下痢が遷延化し,著明なるいそうが認められた.12歳時に行われた消化管内視鏡所見と病理所見からクローン病と診断され,5-アミノサリチル酸製剤に加えてプレドニゾロン,アザチオプリン,インフリキシマブによる治療を要した.その結果,便性の改善ならびに炎症反応の低下など一定の治療効果が認められたが,プレドニゾロンの減量により下痢が増悪して体重も減少し,治療法の選択に難渋した.患児は2歳時に1型糖尿病を,3歳時に甲状腺機能低下症を発症しており,難治性腸炎とあわせてIPEX症候群でみられる臨床像を呈していた.ただ,本症例ではCD4+CD25+ T細胞中のFoxp3の発現は低下していたがFOXP3遺伝子には異常を認めなかった.過去の報告においてFOXP3遺伝子に変異のないIPEX症候群例では易感染性を認める場合が多いが,本症例では反復する細菌感染は認められなかった.
著者
山本 愛佑子 渡辺 裕
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.6, pp.1-2, 2014-02-14

HTML5 では,ビットマップ形式のデータを扱う Canvas,ベクター形式のデータを扱う Inline SVG がサポートされ,JavaScript ベースで HTML 内に図形や画像を直接記述できる.しかし,Flash,Java などのプラグインを使用した場合と比べ,描画パフォーマンスが劣るという問題点がある.本研究では,Canvas および SVG における従来の描画パフォーマンス高速化手法の比較を行った.さらに,描画する要素に対して最適な手法を自動選択し,適切な手法で描画するアルゴリズムを提案する.In HTML5, Canvas dealing with data of the bitmap and Inline SVG dealing with Data for vector are supported. Thus we can directly describe image or graphic in HTML, by the JavaScript. However, drawing performance is not good compared with the plugins such as Flash or Java. In this paper, we sinvestigate the performance of traditional approaches to increase drawing speed. Finally, we propose an algorithm to select the best approach automatically.
著者
篠塚 香里 横張 真 栗田 英治 渡辺 貴史
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.825-828, 2003 (Released:2003-09-24)
参考文献数
9
被引用文献数
4 10

Pot plants are a feature of densely built-up residential areas. Interest in pot plants has recently grown. As well as fulfilling the practical role of citizens’ leisure pursuit, they blur the boundary between private and public space and reflect residents’ cultures and identity. Pot plants have a useful function, but in reality are difficult to plan for without knowing whether their placement and variety is affected by urban physical characteristics. The aim of this study is to characterize the location, placement and species of pot plants in a densely built-up residential area. Three sets of data were collected, 1) the percentage of green areas formed by the pot plants’ in a street view, 2) the physical characteristics of the spaces in which the pot plants were present, 3) the species of pot plants used. It was found that, 1) on average pot plants occupy more than 50% of the green area in a street view, 2) the favored position of pot plants is on the entry step to houses, 3) the study identified that the plants that are preferred, share the characteristic of being easy to grow, good to eat, pretty to look at but that also carry a deeper cultural significance.
著者
渡辺 誠衛 大野 剛 田口 隆信
出版者
秋田県総合食品研究所
雑誌
秋田県総合食品研究所報告 (ISSN:13453491)
巻号頁・発行日
no.9, pp.20-26, 2007
被引用文献数
4

「色は琥珀色、香りは果実・花様で、さわやかな酸味のファッショナブルでリーズナブルな日本酒」をコンセプトに、アルコール4?5%の新タイプの清酒の開発を目的とした。果実・花様の香りはρフルオロフェニルアラニン(FPA)耐性株からβフェネチルアルコール・酢酸βフェネチル高生産株を分離し、ほのかなバラ様の香りを付与した。さらに、その酵母からレプリカ法により、アルコール感受性酵母から低アルコール生成酵母を分離した。さわやかな酸味は、清酒製造場から分離した優良乳酸菌を利用し、琥珀色は85℃で処理した焙煎麹を用いた。また、トランスグルコシターゼ酵素を用いることにより、非発酵性オリゴ糖の含有量を高め、味にふくらみを付与することができた。試作品は、ほぼ目標の成分と酒質となり、新しいタイプの清酒の1つの製造方法として提示することができた。
著者
渡辺 美樹
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

王権神話における王と道化の関係を軸にして作り上げられたファンタジー『指輪物語』はファンタジー文学の嚆矢であるばかりかジャンルの支配的なテクストとして存在している。架空の世界を構築するファンタジーのジャンルの特徴として、対立する概念をすり抜ける存在を主人公に持つ必要がある。また特に王権神話にまつわる物語の場合には王権の起源への回帰を果たすことで読者に慰めや郷愁を与えたりするという特徴を持つ。
著者
長谷川 克 渡辺 守
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.105-114, 2008-09-25
被引用文献数
1

