著者
田中 祥人 山田 浩之
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 = Ecology and civil engineering (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.91-101, 2011-12-31
参考文献数
29

2006年に北海道北部に国内で 2 基目となるハイブリッド伏流式人工湿地が設置された.自然の浄化能力を応用したこの湿地は,浄化能力の高さが認められ,最近注目を集めている.しかし,その処理水は依然として高い環境負荷を持っていることが考えられ,それが流入する河川の生物生息場環境の悪化が懸念される.この人工湿地だけではなく水系全体として浄化機能を発揮し,更なる環境との調和を展開するためには,その処理水の流入河川の生物の生息場所を悪化させないように,河川の浄化能力に適した処理水の負荷量に設定される必要がある.しかし,そうした高負荷の処理水が流入する小河川での水環境や生物相に関する報告は限られていることから,まずはその処理水の影響について事例を蓄積しておく必要がある.そこで,本研究では人工湿地の処理水が流入する酪農地域の小河川で水環境および生物相の実態を把握し,さらに生残実験によって処理水が水生生物に及ぼす影響について検討することを目的とした.生物相・生息場所環境調査の結果,処理水の流入する下流区間ではその上流区間と比べて DO 濃度が低く,NH<sub>4</sub><sup>+</sup> 濃度,COD 濃度が高いことがわかった.また,出現する生物種は少なく,極めて貧弱な生物相であることがわかった.下流区間のみで低酸素の環境に耐性をもつユスリカ科の一種が優占していたのも特徴的であった.調査地近隣に生息しているオオエゾヨコエビ,スジエビ,ドジョウの 3 種を対象に生残実験を行った.その結果,各種の生残率は上流と比べて下流区間で低くなった.各種生残率と環境変量に対して相関分析を行った結果,各種生残率は DO 濃度,NH<sub>4</sub><sup>+</sup> 濃度,COD との間に強い相関が認められた.これは有機物の酸素消費に伴う DO 濃度低下と NH<sub>3</sub> 毒性の影響によるものと考えられた.対象河川の生物種が少なかったのは,人工湿地運用前の有機汚濁の影響が大きいと考えられる.しかし,生残実験結果から処理水流入にともなう溶存酸素低下やアンモニアの毒性など,運用後も生物の生存を制限する要因が残存していることがわかった.今後は酪農雑排水に起因する有機汚濁の生物相に対する影響や生物の耐性をさらに詳しく調べるとともに,物質収支解析などの定量評価に基づいて,処理水放流による自然河川の変化を予測できるようにする必要がある.それらを踏まえて,河川の浄化能力に収まる処理水の負荷量が設定されることが望まれる.
著者
田中 傑
出版者
関東都市学会事務局
雑誌
関東都市学会年報
巻号頁・発行日
no.13, pp.79-93, 2011-10
著者
羽生 宏人 和田 英一 丹羽 崇博 近藤 靖雄 川村 尚史 丸山 信也 岡村 彩乃 山科 早英良 永井 康仁 中道 達也 上道 茜 田中 成明 小林 直樹 笠原 次郎 森田 泰弘
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
航空宇宙技術 (ISSN:18840477)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.15-21, 2010 (Released:2010-05-14)
参考文献数
6
被引用文献数
1

