著者
中村 生雄 岡部 隆志 佐藤 宏之 原田 信男 三浦 佑之 六車 由実 田口 洋美 松井 章 永松 敦
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、日本および隣接東アジア地域の狩猟民俗と動物供犠の幅広い事例収集を通じて、西洋近代率会において形成された「供犠」概念の相対化と批判的克服を行ない、東アジアにおける人と自然の対抗・親和の諸関係を明らかにすることを目的とした。言うまでもなく、狩猟と供犠は人が自然にたいして行なう暴力的な介入とその儀礼的な代償行為として人類史に普遍的であるが、その発現形態は環境・生業・宗教の相違にしたがって各様であり、今回はその課題を、北海道の擦文・オホーツク・アイヌ各文化における自然利用の考察、飛騨地方の熊猟の事例研究、沖縄におけるシマクサラシやハマエーグトゥといった動物供犠儀礼の実地調査などのほか、東アジアでの関連諸事例として、台湾・プユマ(卑南)族のハラアバカイ行事(邪気を払う行事)と猿刺し祭、中国雲南省弥勒県イ族の火祭の調査をとおして追求した。その結果明らかになったことは、日本本土においては古代の「供犠の文化」が急速に抑圧されて「供養の文化」に置き換わっていったのにたいして、沖縄および東アジアの諸地域においては一連の祭祀や儀礼のなかに「供犠の文化」の要素と「供養の文化」の要素とが並存したり融合して存在する事例が一般的であることであった。そして後者の理由としては、東アジアにおけるdomesticationのプロセスが西南アジアのそれに比して不徹底であったという事実に加え、成立宗教である仏教・儒教の死者祭祀儀礼や祖先観念が東アジアでは地域ごとに一様でない影響を及ぼし、そのため自己完結的な霊魂観や死後イメージが形成されにくかった点が明らかになった。またく狩猟民俗と動物供犠とに共通する「殺し」と「血」の倫理学的・象徴論的な解明、さらには、人間と自然とが出会うとき不可避的に出現する「暴力」の多面的な検証が不可欠であることが改めて確認された。
著者
柏原 正樹 有木 進 谷崎 俊之 中島 俊樹 加藤 周 三輪 哲二 SCHAPIRA Pierre KANG Seok-Jin VILONEN Kari D'AGNOLO Andrea
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

この5年間の表現論に関連した研究の成果として大きなものが3点挙げられる。第一は、確定特異点型ホロノミーD-加群のリーマン・ヒルベルト対応を不確定特異点型ホロノミーD-加群に拡張したこと(A. D'Agnoloとの共同研究)、第二は、余次元3予想の肯定的解決(K. Vilonenとの共同研究)、第三は、円分箙ヘッケ代数を用いた量子群の表現の圏化である(S-J. Kangとの共同研究)。
著者
林 泉忠
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は研究代表者が提起した「辺境東アジア」という東アジア研究の新たな地域概念(『国際政治』135号掲載)に基づき、「中心」と「辺境」、「近代」と「前近代」が交錯し衝突する過程において現出した「辺境東アジア」地域のダイナミックなアイデンティティ・ポリティクスを解明するため、17年から19年まで三年連続、沖縄、台湾、香港そしてマカオにおいて、住民のアイデンティティ構造・特徴・要因を中心に、国際調査を行った。この四地域においてアイデンティティに関する国際調査は初めてとされる。調査は、琉球大学のほか、香港大学、台湾政治大学の専門調査機関の協力を得て、毎年の11月に、同時に、18歳以上の現地住民を対象に、それぞれ20以上の設問(一部は共通質問)を設け、電話調査を行い、それぞれ1000以上の有効サンプルを集めた。調査から得た主な所見は、1.帰属意識の構造に関し、四地域は、共に、複合的アイデンティティをもつ社会である。2.地元社会のへ愛着度やエスニック・アイデンティティについては、四地域は共に強いが、沖縄の方が特に強い。3.自立意識やナショナル・アイデンティティに関し、台湾が最も高く、ほかの三地域に広い差を付けた。4.若い年齢層は、他年齢層よりアイデンティティの複合性と流動性が高い、などである。調査結果に基づいた分析は、アジア政経学会、台湾政治学会、ハーバード大学フェアバンク研究センターおよびイエンチン研究所、北京大学、復旦大学、台湾大学、台湾交通大学をはじめ、日本、台湾、香港、韓国、インド、アメリカ、スイスなどの20以上の学術機関において発表を行った。また、書籍(共著)5冊、学術論文8本、新聞・雑誌記事20本を日本語、中国語、英語で出版した。なお、社会に報告するため、毎年、調査を行った翌月に、沖縄、台湾、香港、マカオ四地域の主要メディアに公表し、高い注目を受け、反響を及んだ。
