著者
中山 昌明 栗山 哲 加藤 尚彦 早川 洋 池田 雅人 寺脇 博之 山本 裕康 横山 啓太郎 細谷 龍男
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.1333-1337, 2001-09-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

トラネキサム酸 (tranexamic acid: TA) の投与によりCAPD患者の除水量が増加する現象が報告されているが, これを長期間投与した際の除水効果と腹膜機能への影響に関しては不明である. 我々は, 腹膜透過性は正常範囲にあるものの, 臨床的に十分な除水量が得られない3例に対し, 高濃度ブドウ糖透析液を使用する代わりにTAの少量長期間歇投与を試みた (500mg×3days/week, 18か月間). その結果, 全例において除水量の増加が持続して観察された. 少量のフィブリンの析出が-過性に認められることがあったものの, カテーテルトラブルの発生はなかった. 腹膜透過性は, 1例では明らかな変動は認められなかったが, 2例で上昇する傾向を示した. 以上の観察結果より, TAの本投与法は, 腹膜透析患者の除水量増加に対し臨床的に有効であることが示され, 除水不全に対する新たな治療対策となり得る可能性が示唆された. しかしながら, 腹膜機能に与える影響に関しては明らかではなく, さらに検討を重ねる必要がある.
著者
奥 恒行 藤田 温彦 細谷 憲政
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.301-303, 1983 (Released:2010-02-22)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

Eight healthy subjects (average age 27. 5 years old) were orally administered 200 ml of the control solution (containing 50 g of glucose) or the test solutions (containing 50 g of glucose and 5 g of glucomannan or cellulose), and compared with the suppressive effect on the enhancement of blood glucose level.Glucomannan delayed the intestinal absorption of glucose and could significantly suppress the maximal level of blood glucose, but cellulose could not. Addition of pullulan of 5 or 10 g to glucose solution also did not show the suppressive effect on blood glucose level.
著者
深澤 百合子 細谷 葵 中村 大 クレイグ オリバー
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の成果は、擦文人が擦文土器を使用してサケやヒラメをはじめキュウリウオなどの小型魚類やとオオムギ、キビなどの栽培された雑穀類を主食素材として調理を、調理においては吹きこぼれが多く生じていたことが証明できた。このような雑炊、汁物メニューは食材、調理方法において後続するアイヌ文化に継承されたと言える。このことから物質文化の変化がみられる土器から鍋への調理用具の変化やカマドから炉への調理施設の変化が起因する要因を研究する必要がある。調理実験の有効性が確認できたことも成果と言えるため土器に付着した吹きこぼれ痕は鍋に痕跡が観察されるのか、具材と穀類の調理割合が異なるのかなど今後の研究課題となる。
著者
細谷 良夫
出版者
東洋史研究會
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.p644-670, 1991-03

Man Wen Lao Tang 滿文老檔, which is materials on the history of the early Ching period, is the compilation of Man Wen Yuan Tang 滿文原檔 (owned by the National Palace Museum at Taipei), which was published as Chiu Man Chou Tang 舊滿洲檔. Many things in this period are clarified through Yuan Tang. To examine Lao Tang, I investigated Huang Tzu Tang 黄字檔, a collection of ejehe (rescripts) in Yuan Tang. As a result I pointed out the need to clarify later amendments, such as unknown deletions, rewritings, corrections, and so on. To reexamine Lao Tang which records the amendments made to Huang Tzu Tang, we must restore the original copy of Huang Tzu Tang without these amendments and clarify the age when it was amended. While I restored the ejehe about Asan brothers in Huang Tzu Tang supposed to be the one of the 11th year of T'ienming 天命 by Lao Tang and clarified the process of amending to it, I compared their careers. Then the following becomes clear. Huang Tzu Tang is likely to have been copied in the 8th month of the 10th year of T'ienming. It is clear that the amendments made to it reached the 8th month of the 3rd year of T'ients'ung 天聰. The ejehe of Huang Tzu Tang tells the situation of the 3rd year of T'ients'ung against the accounts of Lao Tang.
著者
細谷 広美
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.566-587, 2013-03-31

