著者
大橋 弘
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

規制緩和が引き金となり航空会社間の国際的な競争が激しさを増すなか、航空会社による合併・連携(アライアンス)件数が急増している。航空産業において活発化する合併・連携の活動が、航空サービスやその料金体系に与える影響について知見を深めることは、今後も着実な需要増加が見込まれる航空産業を理解する上で、重要な課題である。企業による合併・連携に関しては、これまで産業組織論の分野を中心に数多くの理論的研究がなされてきたが、実証的な研究についてはその多くは産業間(inter-industry)の比較に基づくものであり、理論的な研究が関心を寄せてきた特定の産業(intra-industry)における企業合併に着目した実証研究は未だ揺籃期にある。本研究では、2001年における日本航空(以下、JAL)と日本エアシステム(以下、JAS)との合併事案を取り上げ、その合併が国内航空市場の競争状態にどのような影響を与えたのかについて構造推定手法を用いて分析を行った。まず航空需要については、1996年7月から2005年10月までのデータ期間において、O(起点)-D(終点)ベースのデータを用いて離散選択モデルを用いて推定を行った。航空需要を推計する際には、新幹線を含む鉄道との競合関係も考慮している。需要関数の説明変数のうち、価格およびフライト数については、内生性の問題があることを考慮して、操作変数を用いた一般モーメント法により推定を行った。航空サービス供給については、旅客数(有償座席数)の決定だけでなく、フライト数の決定も各航空会社は行うと考えて、モデルを構築した。推定結果は、需要・供給関数ともデータとの当てはまりは良いことがわかった。この推定値を用いて、本研究では、もし2001年にJAL-JAS合併がなされていなければ、日本の国内航空市場はどのような産業構造になっていたかという点である。本分析の結果、合併により当該合併企業の市場支配力が大きく上昇していることが見て取れた。
著者
中村 政隆 伊藤 元己 川合 慧 佐久間 雅
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

複数の種(taxon)の遺伝子の塩基列もしくはアミノ酸列をデータとして、そこから系統樹(phylogenetic tree)を構築するアルゴリズムは、距離行列法と、与えられたデータのもとでの各二分木のコストを定義してコスト最小の二分木を求める、という2つのタイプに大別できる。距離行列法(Pairwise Distance Method)としては、UPGMA/WPGMA法(実用にはあまり用いられてない)、及び近隣結合法(Neighbour Joining Method, NJ法)などが知られている。それに対して、初期解から局所探索、つまり受刑探索を繰り返して最適器を求めるときの目的関数の取り方として、最小二乗法、最小進化法、最大節約法(Parsimony)、最尤法(Maximum Likelihood Method)などが知られている。一般に組み合わせ最適化の理論では、これらの樹形探索のような局所探索を繰り返すときには、適当なメタヒューリスティックアルゴリズムを使うとより効率的なアルゴリズムが得られることが知られている。実際には、組み合わせ最適化の分野でメタヒューリスティックアルゴリズムの名の下に以下の3つが知られている(1)遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)(2)タブー探索(Tabu Search)(3)進化的アルゴリズムこれらの戦略を系統樹アルゴリズムの樹形探索の部分に適用し、シミュレーションを繰り返してみた結果、タブー探索がもっとも効果的であるという知見を得た。
著者
ANILIR SERKAN
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