著者
若松 寛 橋本 伸也 渡邊 伸 渡辺 信一郎 河村 貞枝
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

(1)本研究は、多様な生産形態・民族・言語・宗教・文化を基礎に政治的統合を達成した国家を帝国システムとして捉え、システム内部の諸要素の比較史的検討を通じて、世界史上における多様な政治的統合のあり方を解明すると共に、国家そのものの現在的意味を問いなおすことを目的とし、3年間共同研究を行ってきた。その成果は次のとおりである。(2)若松寛は、清朝による青海地方平定の後、ここに設置された旗の数に関し、当初の29旗が1746-1806年の期間のみ30旗あったことを解明した。(3)河村貞枝は、ヴィクトリア期からエドワード期にかけての帝国体制・帝国文化の中で形成されたイギリスの「第一波」フェミニズム運動をとりあげ、その本質が帝国主義の問題を中心に内包するものであったことを指摘し、インド女性との関係、ボ-ア戦争に対する姿勢、国際的なフェミニズムの連携に果たした役割などを考察した。(4)渡辺信一郎は、『大唐開元礼』に規定される唐王朝の元旦儀礼の訳注をおこない、元旦儀礼をつうじて象徴的に表現される皇帝と中央官僚との君臣関係、中央政府と地方政府及び諸外国・異民族との政治的従属関係の存在を指摘し、それらを唐王朝の帝国構造として把握した。(5)渡邊伸は、神聖ローマ帝国に関する近年の二つの研究動向に注目した。その一つは、帝国を「平和」のための法共同体とするものであり、いま一つは皇帝を中心とする人的結合関係から帝国をとらえようとする。そして事例考察から帝国システムの解明に後者の方向が有効と指摘した。(6)橋本伸也は、3次にわたるポーランド分割によってロシア領となった西部諸県の18世紀以来の教育的伝統を踏まえたうえで、19世紀前半のポーランド・シラフタを対象とした帝国の民族教育政策の転回について考察した。
著者
橘 秀樹 押野 康夫 山本 貢平 桑原 雅夫 上野 佳奈子 坂本 慎一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成10年に改正された「騒音に係る環境基準」では、環境騒音の状況に関して従来の点的把握から面的把握に変更され、評価指標としても騒音レベルの中央値(L50)から国際的に広く用いられている等価騒音レベル(LAeq)に変更された.また「環境影響評価法」でも大規模開発の際には環境の変化を正確に把握することが必須となった.このような背景の下に、本研究では、騒音のエネルギー的平均値を意味する等価騒音レベル(LAeq)によって環境騒音の状況を正確に把握あるいは予測し、その結果を客観的な形で表示する手法を確立することを目的として、以下の研究を行った。(1)道路交通騒音の予測・モニタリングに関する検討わが国における統一的な道路交通騒音予測モデルであるASJ RTN-Model 1998の内容をさらに充実するための基礎的研究として、大型車の影響や都市部における垂直方向の騒音分布に関する実測調査や、掘割・半地下道路からの騒音伝搬の計算手法の簡易化、きわめて複雑な特性を有する交差点周辺の騒音予測手法の開発などを行った。また、騒音対策として多用されている遮音壁の挿入損失の数値解析手法の検討や建物群による騒音低減効果などについても、検討を行った。(2)騒音伝搬特性の測定法に関する検討屋外では、騒音の伝搬に対して風などの気象条件による影響が大きく、またそれによって伝搬特性が時間的に変化する問題(時変性)が大きな問題となる。このような環境下において騒音の伝搬特性を精度よく測定する方法について、時間伸張(TSP)信号を用いる手法などについて、理論的・実験的検討を行った。(3)建設工事騒音の予測に関する検討最近では、各種の建設工事に伴って発生される騒音についても、環境アセスメントの対象となってきており、この種の騒音の予測手法を開発する必要がある。そこでそのための基礎的検討として、時間変動特性がきわめて多様である建設工事用機械類を対象とした騒音源データの測定・表示方法、LAeqを基本評価量とする騒音予測計算法の基本スキームについて検討を行った。
