著者
種本 俊 筋野 智久 金井 隆典
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.408-415, 2017 (Released:2018-01-25)
参考文献数
34
被引用文献数
3 6

ヒトには1000種,100兆個を超える腸内細菌が存在する.これらが構成する腸内細菌叢は免疫や代謝を介して宿主であるヒトと複雑な相互作用を形成し恒常性を維持している.腸内細菌叢の構成菌種の変容や異常増殖,減少はdysbiosisと呼ばれ,ヒトの腸管のみならず,全身の免疫系,代謝機構に異常を引き起こす.脂肪肝炎やメタボリックシンドローム,関節リウマチ,自閉症,多発性硬化症などさまざまな疾患にdysbiosisが寄与している可能性が示唆されている.近年の腸内細菌解析技術の発展により,ヒトの腸内細菌叢を構成する菌種の同定のみならず,代謝やタンパク質発現を介した複雑な相互関係が明らかになってきている.また,腸管上皮細胞や免疫細胞と腸内細菌との相互作用の実際が分子レベル,遺伝子発現レベルで明らかになってきており,それぞれの疾患の病態解明や新しい治療対象として実用化が期待される.炎症性腸疾患においてはCrostridium butyricumなどの酪酸産生菌が炎症抑制作用を持ち,注目を集めている.また腸内細菌叢を対象としたFMT(Fecal microbiota transplantation)も実用化に向けて検討が進められている段階である.
著者
岸本 真弓 金子 弥生
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.237-250, 2005 (Released:2006-12-27)
参考文献数
18
被引用文献数
6
著者
伊関 千書 鈴木 雅雄 古田 大河 佐橋 佳郎 鈴木 朋子 金子 明代 上野 孝治 三潴 忠道
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.131-139, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
39
被引用文献数
1

症例は45歳女性で,X-2年4月より全身性疼痛,発熱,倦怠感,冷え,下痢,食欲不振,めまい,頭痛,不眠などを発症し,X-1年5月に当センターにて線維筋痛症と診断された。X 年5月に入院時,慢性疲労症候群も合併していると診断された。手の少陰経と太陽経に発汗と血管攣縮を伴う疼痛発作が毎日出現しており,複合局所疼痛症候群(CRPS)と診断された。通脈四逆湯(乾姜9g,甘草4g,烏頭6g)を処方後,ほとんどの症状の軽減がみられ,CRPS 発作には大烏頭煎(烏頭1g,蜂蜜10g)の頓服が有効であった。鍼灸治療では,心気血両虚証と心庳証に対し,神門,内関,三陰交,太衝,足三里,陰陵泉,心兪,肩中兪,風池へ配穴し低周波鍼通電治療(1~4Hz)を併用し,手の少陰経と少陽経へは子午流注経絡弁証も用いたところCRPS 発作頻度が減少した。湯液と鍼灸の併用は,難治性の疼痛症候群合併症例に有効であった。
著者
金 吉晴 小西 聖子
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.Special_issue, pp.155-170, 2016-05-31 (Released:2016-06-02)

註)以下に示すのはPEの開発者であるEdna Foa教授によって作成され,日本で翻訳出版されている下記のマニュアルを,開発者の許可の元に抜粋したものである。この抜粋版は治療プロトコルの概要を示すだけのものになっており,これだけを用いて実際に治療を行うことはできない。PEの実施に当たっては,正規の指導者による24時間のワークショップに参加し,所定のスーパーバイズを受ける必要がある。なお心理教育,想像エクスポージャー,現実エクスポージャー,エクスポージャー後の処理などは,下記のマニュアルでは豊富な事例をもとに,どのようにして対話的に患者の理解を深めていくのかが示されている。本プロトコルでは,紙数の制約のために,その部分が記されていない。あくまで治療手続の概要にすぎないことを理解されたい。金 吉晴,小西聖子(監訳):PTSDの持続エクスポージャー療法.星和書店,東京,2009.(Foa, E., Hembree, E., Rothbaum, B.: Prolonged exposure therapy for PTSD. Oxford University Press, New York, 2007)
著者
玉那覇 彰子 向 真一郎 吉永 大夢 半田 瞳 金城 貴也 中谷 裕美子 仲地 学 金城 道男 長嶺 隆 中田 勝士 山本 以智人 亘 悠哉
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.203-209, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3

