著者
岡元 智一郎 高田 雅介 黒木 雄一郎
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

21世紀の安全・安心・快適な社会の構築のために、従来の科学技術の限界を突破し得るナノテクノロジーの展開が注目されている。その鍵となるのは、高品質ナノ結晶の合成にある。本研究では、金属やセラミックスを通電加熱することにより、その表面や近接する基板上に良質なナノ結晶が成長する現象に関して、その結晶成長機構を解明し、高品質のナノスケール構造体を精度良く効率的に且つ大量に合成するためのナノ結晶合成技術の確立に向けた研究を行った。
著者
長田 佳久 西川 泰夫 鈴木 光太郎 高砂 美樹 佐藤 達哉 鷲見 成正 石井 澄 行場 次朗 金沢 創 三浦 佳世 山口 真美 苧阪 直行 藤 健一 佐藤 達哉 箱田 裕司 鈴木 光太郎 櫻井 研三 西川 泰夫 鈴木 清重 増田 知尋 佐藤 隆夫 吉村 浩一 鈴木 公洋 椎名 健 本間 元康 高砂 美樹 仁平 義明 和田 有史 大山 正 鷲見 成正 増田 直衛 松田 隆夫 辻 敬一郎 古崎 敬
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では, 国内で行われてきた実験心理学研究に関連した機器や資料の現状の把握, 保管方法の検討及び活用方法に関して検討した。本研究活動の成果として,1) 国内の研究機関で保管されている機器の状態の把握,2) 廃棄予定の機器の移設,3) 機器・資料のデジタルアーカイブ化,4) 機器・資料の閲覧方法の検討の4つが挙げられる。これらの成果を通じて, 日本の実験心理学の歴史的資料を残し, 伝えるための手法に関する基盤を築いた。
著者
木村 和弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

未妊娠の雌マウスにおいて肥満が乳腺発達異常(導管径の短縮と分岐数の減少、筋上皮細胞層の欠失とコラーゲン層の肥厚)をもたらすことを明らかにし、その異常の一部は脂肪細胞分泌因子レプチンに因ることを強く示唆した。一方、イヌ乳腺腫瘍組織より得た不死化細胞5株の増殖はレプチンにより影響されず、癌化に伴う応答性の変化が示唆された。さらに導管形成を促進する成長因子HGFの脂肪細胞における発現調節機構などについて検討した。
著者
松本 金矢 森脇 健夫 根津 知佳子 後藤 太一郎 中西 良文 滝口 圭子 上垣 渉 廣岡 秀一 八木 規夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

医学教育において実践されてきたPBL教育を,教員養成学部において展開するための基礎的な研究を行った.教育周辺領域の様々な現場においてPBL教育を実践し,コンテンツの開発を行った.特に,学生・院生に旅費を支給し,大学より離れた現場でのPBL教育を実践することができた.現場での実践を大学において省察し,学生が教員からのアドバイスを受けるためのネットワークシステムとしてmoodleを用い,そのための専用サーバを立ち上げた.例えば美術教育において学内・外のデザイン製作を学生と教員が協働して手がけるなど,教科の専門性を活かした活動や教科を超えた協働活動を展開した.また,先端的な取り組みを行っている他大学研究機関・学会の調査のために,海外視察を4回,国内視察を5回行った.これらの視察では,学生・院生を引率し,他大学の学生との交流も実現した.特に,秋田大学,愛媛大学とは双方向での視察・交流を果たし,moodle上で恒常的な交流の場を設置した.PBL教育の教育効果を明らかにするために,評価方法の開発にも注力している.日本教育大学協会研究助成プロジェクト(カルロス研究会)との協働により、パフォーマンス・アセスメント(PA)を用いた評価法の開発を推進し、そのためのマニュアル作成を行った。このようなPBL教育の成果を学内外に発信・共有するために、学内で開催された4回の公開研究会と4回のボスターセッションにおいて発表し,愛媛大学・島根大学とのジョイントシンポジウムを1回開催した。また、これらの成果を学会において論文・紀要等により発表した。開発されたすべてのコンテンツはデータベース化し、専用ホームページを通して公開している。
著者
伊藤 正 枝松 圭一 村松 宏 松村 宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