著者
中西 裕二 白川 琢磨 末成 道男 島村 泰則 仲川 裕里 謝 茘 吉田 光宏 李 鎮栄 聶 莉莉
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、日本の文化人類学会において検討される機会が少なかった、自社会研究としての文化人類学(Home Anthropology)の可能性を探るものである。研究は1)理論研究、2)東アジアにおけるHome Anthropologyの位置づけに関する比較研究、3)日本における現地調査研究を軸に進められた。これらの研究成果は以下の通りである。1)文化人類学を異文化理解の学と規定しても、それを他者性の理解という枠組みで把握する限り、Home Anthropologyは一般人類学に大きく貢献可能な学と言える。とくに自社会をフィールドとした文化人類学的研究は、従来の、海外をフィールドとした文化人類学的研究と比べ、他者との関係性がつねに問われる研究領域である。従って、他者性と他者理解を試みる文化人類学において、自社会研究の文化人類学は有益な理論的示唆を与えるものである。2)東アジア地域のHome Anthropologyは、それぞれの国家の近代史との関係の中で生成されている。従って東アジアにおけるHome Anthropologyは、各国により相対的な学問領域とも言え、それを一概に「東アジアのHome Anthropology」と範疇化することには無理がある。3)日本におけるHome Anthrologyは、日本文化研究という近代の枠組み、そして学のイデオロギー性を明らかにするために、非常に有効な手段と言える。
著者
貝沼 洵 牧田 実 河村 則行 黒田 由彦 山崎 仁朗 米田 公則
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本調査研究は、グローバリゼーションが進展し、地域が直接的にグローバルな影響にさらされ、かつ新自由主義的な国家政策との関連で、成長第一主義的な地域振興、すなわち、「中央依存型」「公共投資依存型」の地域振興から、あたらしい「まちづくり」の方法と主体形成に向けて苦悶している三つの地域、北海道北見市、愛知県瀬戸市、沖縄県宜野湾市の実状を分析し明らかにした。北見市においては、「資源供給型」「公共投資依存型」「中央主導型」経済からの脱却と、自立的な地域産業の確立を目指す「産業クラスター」運動と、新自由主義的な手法を取る神田市政が、地域の多様な利害を調整していけるのかどうかが、今後の課題であることを明らかにした。瀬戸市においては、愛知万国博覧会の主会場予定地が長久手町に移った現在、ビッグ・プロジェクト依存の中央主導型のまちづくりではなく、瀬戸市の地元政・財界がどのように「政治的に」自己革新して、幅広い住民諸階層の利害や運動に対応するのかが、瀬戸市の課題であることを明らかにした。これに対して、宜野湾市においては、普天間飛行場跡地利用も含めた中央政府への依存と、米軍基地に依存する経済からの脱却と自立したまちづくりとのジレンマに直面していることを明らかにした。
著者
相良 建至 寺西 高 池田 伸夫 橋本 正章
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

星の進化シナリオの解明には、低いエネルギーEcm=0.3MeVでの炭素-ヘリウム核融合確率が不可欠であるが、その測定は非常に難しく未だ誰も成功していない。本研究では、世界最厚さの膜無し気体標的を開発し、バックグランドを炭素ビームより15桁低減して、炭素-ヘリウム核融合確率を世界で最も低いEcm=1.5MeVで測定した。我々の目標は、Ecm=0.7MeVまで測定し、結果を外挿してEcm=0.3MeVでの確率を求めることである。その準備研究も行った。
著者
古川 宇一 長 和彦 寺尾 孝士 木村 健一郎 大場 公孝