冷戦の終結以降、国際社会では人権の尊重とデモクラシーに対する説明責任(accountability)が国家に要求される傾向が強まっている。しかしながら、人権やデモクラシーは元来西欧で生まれた概念であり、グローバル化の進展にともない、多様な歴史や文化的背景をもつ地域に人権概念が適用されるようになることで、地域のコンテクストやそれぞれの文化にみられる人権概念との間の相違が顕在化してきている。このようなことから近年、人権概念の普遍性を問う議論が生まれている。本稿は紛争後の移行期正義とかかわり真実委員会が設置されたペルーを事例として扱う。ペルーでは1980年に毛沢東系の集団「ペルー共産党-輝ける道」(PCP-SL)が武装闘争を開始したことで、国家機関(政府軍、警察、自警団)と反政府組織による住民の大規模な虐殺が展開した。2003年に提出された真実和解委員会(真実和解委員会は真実委員会として総称される)の最終報告書によると、1980年から2000年の死者及び行方不明者数は、独立後最大の約7万人に及び、このうち75%が先住民言語の話者であった。また死者及び行方不明者のうち40%が、国内で最も貧しく先住民人口が多い県の一つである山岳部のアヤクチョ県に集中していた。このようなことから、本稿では文化、人種・民族的多様性と不平等を抱える社会における紛争と平和構築のプロセスを、人権や市民権をめぐる議論を視野に入れつつ、先住民と紛争及び真実委員会の関係に焦点をあてて分析した。そして、紛争時及び紛争後の平和構築のプロセスにおいて、国際社会の人権レジームと国家が接合される一方、国内の特定集団がこのプロセスから排除される可能性があることを明らかにした。さらに、「真実」や「和解」の意味も紛争の性質や社会の特質によって多様であることを論じた。以上のことから、人権や人間の安全保障を適用するうえでは、合わせて当該社会における「人間」の意味や範囲を検証する必要性があることを指摘した。
著者
細谷 龍一郎 一條 真彦 島 智子 宮前 玲子 鎌田 智幸 日野 斉一
出版者
Japanese Society for Emergency Medicine
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.600-607, 2020-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
13

緒言:武蔵野赤十字病院では脳卒中疑い患者に対する早期治療を目的として,医療機関や救急隊から直通で脳卒中担当医につなぐ脳卒中ホットライン(SCU HOT)を構築している。当院では救急外来に常駐する薬剤師はいないが,脳卒中病棟の担当薬剤師が対応を行っている。目的:SCU HOT対応における薬剤師の介入効果を検証する。方法:2016年から2019年の3年間にSCU HOTで来院し脳梗塞の診断を受けた患者を対象に,血栓溶解療法開始までの時間(Door-to-rtPA time)について後方視的調査を行った。結果:rtPA療法を行った63件のうち16件に薬剤師が対応していた。Door-to-rtPA timeの薬剤師介入群の中央値は74分,非介入群で89分となり,介入群で有意に減少していた。考察:急性期脳梗塞患者に対し,病棟薬剤師の介入により早期rtPA療法に貢献できることが示唆された。
著者
細谷,雄三
雑誌
日本統計学会誌. シリーズJ
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, 2009-03

この論文は多変量有理型スペクトル正準分解の諸方法を展望するとともに,RozanovによるMAスペクトル密度行列の分解法を改良し数値的に実行可能とした方法を提案する.正準分解の応用として,第3系列との従属関係を有する2時系列間の偏因果性を定量的に測定するために有用な諸測度と,関連する統計的推定・検定法を概説する.
著者
細谷 良夫
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-43, 1968-06

‘The Eight Banner organization is usually understood to be a part of the bureaucratic mechanism under the powerful control by the emperor, that is, a military and administrative institution. In the period from the end of the sixteenth century to the Manchu conquest of China in the early seventeenth century, however, the Eight Banners were the state organization of the Manchus based upon their tribal community system. To speak in a more abstract way, each prince of imperial blood was lord of his banner/banners or arrows (niru), subordinate units of a banner. In other words, the Eight Banners were a group of organizations of feudal control by the banner princes, not to be regarded as a bureaucratic system under a single control by the emperor. When we examine the Eight Banners between 1644 and 1722 based upon the above facts, the banner princes are found still enjoying possession of their own banners or arrows, while the emperor apparently did not governed all of the banners and arrows. Furthermore, the control of banners by the banner princes seems to have been of a nature threating to undermine the power of the emperor. The Eight Banners thus continued to be an organization of feudal control, which was later transformed into a bureaucratic system by a series of reforms made in the reign of Emperor Yung-cheng, 1723-1735.
著者
前川 明日彩 細谷 誠 片岡 ちなつ 新井 雄裕 浅野 和海 森 隆範 野口 勝 神崎 晶 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.150-156, 2019-04-28 (Released:2019-06-01)
参考文献数
6