IFデータベースは現段階で予想される多種多様な問題に対応しているが、本研究では特に下記の3分類(IF環境)に絞り、21世紀の国際的な社会問題である人口問題や難民問題、それから生まれた衛生管理の問題、また地球環境に対する負荷の低減、大規模災害に対する有効な改善策を見出すことを目指した。(1)Temporary-Infra: 被災地など、一時的にインフラが崩壊した場合大都市居住者のエネルギーや水の使用量は、経済発展のために、今後も増大の一途をたどる。こうした大都市で災害が起き、既存インフラが麻痺した場合でも、一定期間豊かな生活を維持できることを目的とする。(2)No-Infra:途上国における開発途上地域や未開地など、インフラが十分でない場合インフラの未整備地域の一般生活者、又は天災・人災リスクの高い地域の環境難民、経済難民、戦争難民及び極地的環境の居住者への生活の保障を目的とする。中国、中南米を始めに、インフラが十分でない国々との協力関係の構築を図ることを目的とする。(3)Self-Infra: 先進国における開発途上地域や未開地など、インフラを自ら選択できる場合現在の環境先進国の郊外住宅地の開発は消費型社会を基盤としているため、住宅の運用に伴う環境負荷や消費量増大に歯止めがかからない。そこで、資源循環型社会へ転換することで人々の資源節約意識が働き、自然とともに暮らす生活の質を高める都市や住宅開発、または古民家などのストックが持続可能な改修手法の有り方を目指している。平成19年度は前年の研究結果を基にした模型試作による実験とモニタリング。インフラフリー技術の個別要素を適用・実験可能な実物モデル縮小型模型の製作。一般企業への技術移転を前提としたモデル施設の紹介や技術提携、専門者との意見交換、課題の抽出。成果の「インフラフリー技術図書」としてとりまとめた。
著者
中田 基昭
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.239-264, 1995-12-20

In dieser Abhandlung werden am Anfang die Schwierigkeiten bei der Aufklarung vom Leben des Lehrers und der Kinder im Unterricht gezeigt. Dann wird geklart, daB diese Schwierigkeit nicht aus der Unzulanglichkeit unserer Erkenntnisse, sondern aus der Ungrundlichkeit unseres Lebens herruhrt, die Philosohie von Nietzsche und Dilthey zu verstehen. Wenn wir trotzdem als Forscher das Leben des Menschen tiefer und ausfuhrlicher aufklaren mochten, um sowohl den Anderen als auch uns selbst zu verstehen, mussen wir das Leben des Forschers selbst, der ein Menschenleben untersucht, aufklaren. In dieser Richtung stellt uns Husserl sehr viele wichtige Perspektiven dar. Besonders soll seine Lehre von der Fremderfahrung auch fur uns Padagogen beachtet werden, weil es sich bei Unterricht und der Untersuchung des Unterrichts darum handelt, wie ein Mensch den Anderen als alter ego erfahrt oder versteht. Aber in der Lehre von der Fremderfahrung Husserls verbergen sich auch Probleme. Diese Probleme wurden von den Phanomenologen gelost, die die Nachlasse von Husserl erneut und tief auslegten. Deshalb wird auch in dieser Abhandlung nach den Ergebnissen einiger Phanomenologen eine Aufklarung der Fremderfahrung versucht. Besonders nach K. Held, der das passive BewuBtseinsleben untersucht hat, wird die Unmoglichkeit der Vergegenstandlichung des die Welt erfahrenden Lebens aufgeklart. Nach M. Theunissen, der die Vergemeinschaftung in der transzendentalen Ebene untersucht hat, wird dargestellt, daB der den Lehrstoff ursprunglich auslegende Lehrer auch intersubjektiv den Lehrstoff erfahrt. Nach B. Waldenfels, der die Offenheit des praktischen Lebens untersucht hat, wird gezeigt, wie der Lehrer im Unterricht den Kindern als Du begegnen kann.
著者
高橋 宏知 磯村 拓哉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究では,①物理リザバー推論を実現できる閉ループ実験系を構築し,②実験データに基づき,脳組織の自由エネルギーの計算方法を確立したうえで,③脳組織の推論能力を増強する方法論を探求する.独創的な実験研究と理論研究を両論とし,リザバー計算と自由エネルギー原理を有機的に連携すれば,脳のエンパワーメント技術,ニューロモルフィック計算,次世代AIの開発などの波及効果を期待できる.
著者
河岡 義裕 堀本 泰介 五藤 秀男 高田 礼人 大隈 邦夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