沖縄島北部地域(やんばる地域)を東西に横断する県道2号線および県道70号線の一部区間は,希少な動物の生息地を通過する生活道路となっており,ロードキルの発生が問題となっている.この県道を調査ルートとして,2011年5月から2017年4月までの6年間,ほぼ毎日,絶滅危惧種のケナガネズミDiplothrix legataのルートセンサスを行い,生体や死体の発見場所を記録した.6年間の調査において,ケナガネズミの生体75件,ロードキル個体47件の合計122件の目撃位置情報を取得した.その記録に基づき,ヒートマップを利用して調査ルートにおけるケナガネズミのロードキル発生のリスクを表現することで,リスクマップを作製した.また,生体とロードキル個体の発見数からロードキル率を算出し,現在設定されているケナガネズミ交通事故防止重点区間(以下,重点区間とする)におけるロードキルの発生状況を評価した.リスクマップと重点区間を照合すると,交通事故リスクの高いエリアのいくつかが,重点区間の範囲外にあることが明らかになった.また,重点区間のロードキル率は他の区間と同様のレベルであった.本研究で提示したリスクマップやケナガネズミの行動記録を活用することで,より現実の状況に即した取り組みの展開が可能になると期待される.
著者
金水 敏
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.18-31, 2005-07

『天草版平家物語』に用いられた「ござる」を、文法的機能によって分類するとともに、原拠本と対照させることによって、「ござる」の意味派生の手がかりを得ることができる。「ござる」の語源的意味に近い空間的存在文では、ほとんどの用例が尊敬表現であるが、その他の用法では丁寧表現が多数を占めている。その要因は、丁寧表現には主語に対する選択制限がなく、尊敬表現より広い範囲で使用されることによると思われる。また、「ござる」の文法化、存在動詞の語彙項目の変化等も「ござる」の敬語的意味の変化に影響を与えていると考えることができる。
著者
高岩 義信 九後 太一 早川 尚男 棚橋 誠治 金谷 和至 五島 敏芳 小沼 通二 伊藤 憲二 伊藤 和行 九後 太一 受川 史彦 平田 光司 小長谷 大介 田中 希生 田中 正 難波 忠清 西谷 正 吉川 直志 坂東 昌子
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

日本の素粒子論研究が世界的に評価される礎を築いた湯川秀樹・朝永振一郎・坂田昌一の遺した資料を活用してその学問の系譜を研究することを目標とし、その資料の利用環境整備を行った。史料データベースを充実させネットワーク上のサーバーを介して一般に公開している。このサーバで稼働するオープンソフトウェアの検討およびカスタマイズ、さらにその後継ソフトウェアの検討を行った。またこれらの資料を科学史研究に利用するのに有益な史料作成者データのデータベースを、史料カタログと連携するものとして構築することによって、史料の有効利用に資することができるようにすることを検討した。また今後へ向けての課題の検討を行った。
著者
金 明洙
出版者
慶應義塾経済学会
雑誌
三田学会雑誌 (ISSN:00266760)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.387(35)-409(57), 2011-10

論説本論文では「朝鮮の渋沢栄一」韓相龍の日本留学先にあたる旧陸軍士官予備校成城学校の事例を取り上げ, 19世紀の朝鮮人留学生の思想的な影響と帰国後の活動を検討する。当時陸軍参謀本部の宇都宮太郎は朝鮮・清国留学生を担当しており, 国権主義から日本盟主論までを視野に入れたアジア主義の持ち主であった。宇都宮の影響を受けた韓相龍は, 帰国後も駐韓日本公使館附武官野津鎮武の指導・監督のもとで韓末における日本の朝鮮植民地化政策に協力した。This study raises the case of Seijogakko, a preparatory school for the Japan Military Academy, as the destination for "Shibusawa Eiichi of Chosen" Sangyong Han's studies in Japan, considering the ideological influence of 19th century Korean foreign students and their activities after returning to their home country. Taro Utsunomiya, the Army's Chief of Staff at the time, was responsible for Korean and Chinese students and held a pan-Asianist perspective that evolved from a national sovereignty principle to a Japan-as-leader theory. Sangyong Han, influenced by Utsunomiya, cooperated with Japanese colonialist policies for Korea during Japan's annexation of Korea after his return, under the instructions and direction of the military attache for the Japanese Embassy in Korea, Shizutake Nozu.
著者
金澤 裕之
出版者
三田史学会
雑誌
史學 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.59-83, 2015-04

