著者
池上 高志 高橋 宏和
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ロボットと神経回路の間のフィードバックループ系を設計する。培養された神経回路、あるいは、人工神経回路を使ってロボットの運動行為を制御し、ロボットがセンサーを通じて得た環境からの情報を神経回路にフィードバックする。この刺激と行動のくりかえしの閉回路の動作を調べて、1)神経回路の成長を情報のネットワークの変遷で特徴つけ、2)閉鎖回路をつくることで、ネットワークはある構造をつくることと、3)そのパターンの成長は「神経回路は外から刺激されるのを避ける原理」が働いていること、を発見した。
著者
高橋 照彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.131-184, 2001-03-30

日本の貨幣史については,既に文献史学や考古学の立場から様々な研究が進められているが,それらだけでは解明の困難な点が少なくない。その点を克服するため,筆者らの共同研究として,銭貨の理化学的な分析,なかでも鉛同位体比分析による調査を試みた。その成果を承けて,本稿では,文献史料や考古資料を含めて分析結果を再吟味し,日本の古代から近世に至る銭貨に関して原料調達という観点から歴史的に位置づける試みを行った。その変遷過程をごく簡単にまとめると,以下のようになる。 1.古代銭貨では,長門の長登鉱山周辺産鉛の使用が圧倒的であることが判明し,長門とともに鋳銭用鉛貢納国である豊前から産出された鉛の使用は少なかった可能性が高い。 2.中世銭貨のうち本邦模鋳銭では,14世紀代頃には中国産鉛を主体的に用いていたと推測されるのに対し,15世紀代頃以降には中国産鉛の使用がほとんど消滅し,西日本を中心とする国産鉛が使われるようになっていき,ごく一部ながら中国以外の海外産鉛も用いられることになる。 3.近世銭貨では,基本的に国産鉛が用いられているが,古寛永段階(17世紀前半)では鋳銭地近隣の鉱山を中心に原料供給を受けることが一般的ながら,東日本の鋳銭所では西日本産あるいは神岡鉱山産の鉛の供給を受けることがあった。 4.近世銭貨のうち,文銭の鋳造期(17世紀後半)には対馬の対州鉱山からの一括供給が行われ,その後は各地からの原料鉛の供給によっているが,次第に東北地方など東日本での鉛に依存していくようになるものと判断される。
著者
住吉 朋彦 堀川 貴司 河野 貴美子 小倉 慈司 陳 捷 金 文京 佐藤 道生 大木 康 高橋 智 山田 尚子 上原 究一 永冨 青地 會谷 佳光
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近世以前の日本における学術の基礎を提供した漢籍(中国の古典)について、宮内庁書陵部の蔵書を実地に調査し、伝存する原本の意義と、日本文化への貢献について考察するための基本情報を整理し、学術的検討を加えた。上記の研究に伴い、23名の研究者による、のべ759日間、626部7232点の原本調査を実施し、172部8705点について書誌データの定位を行う一方、229部9145点、279123齣に及ぶ全文のデジタル影像データを作成した。これらの研究成果を共有するため、最重要文献138部8054点を選び、書誌と全文影像のデータベースを統合する、デジタルアーカイブ「宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧」をウェブに公開した。
著者
亀田 貴雄 本山 秀明 藤田 秀二 高橋 修平
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.151-158, 2008-06-30
被引用文献数
1

1995年1月25日に南極ドームふじに36本雪尺(20m間隔で100m×100m)が第36次南極地域観測隊により設置され,それ以来雪尺の高さが継続的に測定されてきた.ドームふじ基地で越冬観測を実施した4年間(1995年1月から1997年12月及び2003年1月から2004年1月)は月2回測定し,それ以外は年1回の測定(1月上旬が多い)を実施した.この結果,1995年から2006年までのドームふじの年平均表面質量収支は,27.3±1.5kgm^<-2>a^<-1> であることが推定できた.これは,ドームふじ浅層コアから推定された西暦1260年から1993年までの平均値(26.4kgm^<-2>a^<-1>)と近い値であった.また,ドームふじでは1年後に雪尺の高さが等しいかもしくは高くなっている「負の年間表面質量収支」が8.6%の確率で起こっていることがわかった.南極内陸に位置するボストーク,南極点,ドームCでの同様な観測結果と比較することにより,負の年間表面質量収支は年平均表面質量収支の増加とともに減少し,190kgm^<-2>a^<-1> 以上の地点ではで負の年間表面質量収支は95%の信頼水準で起こらず,正の年平均表面質量収支が期待できることがわかった.190kgm^<-2>a^<-1> 以上の年平均表面質量収支は地域により異なるが,現在の南極氷床ではおおよそ標高1500-2500mに相当するので,この標高域では毎年の積雪が氷床に記録されている地点が多いことが推定できた.一方,ボストークでのピット観測結果を参考にして,現在及び氷期のドームふじコアでの年層欠損確率をそれぞれ9.4%,11.4% と見積もった.この他に,ドームふじで1本の雪尺を1年間観測した時に得られる年平均表面質量収支の誤差,10年後の再測定で得られる年平均表面質量収支の誤差などを論じた.
著者
掛下 哲郎 高橋 尚子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.420-425, 2017-04-15