翅に色彩2型を生じるモンキチョウの雌に対する雄の配偶者選択を,雌が未交尾の場合と既交尾の場合に分けて調べた.この選択実験において,雄とモンシロチョウの雌も本種雌の2型とともに呈示し,それらに対する行動も記録した.処女雌を呈示したとき,雄は飛来時に黄翅型を選好し,どちらの翅型に対しても同様にしつこく求愛した.一方,既交尾雌を呈示したときの飛来時の選好性には偏りが見られず,飛来後の雄は白翅型雌に対してしつこく求愛した.本種雄は雌の交尾経験の有無によって,配偶者選択を変化させていることが示唆される.雌の翅のみを呈示した場合,雌の交尾拒否行動を模した翅モデルは効果的に雄の求愛行動を減少させたが,この場合においても雄は黄翅型雌の翅を選び,求愛のしつこさは2型で変わらなかった.このことは,翅の表面という視覚的な刺激のみでは2型間への雄の好みを変更させられないことを意味している.呈示した雄やモンシロチョウの雌は飛来時,あるいは初期の行動段階において雌と区別されており,これらの個体の存在が雄の配偶者選択に影響している可能性は低い.
著者
渡辺 智恵 青木 信之
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

英語eラーニングにおける自律的学習者の養成を支援するための「eポートフォリオ」を構築し、その有効性について検証を行った。その結果、統計的には有意な結果ではなかったが、ログイン回数が多く、学習時間が長く、教材消化率の高い受講者、すなわち熱心な受講者はeポートフォリオをより利用する傾向があり、逆に、ログイン回数が少なく、学習時間が短く、教材消化率の低い受講者はあまり利用しないことが明らかになった。
著者
石井 良幸 渡辺 昌彦 山本 聖一郎 千葉 洋平 石原 雅巳 奈良井 慎 寺本 龍生 北島 政樹
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.2307-2311, 1997-12-01
参考文献数
10
被引用文献数
11

先天性 AT-III 欠乏症を伴う広範な静脈血栓症が誘因となり腸閉塞をきたし, 開腹手術および保存的治療によち軽快した症例を経験したので報告する. 症例は38歳の男性で, 平成7年1月2日に他院にて急性腹症の診断のもと開腹され, 特発性腸間膜静脈血栓症による腸膜壊死に対し空腸部分切除術が施行された. 退院後, 嘔吐が出現し, 近医にて腸閉塞と診断され保存的に治療されていたが軽快せず, さらに門脈血栓症が認められたため, 3月20日に当科に転院となった. 精査にて先天性 AT-III 欠乏症と診断, また小腸に強度の狭窄を認めたため保存的治療を行いつつ, 5月10日に腸閉塞解除術を施行したが血栓症の増悪なく, 7月30日に軽快退院した. 本症例は先天性 AT-III 欠乏症が基盤にあり, 腹部の広範な血栓症を伴っていたが, AT-III 製剤やヘパリン, ワーファリンの投与により術後血栓症を回避し救命しえた貴重な1例である.
著者
菅山 謙正 渡辺 勉 高木 宏幸 五十嵐 海理 住吉 誠 前川 貴史
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、英国を代表する言語学者Richard A.Hudsonが新たに開発し、改良を重ねているWG理論(New Word Grammar,NWG)の枠組みを把握し、その認知文法的、あるいは構文文法的影響を探ることであった。3年間に亘って予定していた研究計画に従い、これをほぼ遂行し、NWGの修正点、改良点を明らかにし、言語理論として有望であると結論付けた。研究成果は、論文としても公刊したが、2011年中にはKyoto Working Papers in English and General Linguistics Vol.1、『ハドスンの英文法』として開拓社よりそれぞれ、論文集、書籍として刊行する。
著者
渡辺 孝弘 李 七雨 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.1571-1580, 1997-06-25
被引用文献数
43