近接場光学顕微鏡(SNOM)のナノスケール分光と高機能化を研究した。1.ポリスチレン微小球配列結晶の近接場効果(1)結晶のフォトニックバンドに共鳴する波長をはさんで、SNOM透過光像が反転した。長波長側は球の周辺部、短波長側は球の中心部が明るい。共鳴付近では全体に広がった。この様子は計算でも再現できる。(2)照射モードと集光モードにおけるSNOM像は一致した。計算との比較によると、SNOMプローブは2次元面内に平行な偏光成分を主に検知している。(3)微小球の直径、プローブの開口径、光波長の3つの要素により、SNOM像は大きく変化するので、プローブの解像度を知る方法として有効である。(4)反応性イオンエッチングによって配列位置は変えずに微小球の大きさを削ると、フォトニックバンド幅が減少した。微小球に固有なWGモードの球間重なり積分の変化が原因であり、結晶中の電子のバンド構造形成と類似ている。2.高機能化(1)プローブの縦方向の位置制御用に水晶振動子を用い、非光化プローブを作製した。(2)クライオスタット内にSNOM装置を設置し、試料を熱伝導で約100Kまで冷やした。(3)ストレートタイプのプローブを用いて、偏光度測定の感度を向上させ、サブミクロンサイズのペリレン微結晶の方位を決定した。(4)石英ファイバープローブを用いた紫外光近接場測定や、バネ定数の小さなプローブにより基板に密着力の弱い微結晶試料の測定を可能とした。3.ナノスケール光加工(1)ペリレン微結晶表面への近接場光照射により直径100nm以下、深さ数10nmの穴を光加工できた。光生成された表面励起子が表面分子の蒸発又は光分解を引き起こすものと解釈される。(2)加工後の微結晶表面形状に経時変化が見られる。AFM観察により室温における表面分子の平均拡散速度は2-3nm/minと求まった。
著者
寺尾 日出男 石井 一暢 野口 伸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究はマシンビジョンで検出できる様々な情報の中でもとりわけ重要なものの一つである作物生育情報を検出することを目的とし,具体的には葉色測定による作物のクロロフィル濃度の推定,植被率算出による作物物理量の推定を行なった。開発したセンシングシステムを産業用無人ヘリコプタに搭載して,グランドベースセンシングよりも飛躍的に高効率なリモートセンシング法を考案した。リアルタイムビジョンシステムの開発 リアルタイムでセンシングを可能にする作物生育診断システムを構築した。マシンビジョンとしてDuncan Tec製MS2100を供試した。葉色予備実験や屋外での圃場実験を通してMS2100を用いた作物生育情報の検出手法を考案した。取得できた作物生育情報は葉色値LCI,植被率VCRであり,特にVCRに関して高いセンシング精度が見られた。この2情報を用いて実生長量指数RGIIという空間に存在するクロロフィルの絶対量を推定する指標を導入し,収量調査の結果と比較した。RGIIと収量である雌穂正味重量との相関はR^2=0.684となり,7月末の段階で収量を予測することができた。ヘリコプタをプラットフォームにしたセンシングシステム 無人ヘリコプタに搭載されたイメージングセンサMS2100から画像を取得し,GISでマッピングできるシステムを開発した。機体のロール角,ピッチ角,ヨー角の計測には,供試ヘリコプタに内蔵されている慣性センサを用いた。ポジショニングセンサとしてRTK-GPSを採用し,画像取得のためにイメージングセンサを機体下に搭載した。ヘリコプタの姿勢変化に伴い,画像に外部歪が生じるが,3次元の回転変換及び地表面への透視変換による座標変換を行うことで解決できる。画像データを座標変換し,マッピング精度を評価した。変換誤差は29cm以内であった。これは作物情報をセンシングする上で十分な測位精度と判断できる。
著者
斉藤 昇 島田 清司 塚田 光
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

