著者
松田 純 山下 秀智 浜渦 辰二 上利 博規 田中 伸司 森下 直貴
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

・本研究は,21世紀を「生命ケア文化再構築の時代」ととらえ,個の自己決定と社会的な相互扶助の両者のバランスがとれた,わが国の文化風土にあったケア文化のあり方を探求してきた。西洋と東洋の死生観の相違がしばしば問題にされるが,それはいずれかが勝っているというのではなく,分析や合理性を重んじる西洋的思考と,総合や直観を重んじる東洋が互いに学びあう必要がある。一方で,文化の差を自覚しつつ,同時に,文化ナショナリズムに陥ることなく,いのちをめぐる諸問題の国際化にも対応していかなければならない。「アジア的」とか「日本的」といった類型化・固定化に陥ることなく,西洋のケア文化の歴史的深みと現代的展開の意味も十分に理解しなければならない。21世紀の生命ケア文化再構築は,グローバル化のなかで,比較文化論的視点に立った柔軟な発想で進めていく必要がある。以上のような研究成果を,国際シンポジウムを開催するなど,国際的に開かれた討議空間のなかで検証してきた。・臨床学的アプローチのなかでは,<施設から在宅へ>が後戻りできない流れであり,それを支えるコミュニティ・ケアとスピリチュアル・ケアが極めて重要となってきていることが明確になった。・21世紀ケア文化を担う新しい世代に対しては,「いのちの大切さ」を漠然と教えるのではなく,いのちが向かう先にある<いのちの美しさ>を芸術作品などを通して感得しこの世に在ることへの大きな信頼を取り戻し生きる力を高めるような生命ケア教育が必要である。例えば理科教育のなかでも,自然の奥深い構造を示すとともに,それらについての科学的知見と技術的応用が社会にもたらす影響についても具体例に即して考える教育プログラムと授業展開が必要であろう。以上のような成果を研究成果報告書,ホームページや著書,公開講座,授業展開などの形で発信してきた。
著者
船越 孝太郎 徳永 健伸 田中穂積
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.104, pp.35-41, 2002-11-12
被引用文献数
1

話し言葉に頻繁に現れる助詞落ち,倒置,自己修復などの不適格性は,音声対話を困難にする大きな要因の1つである.筆者らは,日本語におけるこれらの不適格性が複合して現れることを指摘し,解決法を示した.本論文では提案手法を実装し,新たに収集した音声発話データに対して評価を行なう.発話データの収集に際しては,小量の採集でも不適格性を多く含むように工夫を行なった.実際に音声認識結果に対して構文解析を行なった結果,対話システムが正しく解析できる発話が171発話から322発話に改善されることを確認した.Ill-formedness in speech, such as postposition omission, inversion, and self-correction, is a major obstacle which makes speech dialog difficult. We proposed a method to handle these sources of Japanese ill-formedness in our previous paper. In this paper, we implement the proposed method and evaluate it by using newly collected speech data. We designed the experiment to obtain ill-formedness data effectively. Among 532 utterances in the corpus, introducing the proposed method increased the number of correct analysis from 171 to 322.
著者
遠藤 克子 田中 治和 塩村 公子 宮崎 法子 渡部 剛士
出版者
東北福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、社会福祉士に必要とされるソーシャルワークの援助技術を効果的に教育する方法を開発することにある。我々が学部学生を教育してきた経験によれば、社会福祉援助技術現場実習は、学生の中で現場で体験するものと大学で学ぶものとがうまくつながることができれば、より効果をあげるものである。この「つながり」を促進するためには、学生・現場指導者・大学教員が、学生の現場での体験を表現し伝えあう為の、共通して使用できる道具が必要となる。したがって、本研究の最終的な狙いは、この「つながり」と「コミュニケーション」の為の道具を作り上げることになる。研究対象としては、特別養護老人ホームにおける実習を選択した。学生の実習記録に基づき、彼らが実習中に何をするかのカテゴリー化をまず行い、次に各カテゴリーにどのくらいの時間が使われたかを調べた。この研究の結果、学生の実習体験を述べるには少なくとも3次元の表現が必要であることがわかった。故に我々はモジュールという単位に着目し、これをもって学生の体験を整理することに決定した。実習現場の指導者の意見もこのモジュールの内容に反映するべく聴取された。モジュールの内容は以下のとおりである。(1)実習行動(介護、他機関との連絡・調整、行事・活動、オリエンテーション、相談援助、その他)x(2)学習対象(個人、家族、施設及びそのサービス、地域、制度、自己覚知、一般化、その他)x(3)学習の焦点(コミュニケーション、問題理解、援助計画、援助の実施、評価、記録)5事例を選びこの枠組みの妥当性を検証した。今後の研究の方向性としては、(1)モジュールの1単位ずつの内容をさらに検討すること、(2)モジュールという枠組みを実際に使用し、学生・現場指導者・大学教員からフィードバックを得てその適用性と効果を検証することである。
著者
田中 朋之 渦原 茂
雑誌
情報処理学会研究報告プログラミング(PRO)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.50(1991-PRO-060), pp.1-10, 1991-06-21

