著者
鈴木 彰
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.54-65, 2003-07-10

中世社会における家意識を探ろうとするとき、重代の武具の相伝・伝来に伴う精神性の分析は不可欠なものである。本稿では、未だ本格的な検討の進んでいない中世刀剣伝書をとりあげ、源家重代の太刀「鬚切」に関する諸説の基盤や分布状況、その内容的特徴などを分析し、その上で、軍記物語に現れる「鬚切」関連叙述との関係や、同説に付随する家意識が、物語再生の過程でいかなる作用や表現効果を生みだしているかについて検討した。
著者
大久保 街亜 鈴木 玄 Nicholls Michael E. R.
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.85.13235, (Released:2014-11-11)
参考文献数
27
被引用文献数
10 73

Quantitative assessment of handedness is required in various clinical and research settings in psychology, neuroscience, and medicine. In the present study we tested the reliability and validity of a Japanese version of the FLANDERS handedness questionnaire, which was a new measure of skilled hand preference originally reported by Nicholls, Thomas, Loetscher, and Grimshaw (2013). Participants (N = 431) completed three types of handedness questionnaires: the FLANDERS handedness questionnaire, Edinburgh Handedness Inventory, and H・N handedness test. Factor analysis revealed that the Japanese version of FLANDERS handedness questionnaire had a single-factor structure and high internal consistency. This questionnaire also possessed high test-retest reliability and criterion-referenced validity. These results indicate that the Japanese version of the FLANDERS handedness questionnaire is a valid and useful measure of skilled hand preference for Japanese participants.
著者
王 青躍 ゴン 秀民 董 詩洋 関口 和彦 鈴木 美穂 中島 大介 三輪 誠
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.29, no.S1, pp.s197-s206, 2014-02-20 (Released:2014-04-01)
参考文献数
29

This paper reports on the absorption of environmental pollutants into various airborne pollen grains, aggravation of allergenicity, damage to the pollen cell walls, and the airborne behavior of fine allergenic particles, especially those released from Cryptomeria japonica (Japanese cedar) pollen, as abundantly determined on sunny days following rainfall. From the result of rainfall sampling and analysis, it was indicated that a great number of pollens were trapped in initial precipitation. At the same time, many burst pollen grains were also observed in the rainwater. Thus, it was possible that fine allergenic particles such as fractions of cell wall and contents of pollen were released from the bursting of pollen grains. On the other hand, elution of allergenic contents was increased when contacted with a weakly basic solution containing Ca2+ ions. Therefore, we think that one important factor contributing to the small-sized allergenic particles was induced by contact with rainfall after long-range transportation events of Asian dust.We succeeded for the first time in detecting fine allergenic contents containing 3-nitrotyrosine in urban atmosphere and clarified that 3-nitrotyrosine induces HeLa cell apoptosis. We summarized the various studies to elucidate the scattering behavior of various pollens, focusing on Cryptomeria japonica pollen and its allergenic particles in the urban atmosphere. This study has the potential for future developments in palynology.
著者
鈴木(堀田) 眞理
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.676-682, 2016-04-10 (Released:2017-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
5

神経性やせ症や過食症などの摂食障害は,低栄養や自己誘発性嘔吐や下剤・利尿薬乱用に伴う合併症で救急診療を必要とする場合がある.「摂食障害救急患者治療マニュアル」「神経性食欲不振症プライマリケアのためのガイドライン」について概説し,救急でみられる症状と疾患,栄養アセスメント,内科的緊急入院の適応,重篤な合併症と治療,栄養療法,再栄養に伴う重篤な合併症であるrefeeding症候群の予防について述べる.
著者
手良村 知功 小枝 圭太 鈴木 尚光 平瀬 祥太朗 瀬能 宏
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.19-032, (Released:2020-02-28)
参考文献数
18