鳥類の水分代謝機構の基礎的な解明と軟便などの家禽産業での問題点に対する解決策への応用として本研究を始めた。初めに、鳥類の抗利尿ホルモンであるアルギニンバソトシン(AVT)の遺伝子発現の機構を明らかにするために、急速な塩水投与を行い転写因子等の遺伝子発現等を解析した。その結果、AVT mRNAレベルは塩水投与後3時間に意な増加を示した。他に、c-fos mRNAレベルなども3時間後に増加した。それに対し、転写因子TonEBP mRNAレベルは、塩水投与後1時間に有意な増加を示した。この結果をもとに、TonEBPのアンチセンスを作成し、塩水投与前に前処理として脳室内に投与したところ、視床下部AVTの遺伝子発現は増加しなかった。しかし、c-fosの遺伝子発現には影響しなかった。この結果から、TonEBPがAVTの遺伝子発現調節に重要な転写調節因子であることが明らかになった。また、このようなAVT等の遺伝子発現機構が、塩水投与によりブロイラーでは影響が見られなかった。しがたって、ブロイラーで軟便が生じ易い理由が、AVTの遺伝子発現と関係がある可能性が示唆された。次に、腎臓における水の再吸収機構を解明するために、アクアポリンの遺伝子発現を調べた。AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP7、AQP9の6つのタイプで腎臓における発現が観察された。さらに、塩水投与により血中浸透圧が上昇した時における遺伝子発現の変化を調べたところ、AQP1、AQP2、AQP3のタイプのみが上昇し、他のタイプは、変化が見られないか減少した。したがって、ニワトリの腎臓における水の再吸収には、AQP1、AQP2、AQP3が主に関与していることが明らかになった。
著者
松本 ますみ 小林 敦子 小林 元裕 権 寧俊 花井 みわ 砂井 紫里 清水 由里子
出版者
敬和学園大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中国の朝鮮族と回族を抽出し、民族教育の経験と民族アイデンティティの相関性について歴史社会学的研究調査を行った。その結果、1)両民族とも民族教育経験者が民族の矜持が強いこと、2)同民族内のネットワークに依拠し、漢語と民族語を駆使し対外通商業務、出国、留学、出稼ぎを行うという共通点があることが分かった。両民族はグローバル化の波にのった「成功した」民族であり、その鍵は民族教育にあることが分かった。
著者
東 正剛 緒方 一夫 辻 瑞樹 緒方 一夫 辻 瑞樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

インドとその周辺のツムギアリについて分子系統解析を行い、インド・スリランカ個体群はバングラディッシュまで分布する東南アジア個体群とは明らかに異なる系統であり、乾燥・寒冷期にインド南西部にあったレフュージア熱帯林から拡散したことが明らかとなった。系統上近縁と考えられているアシナガキアリはツムギアリほど明瞭な系統地理を示さず、人為的攪乱の影響を大きく受けていることが明らかとなった。DNA解析と生態調査の結果、生態系攪乱規模の違いは遺伝的なものではなく、侵入先の生態系が大きく関わっていることが示唆された。
著者
高原 光 深町 加津枝 大迫 敬義 小椋 純一 佐々木 尚子 佐野 淳之 大住 克博 林 竜馬 河野 樹一郎
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

堆積物中に残存している花粉や微小な炭(微粒炭)の分析から,特に過去1万年間には,火が植生景観に強く影響してきたことを解明した。特に1万~8千年前頃には火事が多発して,森林植生の構成に影響を及ぼした。また,過去3千年間には,農耕活動などに関連して火事が多発し,照葉樹林やスギ林などの自然植生はマツ林と落葉広葉樹林へと大きく変化した。火入れによって,ナラ類を中心とする落葉広葉樹林が成立する機構も解明できた。草原や里山景観の形成には,火入れが強く関連していることが明らかになった。
著者
醍醐 弥太郎
出版者
滋賀医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

肺癌・食道癌の発症初期での検出および疾患増悪を早期に感知する統合的病態診断系を開発し、それを迅速に癌予防・診断・治療へ展開することを目的として、平成23年度は、バイオマーカー候補分子の同定を進めるとともに、複数のバイオマーカーを統合した新規診断システムの構築を行った。(1)ELISA法等を用いた肺癌・食道癌の迅速血清診断系の構築血清バイオマーカー候補に対する抗体を用いたELISA法による肺癌の早期血清診断システムの構築を行い、あらたに新規血清診断マーカーとしてEBI3を同定した。さらに複数のマーカーを組み合わせて、最小のマーカー数で最大の感度・特異度を示す診断系を検討した。糖鎖プロテオミクス解析と血清ペプチドーム解析による肺癌患者血清中のタンパクを探索して複数の候補バイオマーカーを同定した。(2)免疫組織学的マーカーによる肺癌・食道癌の迅速悪性度診断法の構築組織染色マーカーについて腫瘍組織マイクロアレイ(肺、食道癌他)および正常組織マイクロアレイを使用し免疫組織染色を行い、蛋白発現レベルと臨床病理・予後情報との相関を検討し、あらたに予後予測マーカーとして、CSTF2、CHODL、OIP5、CDC20、KIAA0101、MAD2、MCM7、EZH2を同定した。さらに最小のマーカー数で定量的に癌の悪性度を予測する診断法を検討した。(3)肺癌・食道癌の迅速病態診断系の構築と検証上記の血清および免疫組織学的マーカーを各診断段階で有機的に使い分ける肺癌・食道癌の迅速病態診断系を検討した。
著者
高田 雄京 奥野 攻 越後 成志 菊地 聖史 高橋 正敏
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

