著者
吉田 ゆか子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

モノをめぐるバリの信仰や禁忌、モノの物質的特徴、そしてバリから持ち込まれたという履歴が、バリを離れた土地においても、芸能実践に影響を与える。すべてのグループが、楽器や仮面へ供物を捧げる。人々の楽器、仮面、冠に対する愛着や敬意や神聖視するような態度は、モノの取り扱い方法を規定するだけでなく、彼らの活動を精神的に支えたり、バリ文化を味わう契機となったりしている。またバリから運ばれた楽器や仮面や衣装は、上演に真正性を付与する。他方、それらのモノは当該地で変化もこうむる。例えば現地の宗教的文脈のなかで、新たに意味づけられたりする。新たな技術や伝統的な工芸技術を取り入れた創作の試みも行われている。
著者
呉屋 淳子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

近年では高等教育機関で伝統芸能を修練しながら、芸能活動を展開している様子がみられる。そのような彼らの実践には、伝統芸能に対する捉え方や価値観の変化がみられ、新しい伝統芸能を創出した。しかしながら、芸能を実践するにあたって「伝統」と「創作」のはざまで揺れ動いている様子も見られた。同時に、伝統文化の継承を担う彼ら自身は芸能の中で「沖縄らしさ(Okinawaness)」をいかに表現するかという問いに向き合っていた。
著者
田村 克己 松園 万亀雄 關 雄二 岸上 伸啓 樫永 真佐夫 石田 慎一郎
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、世界各国の開発庁や国連機関、国際的なNGO やNPO とそれらの援助活動を調査することを目的として、アメリカやイギリスなど世界各国の開発庁、ワールドバンクや国連環境計画などの国連機関、グリーンピースなどの開発支援NPO・NGO の目標、基本方針、開発援助プロジェクトとその実際の活動、文化人類学など社会科学が開発援助プロジェクトの立案・実施・事後評価において果たす役割を調査し、比較した。さらに、現地の開発援助活動やそれらの諸影響をグアテマラやケニア、ミャンマー、タイなどで調査し、個々の開発援助機関の開発実践を検討した。欧米の開発援助機関では、開発の事前調査やプロジェクト立案、プロジェクトの事後評価の分野において文化人類学者や文化人類学的な知見を活用していることが判明した。
著者
山中 由里子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

イスラーム世界の拡大とともに、統治や旅行のために必要な情報が9世紀後半頃からアラビア語の地理書・旅行記にまとめられ、さらに中央アジア、インド、中国、東南アジア、あるいはアフリカといった周縁の地に対する好奇心や知識欲も増大し、「驚異譚」の類も現れた。これらの書の中でアレクサンドロスが、既知の世界と未知の世界を結び、異境の地に関する情報をもたらした偉人という重要なトポスとして繰り返し登場することを明らかにした。
著者
臼杵 陽 加藤 博 長澤 榮治 福田 安志 水島 多喜男
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