文学部創設125年記念号(第1分冊)論文 日本史はじめに一 江戸内海防備体制と海上軍事力二 文久の改革における海軍建設改革三 海軍士官による海防計画の策定四 海軍運用能力の実態五 政治・外交部門の海軍力利用への志向おわりに
著者
金光 達太郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.61-86, 1982-03-25

農業,土木,造園等の分野で,霜柱を防ぐことは極めて重要な課題となっている.霜柱の発生や生長は,気象と土壤の双方の条件から決まると考えられる.そこで本研究では,まず土壤の条件を起霜体および霜柱への給水体としての2条件に分けて考察してその因子を明らかにし,さらに気象条件をも考慮した霜柱生長方程式をたて,これらによって霜柱の発生や生長の具体的な条件を明らかにしようとしたものである.その内容を次の3部に分けて記述した.I土壤の起霜機能II土壤の給水機能III霜柱の生長方程式まず第1部では土壤の起霜機能についてのべた.土壤の起霜機能とは,土壤が含有水分を氷柱として析出する機能をいう.土壤が起霜機能を持つためには.その中に若干の微粒子の存在することが不可欠の条件とされているが,本研究に於ては,その微粒子の最大粒径を明らかにしようとしたものである.方法としては,第1に,霜柱のよくできる関東ロームから,或る粒径以下の微粒子を取り除いたものを5種つくり,これらの土壤からの霜柱の発生状況を観察した.第2の方法としては,種々の大きさの非水溶性微粒子に適切な水分条件を与えて霜柱の発生状況を観察した.その結果,起霜機能に関与する粒子の最大粒径は,およそ3〜5μであるとの結論に達した.第2部では,土壤の給水機能についてのべた.ここでは,霜柱下底面に水を供給する給水体としての土壤水分条件が如何なる物性値によって表わされるかを研究した.試料としては,種々の段階別に粒径のよくそろった水晶粉末7種と砂2種,さらに,これらと対照する意味で,幅広い粒径の粒子を含有する関東ローム(松戸市常盤平の表土)を使用した.これらの試料のそれぞれに,さまざまな水分量を与えて,その上にのせた起霜物質(水晶白:粒径3〜7μ)に霜柱が発生するかどうかを,低温恒温庫に試料を入れて観察した.同時に,これらの試料の粒度分布,pF-水分曲線,毛管力,透水係数,不飽和透水係数を測定し,これらと,上記の方法で調べた霜柱発生水分域の関連性を検討した.その結果,霜柱発生水分域の最大水分量W_<max>は,pF1に相当するものであり,同じく最小水分量W_<min>は,水分拡散係数D_w≒0.003cm^2/secに相当する水分量であることが明らかとなった.霜柱が発生するためには当然W_<max>-W_<min> >0でなければならず,この値の大きい土壤ほど霜柱が発生しやすいといえる.実験の中で,粒径のそろった水晶微粉末において,霜柱発生水分域が極めて発見しにくかったのは,W_<max>とW_<min>の間に体積含水率において僅かの差しかなかったためと考えられる.これに反し,関東ロームは,体積含水率の広い範囲にわたって霜柱発生水分域があり,給水体としてきわめてすぐれていることがわかった.第3部では,霜柱の生長方程式をたて,霜柱生長の具体的条件を明らかにしようとした.霜柱の生長方程式には,従来,熱伝導型と放射冷却型の2つがあった.前者は,J. STEFANが北極海の氷の生長を説明するためにたてた式,すなわち[numerical formula] (3・1)ここに,l:時刻tにおける氷の厚さ,k_i:氷の熱伝導度,θ_i:氷の表面温度,L:氷の融解の潜熱.より出発したもの,後者は著者らが以前にたてたもの,すなわち[numerical formula](3・2)(x'は下向きに正)ここに,dl/dt:霜柱の生長速度,ε_l:霜柱表面の長波放射射出率,k_s:土の熱伝導度,∂θ_s/∂x':地中の温度勾配,α:霜柱の密生度.後者の放射冷却型方程式は,霜柱が短い場合の現象をよく説明し得ると共に,霜柱の短い場合の実測生長速度ともかなりよく合致していたが,長い霜柱の生長速度の減少を説明できなかった.前者の熱伝導型方程式は,霜柱が長くなるにつれて生長速度が減少することを定性的に説明するには役立ったが,実測の数値とは合致せず,短い霜柱の生長速度には適合しなかった.本研究では,上記の2者を統一して長短いずれの霜柱にも適用できる方程式の誘導を試みた.すなわち,霜柱の表面と底面でそれぞれ熱収支を考え,それを結合する方法で(3・3)式から(3・3・6)式までに示した新しい生長方程式を誘導した.また,この過程において,地中からの熱流q_soの考察の中から,霜柱がよく生長するためには土の熱伝導度k_sが小さいことが重要であることも明らかにした.以上から,霜柱の発生しやすい土壤の条件をまとめると次の通りである.1.粒径が3〜5μ以下の微粒子を含んでいること.2.W_<max>とW_<min>の間の水分量の幅が広いものであること.3.熱伝導度k_sの小さいものであること.関東ロームによく霜柱が見られるのは,適度の寒さと,雪が少ないという気象条件から霜柱が人の目にふれやすいためだけでなく,以上の3条件を十分に満たしているためであることも明らかとなった.以上の条件が満たされている土壤に生長する霜柱の生長方程式として,従来,熱伝導型と放射冷却型の2種があった.本研究では,相補的関係にある両者を統一する新しい生長方程式を誘導し,新方程式による生長速度dl/dtが,実測した速度とおおむね一致することを実証した.さらに従来の2つの型の方程式が,新方程式の特定の条件のもとでの近似式として与えられることも明らかにした.解決すべき問題は多く残されているが,本研究によって,霜柱の生長のための土壤条件と気象条件について,いくつかの基礎的な条件が明らかとなったので,ここに報告した.
著者
田和 康太 中西 康介 村上 大介 金井 亮介 沢田 裕一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.119-130, 2015-11-30 (Released:2017-10-01)
参考文献数
33