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、自閉症児・知的障害児の生涯ケア体制の整った地域社会の創出をめざして、北海道にTEACCHプログラムを導入する10ヶ年計画の第2次3ヵ年計画のまとめをなすもので、函館・旭川両地区をモデル地区として、幼児期から成人期にいたる各ライフステージにおいてTEACCHプログラムのアイデアの有効性を検証し、関係者・機関への展開を図った。画期的であったことは、函館地区おしまコロニーが独自に、2001年4月、全国に先駆けて自閉症センター「あおいそら」を立ち上げ、活発な相談指導、コーディネート活動を展開し、地域センターとしての活動を展開した。幼児施設、養護学校、特殊学級、施設においてTEACCHプログラムのアイデアを導入するところが増え、幼児期から成人期にいたるTEACCHプログラムを基本においた一貫性のある療育システムが構築されつつあり、全道のセンター的役割を果たそうとしている。旭川地区では、幼児施設でTEACCHのアイデアを引き継ぎ、小学校特殊学級で導入する教室が増え、1成人施設が導入4年目で成果を上げている。両地域とも研究活動は親を含み継続している。本年度の研究16論文は、情緒障害教育研究紀要第21号に、1年次13論文は19号に、2年次12論文は20号に掲載されている。札幌・道央地区、帯広・道東地区では、おのおの1療育施設でTEACCHの手法を用いており、福祉施設においても積極的に導入し研修がすすめられている。札幌、旭川では、家庭教育にTEACCHのアイデアを用いた積極的な取り組みがなされている。おしまの自閉症センターと連携しながら、全道的な展開への準備が整いつつあり、次の第3次3ヵ年計画において道内4圏域でのTEACCHセンター機能の展開が課題である。
著者
高橋 博彰 立川 任典 湯沢 哲朗 伊藤 紘一 酒井 誠
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

フラビンモノヌクレオチド(FMN)の光化学:FMNのT_1状態、ラジカルアニオンおよびセミキノンラジカルの時間分解吸収と時間分解共鳴ラマンスペクトルを測定し、酸性溶液中でのセミキノンラジカルの生成がT_1状態から1電子還元によりラジカルアニオンを経由して起こることを明らかにした。ソラーレンおよびその誘導体の光化学:ソラーレン(PS)、5-メトキシソラーレン(5-MOP)、8-メトキシソラーレン(8-MOP)についてT_1状態およびラジカルアニオンの共鳴ラマンスペクトルおよび過渡吸収を測定した。8-MOPのT_1生成の収率がPSや5-MOPとて比べて異常に低いことを見つけた。このことは、8-MOPの光アレルギー性・光毒性がPSや5-MOPより小さいことと関係している可能性が高い。ビリルビンの光化学:308mnnの紫外光照射により、450nmと415nmに過渡吸収を観測した。450nmの過渡分子種は260nsの寿命をもち、酸素の影響を受けるから、T-1状態である。415mnの過渡分子種は17μsの寿命をもつことが分かったが、その正体については現在研究を続けている。この過渡種は480nm付近にも吸収をもつことが分かった。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の光化学:光酸化反応は,(i)電子移動によるカチオンラジカルNADH^<+・>の生成,(ii)プロトン移動によるラジカルNAD^・の生成(iii),電子移動によるNAD^+の生成,の3段階の反応であることが明らかとなった.酵素反応においても酸化がこの3段階を経て起こっている可能性を示唆した.5-ジベンゾスベレンおよびその誘導体の光化学:S-1状態において振動冷却が約13psの時間で起こることが分った.S_1状態でのコンフォーメーション変化については明確な情報は得られなかったが,ピコ秒時間領域におけるラマンおよび吸収スペクトルの変化はS_1状態においてもOH基に関してpseudo-equatorialおよびpseudo-axialの2種の異性体が共存することを示唆している.オルトニトロベンジル化合物の光化学:この反応は,S_1状態においてオルトニトロ基がメチレン基のプロトンを引き抜いてアシ・ニトロ酸を生成することでスタートする.極性溶媒中ではアシ・ニトロ酸はアシ・ニトロアニオンとプロトンに解離し,このプロ卜ンが2-ピリジル基,4-ピリジル基,4-ニトロ基と結合して,それぞれ,オルト,パラN-Hキノイドおよびパラ・アシニトロ酸を生成することを明らかにした.
