著者
鈴木 宏二郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

太陽光や太陽風を利用するセイル型宇宙機を惑星大気圏飛行させ、その際に発生する空気力を併用することで燃料不要のままセイル型宇宙機の航行能力を向上させる可能性について、高速気体力学の観点から研究を行い、以下のことを明らかにした。1.FullPIC法による磁気セイルまわりの太陽風プラズマ流れ数値解析を行い、磁場生成コイルの姿勢や太陽風条件の影響を明らかにした。姿勢によっては軌道面外を向く力がセイルに働くこと、発生する推力は同じ大きさのソーラーセイルと比較して著しく小さいことなどから、ソーラーセイルの方が実現は容易と考えられる。2.ソーラーセイル機では、セイルを惑星周回軌道投入用の空気ブレーキとして2次利用することで燃料がほとんど必要ない低コスト惑星探査機が実現できることを示した。このような低弾道係数大気突入では、許容突入条件幅、空力加熱、空力荷重が大幅に緩和されるメリットがある。3.フープ支持の膜構造大気圏突入飛行体が極超音速流中で機能することを風洞実験で実証した。フープを形状記憶合金で製作すると空力加熱で自動展開する飛行体が実現でき、小型低コスト大気突入プローブへの応用が期待される。また、複数のフープを組み合わせてデルタ翼とし形状最適化すれば、5程度の揚抗比が期待される。4.外惑星大気飛行模擬希薄水素プラズマ風洞を開発して各種膜材料の空力加熱実験を行った。高強度材と高耐熱材をコーティングや接着で組み合わせるものが有望であることがわかった。5.ソーラーセイルと大気圏飛行時の揚力利用によるエアログラビティアシストの組合せを検討した。全長約220m、総重量410kgの機体に対し軌道最適化の結果、30km/sの太陽系脱出速度が得られることを示した。これはカイパーベルトまで約30年で達する速度であり、第1世代の恒星間領域探査機として有望と考えられる。
著者
松本 博志
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アルコール性急死および大腿骨頭壊死において自然免疫機構のシグナリングが関与していることを明らかにし、特にIRF7およびIFN-αの活性が影響を及ぼしている可能性が明らかとなった。
著者
田中 敬一 立木 美保
出版者
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

負イオンとオゾン混合ガスを併用した高湿度条件下で果実を貯蔵すると、従来の貯蔵法と比較して長期間、高品質に果実を貯蔵できるが、モモの場合は、冷温高湿庫で長期に貯蔵すると香りの消失が認められ、その消失機構の解明が求められている。そこで、液-液抽出ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)法、ヘッドスペースGCMS法、分析試料の量が少なく再現性の優れた分析法であるMicro Purge & Trap法及び匂いセンサーを用いてモモの貯蔵中の香りの変化を解析した。液液抽出GCMS分析の結果、冷温高湿庫に貯蔵したモモでは、貯蔵初期にエステル類(特にethyl acetate)が増加し、貯蔵期間が長くなると減少した。ヘッドスペースGCMS分析の結果では、‘あかつき'を冷温高湿庫で貯蔵するとラクトン類は、3週間を過ぎると急速に減少した。Micro Purge & Trap分析の結果、‘あかつき'を冷温高湿庫で貯蔵するとエステル類、C6化合物の組成が単純化し、benzaldehydeがそのほとんどを占めるようになった。ラクトン類では、貯蔵期間が長くなるに従いγ-decalactoneの量が増大した。水分含量の多いモモを測定する場合、におい識別装置のセンサは様々な影響を受けやすい。そのため、貯蔵したモモの香りをにおい識別装置で時間を追って評価することは難しかったが、測定日を同じにしてにおい識別装置で測定したところ非破壊で、モモの鮮度と香りとの関係を明らかにできた。以上の結果より、モモを冷温高湿庫で長期に貯蔵すると、香りの量が減少するだけでなく、香気成分が単純化するため、全体としてモモ特有の香りが失われるものと考えられた。
著者
菊池 洋 田中 照通 梅影 創
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