最終年度の今年度は3年間の研究のとりまとめと次の段階へのステップとして位置づけられる。今年度の研究成果として次の二点があげられる。まず、尾崎三雄氏所蔵アフガニスタン関係資料の整理である。本資料の整理は3グループに分かれて行われた。すなわち、第一は尾崎氏がアフガニスタン滞在中に記した日誌・日記等の活字記録の整理・入力作業である。本作業は一橋大学の加藤博(分担者)が中心に行った。第二は、アジア経済研究所の鈴木均(研究協力者)を中心に尾崎氏がアフガニスタンで収集した書籍のデーターベース化と収集民具などの整理である。第三は国立民族学博物館の臼杵陽(分担者)尾崎氏がアフガニスタン滞在中に撮影した写真のCD-ROM化の作業である。この3グループの作業としては第二、第三のグループがその一部のデータをCD-ROMを焼き付けた。また、第一のグループは日誌類の入力作業が終わったところである。このアフガニスタン関係資料の整理は本研究プロジェクトが終了した後も続けられる予定である。第二の成果として、日本・中東イスラーム関係をより比較の視点を導入して、議論を幅広く発展させていくことであった。この成果は国際ワークショップ「植民地主義を比較する-エジプト、イスラエル、日本、朝鮮半島を比較する」を2005年25日に開催したことである。このワークショップを通じて、日本・中東イスラーム関係は植民地主義の性格とその形態の地域間比較を通して、より広くイギリス・中東関係、日本・朝鮮半島、さらにはイスラエル・パレスチナ関係にも敷衍できることを確認した。すなわち、この知見は日本・イスラーム関係を基礎研究から製作提言まで幅広い可能性をもった中東イスラーム研究の今後のあり方を考えていく上での前提作業と位置づけられるのである。
著者
南 真木人 安野 早己 マハラジャン ケシャブラル 藤倉 達郎 佐藤 斉華 名和 克郎 谷川 昌幸 橘 健一 渡辺 和之 幅崎 麻紀子 小倉 清子 上杉 妙子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2008年、マオイストことネパール共産党(毛派)が政権を担い、王制から共和制に変革したネパールにおいて、人民戦争をはじめとするマオイスト運動が地域社会や民族/カースト諸団体に与えた影響を現地調査に基づいて研究した。マオイストが主張する共和制、世俗国家、包摂・参加の政治、連邦制の実現という新生ネパールの構想が、大勢では変化と平和を求める人びとから支持されたが、事例研究からその実態は一様ではないことが明らかになった。
著者
TATSUMURA AYAKO
出版者
国立民族学博物館
雑誌
Senri ethnological studies (ISSN:03876004)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.75-93, 1980
著者
出水 力 渡邉 輝幸 遠原 智文 石坂 秀幸 義永 忠一 平塚 彰 向 渝 海上 泰生 出水 純子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

日本企業の海外生産に伴う技術移転問題を、現場・現物・現実の視点に沿い多面的に調査した。アセアンと中国の8カ国で、約100社の個別企業の技術移転の達成度、それを支えた日本のマザー工場の役割を中心に調べた。海外生産は円高と人件費の高騰により、1990年代以降に急拡大した。その多くは大企業の海外展開に隋伴する中堅企業や中小企業であった。海外生産と国内生産を相互に補完することで、個別企業として利益の還流で所得収支を伸ばし、黒字という企業が多い。海外生産の利益が日本経済を支えており、今や生産のみならず開発の一部も海外に進みつつあるのが、現実である。
著者
飯田 卓 内堀 基光 吉田 彰 伊達 仁美 久保田 康裕 久保田 康裕 村上 由美子 シャンタル ラディミラヒ ルシアン ファリニアイナ
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

マダガスカル国内では森林保護の動きが急速に高まっているが、村落部では木材を今なお生活のために必要としており、資源の持続と生活文化の持続の双方が求められている。本研究では、両者の調和をはかるため、村落生活者による木材利用の実態と、その経年変化の傾向を明らかにした。An Ethno-Xylological Perspective on Madagascar Area Studies In Madagascar, where the movement of forest conservation is active these years, inhabitants of rural areas are obliged to use wood materials to make their living, and therefore it is necessary to sustain both forest resources and rural life. This research, aiming at balancing the both targets, clarified actualities of rural people's wood use and the tendency of its change.
著者
韓 敏
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ライフヒストリーの手法を用い、安徽省都市部と農村の農民、行政幹部、風水師、キリスト教徒、輿の職人と老人ホーム経営者とその家族の生活実践を調査し、社会主義革命の意義とローバル化による中国の社会変化を考察した。また、安徽省の調査成果と、瀋陽、湖南、広東、福建などの調査データを比較し、共通項目:出産、命名、躾け、学校教育、仕事、消費、交友、恋愛、結婚、家族、子育て、扶養、エージング、死、祭祀を通して、人類学におけるライフヒストリー・アプローチの有効性を明らかにした。
著者
中牧 弘允 陳 天璽 岩井 洋 澤木 聖子 澤野 雅彦 竹内 恵行 チョ 斗燮 岩井 洋 澤木 聖子 澤野 雅彦 住原 則也 竹内 惠行 曹 斗燮 出口 竜也 晨 晃 日置 弘一郎 廣山 謙介 三井 泉
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