アカハライモリはその生活史において、幼生期と成体期には水田や池沼などの止水域で過ごし、幼体期には林床などの陸上で生活する日本固有の有尾両生類である。アカハライモリは圃場整備事業による水田環境の改変等の影響を受け、その生息数を全国的に減少させている。しかし、現状として、その保全対策に不可欠な生活史や生息環境の条件などに関する情報は非常に限られている。本研究では、アカハライモリの生息環境と季節的な移動を明らかにするために、滋賀県の中山間部水田地帯に設定した調査地において、未整備の湿田とそれに隣接する素掘りの土側溝に生息するアカハライモリの幼生および成体の個体数を水田の農事暦に則して調査した。その結果、アカハライモリの繁殖期である5月から6月には、土側溝でアカハライモリ成体が雌雄ともに多く出現し、水田ではほとんどみられなかったが、7月以降には、成体の個体数が雌雄ともに土側溝で減少し、水田で増加した。幼生は7月中旬から土側溝に出現し、9月までその生息が確認された。このことから、アカハライモリ成体は産卵場所として土側溝を利用し、幼生はそのまま土側溝に留まって成長し変体上陸するが、繁殖期後の成体は水田に分散している可能性が高く、アカハライモリはその生活史や発育段階に応じて隣接した水田と土側溝を季節的に使い分けているものと考えられた。以上より、水田脇に土側溝がみられるような湿田環境を維持していくことがアカハライモリ個体群の保全に極めて重要であると推察された。
著者
金川 絵利子 岡留 剛
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.F-G94_1-14, 2017-05-01 (Released:2017-05-01)
参考文献数
27