著者
原 實 今西 順吉 落合 俊典 木村 清孝 津田 眞一 デュルト ユベール 杉山 二郎 平川 彰
出版者
国際仏教学大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成13年度以来同16年迄の4年間、幸い科学研究費補助金の支給を受け、研究協力者の助言を得ながら研究を続行し得た成果を以下に報告する。近時ジェンダー研究が盛んで本邦に於いても社会学者を中心に所謂「女性差別」「男女平等」を学問的に研究しようとする気運が昂まった。筆者はこの問題を自らが専攻する古代インドの文献に徴して学問的に研究しようと試み、方法論を筆者の専攻する文献学に取り、斯学の世界的リーダーとして令名の高かったロンドン大学のJ.Lisley博士の精神的支持を得てその研究に従事した。不幸にして同博士は昨年急逝したが、同種の研究に従事する「ギリシャの女たち」の著者桜井万里子氏(東大教授)やタイ国の法制史を研究し比丘尼の生活規範を纏め上げた石井米雄氏(文化功労者、京大名誉教授)の助言を得ながら同学のインド古典研究者、仏教学者を研究協力者として研究を進めた。ここに提示するものは過去四年間に亘って研究代表者が発表したもの中心に同類の「女性」に関する過去の研究を一括したものである。その結果分量が大部となり、従って研究協力者の論文は今回見合わせざるを得ず、それらは別の機会に発表する事とした。古代インドの「貞女」「烈女」「淫女」の諸相、「妻」「娘」の地位を中心に「男尊女卑」の系譜を辿ると共に、「貞節」「不倫」の諸問題を系統的に文献に徴して整理したものである。
著者
木部 暢子 岸江 信介 松永 修一 福島 真司 中井 精一
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、音声を聞くことのできる言語地図『西日本声の言語地図』を作成した。これは164枚の地図よりなり、1枚のDVDに164個のPDFファイルとして収録されている。内容は「枝」「鉛筆」などの単語項目151項目、「おはようございます」などの挨拶ことば13項目の計164項目、地点は富山県から鹿児島県種子島に至る65地点。44KHzサンプリング周波数で音声処理を行なったので、音声データベースとしての価値も高い。『西日本声の言語地図』は『南九州声の言語地図』(試作版)に続いて、岸江のHP(http://www.ias.tokushima-u.ac.jp/kokugo/_private/kishie.htm)で公開し、中井のHPと声の言語地図のネットワークを結ぶ。地図作成の過程の中で、以下のことが明らかとなった。1.変化の途中の形が各地の方言音声に現れている。「声の言語地図」では、地理的分布と音声を同時に確認することにより、変化のプロセスを地理的関係で捉えることができる。2.二通りの聞き取り:「地点ごと(横)の聞き取り」と「項目ごと(縦)の聞き取り」の間に微妙な差がある。従来の研究ではこの違いが見過ごされていた。3.方言音声を公開することの重要性について主張し、その方法を提示した。これらについては、Twelfth International Conference on Methods in Dialectology(2005.8.2、カナダ モンクトン)、日本方言研究会第81回研究発表会(2005.11.10、東北大学)、変異理論研究会(2005.11.11、東北大学)等で発表した。
著者
塩谷 捨明 野村 善幸 星野 貴行 酒井 謙二 片倉 啓雄 仁宮 一章
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、東南アジア各国の乳酸菌研究者及び菌株のデータベースを構築することによって、乳酸菌の実用化に向けた相互利用・共同研究を促進させることを目的としている。平成16年度には次年度に向けた予備的な調査を行った。そして平成17年度は「海外調査」ともに「データベース作成とデータ登録」を行った。本研究では、ベトナム、マレーシア、フィリピン、モンゴル、インドネシア、タイにおける大学及び研究機関を中心に訪問し、調査を進める一方、研究者への協力を依頼した。なかでもインドネシアで開催されたアジア乳酸菌学会では多数のアジア乳酸菌研究者の集まる中、本調査の趣旨説明と協力要請を行うことができた。