The educational hybrid-rocket was successfully launched and it also landed within the predicted area. Aerodynamic characteristics of the rocket designed by students of Tsukuba University were evaluated by the wind tunnel testing with the support of Tokai University. The flight path affected by the environmental condition, especially wind direction and velocity, was simulated with the original calculation program. The altitude of the rocket was measured with the optical equipment and the apex was 123 m although the calculation indicated 198 m. We expected that the insufficient filling or the volatilization of Nitrous oxide as an oxidizer led to this result. And then, the apex was verified with a function of the oxidizer filling ratio. The results showed that 81.2 % of the oxidizer volume in comparison with the firing test condition was accumulated in the tank at the launch.
著者
宇佐美 しおり 西阪 和子 田中 美恵子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成18年度は九州管内の私立K精神病院にて、海外のアサーティブ・トリートメントモデル(以後ACT)が日本の精神障害者を対象として実施できるのかどうか、についてのパイロットテストを行った。GAF35以下、入退院を繰り返すか長期入院の患者で本調査に同意の得られた統合失調症患者5名(介入群)にACTを実施し、その評価を病状、日常生活機能、社会的機能、ケア満足度で行い、また介入内容を記録に残し、介入内容の検討を行った。介入は海外のスタンダードにそって実施し、介入にあたってはスタッフ訓練を行った。これらの結果を対照群5名の結果と比較した。その結果、ACTチームのフィディリティスケールが若干低いこと、地域資源をチームメンバーにいれることが困難であったが、海外のスタンダードにそって介入が可能であることがわかってきた。そこで、平成19年度は、ACTチームを固定化して、介入群10名、対照群10名で介入前後の比較を行った。ACT介入群の病状、日常生活機能、社会的機能は入院時、退院時、退院3か月後と改善し、対照群と有意な差がみられていた。また介入内容については地域での生活を念頭にいれた介入が中心的となっていたが、患者のニーズを中心とした支援より、再燃予防を目的とした介入であることが明らかとなった。今後、病状を含めた患者のニーズを中心とした介入の必要性が示唆された。
著者
中嶋 大 常深 博 林田 清 鶴 剛 田中 孝明 内田 裕之 堂谷 忠靖 尾崎 正伸 冨田 洋 夏苅 権 上田 周太朗 岩井 將親 廿日出 勇 山内 誠 森 浩二 西岡 祐介 平賀 純子 信川 正順 信川 久美子 村上 弘志 幸村 孝由 馬場 彩 Doty John 他 SXI チーム
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.71, pp.368-368, 2016

<p>X線天文衛星「ひとみ」搭載CCDカメラ(SXI)は、200μm厚の裏面照射型PチャンネルCCDを完全空乏化させ、0.4-12 keV の軟X線帯域で38分角四方の広い視野をカバーする。SXIは軌道上での立ち上げから、冷却後の天体データ取得に至るまで、期待通りの性能を示した。我々は軌道上データを用いて、線形性・電荷転送効率・応答関数・検出効率などを較正しており、本講演ではその現状について報告する。また、可視光漏れなど軌道上で発生した事象への対策についても報告する。</p>
著者
小南 陽子 相方 浩 平松 憲 田中 未央 苗代 典昭 中原 隆志 本田 洋士 長沖 祐子 村上 英介 宮木 大輔 三木 大樹 河岡 友和 高木 慎太郎 平賀 伸彦 柘植 雅貴 芹川 正浩 今村 道雄 兵庫 秀幸 川上 由育 高橋 祥一 佐々木 民人 茶山 一彰
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.456-464, 2013 (Released:2013-03-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1

症例は61歳男性.毎年,検診にて40mm大の肝嚢胞を指摘されていたが,2011年の腹部超音波検査にて肝嚢胞の増大を指摘.造影CT検査などの各種検査を行ったが確定診断に至らず,嚢胞周囲の軽微な胆管拡張の精査目的にてERCPを施行.その際の胆汁細胞診にて多量の肝吸虫卵を認め,肝吸虫症と診断.プラジカンテルの内服により肝嚢胞の縮小と血中肝吸虫抗体価の陰性化が得られ,肝吸虫の駆虫が確認された.
著者
田中 勝 村川 猛彦 宇都宮 啓吾
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.288-298, 2018-02-15