多くの共有メモリ型の並列Lispでは並列性の記述にfuture式を用いている。本稿ではCommon Lispの多値機能にfutureを導入した場合の問題について考える。futureと多値機能を共存させるためには1つのfutureオブジェクトに複数の値を格納できるようにする必要がある。ところがそのままこの方法を用いると、プログラムにfutureを挿入した場合としなかった場合とで返す値の数が異なってしまう場合があり、Common Lispで定義される多値の意味を変えてしまう。この問題を解決するためにmv?context法とmv?pフラグ法の2つの方法を提案する。この2つの方法はマルチプロセッサ・ワークステーションTOP?1上の並列Lisp、TOP?1 Common Lispにおいて実現した。
著者
渡邉 博文 田中 成典 沖本 憲明 長谷川 亜樹 泰地 真弘人 谷田 義明 三井 崇志 勝山 マリコ 藤谷 秀章
出版者
情報計算化学生物学会(CBI学会)
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.32-45, 2010 (Released:2010-04-20)
参考文献数
46
被引用文献数
5 9

先端的な4つの計算法、FMO法、QM/MM法、MM-PB/SA法、MP-CAFEE法を用いてFKBPと10種類のリガンドの結合能を評価し、実験値との相関を比較した。結果として、4つの方法の内、どの方法を用いても実験値と比較的よい相関が得られることを確認した。またこの結果をもとに、どの効果を取り入れることが実験値との高い相関を得るのに重要であるかを議論した。さらに、これらの方法における溶媒効果の取り入れやエントロピーの寄与の重要性について詳しく議論した。計算時間についても検討を行い、最後にタンパク質リガンド結合能計算法の発展について今後の展望を述べた。
著者
田中 恵
出版者
筑波大学
雑誌
日本史学集録 (ISSN:09137203)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.21-38, 2001-05
著者
中村 健二 田中 成典 古田 均 吉村 智史 北野 光一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.2480-2492, 2008-07-15

近年,インターネットを利用した日常的な情報収集活動において,即時性と信頼性に優れたWebニュースは人々の情報源として広く活用されている.しかし,日々時々刻々と増加する膨大な数のWebニュースから特定のトピックだけを抽出することは困難である.そのため,文書間の類似度を利用してトピックを分類する研究や時系列的な特性に基づきトピックを抽出する研究が活発に行われている.しかし,これら既存研究では,文書中に出現する単語群に依存した分類しかできず,また任意の期間に発生するトピックに適切な単語を関連付けできないという課題がある.そこで,本研究では,時系列的な特性に基づいて抽出したバースト語を用いて,バースト語間の関連を考慮した最新のトピックを抽出する手法を提案する.そして,既研究の従来手法と比較実験を行い,本提案手法の有用性を実証する.
著者
清水 透 黒河 博文 田中 敦成 五十嵐 城太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

[1]ヘム制御キナーゼ(HRI)、及びヘム結合時計遺伝子制御因子のNOやヘムセンシングの分子機構を解明し、水銀が、このヘム-蛋白質結合を破壊することを示した。[2]メチル水銀で誘起されたマウスの日内活動の異常性は、チオレート化合物と血液脳関門透過化合物であるα-リポ酸を同時に投与した場合のみ、修復された。[3]ヘム受容体を保持するガスセンサー酵素のガス結合部位の同定、及びガス結合による活性上昇の分子機構を明らかにした。
著者
斉藤 和義 河野 公俊 田中 良哉
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

膠原病の組織リモデリングにおける上皮間葉および血管内皮間葉転換の病態形成への関与を検討した。膠原病リウマチ性疾患の組織においては、線維化・血管リモデリングの進行を認めている部位にはmyofibroblastの増生が認められ、これらのmyofibroblastおよび血管内皮細胞上にはWnt10Aが強く発現しており、組織における線維化病態に関与している可能性が示唆された。また、腎間質由来線維芽細胞へのWnt10A強制発現は、ファイブロネクチン産生を増強し、腎障害に関与することが示唆された。以上から、Wnt10Aを介する間葉転換の制御が膠原病における組織リモデリングの治療標的となることが示唆された。
著者
長瀬 美子 小谷 卓也 田中 伸
出版者
大阪大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