遺伝子発現が関連する難病の治療薬として人工的な小分子RNAなどが期待されている。しかし、現在のRNA合成法は、手間やコストがかかり、創薬という点で問題がある。本研究は、意図したとおりの配列をもつ人工RNAを微生物により生産させることを目指し、圧倒的な低コストでの高機能RNA医薬の製造法を開発しようとするものである。本研究では、自然界で自身のRNAやDNAを培地に放出する性質をもつ海洋性光合成細菌、Rhodovulum sulfidophilumを操作し、機能をもつ人工RNAアプタマーをこの菌の培地中に生産させることに世界で初めて成功した。
著者
井口 泰泉
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

周生期のマウスへのエストロゲン投与に、生殖器官に不可逆的な影響が現れる。この誘導には主としてエストロゲン受容体αが関与していることが明らかとなった。さらに、卵巣非依存の細胞増殖を示す膣で不可逆的に高発現している遺伝子を同定した。これらの遺伝子のメチル化状態を調べたところ、細胞増殖に関連する遺伝子のメチル化状態には差が認められなかったが、エストロゲン受容体αの活性を制御すると思われる遺伝子のメチル化状態が高く、この遺伝子の発現は低下していたことから、卵巣非依存の細胞増殖を示す膣ではエストロゲン受容体の働きを抑制する遺伝子にメチル化が入り、この遺伝子の発現が低下することにより、恒久的なエストロゲン受容体αの活性化、リン酸化が起こり、細胞増殖関連の遺伝子が恒久的に発現し、卵巣非依存の細胞増殖が起こっていると考えられる。
著者
松田 恒平 高橋 明義 安東 宏徳
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

哺乳類における最近の知見によれば、摂食行動は、脳の視床下部で発現する多数の脳ペプチドによって促進的あるいは抑制的に制御されていることが判明してきた。しかしながら、摂食行動の複雑な調節を司る神経機構の進化の過程における変遷については、殆ど判っていない。本研究は、キンギョにおける摂食行動の制御機構を明らかにすること、および得られた知見と他の動物における制御機構とを比較検討して、摂食行動の脳制御機構の進化の変遷を考察することを目的とした。キンギョの摂食行動が生殖や情動に関わる脳ペプチドの影響も強く受けながら制御されることを見出した。哺乳類や鳥類の機構と大きく異なる機構の存在も見出され、摂食調節の脳制御機構が進化的に変遷してきた可能性が示唆された。
著者
岩見 雅史 本 賢一 桜井 勝 桜井 勝
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

