著者
田中 智寛 山田 隆治 青山 和美 吉村 尊子 関本 朱美 山下 永里
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.92, 2005

【はじめに】<BR>日本福祉用具・生活支援用具協会による2002年度の福祉用具産業市場動向調査において、福祉車両の供給率は1993年度と比較して9.53倍と急増しており、福祉車両に対するニーズの高さを示している。しかし、ニーズは高いが、実際に触れる機会の少ない福祉車両について、宇城地域リハビリテーション広域支援センター(以下、支援センター)において、福祉車両展示会を企画・実施したので以下に報告する。<BR>【目的・開催に向けて】<BR>この会は支援センターとして初の試みであり、(1)福祉車両に実際に触れ、知識と情報を得る場とする(2)各参加者間の情報交換・交流の場とする等、今後も継続的に行う事を視野に入れた目的設定をした。<BR>目的を踏まえ、出展車両は市販車とし、第6回西日本国際福祉機器展にて4社に依頼し、3社が展示可能となった。出展車両は、基本的に各社の出展可能な物を依頼し、後方スロープ1台、リフトアップシート3台、リフト仕様2台、両上肢操作仕様2台の計8台の展示となった。<BR>【開催当日】<BR>会は3時間行い、各企業より1台5分程度の車両の説明を行った後、自由に見学・質問の時間とした。<BR>参加者は計98名(内訳は入院・外来患者、当法人在宅系サービス利用者やその家族、他事業所、当法人職員)であった。当法人職員以外の参加者には、外出の回数・車両を取り扱う上での問題点・展示会についての感想等のアンケートを依頼した。<BR>【アンケート結果】<BR>アンケート回収は26名(男性6名・女性20名)。結果として、自動車の使用頻度は、「毎日」11名・「1・2回」8名と比較的外出を頻回に行われる方が多かった。車両の取り扱いで困る点は、「乗車や下車時」9名・「車椅子の乗せ降ろし」5名と運転自体より、乗降の際の問題が多く見られた。展示会の感想は「大変良かった」6名・「良かった」13名・「普通」5名だった。<BR>【考察及びまとめ】<BR>会全体を通して、参加者の福祉車両への興味が非常に高い事が伺われた。高齢・障害者や介助者にとって外出は、日常生活の中で直面している問題の一つである。しかし、当地域は郡部であり公共の交通も不便なため、外出における選択肢も少ない。そのため、外出する際の問題は直接的に介助者へ掛かり、生活範囲の狭小化につながる。地域住民の生活の幅を広げるために、会を定期的に開催し、情報の提供・共有や問題の共有をしていく必要性があると思われる。<BR>車両そのものについては、企業により車種に偏りがあり、参加者の関心にばらつきが見られた。また、車両の特性が介助者へ着目したタイプが多く、自操車タイプを目的に来場した方より物足りないという意見も聞かれ、今後の課題としたい。<BR>今回の展示会を開催して、福祉車両へのニーズの高さ・外出に対する意識の高さを再認識した。今後も支援センターとして、地域住民のニーズを反映させながら、発展的な生活支援の場にしていければと考える。
著者
熊本 雄一郎 青山 道夫 浜島 靖典 村田 昌彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故によって、20­-40 PBqの放射性セシウムが環境中に放出されたと推定されている。そのうちの7­8割は北太平洋に沈着・流出したと見積もられているが、それらのほとんどは海水に溶けた状態で存在する。そのため福島事故由来の放射性セシウムは、海水混合によって希釈されながら表層水の流れに沿って北太平洋全域に広がりつつある。これまでの研究によって、日本近海に沈着・流出した放射性セシウムは北太平洋の中緯度を表面海流に乗って東に運ばれ、事故から約4年が経過した2015年には北米大陸の西海岸に到達したことが分かっている。演者らは2017年夏季に北太平洋亜寒帯域において実施された海洋研究開発機構「白鳳丸」航海において海水試料を採取し、その中の放射性セシウム濃度を測定した。