現在,古写経を中心とした文書の電子化が進められている.しかしながら漢文に送り仮名やヲコト点が付与された,訓点資料においては,文書の翻刻(テキスト化)やそれを管理するシステムの提供が十分ではなかった.本研究では,訓点資料における解読支援環境の確立を目指し,訓点資料を対象とした翻刻支援システムの構築を行ってきた.システム構築にあたり,訓点資料が手書き文書であることや,訓点資料に含まれる多様な記述情報に対応することを考慮して,訓点資料の記述情報を文字領域や点座標としてデータベースに格納し,情報間の関連付けを行うことで解決を図った.また,HTML5 Canvasを用いた画像ベースのインタフェースにより,直感的な操作で資料画像上に入力する仕組みを実現し,行・列番号や読みの自動推定機能をサーバ側で実装することで,ユーザによる入力の手間を省く試みを行った.評価実験により,システムの操作性に問題がないこと,1件ごとの平均入力時間は約3秒で十分に実用的であること,および自動取得したデータの誤り数は少なく手動修正が可能な範囲であることを確認した.
著者
牧 敦 小幡 亜希子 田中 尚樹 桂 卓成 小泉 英明
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.7-12, 2007

【要旨】現在、様々な脳機能イメージング法が開発され、認知そして神経科学の融合が始まってきている。しかし、人の機能は遺伝子・脳・行動と大きく3階層に分けることができ、脳機能イメージング法で計測できることは脳の機能に限られる。この3階層は、それぞれ異なる計測方法によってそれぞれの特性を明らかにすることが可能であり、これら計測方法の統合によって人の理解へ1歩進むであろう。まず、行動から計測される個人の立体視能と光トポグラフィによって計測される立体視時の脳活動の関連性を示した。この結果から、立体視能によって2群に分けられた被験者が立体視を行った際、頭頂連合野・後頭頂連合野における脳血液量(総ヘモグロビン濃度変化)が立体視能と同様な傾向を示すことがわかった。次に、採血によって決定されたアセトアルデヒド代謝酵素の遺伝子多型と、光トポグラフィによって計測された視覚刺激に対する脳活動(飲酒時)の関連性を示した。この結果からは、遺伝子によって2群に分けられた被験者がチェッカーパタン(赤黒8Hz反転)を見た際、後頭葉1次視覚野近傍における脳血液量が遺伝子多型によって異なる時間経過を取ることが明らかとなった。本論文では、これらの実験結果を再構成し、異種計測方法の統合によって、人の本質的な理解が深まる可能性を議論する。
著者
田中 洸 柏原 美希 櫛田 佳菜子 丸山 まいみ 大家 千枝子 岡田 有華 木村 典代
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.375-384, 2016 (Released:2017-09-26)
参考文献数
11

本研究は、生徒が自分で簡易に記入できる半定量式食事記録用紙(SSQDR)を作成し、その信頼性および妥当性を検討した。信頼性の検討では、生徒でもSSQDRのポーションサイズを正確に把握できるかどうかを検討するために、1日の食事を料理サンプルにて提示し、中学生32人を対象にSSQDR法を実施した。その結果、提示された食品のポーションサイズを正確に把握した者の割合は平均65%であり、SSQDR法によって算出された栄養素量のα係数は全ての栄養素で0.8以上の高い一致率が得られた。また、高校生49人により1食分の秤量記録法を実施し、同時にSSQDRを記入してもらった結果、両調査法から得られた栄養素等摂取量の相関係数は全ての栄養素で有意な正の相関(r≧0.456、p<0.01)が得られた。以上の結果、SSQDRは簡易に記入でき、秤量記録法と同程度の栄養素等摂取量が推定できる方法であることが示唆された。また、ポーションサイズは中学生でも正確に把握できることから、食事への認識が十分とは思われない生徒でも自分で記録することができる簡便な食事調査法として活用が期待できる。
著者
酒井 由紀夫 飛永 崇晴 酒井 博史 伊藤 広記 石田 剛 田中 省吾
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.Supple, pp.259-263, 2015-03-31 (Released:2015-12-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

4歳齢ホルスタイン種経産牛において食欲不振,頚静脈の怒張および胸垂の冷性浮腫が認められ,心音聴取が困難であったため,臨床的に創傷性心膜炎が疑われた.心臓超音波検査でも心外膜にフィブリン様構造物の付着を確認したため創傷性心膜炎と診断された後に斃死した.剖検の結果,心外膜の絨毛性増殖および心耳部の心外膜下層における白色結節が認められたが,クギなどの異物による創傷性病変は確認されなかった.牛白血病抗体が陽性で病理組織学的検索および免疫組織化学的染色結果より,本症例は心外膜における心膜中皮腫と地方病性牛白血病に起因すると思われるB細胞性リンパ腫が併発した稀な心臓腫瘍の1例と考えられた.
著者
田中 耕一郎
出版者
北翔大学
雑誌
人間福祉研究 = Human welfare studies (ISSN:13440039)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-14, 2003-03-20