カイコガの変態時における脳の変態制御の中枢としての機能を探るために,発生過程での使用される遺伝子の網羅的解析を試みた。サブトラクションライブラリーから,エクジソン応答遺伝子を10遺伝子単離し,前胸腺刺激ホルモン産生細胞でのみ発現することを示した。マイクロアレイを用いた網羅的解析では,前終齢特異的発現を示す3遺伝子(ADAMTS様タンパク質,チトクロームP450,Kruppel様タンパク質をコード),終齢脳特異的発現を示す遺伝子(クチクラ様タンパク質をコード)を同定した。
著者
成田 滋 長瀬 久明 山城 新吾 中村 哲 棟方 哲弥
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、現在大きな社会問題となっている生徒の「確かな学力」を定着させることを課題としている。学力の向上のためには、保護者も教師と同様に家庭や職場などで我が子の学習成果をフォローすることが肝要である。そこで、保護者と教師が教室外での連絡や連携を深めることを目指し、生徒の学習状況や習熟度を互いにモニターしあい、学習の遅れの兆候を発見し、早期に対応する措置を講じるシステムを提案することとした。2か年の研究を通し、遠隔による学習とコミュニケーション支援システムの設計、開発、実験、検証などの研究課題と取り組んだ。(1)学校-家庭間連携支援システムの構築職場や移動先などどこからでもICTを応用して、自分の生徒の学習状況を把握し、「確かな学力」を支援できるようなシステムを設計した。これを「学校-家庭間連携支援システム」と呼称した。ユビキタス遠隔指導システムの主要構成要素は、携帯によるメーリングリスト、web閲覧用ページ、話題の討議の場、評価ページなどである。(2)「ユビキタス遠隔指導システム」の設計と使いやすさのインターフェイスの改良とその効果の検証保護者と教師の連携を支援する携帯メール、メーリングリスト、動画像・静止画像の配信など、携帯電話を利用したユビキタスなシステムを構築しその機能を検証した。保護者からは、授業内容や子供の学習の様子がわかる、といった評価を得た。(3)電子媒体や印刷媒体を利用した保護者と教師とのコミュニケーション方法の長所や短所に関する多角的な検討生徒の学力の向上における両者のかかわりや果たす役割について、生徒情報の提供という観点から総合的に検討した。保護者はおおむね、電子媒体、例えば通常メールや携帯メール、携帯接続のWeb上の子どもの学習ポートフォリオ閲覧などに好意的な意見を寄せた。(4)教室での授業状況の保護者や学校内の教師らへの同時配信と、モバイル動画メールの組み合わせ実験この実験では、サーバ機能と受信者の回線状況の関係、受信者数や画面の大きさが、画質や音質などに及ぼす影響などを分析した。その結果、保護者への配信情報は、利用に耐えることが判明した。ただ、保護者や教師が容易に利用できるための研修が重要な要素であることも課題として浮かび上がった。
著者
竹田 正幸 篠原 歩 坂内 英夫 瀧本 英二 坂本 比呂志 畑埜 晃平 稲永 俊介
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,圧縮データ処理に基づいて軽量XMLデータベース管理システム(DBMS)のための基盤技術を確立することを目標とし,主として以下の成果を得た.(1) 高速で軽量なオンライン文法圧縮アルゴリズムの開発. (2) 圧縮データ上で動作するq-グラム頻度計算アルゴリズムの開発. (3) 高速XMLデータストリームフィルタリング技術の開発. この他,DBMSの備えるべき知的データ処理機能として,パターンの効率的な枚挙,分類,オンライン予測等に関する研究を行い,多くの成果を得ている.
著者
石澤 良昭 上野 邦一 菱田 哲郎 一島 正真 VERIATH Cyiril 丸井 雅子
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