福島事故起源134Csの濃度は、希釈と放射壊変(半減期は約2年)によって現在1 Bq m­-3以下まで低下しているため、濃縮しなければ測定することができない。濃縮には、仏国Triskem社製のCsレジン(potassium nickel ferrocyanate on polyacrylnitrile, KNiFC-PAN)を用いた。海水試料約40 Lを50 ml min­-1の流速で5 ml(約1 g)のCsレジンに通水することで、レジンに放射性セシウムを濃縮した。海水試料にはキャリアとして塩化セシウム(133Cs)を加え(濃度約100 ppb)、その通水前と通水後の濃度差から放射性セシウムの回収率を約95%と見積もった。陸上実験室に持ち帰ったCsレジンは洗浄後、海洋研究開発機構むつ研究所、または金沢大学環日本海域環境研究センター低レベル放射能実験施設の低バックグランドGe半導体検出器を用いてγ線分析に供され、134Csの放射能濃度が求められた。東部北太平洋のアラスカ湾を横断する東西(北緯47度線)と南北(西経145度線)の2本の観測線に沿った鉛直断面図によると、深度300mまでの表層において東側及び北側の観測点、すなわち北米大陸沿岸により近い観測点で事故起源134Csの濃度が高くなっていた(放射壊変を補正した濃度で最高6 Bq m­-3)。これは北米大陸に到達した福島事故起源134Csが北米大陸に沿って北上し、さらに北太平洋の高緯度(北緯50­-60度)を西向きに運ばれていることを示唆している。本研究によって得られた結果から、今後数年以内に福島事故起源134Csが北太平洋亜寒帯の反時計周りの循環流、すなわち北太平洋亜寒帯循環流に沿って日本近海に回帰してくることが予測された。
著者
越湖 智之 木原 浩孝 戸部 信幸 淵脇 大海 青山 尚之 見崎 大悟 臼田 孝 井野内 康克
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.712, 2005

本研究では、uTAS分野において活用可能な、微少量の液体をハンドリングする分注機構を搭載した超小型ロボットの開発を行っている。前報までに振動モータを利用した微少液滴塗布機構を開発してきたが、振動の振幅制御を手動で行っていた為、作業に熟練を要した。今回、微小変位を高速に測定できる渦電流式変位センサ用いて自動的に振幅制御を行う手法を新たに開発したので、この原理および性能について報告する。
著者
林 宏一 田島 均 元村 淳子 小松 豊 藤江 秀彰 首藤 康文 青山 博昭
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.42, pp.P-229, 2015

近年,農薬等の化学物質による複合暴露影響に対する社会的関心が高まっているものの,複合毒性を評価するためには多数の動物と労力を要する。そこで,使用動物数の削減と簡便なスクリーニング法の確立を目指して,安全性薬理試験で用いられている摘出回腸テストによる複合毒性影響試験法を検討した。まず,一般的に使用されるモルモットと神経毒性影響の背景値が多いラットを使用して,代表的なコリンエステラーゼ活性(ChE)阻害剤を中心にして単剤に対する反応を確認した。<br>動物はSD系雄ラットおよびハートレイ系雄モルモット8~12週齢を使用した。動物を吸入麻酔下で放血殺し,回腸を1動物から2~3試料切り出した。試料は35℃,95%O<sub>2</sub>+5%CO<sub>2</sub>混合ガスを通気したタイロード液を満たしたマグヌス管にいれ,等張性トランスデューサに設置した。30分間以上静置した後,試料の反応を確認して実験に供した。検査は有機リン剤のパラチオン,その代謝物のパラオキソン,メタミドホス,カーバメイト剤のMPMC,ネオスチグミンを2×10<sup>-6</sup>~2 mg/mL濃度で,硫酸ニコチンは5×10<sup>-6</sup>~0.5 mg/mLの濃度で,それぞれ10倍段階系列で作成し,低濃度から累積暴露した。観察時間は各用量15分とした。パラチオンではラット,モルモットともに明瞭な反応は認められなかった。パラオキソン,メタミドホス,MPMC,ネオスチグミンではラット,モルモットともに用量相関性の収縮反応が認められ,その反応に種差は認められなかった。硫酸ニコチン暴露群では,ラットでは明瞭な収縮反応が検出できず,高濃度暴露に従って弛緩する傾向が認められた。モルモットでは一過性の明瞭な収縮反応の後,速やかに弛緩する反応が観察された。