静磁場による骨の成長誘導の可能性を調べるため、耐食性に極めて優れた無着磁および着磁白金鉄磁石合金(Pt-59.75at%Fe-0.75at%Nb)をウィスターラットの両側脛骨にそれぞれ1〜12週埋入し、骨親和性と静磁場刺激による骨誘導を光学顕微鏡とX線分析顕微鏡を用いて評価した。同時にコントロールとして、骨および生体親和性の高いチタンおよび生体用ステンレス鋼(SUS316L)においても同様の実験を行い、それぞれの骨成長を比較検討した。その結果、静磁場の有無に関わらず白金鉄磁石合金表面に形成する新生骨のCa/Pは、チタンや生体用ステンレス鋼と同等であり、皮質骨との有意差はなかった。また、4週以降では、いずれも埋入金属全域を新生骨が覆い、白金鉄磁石合金に形成した新生骨は、静磁場の有無に関わらず微細領域においても皮質骨と同等のCaとPの分布を示し、十分に成熟した骨であることが明らかとなった。これらのことから、白金鉄磁石合金に形成する新生骨の成熟度、形成形態、形成量は静磁場の有無に依存せず、いずれもチタンに準じ、生体用ステンレス鋼よりも優れていることが明らかとなった。特に、白金鉄磁石合金において、静磁場の有無に関わらず生体為害性が全く現れなかったことから、生体内で利用できる磁性材料としての可能性が非常に高いことが示唆された。しかし、白金鉄磁石合金の形状が小さく局所的で強力な静磁場が得にくいことや、ウィスターラットの骨代謝が速いことから、本研究課題の期間内では静磁場による骨の成長速度の相違を明瞭に見出すことができなかった。今後の課題として、局所的で強力な静磁場を付与できる磁石とラットよりも骨代謝の遅い動物を用い、静磁場刺激による骨の成長誘導を試みる必要があると考えられる。
著者
菅野 長右エ門 元島 英雅 飴谷 美智子 東 徳洋 栗城 均
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

ラクトフォリン(LP)は、牛乳のホエータンパク質の約10%を占め、主に27kDaと17kDaの糖ペプチドの分子間結合による糖タンパク質複合体(約150kDa)で、その一次構造における疎水性アミノ酸残基の含量と局在性から高い乳化機能をもつことが期待される機能性糖タンパク質である。本研究では、1)LPをチーズ製造における副産物であるホエーから分離するための簡易な方法をまず研究室レベルで試験し、これをパイロットプラントスケールで追試し、簡易に分離できる方法を開発すること、2)得られた分離品の乳化機能及びリポプロテインリパーゼに対する抑制効果の試験を行ってその機能を評価することを目的とし、次の結果が得られた。1.チーズ酸ホエーからLPに富む画分を分離精製する方法を研究室スケールでの研究成果を基盤にパイロットプラントスケールにおいて確立した。すなわち、363kgのチーズ製造で生じた酸性ホエーを限外濾過装置(分画分子量50万)で濃縮し、加水による膜透析、逆浸透膜装置での濃縮後、pHを4.0に調整し、95〜100℃で30分間加熱処理し、上清を凍結乾燥してLPに富む画分を54g得ることができた。本研究によって、ホエー中のLPを主要成分とする画分をpH調整用試薬等を用いただけで、物理的な方法のみで高度に精製できる実用的な方法を初めて開発した。2.より高い純度のLPは、分離したLPに富む濃縮画分をゲルろ過クロマトグラフィーによって分離精製することができた。3.LPに富む画分と乳脂肪からなるエマルションを、タンパク質濃度、乳脂肪濃度及びpHを変えて調製し、その乳化活性、粘度、粒子のメジアン径、比表面積、乳化安定性等の乳化特性を測定し、LPに富む画分の乳化能が高いことを確認した。4.LPに富む画分は、リポプロテインリパーゼによるリポリシスの52%の阻害効果を示したのに対して、高純度に精製したLPは約70%の阻害を示し、LP量を増大すと90%阻害した。
著者
水村 和枝 小崎 康子 片野坂 公明 本多 たかし
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