A single specimen (124 mm in standard length) of the genus Bathophilus, trawled from 300 m in Suruga Bay, Japan on 30 January 2019, was identified as Bathophilus longipinnis (Pappenheim, 1914), being characterized by the following combination of characters: bases of pelvic fins equidistant between dorsal and ventral profiles; pectoral-fin rays 8; pelvic-fin rays 10; ventral row of photophores from tip of isthmus to anal-fin origin 32; large lateral series photophores 25; vertebrae 45 (previously recorded range 40–44); head length 17.3% in standard length (18.0–25.0%); body depth at origin of dorsal fin base 14.3% in standard length. The circumglobal (Atlantic Ocean; Indian Ocean; southern Pacific Ocean: Australia; Central Pacific: Hawaiian Islands; western Pacific Ocean: South China Sea) species has been previously recorded from the Kuroshio Current basin (20– 38˚S, 138–152˚E), although the detailed collection locality was not stated. There being no other records from Japanese waters, the specimen from Suruga Bay represents the first unequivocal record of B. longipinnis from Japan. The new standard Japanese name “Amanogawa-gingaeso” is proposed for the species.
著者
鈴木 眞一 鈴木 聡 岩舘 学 立谷 陽介 芦澤 舞 大河内 千代 中野 恵一 中村 泉 福島 俊彦 水沼 廣 鈴木 悟
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.7-16, 2017 (Released:2017-04-28)
参考文献数
18

小児甲状腺癌は稀な疾患とされているが思春期若年成人では決して稀ではない疾患である。その超音波所見につき解説する。小児若年者の甲状腺癌の大半は乳頭癌であり,なかでも多くが古典型と言われる通常型である。浸潤型が多く境界不明瞭でリンパ節転移が多い。さらに特殊型のびまん性硬化型乳頭癌類似の腺内散布像を認める。特殊型もあることを念頭に置くが,通常の乳頭癌の術前診断が重要であり,ドプラ法,エラストグラフィも組み合わせ診断する。術前術後のリンパ節の評価には超音波診断が重要である。小児若年者甲状腺癌に関しては術前術後の超音波検査は極めて重要である。
著者
鈴木 翔 須藤 康介 荒川 智美 寺田 悠希 澁谷 功太郎
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.103-116, 2012-03-10 (Released:2012-04-05)

The purpose of our study is to make clear the significance of a boyfriend or girlfriend for junior high school students. For this purpose, we firstly investigated the determining factors of having a boyfriend/girlfriend, and then clarified the effects of the fact that one has a boyfriend/girlfriend on their self-consciousness. As a result of our analyses, we got following two findings. First, there are various factors which determine whether junior high school students have a boyfriend/girlfriend or not, and the factors differ according to each student's gender. Furthermore, the levels of academic accomplishment of the school also make a difference. Second, when we analyze the effects of that fact on their self-consciousness, it is necessary to consider not only the very thing that one has a boyfriend/girlfriend or not, but also if she or he is likely to have a boyfriend/girlfriend. Our analysis suggests that a success in love for girls in junior high has a more complex meaning compared with that for boys.
著者
草野 央 池原 久朝 鈴木 翔 江崎 充 後藤田 卓志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.48-56, 2018 (Released:2018-01-22)
参考文献数
16

消化器内視鏡治療のめざましい発展とともに,安定した治療を施せるような鎮静が求められている.しかし,内視鏡時の鎮静に対する承認が取得できている薬剤はほとんどなく,ミダゾラムやフル二トラゼパムが保険適応外で使用されているのが現状であり,安全かつ確実な鎮静方法の確立が急務となっている.この状況を受けて2013年には日本消化器内視鏡学会より“内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン”が作成され,鎮静が必要と考えられる局面においてどのような鎮静方法が良いのか,指針が示されている.近年では,鎮静薬として,短時間作用型のプロポフォールや呼吸抑制がないプレセデックスが注目を浴びており,消化器内視鏡治療領域においても使用頻度が増している.しかし,その適応や使用方法を誤ると偶発症のリスクが高まるのも事実である.薬剤の特徴,使用方法,モニタリング方法等,今まで以上に事前の学習とトレーニングが必須の時代となっている.
著者
浜田 光誉 鈴木 新一
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第54回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.76, 2011 (Released:2012-03-09)