著者
橘 ゆかり 青山 佐喜子 川島 明子 川原﨑 淑子 千賀 靖子 三浦 加代子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本調理科学会特別研究である『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』において、1960~1970年頃までに定着していた家庭料理について聞き書き調査を行った。本研究では、主に和歌山県の家庭で伝承されてきたおやつと年中行事や季節の農産物との関係について報告する。<br />【方法】平成25年12月~27年3月に、和歌山県の12地域(橋本、那賀、和海、上富田、大塔、田辺、勝浦、太地、熊野川、有田川、由良、日高)で聞き書き調査を行った。調査対象者の平均年齢は72.3±6.3歳で、合計38名の女性の聞き書き調査を行った。また地域でまとめられた資料や文献の調査を行った。<br />【結果】和歌山県の家庭で伝承されてきたハレの日のおやつとしては、菱餅(雛祭り)、柏餅、ちまき(端午の節句)、だんご、おはぎ(お盆や月見)、亥の子餅、くるみ餅(秋祭り)、よもぎ餅(秋祭り、正月)などがある。ケの日のおやつとしては、かきもち、あられやせんべいなどの餅の加工品、ふなやき、しゃなもち、小麦餅(半夏生他)や蒸しパンなどの小麦粉を使ったおやつの他に、はったい粉(あんぼ)、さつまいものおやつ(焼きいも、蒸しいも、干しいもなど)、炒り豆や果物や果物の加工品が食べられていた。和歌山県のおやつの特徴の一つとしては、季節の農産物と深いかかわりがあると考えられる。亥の子餅は、亥の日の行事食として古くから各地で伝承されている。一般的に亥の子餅はもち米だけで作る地域が多いが、和歌山県の亥の子餅の材料は、もち米だけではなく秋に収穫した里芋を使用する。また、端午の節句の行事食である柏餅は、和歌山県では、柏餅を包む葉は柏の葉ではなくサンキライの葉を使う地域が多く見られた。
著者
西川雅彦 青山幹雄
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.235-236, 2014-03-11

ソフトウェアの再利用においては生産性と品質の向上が期待されている.開発が進行すると再利用元で発見できなかったバグが再利用先に継承される.そこで,再利用に着目したインスペクション方法を提案する.再利用によってバグが伝播する確率をデータマイニング手法によって推定する.モジュール間の構造複雑度の類似度計算アルゴリズムを評価精度のレーティングに基づき決定する.実システムのバグデータにこのアルゴリズムを適用して開発工程ごとのバグ原因の類似性を明らかにする.バグ原因に対応する確認項目に基づいてインスペクションを行う方法を提案する.実システムのバグデータからこの方法によって摘出できるバグを評価することによって提案方法の有効性を示す.
著者
行武 大毅 袋布 幸信 永井 宏達 薗田 拓也 山田 実 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cd0834, 2012

【はじめに、目的】 野球肘の発生は11歳から12歳が,野球肩の発生は15歳から16歳がピークであると言われており,それらの発生要因としては過度の投げ込み,投球フォームなどが報告されている.また,初期の自覚症状である疼痛を見逃さないことが重症化を防ぐうえで重要である.一方で,日本臨床スポーツ医学会の,青少年の障害予防を目的とする提言の中で定められている投球数を超える練習を課しているチームも多数あり,指導者の意識的な面が障害発生に影響を与えていると考えられる.本研究の目的は,1) 京都市内の少年野球チームの選手の保護者や指導者を対象にアンケート調査を行い,少年野球チームにおける肩もしくは肘の疼痛発生に関する実態調査を行うこと,および,2) 学童期野球選手の投球障害発生要因を選手の個人要因や指導者の意識面を含めた環境要因から検討することである.