「心情」「意欲」「態度」にかかわるわが国の幼稚園教育の目標は、その総合性のため、明確な到達目標が描きにくく、幼児教育・保育に携わる者の共通認識になりにくいという課題がある。本研究では、乳幼児期に、あそびを通して形成した力を、小学校以降の学校教育での科学教育につなぐためには、形成すべき力を明確にし、それを体系化することが必要であると考え、現在の幼児教育の基本である5領域について、「観察」「コミュニケーション」能力が年齢にそってどのように発達するかを体系化した。このことで、発達の筋道が明確になり、保幼小連携型カリキュラムを作成するためのモデルが提供できた。
著者
笹尾 登 中野 逸夫 吉村 太彦 川口 建太郎 旭 耕一郎 酒見 泰寛 杉山 和彦 藪﨑 努 福山 武志 田中 実 志田 忠正 梶田 雅稔
出版者
岡山大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究では、新学術領域全体「原子が切り開く極限量子の世界」の目標達成を促進するため以下の活動を行った。総括班会議を定期的に開催し(総計21回開催)各計画研究の進行状況を監督、必要に応じて評価・助言活動を行った。また理論・技術面から領域全体の方向づけを行った。総括班の監督のもとに国際会議「Fundamental Physics using Atoms」を毎年開催し (第4から第7回)、そのプロシーディングスを発刊した。異分野の共同協力を更に推し進めるため、研究者ネットワークの発展拡大を図った。全ての成果をウエッブや紙・電子媒体を活用して、広く国内外へ発信した。
著者
松平 秀雄 阪倉 康男 田中 康雄 中田 勉 濱田 彰
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.67-73, 1976-06-25

本研究で言う列車風とは,トンネル内を走る列車のピストン作用によって引き起こされる風である.トンネル内で列車が発進・加速・等速・減速・停止する場合に,列車風速および空気吐出し量が時間とともにいかに変化するかを定量的に把握し,地下鉄空気調和設備の設計資料を得ることが本研究の目的である.本報告ではまず単線のトンネル模型を作り,その中で模型列車を走らせることにより,上記の関係を求めるとともに,トンネル内の空気の運動方程式(非線形微分方程式)を立てて考察したので報告する.
著者
前川 佳遠理 大久保 由里 北岡 タマ子 田中 輝 ライデルマイヤ マーガレット フェルフーフェン ポール 戸塚 順子 内海 愛子 ランゲン ヨハン・ファン
出版者
国文学研究資料館
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

国内外の史料所蔵機関のウェブサイトやカタログの収集に加え訪問調査を行い、個人・全国の戦友会・団体の事務局に質問票を郵送し、アンケートの集計を行った。個人・戦友会・団体の活動履歴や所蔵資料を国際文書館評議会ICAの国際標準「団体,個人,家に関する記録史料オーソリティ・レコード:ISAAR (CPF) Ver.2」に準拠して作成し公開準備を行った。本課題を機に戦友会事務局資料を中心に寄贈が進み、順次公開の予定である。国外ではインドネシア及び在オランダを中心に東南アジアの戦中・戦後の資料所在情報を調査し、特に俘虜銘々票の原本や原爆被害者調査委員会の原本資料のデジタル化・データベース化を通じた共有化モデルのプロジェクトに発展した。
著者
藤井 和佐 西村 雄郎 〓 理恵子 田中 里美 杉本 久未子 室井 研二 片岡 佳美 家中 茂 澁谷 美紀 佐藤 洋子 片岡 佳美 宮本 結佳 奥井 亜紗子 平井 順 黒宮 亜希子 大竹 晴佳 二階堂 裕子 中山 ちなみ 魁生 由美子 横田 尚俊 佐藤 洋子 難波 孝志 柏尾 珠紀 田村 雅夫 北村 光二 北川 博史 中谷 文美 高野 宏 小林 孝行 高野 宏 白石 絢也 周藤 辰也 塚本 遼平 町 聡志 佐々木 さつみ
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

研究課題に関する聞きとり調査、質問紙調査等から、地方社会における構造的格差を埋める可能性につながる主な条件として(1)地域住民の多様化の推進及び受容(2)生業基盤の維持(3)定住につながる「地域に対する誇り」が明らかとなった。過疎化・高齢化が、直線的に地域社会の衰退を招くわけではない。農林漁業といった生業基盤とムラ社会の開放性が住民に幸福感をもたらし、多様な生活者を地域社会に埋め込んでいくのである。