The disability movement has struggled hard to gain acceptance for the 'big idea' that disability can be considered as a form of institutional discrimination or social oppression. As these 'social model' have gained political currency so they have engendered a profound reexamination of British social policy. Disability movements has been emphasized rights of disabled people, futhermore, they has been proposed that self-assessment and self-management in human services. Disability movements promoted a sustained campaign for direct payments legislation. Community Care (Direct Payments) Bill was published in November 1995. The legislation came into force the following year, permitting local authorities to make direct payments to people assessed as needing community care services. Consumerism formed the major basis of this new legislation. But Important value conflicts were apparent in discussion about direct payments in disability mevement. The purpose of this paper is to consider the relationship between consumerism and disabled people's sovereignty of their lives from the discussion in disability mevement.The disability movement has struggled hard to gain acceptance for the 'big idea' that disability can be considered as a form of institutional discrimination or social oppression. As these 'social model' have gained political currency so they have engendered a profound reexamination of British social policy. Disability movements has been emphasized rights of disabled people, futhermore, they has been proposed that self-assessment and self-management in human services. Disability movements promoted a sustained campaign for direct payments legislation. Community Care (Direct Payments) Bill was published in November 1995. The legislation came into force the following year, permitting local authorities to make direct payments to people assessed as needing community care services. Consumerism formed the major basis of this new legislation. But Important value conflicts were apparent in discussion about direct payments in disability mevement. The purpose of this paper is to consider the relationship between consumerism and disabled people's sovereignty of their lives from the discussion in disability mevement.
著者
柴原 拓哉 大場 友裕 石原 達朗 田中 剛貴 大平 充宣 シバハラ タクヤ オオバ トモヒロ イシハラ タツロウ タナカ ゴウキ オオヒラ ヨシノブ Shibahara Takuya Oba Tomohiro Ishihara Tatsuro Tanaka Goki Ohira Yoshinobu
出版者
同志社大学スポーツ健康科学会
雑誌
同志社スポーツ健康科学 (ISSN:18834132)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.52-66, 2015-06

解説(Technical review)最大酸素消費量 (VO2 max) レベルは,有酸素性運動能力を示す良い指標で,その測定やそれを高めるためのトレーニングが実施されている.エリート選手におけるVO2 maxは,非鍛錬者よりも高いのは事実だが,エリート長距離走選手における値は,必ずしも彼らのベストレコードと正の相関はない.ランニングエコノミーやvelocity at VO2 maxも重要な持久性運動能力の指標である.VO2 maxは,心拍出量と筋における酸素消費量に影響されるので,各種トレーニングに対する心臓の形態的および機能的適応や骨格筋におけるミトコンドリアエネルギー代謝の適応パターン等を追求し,持久性運動パフォーマンスにおけるVO2 maxの貢献等に考察を加えてみた.It is well-known that the level of maximal oxygen consumption (VO2 max) is one of the good parameters, which indicate the aerobic athletic performance. Although it is true that the levels of VO2 max in elite athletes are clearly higher than those of non-athletes, some studies show that there is no correlation between the level of VO2 max and performance of distance running in elite runners. Running economy and velocity at VO2 max are other important parameters for endurance capacity. Since the level of VO2 max is influenced by the oxygen transport and utilization capacity, the morphological and functional adaptation of heart and skeletal muscles to various exercise trainings were reviewed in order to discuss the contribution of VO2 max to endurance exercise capacity.
著者
下垣 保恵 郡山 健治 田中 雅博 望月 裕司 豊田 嘉清 中井 直治 河野 厚
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.329-334, 2010 (Released:2010-12-31)
参考文献数
30
被引用文献数
1