本稿では文部科学省の支援を受けて情報処理学会が実施した「大学における情報学分野の教育に関する実態調査」の概要を速報する.調査用Webサイトには約650の大学(日本の大学の85%)から約3,000件の回答が寄せられた.本調査は(A)情報専門学科に対する調査,(B)非情報系学科における情報専門教育に関する調査,(C)一般情報教育に関する調査,(D)高校教科「情報」の教職課程に対する調査,(E)教育用電子計算機システムに関する調査から構成されている.本調査では,教育プログラムの概要,情報学の参照基準等の項目に対する教育内容および達成度レベル,学生・教職員の状況,教育環境,将来計画などを含む包括的な調査を行った.
著者
江林 明志 井上 和明 高橋 和明 渡邊 綱正 山田 雅哉 安田 宏 三代 俊治 与芝 真彰
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.60-64, 2009 (Released:2009-03-02)
参考文献数
25
被引用文献数
3 4

E型肝炎ウイルス(HEV)はアジア・アフリカにおける流行性肝炎の重要な原因で,一般にはself-limitedな経過を取るが,妊婦では重症化しやすく致死率が高く胎児の合併症も多いとされる.今回我々は本邦で初めて妊娠中のHEV感染により急性肝炎重症型に陥った邦人妊婦例を経験した.本例はインドに長期滞在して帰国後2週間で発症し,入院時の血清よりgenotype 1のHEV RNA(JHN-Kan07R,AB447389)が検出された.抗ウイルス治療開始後速やかに肝機能は回復し,早産であったものの周産期の合併症もなく,母児共にその後は順調な経過をとった.
著者
高橋 朋子 タカハシ トモコ Takahashi Tomoko
出版者
大阪大学留学生センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学留学生センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.61-74, 2008-03-31

本稿は、これまであまり考察が試みられることがなかつた「継承語教育」に焦点を当て、先行研究の概観及び中国帰国者集住地域にある小学校で行われている中国語授業の実践例を参考に、その課題と展望を探り、子どもたちにとって継承語教育とはどんな意味を持つのか、その教育的意義を探ることを目的とする。
著者
梶原 悠吾 本田 久平 軽部 周 高橋 健一
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp."1A1-S04(1)"-"1A1-S04(4)", 2014-05-24

Recently, many biomimetic quadruped robots have been developed. Most of them use many actuators for running, which causes them to become big in size. We have developed a middle size of quadruped robot by using only one electric motor as an actuator for running. We also adopt to the robot the mechanism which is similar to Theo Jansen mechanism to make its gait biomimetic. In order to put our mechanism into practice, we propose "Modified Gallop Gait" that is derived from bounce gait and gallop gait. The results of the experiment show that the robot runs as the modified gallop gait while its pitch angle oscillates periodically to realize its stable running.
著者
高橋 若生 祢津 静花 湯谷 佐知子 水間 敦士 植杉 剛 大貫 陽一 瀧澤 俊也
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.219-225, 2016 (Released:2016-07-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2

【目的】感染性心内膜炎infective endocarditis (IE)に伴う脳卒中の特徴を明らかにする目的で,IE の発症から治癒するまでの間に合併した脳卒中について検討した.【方法】IE の入院患者90 例(平均63.8±17.4 歳)を対象とし,各種臨床因子について後方視的に検討した.【結果】25 例(28%)に脳卒中(脳梗塞18 例,脳内出血5 例,くも膜下出血2 例)が認められた.脳卒中群は非脳卒中群に比し退院時modified Rankin Scale 3 以上の例が有意に多かった(52% vs 28%,P=0.046).脳梗塞は多発性の大脳皮質枝領域梗塞が多く,脳内出血は全例が多発性であった.脳梗塞はIE の病初期に発症した例が多かったが,脳出血およびくも膜下出血は多くが入院後に発症していた.【結論】IE は脳卒中の合併がまれでなく,特に脳梗塞はIE の病初期に発症する場合が多いことが明らかになった.
著者
高橋 優希 齊藤 勇
出版者
立正大学心理学部 ; 2014-
雑誌
立正大学心理学研究年報 The journal of psychology Rissho University (ISSN:21851069)
巻号頁・発行日
no.6, pp.89-99, 2015

The purpose of this study was to examine the first impressions seen in friendships, and the subsequent changes inimpressions after passage of time. The first impressions and the current impressions were simultaneously surveyed bycomparing cases with" bad first impression, but is a good friend now" and" good first impression, but is not friendly withnow." The results showed that change in impressions influenced the relationship between friends. Gender differences wereobserved in the results. In evaluations of male friends, there was change in first impressions and current impressionsregarding earnestness and kindness, while evaluations of female friends, there was change regarding activeness and kindness.
著者
町澤 朗彦 青木 哲郎 岩間 司 鳥山 裕史 今村 國康 土屋 茂 金子 明弘 前野 英生 高橋 幸雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.10, pp.2308-2318, 2013-10-01

