- 著者
-
齋藤 健一
- 出版者
- 広島大学
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2009
本研究では,貴金属ナノ構造の局在プラズモンを利用し,光と強結合する無機ハイブリッドナノ構造を検証する。この背景には,申請者がこれまで行った以下の研究内容が関係する。すなわち,single-molecule-Ramanに相当する分子数1-4個のラマンスペクトル測定を可能にした,巨大な表面増強効果をもつ金ナノ構造体を創製した。この増強効果をシリコンナノ結晶の発光の強度増加に活用する。高効率で紫外~光の三原色領域で発光するシリコンナノ結晶の波及効果は大きく,ICチップへのシリコンフルカラー発光デバイスの搭載や,生体に優しいバイオマーカー(量子ドット)としての利用がある。それらの実現には,発光効率の増加が重要である。本年度は,レーザーアブレーションで生成した金なの構造体を増強基板に用い,同じくレーザーアブレーションで生成した発光性Si量子ドットの発光スペクトルの増強効果を検証した。測定は,溶液中に分散したSi量子ドットの発光スペクトルを顕微分光測定にて検証した。すなわち,顕微分光測定により単一金ナノ粒子を探し,顕微鏡直下で金ナノ粒子近傍のSiの発光スペクトルを測定した。その結果,Si量子ドットの発光強度は,金ナノ粒子が存在することで10^3-10^5増強されることが明らかとなった。特に,巨体金ナノ球上に低次元ナノチェーンが存在する,メデューサ型金ナノ粒子が,巨大な増強効果を与えた。この増強効果は,可視領域の広範な領域で増強効果を与えたが,波長により増強される領域が強いところと弱いところがあることが明らかとなった。