また、日本生物工学会では、韓国、タイ、ベトナム、フィリピンより乳酸菌研究者を招聘しシンポジウムを開催し、乳酸菌研究の相互理解をさらに促進することができた。以上より、合計約30名の研究者情報、および、30株程度の乳酸菌株情報が得られた。一方、各国の乳酸菌研究者及び菌株データを集計・整理するためのデータベースの作成に当たっては、充実すべき調査項目等を議論した上、フォーマットを決定した。データベースについては、ホームページ上にてアクセス・入力可能なフォームを完成させデータ入力準備完了となった。東南アジアの乳酸菌研究者情報に加えて、国内の研究者ならびに乳酸菌株情報を登録した。現在、データベースには、350超の菌株情報とその所有者等の情報が登録されている。
著者
大桃 敏行 宮腰 英一 小川 佳万 藤田 晃之 柳田 雅明 背戸 博史 荒井 克弘 藤井 佐知子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、生涯学習の推進に伴っていち早く学習機会の供給主体の多様化が進んだ成人学習の領域を対象とし、国内外の調査を通じて公共管理システムの転換の動態と課題を明らかにすることであった。おもな成果は次の通りである。1.指定管理者制度の導入は、行政と地方公共団体の出資財団との関係、行政と住民やNPOとの関係、そして財団と住民やNPOとの関係に変化をもたらしていること。この変化は、行政に対して、その守備範囲の再検討とともに、供給主体間の新たな関係設定の構築を求めるものとなっていること。2.住民ボランティアの主導で行政が支援する活気ある生涯学習事業が生まれる一方で、住民主導の事業は、事業拡大に伴い、異なるセクター間のコーディネート機能をどう確保するのかが課題となっていること。3.イギリスにおいては、伝統的に私的イニシアチブを国が追認する方式がとられてきたが、サッチャー政権以降、アウトプット評価に基づく管理が進められてきていること。4.アメリカにおいては、リテラシー教育や職業技能訓練など公的機関の責務とされているが、この領域でも民間の営利・非営利組織が参入し、契約と成果の評価に基づく管理システムが組み立てられてきていること。5.一方、日本の地方公共団体の生涯学習施策においては、学習成果の評価について問題が指摘される一方で、学習者の組織化による共同性の創出が進められていること(学会誌掲載論文)。
著者
背戸 博史 大桃 敏行 泉山 靖人 後藤 武俊 柴田 聡史 申 育成 高橋 文平 安住 真紀子 大迫 章史 高橋 望 下村 一彦 岡 敬一郎 高橋 哲 松井 一麿
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、市町村合併や緊縮財政によって行政手法の再考を求められた地方行政機構にあって、その変動の影響を最も強く受けている生涯学習(成人教育)の分野に生じた転換の動態を明らかにした。主な転換は、体制としては首長部局への補助執行や定管理者制度の導入、多様な主体のネットワーク化などである。また、事業目的の転換では自治体による個別化が進み、地域の拠点づくり、地域人材育成、就業支援などが多様化していることを明らかにした。
著者
宇根谷 孝子 GUNARTO Hary 梅田 千砂子 佐々木 嘉則
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的はPCカメラなどの同期的コミュニケーション手法を使って、インターネット上で日本語学習環境を創設し、遠隔地の学習者が生の日本語に触れ、発話機会を増やすことで、日本語学習、留学へのモティベーションを高めることであった。この目的を達成するために、平成17年度から18年度までの2年間にPCカメラを使った3つのプロジェクトを実施し、以下の成果を収めた。(1)事前調査平成17年度を中心に設備・機器・ソフトウェアなどの研究環境を整備した。具体的には、プロジェクトで使用する設備・ソフトウェアの機能をGunartoが調査し、宇根谷、梅田、佐々木はウィスコンシン大学、オシコシ校で実施されているテレビ会議システムによる遠隔日本語授業を見学し、設備、教材、教授法を調査した。(2)PCカメラを使った日本語教育及び交流の実施平成17年度後半〜18年度は研究者が所属する立命館アジア太平洋大学とマレーシア、マラヤ大学、オーストラリア、ニューサウズウェルーズ大学、アメリカ、ウィスコンシン大学オシコシ校をオンラインで結び、PCカメラを使って日本語教育や交流授業を実施した。結果として、日程の調整、マイナーな技術的課題、教材開発など今後改善すべき課題は残るが、PCカメラを使った同期的コミュニケーション手法とビデオなどの非同期的手法と組み合わせることで、遠隔地の日本語学習者に生の日本語に触れる機会を提供し、それによって学習への興味を高め、留学へのモティベーション向上に寄与することを確認した。
