著者
田中 伸
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 : 日本教育方法学会紀要 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.39-50, 2011-03-31

本論文は,シティズンシップ教育実践とその授業構成論の違いを市民性意識の関係から帰納的に明らかにすることで,学習環境を分析する方法論を検討するものである。本研究は,従来一般的に採られてきた諸外国で実施しているシティズンシップ教育に関わるカリキュラムや教材,授業分析から演繹的な方法で学習原理やその実効性を明らかにするという方法論ではなく,子どもの持つ市民性意識が教師による教育実践とどの程度接近しているかに焦点を当て,帰納的にシティズンシップ教育実践の違いとその論理を解明する。研究の手続きは,まず研究方法論を明確にする。次に同じ題材を扱った英国と日本の市民性教育実践を分析,最後に子どもへの市民性意識調査の分析結果をもとに両国の授業構成論の相違並びにその根拠を検討した。分析の結果,まず両国のシティズンシップ教育実践が大きく異なっており,そこには両国の市民性意識の違いがあることを明らかにした。具体的には,政治的市民育成を求める英国シティズンシップ教育は,社会で行われている行動を学校で再現し実際に議論・活動する必要から,実態的活動に基づく授業構成であること。日本のシティズンシップ教育は,子ども達の判断基準が儒教的道徳などの非論理的観点に操作されており,教育にて分析的思考へと修正・改善・発展させてゆく必要性から,論理的思考育成へ向けた分析的活動に基づく授業構成が組織されていることを明らかにした。
著者
納富 信留 栗原 裕次 佐野 好則 荻原 理 大芝 芳弘 田中 伸司 高橋 雅人 土橋 茂樹 田坂 さつき 近藤 智彦
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

古代ギリシアにおける「正義」概念を明らかにし、現代社会の諸問題に応える目的で、プラトン『国家』(ポリテイア)を共同で検討した。その研究成果は、将来まとめて欧文研究書として海外で出版することを目標に、国際学会や研究会で報告され、欧文論文として海外の雑誌・論文集に発表されている。2010年夏に慶應義塾大学で開催された国際プラトン学会大会(プラトン『国家』がテーマ)では、メンバーが運営と研究の中核として、内外の専門家と共同で研究を推進した。
著者
田中 伸之輔 南谷 圭持 中村 優花 平田 謙次 松本 裕希子 原 有希
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR MANAGEMENT INFORMATION (JASMIN)
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
pp.143-146, 2024-01-31 (Released:2024-01-31)

本研究では、組織開発の構造的・技術的側面だけでなく人間的側面を重視する方法として開発された「人間中心設計・実践コミュニティに基づく組織開発手法」が、A社内に導入・展開された約3年のプロセスを事例分析した。その結果、従業員が「組織開発の主体」に成長する、対話型の学習・実践プログラムが段階的に設計されていたこと、人間の認知・感情・行動に着目する人間中心設計の考え方が、従業員のポジティブな感情体験を生み出す組織文化を支えていたことが示された。
著者
田中 伸彦 梶田 佳孝 平沢 隆之 髙橋 美里 霜田 孝太郎 中村 麟太郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.245-249, 2023-09-07 (Released:2023-09-07)
参考文献数
12

日本の地方におけるMaaSシステムの高度化を念頭において、高知県室戸地域の9市町村を対象に、「ある地域の来訪目的地(destination)と宿泊地(accommodation)の集積状況は地理的に異なる部分がある」という操作仮説を置いて、5×5フィルタリング法を用いた分析を行った。その結果、操作仮説は支持され、両者のメッシュ得点の相関係数は0.041と低い値になることを示すことができた。ただし、この相関関係の低さは、宿泊地(accommodation)の集積地は来訪目的地(destination)の集積地と対応するが、逆は真ならずという関係性にあることに起因することが示唆された。つまり、地方におけるMaaSを高度化するためには、導線としての二次交通(transportation)について、この様な地理的分散に配慮した計画が必要であるということが提言できた。
著者
榊原 直樹 増田 藍 井口 匠 築地新 建太 田中 伸之輔 丸山 幸伸
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.363-372, 2023-11-25 (Released:2023-11-25)
参考文献数
10

Dark patterns are designs that intentionally lead website users toward choices that are detrimental to their best interests. In recent years, the use of dark patterns on websites has grown, becoming a global issue. While typical dark patterns on websites are well-known, those associated with IoT devices remain less understood. In this study, we conducted two workshops to explore dark patterns in IoT products and identify associated risks. In the first workshop, we created a matrix to categorize existing dark patterns in IoT devices and conceptualize new approaches. In the second workshop, we developed a customer journey map to scrutinize dark patterns from the customer's point of view. Subsequently, we evaluated the effectiveness and limitations of our research methodology for identifying these risks. Our findings suggest that using a customer journey map provides several advantages over traditional methods based on existing classifications: it allows for contextual understanding of the product or service, enables a comprehensive examination of the entire process, and encourages consideration from the user's perspective.
著者
香川 隆英 田中 伸彦
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.201-204, 1995-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