The subtree kernel and the information tree kernel defined here permit us to measure the syntactic characteristics and similarity of sentences. The subtree kernel is the total number of the common subtrees in two trees and the information tree kernel is defined as the total Shannon information contents contained in the common subtrees. The information tree kernel enables us to capture such structural characteristics peculiar to the styles of writers. The analyses using by these kernels reveal some syntactic characteristics and similarities of the Japanese 31 authors’ writing styles. In particular, the results of the analyses for the great five authors, Soseki Natume, Ryunosuke Akutagawa, Osamu Dazai, Nankiti Niimi, and Kenzi Miyazawa, show that, for example, (1) Natume more often writes a sentence of the dependency structure in which the same subtree structure occurs multiple times in the sentence. (2) Akutagawa more often uses the dependency structures for extra or detailed expressions that modifies a noun phrase than the others do. (3) Dazai often uses the dependency structures that consist of many shallow subtrees arranged in parallel, but the others seldom write sentences of the parallel subtree structures. (4) Niimi uses simpler dependency structures than Miyazawa does and Miyazawa writes short sentences in more various dependency structures.
著者
中林 幸子 Yukiko Nakabayashi 千里金蘭大学 現代社会学部 現代社会学科
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.16-27,

血液型性格分類は「科学的根拠がない」という枕詞を冠しながら、人びとに広まっている。「科学的根拠がない」にもかかわらず、なぜ血液型性格分類の話を夢中になってしたり、本気で信じたする人がいるのだろうか。本稿では、マス・コミュニケーション効果論の観点から小学4年生の児童(東京都、茨城県の計343名)にアンケート調査を行い、彼らが、血液型性格分類を採用していく過程で、何から(もしくは誰から)影響を受けているのかを探った。具体的には、血液型性格分類についての情報をどこから入手して自らの知識としたのか、何(あるいは誰)の影響で血液型性格分類を信じるに至ったのか 、血液型性格分類を応用した行動を実際にとったことがあるかである。 結果、以下の4点が明らかになった。1児童は血液型性格分類に関する情報を、マス・メディアと人(パーソナル・メディア)の双方から得ている。2行動レベルにおいて、マス・メディアよりもパーソナル・メディアの影響の方が強い。3準拠集団へ強い帰属意識を持つ者は、その集団の持つ血液型性格分類への信念と自身の信念が強く相関している。4血液型性格分類を信じていないがそれに基づいた行動をとる者が存在する。
著者
金子幸彦著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1961
著者
金指 あや子 菊地 賢 杉山 正幸 石田 清 永光 輝義 鈴木 和次郎
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.139-149, 2014-11-30