著者
宗景 志浩 吉田 徹志 益本 俊郎 バクタ ジャティンドラナース
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

鹿沼土や赤玉土等を素材に熱処理を行ってシリカセラミックスを作成した。これを使って環境汚染物質(重金属類、富栄養化物質、抗生物質)の吸着能・分解能を調べ、その応用に関して検討した。ここではシリカセラミックスの物理・化学的特性とその改良法、活性化法、有害重金属(Hg^<2+>, Cd, As, Cs)の吸着除去能、カラムを用いた実用化への展開に限って取りまとめる。
著者
池田 忍 柴 佳世乃 久保 勇 伊東 祐子 亀井 若菜 水野 僚子 土屋 貴裕 成原 有貴 メラニー トレーデ 須賀 隆章 中村 ひの
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、日本の中世の物語絵画、とりわけ多様な知識や情報を共有し伝達する媒体であった絵巻の描写を手がかりに、身分と階層を跨る絵巻制作者と享受者の重層的な世界観を明らかにしようとするものである。本研究では、中世の人々の日常生活、労働、信仰、行事、儀礼、合戦の他、異国や異域、神仏化現の舞台となる「場」(型)を抽出・収集し、そこに描かれた建築や環境、多様な「もの」に、身分差や階層差、ジェンダーの差異がどのように描き分けられ、関連付けられているかを具体的に検証し、物語絵画、とりわけ絵巻という媒体の歴史的特性を明らかにした。
著者
晝間 文彦 池田 新介 須斎 正幸 高橋 泰城 筒井 義郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

時間割引率は人々の現在と将来にかかわる意思決定を決める重要な要因で、時間割引率が高いほど現在を重視した(せっかちな)、低いほど将来を重視した(我慢強い)意思決定を意味する。この研究では、時間割引率がどのような要因に関係しているかをアンケートによって調べたが、時間割引率は自制力が高いほど、認知能力が高いほど、低いことが明らかとなった。これは時間割引率に対する教育の有効性を示唆するものである。
著者
小笠原 國郎 菅原 勉 谷口 孝彦 廣谷 功 吉田 尚之 高橋 道康
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

生理活性の発現は分子の持つキラリティーに依存する.それゆえ有機化合物の合成に当っては常にキラリティーの制御をも可能にするジアステレオ制御合成方法論の確立が必須である.本研究は基質制御型の合成方法論の立場から効果的なエナンチオかつジアステレオ制御法の確立を目的として行った.すなわち,本質的な立体制御要素を備えたキラル分子を先ず獲得し,この分子の持つ立体化学的ならびに化学的な機能性を反映させて効果的に目的物にエナンチオかつジアステレオ制御下に到達するものである.具体的には分子的に備わったカゴ状構造を持ち,さらに分子内にエノン単位あるいはジエノン単位を顕在的あるいは潜在的に保有する環状キラル分子を設計し,これを化学的不斉導入法あるいは酵素的分割法によって光学的に純粋に獲得しこれを基本合成素子として生理活性天然物の合成を検討した.その結果,シクロペンタジエノン等価キラル合成素子,シクロヘキサジエノン等価キラル合成素子,ジオキサビシクロ[3.2.1]オクテノン型多目的キラル合成素子,ならびにビシクロ[3.2.1]オクテノン型キラル合成素子開発に成功し,これらより多種にわたる生理活性天然物のエナンチオかつジアステレオ制御合成への道を拓いた.代表的例はプロスタグランジン鍵中間体,8組16種のアルドヘキソースの集約的合成,6種のコンドリトール異性体すべて,エストロン,ビタミンD,モルヒネ,カラバル豆アルカロイド,カイニン酸,抗マラリアアルカロイド,フェブリフジンおよびキニーネ,抗菌性シュードモニク酸,等の獲得に成功した.