産業と文化の相関関係を実証的に究明し、その論理の抽出をめざし、(1)環黄海経済圏の産業と都市における文化創造・文化交流、(2)世界遺産をめぐる日中ならびにスペインの産業振興と文化交流、(3)文化活動を機軸とする産業と都市の協働関係の3つの領域に分けて調査をおこなった。近年の創造都市論や創造階級などの議論に見られるような文化を重視する視点から、都市の活性化、文化産業の興隆、世界遺産の積極的活用、地域祭礼の振興などに関する貴重な知見が得られた。
著者
山中 由里子 池上 俊一 大沼 由布 杉田 英明 見市 雅俊 守川 知子 橋本 隆夫 金沢 百枝 亀谷 学 黒川 正剛 小宮 正安 菅瀬 晶子 鈴木 英明 武田 雅哉 二宮 文子 林 則仁 松田 隆美 宮下 遼 小倉 智史 小林 一枝 辻 明日香 家島 彦一
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中世ヨーロッパでは、辺境・異界・太古の怪異な事物、生き物、あるいは現象はラテン語でミラビリアと呼ばれた。一方、中世イスラーム世界においては、未知の世界の摩訶不思議は、アラビア語・ペルシア語でアジャーイブと呼ばれ、旅行記や博物誌などに記録された。いずれも「驚異、驚異的なもの」を意味するミラビリアとアジャーイブは、似た語源を持つだけでなく、内容にも類似する点が多い。本研究では、古代世界から継承された自然科学・地理学・博物学の知識、ユーラシアに広く流布した物語群、一神教的世界観といった、双方が共有する基盤を明らかにし、複雑に絡み合うヨーロッパと中東の精神史を相対的かつ大局的に捉えた。
著者
佐々木 史郎 小谷 凱宣 荻原 眞子 佐々木 利和 財部 香枝 谷本 晃久 加藤 克 立澤 史郎 佐々木 史郎 出利葉 浩司 池田 透 沖野 慎二
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、北海道内の博物館に収蔵きれている、アイヌ民族資料の所在を確認し、その記録を取るとともに、その資料が収蔵された歴史的な背景を解明することを目的としていた。本研究で調査対象としたのは、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター植物園(北大植物園)、函館市北方民族資料館、松前城資料館である。この3つの博物館が調査の対象とされたのは、資料の収集経緯に関する記録が比較的よく残されていたからである。3年にわたる調査の結果、北大植物園が所蔵する2600点に及ぶアイヌ文化関連の標本資料全点と松前城資料館が所蔵する320点余りの資料の全点について調書が作成され、写真が撮影された。また、函館市北方民族資料館では約700点(総数約2500点の内)の資料について、調書作成、写真撮影を行った。その結果、総計約3500点を超えるアイヌ文化の標本資料の詳しい調書と写真が作成された。本科研での調査研究活動では、標本資料の熟覧、調書作成、写真撮影にとどまらず、当該資料が各博物館に所蔵された経緯や背景も調べられた。植物園の資料の収集には、明治に北海道開拓指導のためにやってきた御雇外国人が関わっていたことから、彼らに関する史料をアメリカの図書館に求めた。調査の過程で、これらの博物館、資料館の資料が、明治から大正にかけての時代に収集されていたことが判明した。それは時代背景が明らかな欧米の博物館に所蔵されているアイヌ資料の収集時期と一致する。本科研の調査により、以上の3つの博物館のアイヌ資料は、すでに数度にわたる科研で調査された欧米の博物館の資料に匹敵するほどの記録と情報を備えることになった。それは、記録がない他の国内の博物館のアイヌ資料の同定、年代決定の参照に使えるとともに、アイヌ文化の振興と研究の将来の発展に大きく寄与することになるだろう。