【方法】 アンケート用紙を京都市内の平成23年度宝ヶ池少年野球交流大会参加チーム120チームに配布し,そのうち回答の得られた64チーム(選手の保護者740人,指導責任者58人)を対象とした.選手の内訳は男子714人(96.5%),女子24人(3.2%),性別未記入2人(0.3%)であり,選手の学年は6年生355人(48.0%),5年生286人(38.6%),4年生58人(8.8%),3年生29人(4.9%),2年生9人(1.2%),1年生3人(0.4%)であった.選手の保護者に対するアンケートの内容は選手の学年,性別,身長,体重,野球歴,ポジション,ここ1年での肩もしくは肘の疼痛の有無,自宅での自主練習について,ここ1年間の身長・体重の伸び幅,1日の睡眠時間とした(個人要因).指導者に対するアンケートの内容は年齢,指導歴,年間試合数,週の練習日数,投手の練習での投球数,投手の試合での投球数,投球数制限の知識の有無を含めた障害予防に対する知識・意識についてとした(環境要因).統計解析としては,従属変数をここ1年での肩もしくは肘の疼痛既往者とした多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った.階層的に分析するため,第一段階としては独立変数に個人要因のみを投入した.その後第二段階として,環境要因による影響を明らかにするため,両要因を投入した分析を行った.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には,説明会において口頭で十分な説明を行い,同意を得た.【結果】 解析には,欠損データを除いた選手の保護者531人,指導責任者58人分のデータを用いた.ここ1年での肩もしくは肘の疼痛既往者は210人(28.4%)であり,その内訳は6年生123人(58.6%),5年生69人(32.9%),4年生15人(7.1%),3年生2人(1.0%),2年生1人(0.5%)であった.個人要因を独立変数としたロジスティック回帰分析では,1年間の身長の伸び幅のみが有意な関連要因となり,伸び幅が大きいものほど,疼痛発生のリスクが高かった(オッズ比1.14,95%CI: 1.02-1.26,p<0.05).個人要因に加え,チーム情報や指導者の意識面などの環境要因を加えたロジスティック回帰分析では,1年間の身長の伸び幅(オッズ比1.15,95%CI: 1.02-1.30,p<0.05),および年間試合数が少ないと感じている指導者の率いるチーム(オッズ比1.74,95%CI: 1.11-2.72,p<0.05)の2つが疼痛発生のリスクを高める関連要因となっていた.さらに,判別分析を用いて身長の伸び幅のカットオフ値を求めたところ,6.3cmで疼痛発生者を判別可能であった.【考察】 現在野球肩や野球肘の発生要因には練習時間や練習日数などの環境要因が多数報告されているが,今回の解析により,投球障害に関わりうる数多くの個人要因,環境要因で調整してもなお,1年間の身長の伸び幅が独立して疼痛発生に影響していることが明らかとなった.疼痛発生は野球肩や野球肘の初期の自覚症状であることは報告されており,1年間の身長の伸び幅が大きい成長期(特に6.3cm以上)にある選手には,疼痛発生に対して特に注意を要すると考えられる.また,指導者の年間試合数に対する意見では,チームの年間試合数に対してより多い試合数が望ましいという意見を持っている指導者の率いるチームに,疼痛発生者が多いことが明らかとなった.この結果は,指導者の意識的な面が疼痛発生の一要因として関与している可能性を示唆している.【理学療法学研究としての意義】 本研究により,学童期の障害予防を進めるうえで,指導者に対しての意識面に関する啓発活動が必要である可能性が示唆された.また,身長の伸び幅の大きな選手に疼痛発生のリスクが高いという点はこれまでほとんど報告されてこなかった情報であり,これらに関して理解を得ることが重要となる.今後,この結果をスポーツ現場へ還元することにより,指導者の意識の向上と障害発生率の減少が期待される.