インフルエンザは毎年のように高齢者やハイリスクグループの超過死亡の原因となっている。また前世紀には3度の世界的大流行を起こし、数千万人もの命を奪った。ワクチンは感染症予防において最も有効な手段のひとつである。現在わが国で使用されているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、症状の重篤化は予防できるが、感染そのものの予防には限界がある。米国で承認された弱毒生ワクチンは数アミノ酸が自然変異によって変化した弱毒化ウイルスであり、病原性復帰の危険性が指摘されている。1999年に我々が開発したリバース・ジェネティクス法により、任意に変異を導入したインフルエンザウイルスを人工合成することが可能になった。本研究では、リバース・ジェネティクス法を用いて、より安全かつ効果的なインフルエンザ生ワクチンの開発を目的とした。今回は、インフルエンザウイルス増殖に必須の蛋白質であるM2蛋白質に欠損変異を導入し、生ワクチン候補株となるかどうかを確認した。M2蛋白質に欠損変異を導入したウイルス株は、培養細胞を用いると親株と同様に効率よく増殖するが、マウスを用いた実験では弱毒化していることが明らかになった。このようにリバース・ジェネティクス法を用いることで、従来の生ワクチンよりも安全なワクチン株の作出が可能になったといえる。今後は、他のウイルス蛋白質にも人工的に変異を導入し、さらに安全で効果的なインフルエンザ生ワクチンの開発に努める。
著者
尾田 正二
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

硬骨魚類では瞳孔(黒目)の大きさは変化しないとされてきたが、本研究では強い光に反応してメダカの瞳孔が小さくなる(縮瞳)対光反射があることを見出した。また、ヒトと同様に、メダカにおいても交感神経の活動が瞳孔散大筋を収縮させて散瞳を、副交感神経の活動が瞳孔括約筋を収縮させて縮瞳を引き起こすことを見出し、さらに撮影時のメダカ成魚は交感神経の活動が大きく亢進している、すなわち緊張していたことが示唆された。近年高性能化が著しいデジタルカメラとPCを活用した映像の数値化手法によってメダカの眼の大きさ変動を詳細に観察することにより、当該メダカ個体の心身状態を推察することに道が開かれた。
著者
飯田 拓也
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

胎児や新生児の表皮細胞を使用しない、侵襲の少ない、簡便であるといった要件を満たした、臨床で施術可能な毛包再生のための培養毛乳頭細胞の移植法を動物モデルで確立した。また、毛乳頭細胞の毛包誘導を促進する培養法について、活性型ビタミンDを使用する方法を開発した。
著者
黒岩 真弓
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

○研究目的 :学生実験において、学生に日本国菌である黄麹菌と清酒酵母の並行複醗酵による日本酒醸造という日本古来から伝わるバイオテクノロジーにふれて欲しいという意向から試験醸造免許を取得し、小仕込による試験醸造を導入することとなった。美味しく香りの良い日本酒醸造をめざすために経過過程のもろみの状態を科学的にリアルタイムで検出できることが重要である。蔵元で従来行われている日本酒分析(比重・アミノ酸度・酸度等)のためのもろみの採取量(数百mL)では小仕込醸造では支障があるために1桁以上少ない採取量での分析を行う必要がある。そのためにもろみのリアルタイムの状態を知るためのQCMセンシングシステムによる微量分析法を導入することを検討する。このQCM(Quartz Crystal Microbalance)法は抗原抗体反応や電極反応の吸着解離現象をリアルタイムに高感度で周波数変化として検出できる方法であり、同じ吸着解離現象を検出する表面プラズモン法等に比べると比較的安価な装置である。導入するに当たり、従来の分析を行うシステムの構築、もろみ状態をモデル化してのQCMシステムの検討、実際の小仕込醸造実験の検討、従来の分析法との比較を行うことでQCMシステムの最適化の検討を目的とした。○研究方法と成果 :従来のもろみ分析をおこなう分析システムを構築するために醸造協会並びにいくつかの日本酒醸造の蔵元の見学をさせていただき情報収集及び情報交換を行った。それらをもとに検討することにより、分析システムを構築出来た。小仕込醸造の蒸きょう作業の簡略化のために餅つき機の“むし”機能を用いることを検討し、有効性が示唆された。さらに、QCMシステムの検討については、もろみ状態を考慮すると、センサ部、送液部等を検討する必要が生じた。今後さらに検討していきたい。
著者
大村 智
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1968