妨害ロボットは,相手との駆け引きや心理戦をもたらし,手動ロボットは,操縦者の行いによっては,ドラマを生む.こういった要素は,参加者と観客を楽しませる.妨害ロボットと手動ロボットは,面白いコンテストのためには必要である.しかし,2009年にロボコンのルールが変更され,それ以降,妨害ロボットは製作できなくなった.手動ロボットだけが,ゲームに面白さをもたらすことになった.しかし,外国の二チームによって,完全に自動的に動く,「自動化された」手動ロボットを製作された.自動化された手動ロボットはミスをしない.そこにハプニングは生まれない.観客は,ハプニングを楽しめなくなってしまった.ハプニングよって作られたドラマは,テレビ番組とって,とても重要である.自動化された手動ロボットの製作を認めるべきだろうか?
著者
鈴木 寿之 大迫 尚晴 木村 清志 渋川 浩一
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.7-28, 2020 (Released:2020-03-31)
被引用文献数
2

琉球列島の河川急流域に生息するハゼ科ヨシノボリ属魚類2 新種、Rhinogobius yaima と R. yonezawai を記載した。Rhinogobius yaima(ヤイマヒラヨシノボリ:新称)は縦列鱗数40–43、脊椎骨数26、第1 背鰭棘数6、頭部はよく縦偏し、体と尾柄は細長い、雄の第1 背鰭低く後端は倒しても第2 背鰭起部に達しない、腹鰭第5 軟条は普通最初に5 分岐する、胸鰭基底、腹鰭起部前方、腹部腹中線周辺は無鱗である、生時もしくは生鮮時に側頭部から第2 背鰭起部にかけての背面に橙色または赤色の2 縦線がある、胸鰭基底に1 暗色楕円形斑がある、雄の尾鰭に橙色の4 横点列がある、雌の尾鰭基底に垂直に並んだ1 対の長方形または円形の黒色斑があるなどの特徴で同属他種から区別できる。Rhinogobius yonezawai(ケンムンヒラヨシノボリ:新称)は縦列鱗数35–39、脊椎骨数26、雄の第1 背鰭は高く烏帽子形、その第2・3 棘が最長で糸状に伸長しないものの倒すと第2 背鰭第1 から第4 軟条基部に達する、腹鰭第5 軟条は最初に4 分岐する、胸鰭基底、腹鰭起部前方、腹部腹中線周辺もしくは腹部腹中線前半周辺は無鱗である、胸鰭基底に黒色楕円形斑がある、生時もしくは生鮮時に側頭部から第1 背鰭下方にかけての背面に橙色または赤色の2 縦線がある、胸鰭基底に1 暗色楕円形斑がある、雄の尾鰭に橙色または赤色の6–8 垂線がある、雌の尾鰭基底に横Y 字形の1 黒色斑があるなどの特徴で同属他種から区別できる。
著者
中下 留美子 鈴木 彌生子 伊永 隆史 渡辺 伸枝 田中 公一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1023-1028, 2009 (Released:2010-01-25)
参考文献数
22
被引用文献数
9 4

炭素・窒素・酸素安定同位体比質量分析法を用いて,日本国内に流通している牛肉の産地判別の可能性について検討した.牛肉の各元素の安定同位体比は,品種の違いよりも肥育環境(肥育地及び餌)の違いを反映していた.国産及び輸入(豪州産・米国産・ニュージーランド産)牛肉の炭素安定同位体比は,米国産,国産,豪州産,ニュージーランド産の順に高い値を示し,酸素安定同位体比は,豪州産が国産,米国産,ニュージーランド産より高い値を示した.国内4地域(沖縄,三重,山形,北海道)から収集した牛肉については,炭素・窒素安定同位体比はどの地域も同様の値を示したが,酸素安定同位体比は地域によって異なり,高緯度地域ほど低い値を示した.以上のことから,安定同位体比質量分析法により,輸入牛肉と国産牛肉の判別だけでなく,国産牛肉についても,緯度が大きく離れているものについては判別できる可能性が示唆された.
著者
鈴木 ひとみ 山本 昭
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第6回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.105-109, 2009 (Released:2009-10-01)
参考文献数
5