著者
山本 希 三浦 哲 市來 雅啓 青山 裕 筒井 智樹 江本 賢太郎 平原 聡 中山 貴史 鳥本 達矢 大湊 隆雄 渡邉 篤志 安藤 美和子 前田 裕太 松島 健 中元 真美 宮町 凛太郎 大倉 敬宏 吉川 慎 宮町 宏樹 柳澤 宏彰 長門 信也
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

蔵王山は,東北日本弧中央部に位置し宮城県と山形県にまたがる第四紀火山であり,現在の蔵王山の火山活動の中心となる中央蔵王においては,火口湖・御釜周辺での火山泥流を伴う水蒸気噴火など多くの噴火記録が残されている.一方,蔵王山直下では,2011年東北地方太平洋沖地震以後,深部低周波地震の活発化や浅部における長周期地震や火山性微動の発生が認められ,今後の活動に注視が必要であると考えられる.そのため,地震波速度構造や減衰域分布といった将来の火山活動推移予測につながる基礎情報を得るために,「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の一環として,人工地震を用いた構造探査実験を実施した.本人工地震探査は,全国の大学・気象庁あわせて9機関から21名が参加して2015年10月に行われ,2箇所のダイナマイト地中発破 (薬量200kgおよび300kg) によって生じた地震波を132点の臨時観測点 (2Hz地震計・500Hzサンプリング記録) および定常観測点において観測した.測線は,屈折法解析による火山体構造の基礎データの取得およびファン・シューティング法的解析による御釜周辺の地下熱水系の解明を目指し,配置設定を行った.また、地中発破に加え、砕石場における発破も活用し、表面波解析による浅部構造推定の精度向上も目指した.得られた発破記録から,解析の第一段階として,初動到達時刻を手動検測して得られた走時曲線のtime term法解析を行った結果,P波速度5.2~5.5 km/sの基盤が地表下約0.5kmの浅部にまで存在することが明らかとなった.また,本人工地震探査時および2014年に予備観測として行った直線状アレイを用いた表面波の分散性解析の結果も,ごく浅部まで高速度の基盤が存在することを示し,これらの結果は調和的である.一方,ファン状に配置した観測点における発破記録の初動部および後続相のエネルギーを発破点からの方位角毎に求め,御釜・噴気地帯を通過する前後の振幅比から波線に沿った減衰を推定した結果,御釜やや北東の深さ約1km前後に減衰の大きな領域が存在することが示された.中央蔵王においては,これまで主に地質学的手法により山体構造の議論が行われてきており,標高1100m以上の地点においても基盤露出が見られることなどから表層構造が薄い可能性が示唆されてきたが,本人工地震探査の結果はこの地質断面構造とも整合的である.一方で,得られた速度構造は,これまで蔵王山の火山性地震の震源決定に用いられてきた一次元速度構造よりも有意に高速度であり,今後震源分布の再検討が必要である.また,御釜やや北東の噴気地帯直下の減衰域は,長周期地震の震源領域や全磁力繰り返し観測から推定される熱消磁域とほぼ一致し,破砕帯およびそこに介在する熱水等の流体の存在を示唆する.今後のさらなる解析により,震源推定の高精度化など,火山活動および地下流体系の理解向上が期待される.
著者
青山 満喜 松尾 歩
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P3232-E3P3232, 2009

【はじめに】軽費老人ホームにおいて,日常生活動作(以下,ADL)維持,健康維持,運動習慣のために「機能訓練教室」と称した運動を実施している.今回,理学療法士による運動の選択,効果などに関して若干の知見を得たので報告する.報告については,施設長ならびに参加者に対し書面および口頭で説明し同意を得た.<BR>【目的および方法】ADL維持ならびに運動習慣を着眼点とし,楽しく,無理なく運動できるよう実践している.内容として上下肢の運動,バランス訓練,ストレッチングとし,運動時間は毎回60分,月に2回実施している.1.上肢の筋力維持・向上を目的とした運動2.下肢の筋力維持・強化を目的とした運動3.立位バランス維持・向上を目的とした片脚ならびにタンデム立位保持4.四這い位での上下肢挙上のバランス練習5.柔軟性を維持するためのストレッチング<BR>【結果】機能訓練教室を毎月2回,1年間に計24回実施している.平成19年度中に参加した延べ人数は175人であり,参加者の最高年齢は93歳であった.参加者の意見として,「運動して汗をかくのは気持ちがいい」,「運動後に身体が温まる」,「運動後に身体が軽く感じ動きやすくなる」など肯定的なものが多く,更に,痛みの緩解や柔軟性の向上などの効果も寄せられた.その他として,「冬は部屋に閉じこもりがちになるが,『機能訓練』の時は部屋から出ようと思う」,「他の人と話をする良い機会になる」,「一人では運動できなくても皆で運動するとやる気が出て続けることができる」などの意見もあった.<BR>【考察・まとめ】軽費老人ホームに入所し続けるには,起居動作,移動動作,食事動作,更衣動作,整容動作,トイレ動作,入浴動作,コミュニケーションの自立が必要最低条件とされている.機能訓練教室の参加者は皆このことを承知しており,ADL自立の重要性を認識している.一日三度の食事は施設内の食堂で提供されるため,生活関連動作である炊事は自立していなくても入所は可能であり,広義のADLとされる洗濯,買物,掃除等に関してはヘルパーを利用することも可能である.施設内は段差も少なく,移動しやすく設計されてはいるものの,施設内を移動できる歩行能力(歩行補助具の使用を含む)が要求される.軽費老人ホームでは,毎月さまざまな「○○教室」と称する活動が行われているが,これらは華道,茶道,書道,というsedentaryなものが多いため,入所者の現在のADL能力を維持・向上させ,さらに運動を習慣付ける必要がある.現在の「機能訓練教室」を続けるにあたり,「きっかけ」,「継続」,「効果」の3要素が必要であると考える.そのためには,理学療法士の観点による環境設定,表現力,説明力などが今後さらに求められてくるものと思われる.今後も楽しく,わかりやすく,入所高齢者に無理のないADLおよび健康維持のために運動を習慣づけるような「機能訓練」を推し進めていきたい.