我が国における森林の風致施策は, 明治6年の「官林調査仮条令」において, 社寺林を風致林として保護するところから始まる。その後, 今日までの120年の間に様々な歴史・変遷の過程を経ながら, 森林の風致施策は展開してきた。その風致施策の2本の柱は, 保安林制度の中での施策と, 国有林におけるレクリエーションの森を代表とする施策である。本論では, 保安林制度における, 風致保安林と保健保安林について, 保安林制度及び森林風致施策の歴史の中での位置づけを明らかにする。
著者
加古原 彩 三浦 雄一郎 福島 秀晃 布谷 美樹 田中 伸幸 近藤 克征
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.137-143, 2006 (Released:2007-01-30)
参考文献数
7

In this article, we describe physical therapy for a case of decline in muscular strength caused by axillary nervous paralysis with a dislocation of the shoulder joint. This case was characterized by difficulty in flexional movement in the scapulothoracic joint in primary flexion of the shoulder joint because of the adduction and lift of the scapula. We defined the alignment on the several phases that the specific movement of scapula appears. We practiced scapula alignment and performed electromyographic assessment. In this case, in addition to a decline of muscular activity in the deltoid muscle, the upper, middle and lower fibers of the trapezius muscle started to move before the anterior fibers of the deltoid muscle. So, we supposed that this phenomenon caused the disorder, the specific movement of the scapula. We observed the start of activity of the deltoid and trapezius muscles and administered a pendular movement as a therapeutic exercise. Improvement in both excursion of flexion and in patterns of muscular activity in the deltoid and trapezius muscles were confirmed. Furthermore, with repetition of kinesiatrics in the sitting position on the edge of a bed following results was acquired; an increase in muscular activation in the anterior fibers of the deltoid muscle and a muscle activation with same order. This lead to improvement of stability of the scapula because of a decrease in adduction and lift of the scapula in the start position. From the above, we suggest that choice of the method of kinesic therapy, paying attention to the posture of patients and paying attention to the stability of scapulothoracic joint is important.
著者
鈴木 渉 中村 文彦 有吉 亮 田中 伸治 松行 美帆子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00169, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
12

鉄道駅での改札通過データには,乗車券単位で駅での入出場の情報が長期的に記録されており,利用頻度や利用時刻といった個人単位の交通行動データの取得が可能である.そこで本研究では,昨今の急速な社会情勢の変化に伴う,個人ごとの利用頻度や利用時刻の変化に着目し,習慣的な鉄道利用減少の特性を明らかにすることを目的とする.まず,各々の変化量と,年齢や性別,券種といった個人ごとの属性との関係性を整理した.そして,重回帰分析を用いて,習慣的な鉄道利用が減少した人の中でも,定期利用でなくなった若年層の利用習慣の変化がより大きい可能性があること,また定期利用でなくなった若年層であるほど乗車時刻が変化した一方,定期利用を続けており年齢の高い層ほど乗車時刻が変化していない可能性があることを,定量的に明らかにした.
著者
富田 昌平 田中 伸明 松本 昭彦 杉澤 久美子 河内 純子 辻 彰士 湯田 綾乃 松尾 美保奈 松浦 忍 松岡 ちなみ Tomita Shohei Tanaka Nobuaki Matsumoto Akihiko Sugisawa Kumiko kawachi Junko Tsuji Akihito Yuta Ayano Matsuo Mihona Matsuura Shinobu Matsuoka Chinami
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.493-502, 2020-02-28

本研究では,幼稚園のカリキュラムの中にさりげなく埋め込まれている数学的活動に焦点を当て,幼児教育と数学教育という2つの異なる専門的視点から,幼児による経験や学び,実践の意味について分析し考察した。具体的には,幼稚園のクリスマス行事におけるサンタクロースからの贈り物に見られる幼児の分配行動を観察し,その記録を分析の対象とした。3歳児では1対1対応の分離量の分配,4歳児では集合した分離量の分配,5歳児では連続量の分配が課題として与えられた。新しい幼稚園教育要領(2017年3月改訂,2018年4月施行)のもと,「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」の設定に見られるように,幼児教育と小学校教育との円滑な接続はより一層求められている。本稿で取り上げた数学的活動は,10の姿のうちの「数量や図形,標識や文字などへの関心・感覚」に関わるものであり,そこで見られた幼児の姿は小学校以降の算数教育へとつながっていく姿である。本稿では,小学校教育とは異なる幼児教育の独自性について改めて確認するとともに,今後,こうした具体的な姿を小学校側にいかに伝え,つなげていくかがが議論された。
著者
福山 大地 田中 伸治 中村 文彦 有吉 亮 三浦 詩乃
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.A_161-A_166, 2019-02-01 (Released:2019-02-06)
参考文献数
8