上智大学アンコール遺跡国際調査団は、2001年3月と8月に仏教遺跡バンテアイ・クデイから274体の廃仏と千体仏石柱を発掘した。歴史上初めての大量廃仏発掘であった。この大発見は国内外の各紙に報じられた。仏像の大きさは大きいもので1.8mほど、小さいもので20cmほどの大中小があった。仏像は砂岩製で,青銅製の小物2体も見つかった。これら仏像は蛇神ナーガの上に結跏跌座したブッダ坐像であり、仏陀を守っている彫像(以下ナーガ坐像と略す)である。時代は11世紀から13世紀である。<インドからヒンドウ教と仏教が到来>カンボジアには1~2世紀頃インドから海のシルクロードを通じてヒンドゥー教と仏教が入ってきたが,カンボジアで土着した大乗仏教は、観世音菩薩のナーガ坐仏を信仰していた。<政治抗争と廃仏事件>これら廃仏はほとんどが首を切られていた。13世紀半ば頃ヒンドゥー教を信奉するジャヤバルマン8世(1243-1295)が命じて全国の仏教寺院に安置されていた仏像を引っ張り出し、首を切断して埋納抗に埋めたのであった。本研究は、この274体の廃仏事件から始まるものである。<バンテアイ・クデイ遺跡周辺調査>バンテアイ・クデイ遺跡発掘を再開し、アンコール遺跡群および地方の仏教系遺跡(バンテアイ・チュマール、コンポンスヴァイ、プリヤ・カンなど)の遺跡調査を実施。<マトゥラー地方の発祥ナーガ坐仏の歴史背景調査および東南アジアとの比較研究>マトゥラー地方ではクシャン朝(BC2世紀~AD6世紀)からグブタ朝(4~7世紀)にかけて多数のナーガ坐仏が製作された。これらナーガ坐仏は力強く量感に富む造形を持ち、インド各地、そして海外のカンボジアなどに伝播した。インドとカンボジアに共通するナーガ坐仏が何故時を超えて存在したかを問い、両地域に存続した仏教的精神価値体系の結晶を探ろうとする初めての試みであった。<カンボジア・インドのナーガ坐仏の図像学的特相調査および比較考察>(1)肉髷相、(2)衣相、(3)耳朶相、(4)自毫相、(5)手足の千幅輪相、(6)印層、(7)宝冠飾り、(8)身広長等相、(9)真青眼相などについて調査し、両地域における図像解明を実施し、信仰における受容状況とその展開、さらにその時代の仏教精神の比較検討をした。加えて両国におけるヒンドウ教徒と仏教の政治的背景と歴史展開をそれぞれ詳解に考究し、大きな学術研究の成果をおさめた。
著者
森 茂生 池田 直
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では (1-x)BiFeO_3-xBaTiO_3固溶体に着目し、磁気・誘電特性および結晶構造や強誘電分域等の微細構造について調べた。その結果本物質系は、x>0.33組成で存在する立方晶構造は、立方晶構造中にナノスケールサイズで強誘電性を有する菱面体構造が存在する2相共存状態として特徴づけられるとともに、強誘電分域が微細化され、x>0.33組成では、約20~30nm程度の大きさで強誘電ドメインと強磁性ドメインが共存し、磁気誘電リラクサー物質であることが明らかとなった。
著者
荒川 正晴 吉田 豊 武内 紹人 吉田 豊 武内 紹人
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

コータンより出土した豊富な文字資料のうち、漢語およびコータン語・ソグド語・チベット語関係の資料について精査し、新たな資料を発見するとともに、従来の研究の不備を補った。とりわけ大英図書館が所蔵するコータン出土木簡に未発表のものがあることを公表するとともに、これまで等閑にされてきたスウェーデン国立民族学博物館所蔵のコータン出土資料を調査し、これまでの研究の誤りを訂正したことは, 今後の文書研究および中央アジア史研究に資するところ大である。
著者
高山 守 榊原 哲也 西村 清和 小田部 胤久 中島 隆博 藤田 正勝 美濃部 重克 安田 文吉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

哲学、芸術、国家の密接な関係が、「家族」、「理性の目的論」、「ケア」、「場所の記憶」、「国民文化」、「日本的な自然」、「自然の人間化」、「世俗化」、「啓蒙」、「近代の超克」、「新儒家」、「家」、「お店」、「かぶき(傾き)-歌舞伎-」、「道理」、「鬼神力(怨霊)」、「観音力」、「まつろわぬもの」等々の概念を媒介に、深層レベルで明らかにされた。
著者
小玉 徹 矢作 弘 北原 徹也 小長谷 一之 佐々木 雅幸 大場 茂明 桧谷 美恵子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究代表は、2007年3月、「大不況以来で最悪の10年間」と表現されるニューヨークの深刻なホームレス問題について調査(自費)した。そこで明らかになったことは、1996年の福祉改革によるワークフェアへの移行により、住宅への補助が削減されるとともにジェントリフィケーションの影響で家賃が上昇し、ワークファーストを強いられたワーキングプアとなった母子世帯がシェルターでの生活を余儀なくされている、という事態であった。これに対してローカルな福祉システムが作動しているドイツでは、高い失業率にもかかわらず、失業扶助、社会扶助、住宅手当によりソーシャル・ミックスが維持されてきた。しかしながら2005年以降、ハルツ改革によりワークフェアへと移行したことで、住宅手当、就労支援の両方にかかわる変更がなされ、都市での社会的分離の進行が危惧されていることが、最近、刊行された論考で指摘されている(Kafner S.,2007,"Housing allowances in Germany".in Kemp P.A.ed.Housing allowances in comparative perspective,The Policy Press).。なおドイツでは1999年以降、問題地域の対応プログラムとして社会的都市(soziale stadt、全国200カ所)がスタートしている。ニューディール・コミュニティ、都市再生会社によるイギリスのインナーシティ再生では、ニュー・エコノミーによる雇用の拡大、住宅、雇用、小売り、コミュニティ・サービスとレジャー施設のコンパクトな配置、さまざまな住宅テニュアの混合によるソーシャル・ミックスが意図されている。しかしながらこうした主張は、物理的な改変が社会問題の解決につながる、というニュー・アーバニズムに依拠している。
著者
野原 精一 広木 幹也 井上 智美
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