著者
小木曽 一之 串間 敦郎 安井 年文 青山 清英
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.449-462, 1997

The puropose of this study was twofold: (a) to investigate the pattern of change in the sprinting speed that is the final results of the sprinting movements, and (b) to find out whether the characteristics in the sprinting speed change due to the differences in age, sex, sprinting ability and training status. One-hundred thirty male and 123 female ordinary students aged 6 to 18, and 30 male and 23 female sprint runners aged 9, 10, 11 and 18 participated in this study. They were instructed to excute an exhaustive sprinting. Sprinting times ranged from about 20 to 30 sec. The elapsed times were measured every five meters in their sprinting. In the analysis, the polynomial curve fitting from 5th-degree to 9th-degree was used for the predictions of the sprinting distances with respect to the elapsed times every 0.1 sec. From the relations of the distances to times the following speeds were computed: 1) the sprinting speed that was computed by differentiating the sprinting distance, and 2) the average speed form start to the elapsed time every 0.1 sec. The sprinting speed reached the peak speed after about 6to 7 sec from start. The average speed showed the peak speed after about 15 sec from start. These characteristics with respect to time remained unchanged despite the differences in age, sex, sprinting performance and training status. The time at the maximum average speed was particularly stable. The maximum average speed was about 90% of the maximum sprinting speed. This result also remained unchanged despite the differences in age, sex, sprinting performance and training status,respectively. These results indicate that the pattern of change in the sprinting speed with respect to time is rather constant without the distinction of age, sex, sprinting performance and training status. The sprinting performance, however, improved with age and by training. This result was mostly caused by the increase of the maximum sprinting speed with age and by training. These characteristics with respect to time and speed seem to cause the differences in the sprinting distance.
著者
塩田 雄太郎 森 由弘 青山 重男 原田 淳一 瀬崎 達雄 長田 高寿 高橋 清 木村 郁郎
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.289-293, 1988-03-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
15

消化器並びに呼吸器症状を呈する19歳白人の膵嚢胞性線維症の1症例を報告する. 患者は生来健康であったが, 19歳より咳嗽, 喀痰, 下痢を繰返すようになった. なお患者の兄はすでに膵嚢胞性線維症と診断されている. 胸部X線写真ではびまん性の小結節状陰影があり, 両側肺野に気管支の走向に一致した線状陰影が認められた. 肺機能検査では軽度の閉塞性換気障害が認められた. 膵外分泌機能の低下があり, 腹部のCTでは膵の萎縮が認められた. 汗のナトリウム, クロールは高値を示した. また成人の膵嚢胞性線維症に多い合併症とされる鼻ポリープ, 耐糖能の低下も認められた. 本邦では本症の報告は少なく, また成人になって症状が出現するのは稀とされているが, 本症例においては全体に症状が軽いためにこのような経過をとった可能性が考えられた.