環境省レッドリストで絶滅危惧II 類に指定されている日本固有種ハナノキAcer pycnanthum(ムクロジ科)の最大の自生地である岐阜県中津川市千旦林において、ハナノキ個体群の分布と構造を明らかにし、その成立について考察した。調査は、2カ所の自生地(A区:7.5ha、B区:0.9ha)で行った。自生地はいずれも造林地や広葉樹二次林に覆われているが、A区には、ため池沿いの湿地や水田跡地などの開放的な環境も含まれる。A区では胸高周囲15cm以上の幹を持つハナノキ個体が785個体、B区では44個体が確認され、A区は個体数規模においてハナノキの我が国最大の自生地であると認められた。A区では、逆J字型のサイズ構造を示し、若い未成熟個体を多く含んでいたが、B区は幅の広い一山型分布を示した。現存個体の死亡にともなう地域個体群の絶滅が危惧されるB区に対し、A区では更新木の存在により個体群の存続が見込まれる。こうした個体群構造の違いは、開放的環境の有無や森林の取り扱い履歴に起因する。特に過去、複数回行われたスギ、ヒノキなど針葉樹植林時の森林伐採が、ハナノキの順次更新をもたらした結果、A区における最大規模の個体数の維持に寄与していると考えられた。多くのハナノキ自生地では実生の更新がほとんど見られず個体群の衰退が危惧される中、ハナノキの保全管理のモデルケースとして、本区域のハナノキ個体群の動態を注意深く見守り、個体群の持続機構を解明するとともに、更新サイトを確保するための上層間伐(受光伐)などの管理を行う必要がある。
著者
日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン策定委員会 石井 則久 浅井 俊弥 朝比奈 昭彦 石河 晃 今村 英一 加藤 豊範 金澤 伸雄 久保田 由美子 黒須 一見 幸野 健 小茂田 昌代 関根 万里 田中 勝 谷口 裕子 常深 祐一郎 夏秋 優 廣田 孝司 牧上 久仁子 松田 知子 吉住 順子 四津 里英 和田 康夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.11, pp.2023-2048, 2015-10-20 (Released:2015-10-22)
参考文献数
185

Here, we present our new guideline for the diagnosis and treatment of scabies which we, the executive committee convened by the Japanese Dermatological Association, developed to ensure proper diagnosis and treatment of scabies in Japan. Approval of phenothrin topical use under the National Health Insurance in August 2014 has contributed to this action. Permethrin, a topical anti-scabietic medication belonging to the same pyrethroid group as phenothrin, is already in use worldwide. For making proper diagnosis of scabies, following three points should be taken into consideration: clinical findings, detection of the mite(s) (Sarcoptes scabiei var. hominis), and epidemiological findings. The diagnosis is confirmed when the mites or their eggs are identified by microscopy or by dermoscopy. As we now have a choice of phenothrin, the first line therapy for classical scabies is either topical phenothrin lotion or oral ivermectin. Second line for topical treatment is sulfur-containing ointments, crotamiton cream, or benzyl benzoate lotion. Gamma-BHC ointment is no more provided for clinical use. If the patient is immunosuppressed, the treatment option is still the same, but he or she should be followed up closely. If the symptoms persist, diagnosis and treatment must be reassessed. For hyperkeratotic (crusted) scabies and nail scabies, removal of thick scabs, cutting of nails, and occlusive dressing are required along with topical and/or oral treatments. It is important to apply topical anti-scabietic lotion/cream/ointment below the neck for classical scabies or to the whole body for hyperkeratotic scabies, including the hands, fingers and genitals. For children and elderlies, it is recommended to apply treatment to the whole body even in classical scabies. The dosage for ivermectin is a single oral administration of approximately 200 μg/kg body weight. It should be taken on an empty stomach with water. Administration of a second dose should be considered at one-week with new lesions and/or with detection of mites. Safety and effectiveness of combined treatment with topical and oral medications are not yet confirmed. Further assessment is needed. Taking preventative measures is as important as treating those infected. It is essential to educate patients and healthcare workers and conduct epidemiological studies to prevent further spread of the disease through effectively utilizing available resources including manpower, finance, logistics, and time. (Jpn J Dermatol 125: 2023-, 2015)
著者
白井 達也 金子 真
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.385-394, 1993-04-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10

Power transmission systems with timing belt are often used in various machines because of their simple mechanism and easy treatment. However, the diagnosis for those transmission system has not fully established. This paper discusses self-failure diagnosis for a timing belt transmission system using tension-differential-type torque sensor (TDT sensor). A tension pulley is usually incorporated into a part of the transmission system, so that the system can maintain a proper tension during operation. Since such a tension pulley receives force directly from the timing belt, it is expected that the diagnosis of the timing belt can be done with much high S/N ratio and thus with high reliability. Based on this idea, the authors designed a TDT sensor available for a timing belt application, and explored a diagnosis algorithm detectable not only for a timing belt with V-crack but also for a timing belt with blinding at a tooth. Through a number of experiments, we verified the effectiveness of the proposed algorithm and also found an interesting behavior of the sensor signals which is not expected.