- 著者
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瀬戸 博
大久保 智子
斎藤 育江
竹内 正博
土屋 悦輝
鈴木 重任
- 出版者
- Japan Society for Atmospheric Environment
- 雑誌
- 大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.1, pp.1-12, 2001-01-10 (Released:2011-11-08)
- 参考文献数
- 37
ヒト肺に蓄積した多環芳香族炭化水素 (PAHs) および炭粉を測定し, それらの濃度と年齢, 性, 喫煙, 居住地, 職歴, 死因等との関連について調べた。1988年から1993年に東京の病院で亡くなった患者の剖検肺試料 (男性477例'女性284例) を分析に供した。PAHsおよび炭粉のレベルは男性の方が女性よりも有意に高かった。主要な蓄積要因は加齢 (暴露期間) で, 次に男性では職歴が, 女性では居住地又は職歴による影響が強かった。職業による比較では, PAHsおよび炭粉のレベルは技術系・技能系労働者および外勤職の方が事務, 管理的職業および主婦よりも高かった。また, 居住地による比較では, PAHsのレベルは区部に居住していた方が区部以外に居住していた場合に比べて高かった。しかし, 炭粉のレベルは地域による差がなかった。喫煙はこれらの物質の主要な蓄積要因ではなかった。男性の肺がん群のベンゾ [a] ピレン, ベンゾ [g, h, i] ペリレンおよび炭粉の濃度は非がん群に比べて有意に高かった。更に, 男性の扁平上皮がん群のPAHsおよび炭粉濃度は非がん群に比べて有意に高かった。一方, 腺がん群では非がん群と差がなく, 外来性物質の蓄積状態において組織型による差異がみられた。これらの結果は, 大気中のPAHsや炭粉を含む微粒子 (PM2.5) が肺がんの増加に影響を及ぼす可能性があることを否定できないことを示している。