著者
佐藤 篤司 三井 和也 青山 雅弘
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.82, no.736, pp.929-939, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
17

Steel products which have various characteristic (e.g. high ductility, high yield stress, low yield stress and high weldability) are used as main structure of building by diversification of demanded application, and technology for steel manufacturing has developed. Because steel square tubular member is processed cold-forming and welding in the process of manufacturing, residual stress will exist in the products. Moreover, due to the cold-forming process geometrical initial imperfection, i.e., global and local, will exist. These initial imperfections are still remained even so the technology for steel manufacturing is developed. The influence of the initial imperfection on the performance of the column is well known. However, the effect of the initial imperfection on the elasto-plastic behavior of square steel tubular columns under compressive axial force with one end bending moment is not clarified. In this paper, firstly, the effect of initial imperfection (i.e., initial global imperfection, initial local imperfection or residual stress) on the elasto-plastic performance is investigated independently; comparison between the experimental results are shown. Secondly, the effect of composite initial imperfections on the elasto-plastic performance is investigated. Firstly, followings were found from the analysis results where initial imperfection is introduced in the member individually. 1) The amplitude of the global imperfection has an impact on performance of the column. Also, the direction of the global imperfection has an impact on performance of the column. When the ultimate behavior was determined by local buckling, the deformation capacity decreased with an increase the amplitude of global imperfection to windward. On the other hand, when the ultimate behavior was determined by bending deformation in in-plate, the deformation capacity increased with an increase the amplitude of global imperfection. 2) The amplitude of the local imperfection has a great impact on performance of the column. The maximum bending moment and the deformation capacity significantly decreased with an increase the amplitude of local imperfection. 3) The magnitude of the residual stress which changes in plate thickness direction hardly has an impact on performance of the column. However, the amplitude of the residual stress which does not change in plate thickness direction has an impact on performance of the column. Secondly, followings were found from the analysis results where composite initial imperfections are introduced in the member. 4) The amplitude of the local imperfection is the most influential initial imperfection on the deformation capacity of the column, and the deformation capacity decreased with an increase of the amplitude of local imperfection. The influence of the amplitude of the global imperfection is insignificant on the deformation capacity. On the other hand, the amplitude of the global and local imperfection and the magnitude of the residual stress do not have significant impact on the maximum bending moment. 5) Validation of the numerical simulation were also performed; initial imperfections that can simulate test results in reasonable accuracy was shown.
著者
青山 米蔵
雑誌
白鴎女子短大論集 = Hakuoh Women's Junior College journal (ISSN:03874125)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1/2, pp.144-188, 1983-10-01
著者
青山 隆夫 松元 美香 中山 紀美子 中島 克佳 渋谷 文則 小滝 一 澤田 康文 伊賀 立二
出版者
一般社団法人 日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.108-114, 1997-04-10 (Released:2011-08-11)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

The pyrogenic activity of 10% inulin injections prepared at a hospital pharmacy was measured using the Pyrogen test in Japanese Pharmacopeia (JP), while the endotoxin concentration in the injections was determined by the, Limulus test, which were JP Endotoxin test and a turbidmetric kinetic assay. After the intravenous administration of 30 ml of inulin injections to a rabbit, the rectal temperature rose to 1.5° compared with that before administration. As a result, the endotoxin was found in all lots of the inulin injections tested, and their values were markedly beyond the limit of Water For Injections prescribed in JP (0.25 EU/ml). In addition, the endotoxin content varied between the various lots of inulin powder, and also between the manufacturers. The endotoxin in inulin injection was removed (less than the quantitative limit of 0.031 EU/ml) by adding activated carbon black to the injection or the filtration using a Posidyne® Nylon 66 filter. No pyrogenic activity was observed in the inulin injections after the removal of endotoxin.Based on these results, the adverse effects induced by inulin injections may thus be caused by endotoxin derived from inulin. This method using either adsorption or filtration is thus considered to be useful for the removal of endotoxin when preparing inulin injections.