筋機械痛覚過敏の末梢性機構を明らかにするため、持続が数日の伸張性収縮(LC)負荷による筋性疼痛のラットモデル(遅発性筋痛、DOMS)を作成し、1.筋圧迫・収縮に伴って遊離・放出される感作性物質の量的変化、それによる筋C線維受容器の感作,2.筋C線維受容器のイオンチャネル、受容体の発現変化,3.筋浮腫に伴う受容器終末の物理的(機械的)環境の変化、の3点について調べ,以下の点を明らかにした。1.取り出し筋標本の灌流液中のATP量は筋圧迫によって増大し、運動後2日目にもその量に変化は無かった。しかし、ATPは100μMまで筋細径線維受容器の機械感受性をむしろ抑制した。B2受容体拮抗薬、COX阻害薬、抗NGF抗体投与の遅発性筋痛に対する影響を調べたところ、遅発性筋痛の始発にはB2受容体を介しブラジキニンが、またCOX2が関わり、維持にはNGFが関わっていることが明らかになった。これに対応して、COX2のmRNA及び蛋白質はLC直後から12時間後まで増大し、NGFのmRNAは12時間後から2日後まで増大していた。NGFの筋注によって筋細径線維受容器の機械感受性は投与30分後から増大し、運動後の筋機械痛覚過敏における役割を支持する結果となった。2.suppression subtractive hybridizationによりLC2日後の後根神経節で増大するRNAを調べたところ、65種が見出された。そのうち痛みと関係があるannexinA2とcalbindin1の発現をRT-PCRで調べたところ、LC2日目の後根神経節で有意に増大していた。3.運動後の筋は対側と比べ約5%重く、浮腫状態であることがわかった。筋におけるアクアポリン1,4の免疫組織化学を行ったところ、その発現には一定の傾向が見られなかった。
著者
北川 雅敏 北川 恭子 内田 千晴 小田 敏明
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

[研究目的]本研究では、癌抑制遺伝子産物の分解亢進による細胞悪性化機構の解明を目指す。特にRB経路を制御する癌抑制遺伝子産物RBタンパク質とCDK阻害タンパク質p27^<Kip1>の細胞内での分解機構を明らかにする。さらに、これらの癌抑制遺伝子産物の分解実行因子の発現亢進や、分解亢進に伴い発現が変化する細胞悪性化や予後不良のキー遺伝子を解明することを目指す。[方法と結果](1)RBタンパク質のユビキチン依存的分解機構:p53のユビキチンリガーゼであるMdm2がRBタンパク質に結合し、ユビキチン化することを見出した。興味深いことにMdm2はRBファミリーの中でRBタンパク質だけを特異的にユビキチン化しp107やp130はしなかった。また、癌抑制遺伝子産物ARFはRBタンパク質のユビキチン化を抑制した。細胞にMdm2を過剰発現するとRBタンパク質の分解速度が亢進し、プロテアソーム阻害剤やドミナントネガティブMdm2、Mdm2のsiRNAで分解が阻害されることがわかった。さらにヒトのMdm2が高発現している癌検体において、RBの発現量が低く、Mdm2によりRBの分解亢進が細胞癌化に寄与していることが判明した。(2)p27^<Kip1>の分解制御機構:予後不良の癌ではCDK阻害タンパクp27^<Kip1>の分解が亢進している。我々は肺癌でp27^<Kip1>のユビキチンリガーゼSkp2とCks1の発現が有意に高いことを見いだした。さらにCks1の細胞内存在量はユビキチン-プロテアソーム系によって制御されていることを証明した。Cks1の分解低下が癌におけるCks1の高発現の原因のひとつとなっている可能性が示唆された。
著者
大竹 文雄 有賀 健 黒澤 昌子 佐々木 勝
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、職場における訓練需要の決定メカニズムおよび生産性ショックに対応するための組立ラインの組内の持ち場のローテーションおよび組間の配置転換を通じた組織変化と訓練需要との関連を分析した。具体的には、OJT(職場での仕事をしながらの訓練)の決定要因に関する推定とOJTが生産性に影響を与える効果についての推定を行った。この分析を行うために、二つの自動車組み立て企業における組み立てラインの作業員と組長について継続的な独自調査を行なった。
著者
樫田 美雄 寺嶋 吉保 玉置 俊晃 藤崎 和彦 出口 寛文 宮崎 彩子 高山 智子 太田 能 真鍋 陸太郎 五十嵐 素子 北村 隆憲 阿部 智恵子 岡田 光弘
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ビデオエスノグラフィーという新しい研究手法を開発しつつ、実際的な分析にも成果をあげた。即ち、大学生が専門技能を学ぶ実践の状況を相互行為の観点から明らかにした。例えば、医学部PBLチュートリアルにおいて、レントゲン写真をみる'専門的'方法としての「離して見る」という技法が、教師から学ばれ、学生集団のなかで模倣的に獲得されていく状況が確認できた。教育を結果から評価するのではなく、プロセスとして分析していくことへの展望が得られた。ISCAR第2回サンジエゴ大会等で報告を行った。
著者
浅野 智彦 川崎 賢一 羽渕 一代 岩田 考 辻 泉 川崎 賢一 岩田 考 羽渕 一代 辻 泉
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