本論文では, インタラクティブシステム構築に適した動画像からの実時間ジェスチャ認識手法について述べる. 本手法は, ジェスチャを行う特定部位の部分画像を低次元のジェスチャ空間内で表現することによって, 大量の動画像情報を効率的に処理するものである. まず, 画像中からジェスチャを行う特定部位がMaskable Template Model (MTM) を用いて実時間でロバストに抽出される. MTMとはさまざまに変形する物体との柔軟なマッチングが行えるように, 従来のテンプレートマッチングの手法を我々が改良したものである. 次に, その抽出された部位画像系列をジェスチャ空間に投影して入力ジェスチャ曲線として表現し, この曲線とモデルジェスチャ曲線を比較することによってジェスチャを認識する. ここでのジェスチャ空間は, モデルジェスチャの部位画像系列をKL展開することによってあらかじめ構成しておく. 我々は, 本手法を利用して実時間インタラクティブシステムー仮想指揮システムを実現した. 本システムは, ユーザが行う指揮者のジェスチャを認識して, 計算機が奏でる音楽を実時間で制御するもので, 本手法の有効性を示すものである.
著者
谷本 芳美 渡辺 美鈴 杉浦 裕美子 林田 一志 草開 俊之 河野 公一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.683-690, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
26
被引用文献数
6

目的 本研究では高齢者の介護予防に向けた健康づくりを支援するために,わが国の地域高齢者を対象とし,筋肉量,筋力および歩行速度から判定したサルコペニアと関連する要因について明らかにすることを目的とした。方法 大都市近郊に在住する65歳以上の高齢者1,074人を対象にバイオインピーダンス法を使用した筋肉量測定と握力,通常歩行速度の測定を行った。また,自記式質問紙で,属性•慢性疾患の既往と過去 1 年間の入院歴,生活習慣に関する項目,心理状況,口腔の状況および食事の状況を調査した。サルコペニアの判定には筋肉量,握力,通常歩行速度を用いた。筋肉量は測定した四肢筋肉量を身長2 で除して補正四肢筋肉量(kg/m2)として扱い,若年成人における平均値から 2 標準偏差以上低い場合を低筋肉量とした。握力と通常歩行速度については対象者の 4 分位の最下位をそれぞれ低筋力および低身体機能とした。サルコペニアの分類は低筋肉量かつ低筋力または低身体機能の者をサルコペニア,低筋肉量でも低筋力でも低身体機能でもない者を正常,そしてサルコペニアでも正常でもない者を中間と分類した。結果 男性の13.7%,女性の15.5%がサルコペニアに該当した。男性のサルコペニアではかめない者,および食品摂取の多様性がない者が有意に多いことを示した。女性のサルコペニアでは独居者,運動習慣のない者,健康度自己評価において健康でないとする者,かめない者が有意に多いことを示した。さらに,単変量解析においてサルコペニアと関連する因子を説明変数としたロジスティク回帰分析では,男性においてサルコペニアと正常との比較では年齢(オッズ比1.24:95%信頼区間1.13–1.36)および食品摂取の多様性(オッズ比3.03:95%信頼区間1.17–7.86)がサルコペニアに有意に関連した。女性ではサルコペニアと正常との比較において年齢(オッズ比1.26:95%信頼区間1.19–1.33)と咀嚼(オッズ比3.22:95%信頼区間1.65–6.29)がサルコペニアに有意に関連し,中間と正常との比較においても,中間にはこれら 2 項目が関連した。結論 地域高齢者において,サルコペニアには,男性と女性での年齢,男性での食品摂取の多様性,女性での咀嚼が関連することが明らかとなった。このことから高齢期の健康づくりにおけるサルコペニアの予防には食品摂取や咀嚼といった栄養に関する要因に注意を払う重要性が示唆された。
著者
内田 靖 雫 稔弘 山本 俊 赤木 収二 渡辺 誠 木下 芳一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.322-326, 1999-05-25 (Released:2010-02-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

症例は74歳男性, 無職. 平成6年11月23日, 発熱と肝機能異常にて当院内科に入院. 原因は特定されず約2週間後に自然に解熱し, 退院となった. 平成7年3月中旬から再び同症状が出現したため, 4月5日再入院. 38℃台の発熱が持続したが, 検査所見ではCRP強陽性, 中等度の肝機能異常を認める以外に著変なく, 肝炎ウイルスおよび他のウイルスマーカーも全て陰性であった. この際初めて, 平成6年9月から初回入院迄, および退院後から再入院迄, 健康食品であるクロレラ製剤の服用が明らかとなった. そのため同製剤の服用中止にて経過観察し, 解熱および肝機能の改善が認められた. 同製剤に対するリンパ球刺激試験は陽性であり, 臨床経過から偶然の再投与による肝機能障害と考えられた. 以上から, クロレラ製剤による薬物性肝障害と診断した. 解熱後施行した腹腔鏡検査所見および肝組織像も薬物性肝障害に矛盾しないものであった.