著者
金子 晋丈 林素娟 森川 博之 青山 友紀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.115, pp.147-152, 2003-11-18
参考文献数
8

コンピューティングデバイスやネットワークリソースが遍在する環境,積極的に通信のエンドポイントを切り替えていくサービスモビリティが望まれる.サービスモビリティを実現するためには,通信を安全に切りることが必須となる.筆者らは,サービス移動をセキュアに行うための機構として,端末固有情報に依存しない通信インタフェースを提供するセッションレイヤモビリティサポートを用い,これにKey-insulated公開鍵暗号方式を適用することによって端末に依存しない通信の移動を実現しようと考えた.Key-insulated公開鍵暗号方式は,秘密鍵を安全でないデバイス上で利用することを考え,ステージに分けて秘密鍵が管理されているため,端末に依存しない認証処理を可能とする.本方式では,1つのセッションに1つのKey-insulated公開鍵を割り当て,ユーザの移動にステージを対応付けることにより,Key-insulated公開鍵のセッションレイヤモビリティサポートへの適用を実現している.In the environment where the computing devices and access links are ubiquity it is desired to switch the resources according to our context (Service mobility). In order to realize service mobility, security consideration is indispensable. First, we use session layer mobility support which provides an interface independent of the lower layer details and enhance it to realize secure service migration using Key-insulated public-key cryptosystems. Key-insulated cryptosystems have developed for using the private key on insecure device. Therefore, they use the private key refreshed at discrete time periods and realize terminal independent public-key cryptosystems. We enable the secure service migration using the key-insulated private key corredpondent to every migration.
著者
松原 慶昌 田坂 清志朗 福本 貴彦 西口 周 福谷 直人 田代 雄斗 城岡 秀彦 野崎 佑馬 平田 日向子 山口 萌 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0062, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年子どもの外反母趾が増加し,問題となってきている。外反母趾の原因は様々な要素が指摘されており,足部アーチの低下が外反母趾と関連しているという報告がある。子どもの足は足部アーチの形成の重要な時期にある。さらに,足部アーチの形成には足趾把持力が関連していると報告されているため,足趾把持力が外反母趾に関連している可能性がある。また,特に子どもにおいては足部の筋力,形状共にも発達段階にあるため,足部の筋力が足部形状に与える影響が大きい可能性がある。子どもにおいて外反母趾と足趾把持力の関連についてはまだ調べられていない。そこで,本研究では子どもにおける外反母趾と足趾把持力の関連について調べることを目的とした。【方法】対象は奈良県田原本町にある小学校5校の小学4~6年生671名の計1342足(平均年齢10.3歳±0.7歳,男子317名,女子354名)とした。外反母趾角は,母趾基節骨と第一中足骨のなす角とし,静止立位にて,ゴニオメーターを用いて測定した。足趾把持力は足趾筋力測定器(竹井機器工業,T.K.K.3364)を用いて股関節,膝関節ともに90°屈曲座位にて,左右両足を各足二回測定した。各足の最大値を足趾把持力として用いた。統計解析は,従属変数に外反母趾角,独立変数に足趾把持力,調整変数に性別,年齢,身長,体重を投入した重回帰分析を行った。なお,同一の対象者から二足を用いているため,両足の類似性を補正するために,一般化推定方程式を用いた。統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】全対象者の外反母趾角の平均は7.91±5.0°,足趾把持力の平均は13.3±4.0kgであった。重回帰分析の結果,偏回帰係数は-0.098(95%信頼区間:-0.187~-0.010)で有意差(p=0.029)を認め,外反母趾角と足趾把持力は負の関係にあった。【結論】本研究では,子どもにおける外反母趾角と足趾把持力の関連性を検討した。その結果,小学子どもにおいて外反母趾角と足趾把持力が負の関係にあることが明らかになった。しかし,先行研究においては,健常成人では外反母趾角と足趾把持力の関係性は認められなかった。この理由は,子どもの足部は発達段階にあり,筋力が足部形成に与える影響が大きい可能性が考えられる。低足趾把持力により十分な足部アーチ形成が行われず,足部アーチの未発達が外反母趾角の増大につながったと考えられる。本研究は横断研究であるため,因果関係について断言できないが,足部アーチが発達段階にある子どものころに,足趾把持力を鍛えることで外反母趾の予防につながる可能性がある。