韓国・ソウル市および東京都杉並区において16 歳から29 歳の男女を対象にパーソナルネットワーク、自発的集団への参加状況、社会的参加、政治的参加の各領域について量的調査を行った。その結果を統計的に分析した結果、集団所属の多元性および親密な友人関係が社会的参加・政治的参加を促進すること、ソウルとの比較において東京の若者が学校外の活動において不活発であることが明らかにされた(なお高校段階での部活については、社会的参加・政治的参加との関連がみられなかった)
著者
平田 謙次 鷹岡 亮 瀬田 和久 仲林 清
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本年度は、以下に上げる3つの目標領域を定めて研究をすすめました。(1)eポートフォリオ共通インターフェイスの特定eポートフォリオの規格化をすすめているISO国際標準化機構での会議に参加し、研究発表を介して、eポートフォリオ規格の調査研究とのデータ定義について最新の研究を把握しました。韓国教育情報学術院での共同プロジェクトも進めています。国内の学会の年次大会において、課題セッションの企画と運営、および発表をおこない、品質と学習者情報との連携の方法について多様な視点から発表をおこない普及しましたが、国際学会でのスペシャルセッションの企画は叶いませんでした。(2)コンピテンシーセマンティック情報モデルの開発コンピテンシーセマンティック情報のデータ要素、属性について国内関連団体と共同により標準規格開発をおこない、その基礎となる2本の論文を執筆し書籍として刊行されました。また、当該テーマについてISO国際標準化機構会議においてプロジェクトの運営、研究発表、および規格提案をおこなってきています。(3)学習要求-学習活動ログ一致度測定機能企業組織における人材開発の要求調査を実施し、分析をし、アジア欧州会議の生涯学習委員会(ASEM-LLL)仕事場学習研究小委員会の運営と、会議での発表、および論文の執筆をおこないました。また、効果的学習活動について論文を執筆し、書籍の一節として発行しました。さらには、具体的な一致の連携についての方法論について、国際学会で発表し、その後、選抜された論文として書籍の一節として発行されました。
著者
福和 伸夫 山岡 耕春 中野 優 飛田 潤 佐藤 俊明 鈴木 康弘 馬場 干児
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1891年に発生した濃尾地震の時に「震災の帯」として報告された「震裂波動線」の生成原因の解明を目的とした本研究によって、以下が明らかになった。濃尾平野に関する資料収集を行い、愛知県による深部地盤構造調査の結果について資料収集と既存資料との比較検討を行い、総合的な3次元の深部地盤構造モデルを構築した。震裂波動線に関連する岐阜県内の測線に強震計を並べて設置し地震を観測した。側線は養老断層による基盤の段差から堆積平野側に、約10kmの間に配置した。得られた地震動の波形を調べた結果、養老断層の存在によって励起された表面波の存在が確認された。さらにこの表面波と実体波が干渉とすると思われる断層から数kmの地域で地震動の増幅が見られた。この現象はFEMを用いた波動場の計算機シミュレーションにより、このような地震動の増幅が起きることが確認された。地下構造として濃尾平野に類似したいくつかのモデルで計算を行ったが、どれでも基盤の段差があれば地震動の増幅が見られた。濃尾地震の震源モデルについては、特にその存在が示唆されながら、明らかな証拠が得られていない岐阜-一宮線の断層の存在について検討した。濃尾地震のときに観測されたとされる水準変動を説明する断層モデルとしては、従来の垂直の断層よりも、傾斜が75度の逆断層のほうが良いことがわかった。一方、この地域で現在も発生している余震と思われる微小地震のメカニズムから応力場を推定すると、岐阜-一宮線がかって滑ったという証拠は得られなかった。岐阜-一宮線の断層の存在については、さらなる検討が必要である。震裂波動線に関しては、被害に関する資料を再分析すると、被害の多かった地域は線状ではなく、岐阜地域から濃尾平野南東部にかけて面上に分布しているようである。この結果は、被害が大きかったのはむしろ地盤や震源の特性によるものである可能性もある。