50歳,女性.2003年9月に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus ; SLE)を発症.抗Sm抗体陽性.右水腎症.プレドニゾロン(prednisolone ; PSL)40 mg/日で治療開始.大腿骨頭壊死(2B),ステロイド精神病合併.2005年5月PSL15 mg/日まで漸減中に尿蛋白再出現でシクロスポリン(CyA)併用開始.1年後,嘔吐を伴う激しい頭痛を繰り返したが画像診断上は異常を認めなかった.2007年2月タクロリムス(TAC)に変更,頭痛は消失したが,同年9月頃より左優位の巧緻性運動障害,振戦,小刻み歩行等を認めた.2009年6月ドーパミントランスポーターのイメージング(DAT)検査にてパーキンソン病(Parkinson's disease ; PD)確定診断.遺伝子解析で孤発性PDと判明.TAC中止によりParkinsonismは一部改善し,薬剤性が示唆された.TAC投与中のSLE患者に振戦を認めた場合,Parkinsonism誘発の可能性があるため減量や中止を考慮すべきである.
著者
下畑 光輝 成瀬 聡 渡部 裕美子 田中 一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.123-128, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
14

中大脳動脈狭窄を伴い脳梗塞を生じた高ホモシステイン(Hcy)血症の1例を経験した.症例は48歳男性.有意な既往や健診異常なし.数分の右半身脱力,しびれが繰り返し生じ入院した.頭部MRI FLAIR画像,拡散強調画像で左被殻後方に高信号,MRAおよび脳血管造影で左中大脳動脈狭窄を認めた.脳血栓症と考えアルガトロバン,エダラボン,アスピリン,シロスタゾールを開始し,5日後より発作は消失した.血液検査で血清総Hcy高値,ビタミンB6低値,葉酸低値を認め,methylenetetrahydrofolate reductase 677多型はTT型であった.高ホモシステイン血症は独立した心血管リスクであり,近年のメタ解析では葉酸,ビタミンB6,B12によるHcy低下を介した脳卒中発症リスクの低減が報告された.原因不明の脳梗塞では高Hcy血症の有無を検索し,葉酸,ビタミンB群の投与を検討してもよいと思われる.
著者
永瀬 開 田中 真理
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.35-45, 2015 (Released:2017-03-20)
参考文献数
23

本稿では自閉症スペクトラム障害(ASD)児・者におけるユーモア体験の特性について,構造的不適合の評価と刺激の精緻化の視点から,思春期・青年期のASD児・者19名と定型発達児・者46名を対象に検討した。検討の結果,定型発達児・者において概念レベルの構造的不適合とスキーマレベルの構造的不適合との間でユーモア体験の強さに差が見られたのに対して,ASD児・者において概念レベルの構造的不適合とスキーマレベルの構造的不適合との間でユーモア体験の強さに差は見られないことが明らかになった。この結果の背景として,ASD児・者における弱い中枢性統合の特徴による概念レベルの構造的不適合の評価の困難さ,スキーマレベルの構造的不適合における因果関係の自発的な推測,それぞれの構造的不適合における刺激の精緻化のしやすさの影響があることが考えられた。また刺激の精緻化については,ASD児・者は定型発達児・者に比べてスキーマレベルの構造的不適合において非社会的な情報に関する推測を多く行うことが明らかになった。
著者
田中 雅光 藤巻 朗 井上 弘士
出版者
公益社団法人 低温工学・超電導学会 (旧 社団法人 低温工学協会)
雑誌
低温工学 (ISSN:03892441)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.323-331, 2017-09-20 (Released:2017-10-27)
参考文献数
50

The recent trend and perspectives for high-performance microprocessors based on superconductor single-fluxquantum (SFQ) logic families are described. The rapid single-flux-quantum (RSFQ) and its energy-efficient derivatives are promising as a next-generation digital circuit technology for very-large-scale integration in the post-Moore's era because of the capability of ultrahigh-frequency operation over 100 GHz and low energy consumption. Several ongoing research projects as well as results reported, including several demonstrations of SFQ-based microprocessors and their components, are reviewed.