戦後日本国内で、外国の理工学図書の海賊版が作られ、広く使われていた。1980年代には姿を消した。広く流布していたにもかかわらず、その非合法性から実態が記録されることはなかった。本研究では、新聞記事等の文献、実際にそれらに接した研究者からの聞き取り、実物を入手しての原本との比較の三つの面から、物理的特徴、原本入手から、発注、印刷、頒布までの作成・流通過程等の実態を明らかにした。
著者
鈴木 晃志郎 于 燕楠
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2019年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.35, 2019 (Released:2019-03-30)

研究目的 本発表は,地理学が得意とする空間的可視化の手法を用いて,富山県内の心霊スポットの分布が現代と100年前とでどう異なるかを空間解析し,その違いをもたらす要因について考察することを目的とする.本発表はエミックに扱われがちな事象をエティックに捉える試みであり,民俗学を中心に行われてきた妖怪変化の分類学を志向するものでもなければ,超常現象そのものの有無を論ずるオカルティズム的な関心も有しない. 超常現象が何であるにせよ,それらが超常現象となり得るには,人目に触れ認知されなければならない.ゆえに超常現象は高度に文化的であり,その舞台として共有される心霊スポットは,組織化され商業化された一般的な娯楽からは逸脱した非日常体験を提供する「疎外された娯楽(Alienated leisure)」(McCannell 1976: 57)の1つとして社会の文化的機能のなかに組み込まれているとみなしうる.その機能に対して社会が与える価値づけや役割期待の反映として心霊スポットの布置を捉え,その時代変化を通じて霊的なものに対する社会の側の変容を観察することは,文化地理学的にも意義があると考えられる.研究方法・分析対象 2015年,桂書房から復刻された『越中怪談紀行』は,高岡新報社が1914(大正3)年に連載した「越中怪談」に,関係記事を加えたものである.県内の主要な怪談が新聞社によって連載記事として集められている上,復刻の際に桂書房の編集部によって当時の絵地図や旧版地形図を用いた位置情報の調査が加えられている.情報伝達手段の限られていた当時,恐らく最も網羅的な心霊スポットの情報源として,代表性があるものと判断した.この中から,位置情報の特定が困難なものを除いた49地点をジオリファレンスしてGISに取り込み,100年前グループとした.比較対象として,2018年12月にインターネット上で富山県の心霊スポットに関する記述を可能な限り収集し,個人的記述に過ぎないもの(社会で共有されているとは判断できないもの)を除いた57の心霊スポットを現代グループとした.次にGIS上でデュアル・カーネル密度推定(検索半径10km,出力セルサイズ300m)による解析を行い,二者の相対的な分布傾向の差異を可視化した.このほか,民俗学的な知見に基づきながら,それらの地点に出現する霊的事象(幽霊,妖怪など)をタイプ分けし,霊的事象と観察者の側とのコミュニケーションについても,相互作用の有無を分類した.結 果 心霊スポットの密度分布の差分を検討したところ,最も顕著な違いとして現れたのは,市街地からの心霊スポットの撤退であった.同様に,大正時代は多様であった霊的事象も,ほぼ幽霊(人間と同じ外形のもの)に画一化され,それら霊的事象との相互作用も減少していることが分かった.霊的なものの果たしていた機能が他に代替され,都市的生活の中から捨象されていった結果と考えられる.文 献:MacCannell, D. 1976. The Tourist: A new theory of the leisure class. New York: Schocken Books.