時刻情報は重要な社会基盤となっている.そこで,日本標準時システムに直結した信頼性の高い時刻配信システムを開発し,NTPサーバntp. nict. jpとしてインターネットを介して公開したので報告する.本システムは,インターネットにおける標準的な時刻同期プロトコルであるNTPを利用しているが,安定して時刻を配信するために,耐障害性,過負荷対策,将来にわたるサービスの維持,セキュリティ対策,Stratum 1の提供,GPS非依存などの特徴を有している.また,実運用から得られた利用統計情報を解析した.2012年末現在,1日当りのリクエスト数は約1億7千万,クライアントは約1500万IPアドレスであり,世界230の国と地域に広がっている.更に,ピーク時には1秒間に約13万リクエストの利用があることが明らかになった.一方,1日のポーリング頻度が1回以下のクライアントが約8割であること,並びに,1台の時刻サーバしか参照していないクライアントが約9割であることなど,クライアントの時刻維持が不十分であることが推測される.更に,クライアントのネットワーク距離分布から,インターネットの直径が従来の推定値よりも大きいことを示した.
著者
李 虎奎 米田 郁夫 繁成 剛 高橋 良至 河合 俊宏 橋詰 努 北川 博巳
出版者
一般社団法人日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.A1-A12, 2013-03-15

移動動作は日常生活活動の根幹をなす動作である。とくに、外出活動は、日常生活を変化のあるものにし、また社会生活を構築するうえで必要不可欠なものである。したがって、下肢機能が低下し移動が困難になった高齢者の日常生活を潤いのあるものにするためには、安全・楽に外出できる手段を確保することが必要である。本研究では、高齢者のための外出支援機器を開発した。開発した外出支援機器は、転倒のリスクが少ない4輪型とし、また、下肢機能の維持・向上のためにペダルを漕いで推進する方式とし、身体負担を軽減するために電動アシスト装置を組み込んでいる。開発機器について使用評価および走行実験による操作負担の検証を行った結果、下肢機能が低下した移動困難な高齢者の外出を支援する機器としての可能性が示唆された。
著者
北村 暁夫 池谷 知明 勝田 由美 小谷 眞男 柴野 均 高橋 利保
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究はイタリアの自由主義期を対象として、議会選挙やさまざまな立法活動などの際に見られる国家と地域社会との交渉や妥協の歴史的過程を具体的に分析することにより、イタリアの「国民国家」形成の特質を明らかにすることを目的としている。本研究は共同研究であり、研究代表者、研究分担者7名、研究協力者6名の合計14名の参加者から構成され、2年の研究期間に合計6回に及ぶ研究会(研究打ち合わせ1回、研究合宿4回、他の研究会(イタリア近現代史研究会)の年次大会とのジョイント1回)を行った。この間に史料や研究文献のリスト作成や年表の作成なども行い、こうした一連の作業の成果を大部に報告書に集約した。この二年間の研究成果として以下のことが明らかになった。(1)近年の研究では1880年代後半から1890年代半ばにかけてのクリスピ時代に統治機構の大規模な改革が行われたことに注目が集まっていたが、それに先立つデプレーティス時代に国民形成に向けてのある種の構造転換が起きていた。(2)議会が多様な地域利害が議論・調整される場として、エリート層のナショナルな統合を推進する役割を果たしていた。(3)南部問題は、「国民国家」形成にとって重要なモーメントの一つであった。(4)カトリック教会やカトリシズムは従来想定されていた以上に、ナショナルな統合に大きな役割を果たしていた。(5)多様な地域的利害を交渉・調整していくうえで、ローカル・エリートが果たした役割の重要性が明らかになった。以上の成果を踏まえたうえで、今後は本研究の方法を深化させるために、特定の地域社会やローカル・エリートを対象とした中央一地方関係の事例研究を推進していく必要性を確認した。
著者
高橋 美樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.123-140, 1999-02-25

本稿では,創業支援策の理論的根拠を提示し,創業支援策と中小企業政策との関連を明らかにする。近年の「進化論的経済学」に従えば,創業支援策の理論的根拠は,基本的に,イノベーション創出における中小・ベンチャー企業の優位性に求めることができる。一方,中小企業政策の理論的根拠は,活力ある独立した中小企業を育成することが「大企業・独占への対抗勢力」となる点に求めることができる。以上のような議論を踏まえると,結局,中小企業の存在意義は,単なる「反独占勢力」ではなく,「イノベーション創出を担う反独占勢力」という点にある。そして中小企業政策や創業支援策の目的は,こうした中小企業を育成することにある。その場合,いたずらに中小企業を「保護」するのではなく,積極的な競争促進政策と創業支援策の一体的活用を通じて中小企業を「育成」する-これが,創業支援策が活発化する現状での,今日的な「反独占政策としての中小企業政策」なのである。