要旨: 当院で人工内耳手術を施行し, 定期的な診療を続けている成人人工内耳装用者17名を65歳以上の高齢群と65歳未満の若年群に分け, 手術前後に実施した東大式エゴグラム (Tokyo University Egogram, 以下 TEG) の結果について検討を行った。 さらに, 失聴期間2年未満群と2年以上群での検討も行った。 全症例及び高齢群で, 術後「他者本位・自己抑制的・自己否定的」な傾向が低下した。 若年群では「自由・積極的・自己肯定的」な傾向に上昇する様子がみられた。人工内耳を装用して音を聴取することで, 高齢者はより自律的に, 若年者はより能動的になる傾向があると考えた。 失聴期間別の検討では, 失聴期間2年以上群で, 術後の「他者本位・自己抑制的・自己否定的」な傾向が低下した。音が聴取可能になり活気が出たため, 抑制的な自我状態が軽減したと推察した。高齢者や失聴期間の長い症例においても, 人工内耳導入により自己否定傾向を軽減させる効果があると考えられた。
著者
新崎 知 細谷 聡 森 俊男
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.41-49, 1994-03-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
8

The purpose of this paper was to examine correlations between efficiency of energy transfer and several indices obtained from strain gauges equipped with on a bow, and found a criterion to evaluate a shooter's technique with regard to the left hand. We analysed twisting moment and bending strain of a bow during a bow's restoration.The conclusions were as follows:1. The efficiency is significantly correlated with values of twisting moment of a bow in the latter part of the bow's restoration sequence, but not significantly correlated with values in the former part.2. The efficiency is significantly correlated with values of twisting moment integrated by time (P<.01), and with time when the maximum values of the moment is obtained (P<.05). However, it is not significantly correlated with the maximum value itself.3. Some spectrums of vibration of bending strain are negatively correlated with the efficiency, especially in the low frequency domain. The number of frequencies at which spectrums are positively correlated with the efficiency is obviously smaller than number of negative correlations. Vibration of twisting moment has little meanings in comparison with that of bending strain because of the magnitude of its energy.Some of these are widely known as an empirical law. Our conclusions are consistent with it.Consequently, the conditions of a shooter's technique to transform a bow's energy efficiently are regarded as follows:* Twisting moment integrated by time is large, and the maximum values of the moment is obtained in the latter part of the bow's restoration.* Vibration of a bow's bend in low frequency (especially, about 100Hz or 200Hz) is small.
著者
舛石 俊樹 酒井 義法 細谷 明徳 鈴木 健一 伊藤 剛 鎌田 和明 水谷 佐和子 村野 竜朗 相馬 友子 永山 和宜 草野 史彦 田沢 潤一 鈴木 恵子
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.461-467, 2011 (Released:2011-08-18)
参考文献数
20

症例は23歳女性.38℃台の発熱・倦怠感・嘔気・関節痛が出現したため,当院救急外来を受診した.インフルエンザ迅速診断キットでインフルエンザA型陽性のためインフルエンザウイルス感染症と診断された.また,血液検査ではトランスアミナーゼの著明な上昇とPTの低下を認め,急性肝炎重症型の診断で当科に緊急入院した.与芝らの劇症化予知式により劇症化の可能性があると判断し,劇症肝炎に準じて血漿交換療法・ステロイドパルス療法を施行した.第2病日よりトランスアミナーゼ・PTの改善を認め,第12病日退院した.肝障害の成因として薬物性肝障害の可能性は否定できなかったが,臨床経過からは新型インフルエンザ(以下A/H1N1 pdm,PCR法で診断)感染が成因である可能性も否定できなかった.A/H1N1 pdm感染による高サイトカイン血症を契機に急性肝炎重症型を発症したと考えられる1例を報告する.