島嶼における河川水や地下水の物質輸送が,どの程度沿岸域に影響をおよぼすのかを評価することを目的として,東京都小笠原諸島と八丈島および伊豆大島の島嶼で,1997年~1999年及び2005~2008年に陸水及ひ、海水の採水.i海藻の調査を行った。小笠原父島や母島の河川水の栄養塩環境は夏期に低く,冬期に高い季節変化が見られた。伊豆の島岨の地下水の硝酸態窒素は高い濃度にあり,沿岸域の海藻の重要な窒素源となっているが,近年の生活形態や農業による水需要の変化によって,陸からの沿岸域への陸水供給減少に伴う栄養塩供給の減少と考えられた。海藻のi515N値から陸水の栄養塩の影響を受け沿岸域の富栄養化が時代とともに進んで、きたと推定された。その影響は伊豆大島,八丈島,小笠原と本州から離れるにつれて小さくなってきていた。近年の伊豆大島,八丈島の海藻のi5 15N値の低下は,陸からの陸水の栄養塩類供給が減少してきていることを示唆した。
著者
平尾 一郎 三井 雅雄 池田 修司 森山 圭
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

A-TとG-Cの塩基対に人工の塩基対を加えることにより、遺伝情報を拡張し、RNAやタンパク質中に新たな構成成分を部位特異的に導入する技術の創出を目指して、生物のシステム(複製・転写・翻訳)で機能する人工塩基対の開発研究を進めた。申請者は、既に、転写と翻訳で機能する人工塩基対(s-y塩基対)を開発しているので、その知見に基づいて、複製においても機能する人工塩基対の開発に挑戦した。その結果、ユニークな性質を示す種々の人工塩基対(v-y、s-z、s-Paなどの塩基対)を開発することができ、最終的に、複製と転写において相補的に機能する人工塩基対(Ds-Pa塩基対)を作り出すことができた。すなわち、このDs-Pa塩基対を含むDNAをPCRで増幅することもでき、また、どちらの人工塩基(DsとPa)もRNA中に転写で取り込ませることができる。さらに、申請者らが開発したyやPaなどの人工塩基に機能性の置換基(蛍光色素、ビオチン、ヨウ素、アミノ基など)を結合させた転写用の基質を合成し、人工塩基対による転写系でこれらの基質をRNA中に取り込ませ、種々の機能性RNAを作り出し、本技術の応用化の可能性を示した。以上のように、申請者は、従来の遺伝子操作技術に代わる遺伝情報拡張技術を可能とする人工塩基対の開発に世界に先駆けて成功した。今後は、この人工塩基対システムを幅広い分野に利用したベンチャー企業を設立し、本技術の普及を図ると共に医療に役立つ技術と製品を社会に提供したい。
著者
岩崎 洋平 西村 壮平 小薗 和剛
出版者
熊本高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,複合現実技術を利用したMR 実験室を構築した。この実験室では,ARToolKitにより複合現実環境を実現し,実験機器や結線をCGオブジェクトとして,現実環境(机上)に重畳表示あるいは液晶ディスプレイに表示する。これにより,安全性の高い実験環境を容易に構築することができる。また,マーカを操作のためのユーザインタフェースとして扱うことにより,現実の実験と同様に,複数の実験者がグループで協力しながら実験を実施できる環境を提供することが可能となった。さらに,実験結果を仮想的に表現することで,外乱などの影響を受けない状態での結果を,分かりやすく実験者に提示し,効率的な学習のための実験環境を提供することが可能となる。