我が国では自転車の信号制御に関して議論が少ない。車道を走行する自転車は車両用信号に従うものとされているが、車両用信号のクリアランス時間は自動車の速度で決められているため、自動車よりも速度の遅い自転車には十分な時間が確保されておらず、信号切り替え時に交差点に残存するおそれがある。本研究では、信号交差点観測調査を実施し、信号切り替え時の自転車のクリアランスに関する問題の把握を行った。その結果、交差点の信号制御や幾何構造等様々な要因によって残存の起こる割合が異なることがわかった。また、交差点ごとに観測した自転車の速度で算出したクリアランス時間は現在設定されている車両用信号の値より長く必要であることが示された。以上の観測調査の結果を踏まえ、自転車を考慮した信号制御の指針作成のための知見を述べた。
著者
山下 真理子 田中 伸一郎 大瀧 純一 古賀 良彦
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.15-25, 2016 (Released:2016-03-31)
参考文献数
41

本研究は,外来受診中のうつ病患者を「職場関連群」と「非職場関連群」に分類し,精神状態と性格要因・環境要因との関連を検討することを目的とした。A大学病院精神科外来を受診したうつ病患者にHAM-D評価面接とY-G性格検査,診療録より背景調査を実施した。結果,HAM-D得点は,「職場関連群」1点から28点(mean±SD 13.5±6.6点),「非職場関連群」3点から29点(mean±SD 15.4±9.8点)。Y-G性格検査は,「職場関連群」でA型5名(38.5%),E型4名(30.8%),D型2名(15.4%),B型1名(7.7%),C型1名(7.7%)。またHAM-D得点とD抑うつ性,I劣等感に正の相関が見られた。 「職場関連性」のうつ病ではA型とE型が多く見られ,それぞれの環境への適応性を考慮すると,A 型は従来の休息と薬物療法を主とした介入で改善することが見込まれるが,元々不適応を起こしやすいE型は,劣等感を和らげるようなアプローチを含む認知行動療法等を積極的に行う必要性が高いと考えられた。
著者
田中 伸哉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.136-145, 2019-04-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
14

1990年代以降,多くの骨粗鬆症治療薬が開発されてきた.しかし,現存の骨粗鬆症治療薬では効果不十分な症例にしばしば遭遇する.最新の骨粗鬆症治療薬は高い骨同化作用と骨折抑制効果が証明されており,そのような症例に対しても効果が期待できる.骨粗鬆症治療は長期的な戦略が必要であるが,これらの骨粗鬆症治療薬を適切に使用することにより戦略は飛躍的に進歩する.最新の骨粗鬆症治療薬の概略と治療戦略上の位置付けについて解説する.
著者
田中 伸和 江崎 伸一 讃岐 徹治
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.39-45, 2020

<p>小児気管支異物は,急性期症状が見逃された場合,難治性肺炎として治療されることがある。さらに異物反応の慢性化に伴い摘出に難渋する。今回われわれは,滞留期間の違いで治療経過の異なる小児気管支異物の2例を経験した。症例1は1歳2カ月女児。節分豆を誤嚥した直後から24時間以内に診断・摘出し,良好な経過をたどった。症例2は1歳7カ月男児。持続する咳嗽から肺炎を疑われ,近医で2週間治療され,後の病歴聴取からアーモンドチョコレートの誤嚥が契機だったと判明した。泣き止まないことを主訴に総合病院救急外来を受診し胸部CTで縦隔気腫,頸胸部皮下気腫,左主気管支の陰影と左肺野過膨張を認め,気管支異物が疑われ,当院へ救急搬送され緊急手術となった。硬性気管支鏡で異物の同定が困難なため気管切開術を施行した。経気管孔的に鼻咽腔内視鏡を挿入したが,気管内の炎症が強く異物を摘出できなかった。全身管理と抗菌薬による肺炎治療を行い,硬性気管支鏡下で異物を摘出し救命しえた。長期滞留の影響で気管内の炎症が強い場合,複数回の手術も視野に入れた治療選択を検討すべきと考えた。</p>