著者
馬場 直志 石垣 剛 田村 元秀 三浦 則明
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、我々が提案した偏光差分型ステラコロナグラフによる、太陽系外惑星の直接検出装置の開発実験を行った。恒星からの光は、一般にランダム偏光(無偏光)と考えられる。一方、惑星からの光は、恒星光の反射・散乱光となるため部分偏光した光となる。直行する2つの偏光成分で観測し、その差を取ると無偏光成分は相殺され、部分偏光している成分が残留する。これが偏光差分法であり、部分偏光している太陽系外惑星光を抽出できる。しかし、単なる偏光差分では、大きな強度を持った恒星光の2つの直行偏光成分間にわずかな差がある場合、その差は微弱な太陽系外惑星の偏光差分よりも大きくなってしまう。このために、効率的に太陽系外惑星光を抽出できなくなってしまう。我々は、単なる偏光差分ではなく、偏光度から太陽系外惑星光を識別することを行った。偏光度は、偏光差分値をその点の全強度で割ったものであり、無偏光の光は強度が強くとも偏光度は零に近づく。一方、部分偏光している光は、その偏光度に応じた値となる。我々は、太陽系外惑星像を検出するシミュレーション実験を行った。この実験において、太陽系外惑星モデル光の偏光度を50%、惑星と恒星との角距離を4.8λ/D(λは中心波長、Dは望遠鏡の口径)、強度比を1.1×10^<-5>とした。単なる偏光差分の像では、惑星像は明瞭ではなかったが、偏光度で表示した像ではスペックル雑音との相違が明らかとなった。本研究では、偏光差分法に基づいて、イメージングのみならず、太陽系外惑星の対物分光を目指した実験も行った。偏光度解析により、惑星モデル光のスペクトルを恒星モデル雑音光スペクトルから分離抽出できた。
著者
高野 幹久 永井 純也 湯元 良子 永井 純也 湯元 良子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

初代培養ラット肺胞上皮II型・I型細胞を用いて、アルブミンの輸送について比較解析したところ、取り込みはII型のほうがI型に比べて高く、またクラスリン介在性エンドサイトーシスによることが明らかとなった。一方、インスリンの取り込みは両細胞で同程度であり、クラスリンの関与は小さかった。ラット肺胞上皮II型由来のRLE-6TN細胞においてもインスリンはエンドサイトーシスによって取り込まれ、その取り込みはカチオン性ポリアミノ酸によって促進された。カチオン性ポリアミノ酸の効果は、ラットを用いたin vivoインスリン経肺投与実験でも認められた。これらの知見は新たな経肺投与製剤の開発のための情報として重要である。
著者
中川 光弘 加賀 爪優 桑原 祐史 信岡 尚道 田附 明夫 長澤 淳 金澤 卓弥 上林 篤幸 上林 篤幸 井上 荘太朗
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

アジア農業モデルを開発し、農業部門への気候変動の影響予測を行い、その適応戦略を検討した。またGISやリモートセンシングを使ってアジア沿岸域への気候変動の影響予測と土地利用のあり方を検討した。農業部門への気候変動の影響は、既にアジア各地で現れているが、それが食料問題として深刻化するのは特に輸入依存度の高い最貧国であり、世界農産物市場を介して主要国の農業政策の影響も加わって、複合的な形で現れることが明らかになった。