博士論文
著者
秋下 雅弘 江頭 正人 小川 純人 大田 秀隆 岡部 哲郎 喩 静 柴崎 孝二 孫 輔卿
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では性ホルモン様作用を有する漢方薬の成分を用いて血管、神経、乳癌、前立腺癌の細胞に対する作用を検討し、臓器別作用を網羅的に解析・分類した。具体的に、乳癌細胞ではエストロゲンと類似した細胞増殖能をもつ生薬成分ともたない成分で分類できた。前立腺癌細胞ではテストステロンと類似した細胞増殖能をもつ成分はなかった。血管ではすべての生薬成分が平滑筋細胞の石灰化を性ホルモンと同様に抑制する効果があった。神経細胞ではginsenoside Rb1がアポトーシスによる細胞傷害を保護する作用があった。このような成果からホルモン補充療法の代替薬として新規薬剤の開発へつながることが期待できる。
著者
福島 由依
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

本研究は、大学学部入学段階での競争的筆記試験を重視する「受験主義」という観点から、日本の教育選抜の特徴とその現代的変容を捉えることを目的とする。具体的には、1)「入試ミス」に関する報道記事の分析から、客観的で公平ゆえに「正統」とされる選抜が崩れる場面の言説に着目し、社会がもつ正統な選抜への期待や信頼を検討する。次に、2)「学歴ロンダリング」とよばれる就学行動に着目し、日本では「非正統」と捉えられる就学行動に対する社会的な評価を、日本にくらべ大学間での転学が一般的であるアメリカを参照しながら検討することで、日本の受験主義の特殊性を議論する。
著者
小野塚 知二 藤原 辰史 新原 道信 山井 敏章 北村 陽子 高橋 一彦 芳賀 猛 宮崎 理枝 渡邉 健太 鈴木 鉄忠 梅垣 千尋 長谷川 貴彦 石井 香江 西村 亮平 井上 直子 永原 陽子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2022-06-30

野良猫の有無とその消滅過程に注目して、人間・社会の諸特質(家族形態、高齢化態様と介護形態、高齢者の孤独、猫餌の相対価格、帝国主義・植民地主義の経験とその変容、動物愛護思想、住環境、衛生意識、動物観など、従来はそれぞれ個別に認識されてきたことがら)を総合的に理解する。猫という農耕定着以降に家畜化した動物(犬と比べるなら家畜化の程度が低く、他の家畜よりも相対的に人間による介入・改変が及んでいない動物)と人との関係を、「自由猫」という概念を用いて、総合的に認識し直すことによって、新たに見えてくるであろう人間・社会の秘密を解明し、家畜人文・社会科学という新しい研究方法・領域の可能性を開拓する。
著者
田中 英彦 富田 眞治 斉藤 信男 雨宮 真人 村岡 洋一
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

重点領域研究・超並列は総括班と、4つの研究班、それぞれ(A)超並列アプリケーション班、(B)超並列プログラミング言語班、(C)超並列計算機用OS班、および、(D)超並列アーキテクチャ班で構成されている。本年度は成果とりまとめの年度として、各班がそれぞれの成果をリファインするとともに、最終のデモンストレーションに向けてそれぞれの成果や開発されたシステムの垂直的な統合化をを行った。総括班は研究全体の取りまとめを司り、約3か月ごとに会合を開き、各班の研究状況の確認や意見交換などを行った。本年度は、特に成果とりまとめ年度として、3月の第7回「超並列」シンポジウムの開催、その際のデモンストレーションの計画、成果をまとめた英文図書の出版、過去のシンポジウムの予稿集のCD-ROMの作成など、プロジェクトの成果を積極的に国内外にアピールしてゆく活動を幅広く敢行した。A班は、超並列計算における新たなアルゴリズムやアプリケーションの構築を目的とし、以下のような応用に対しB班が開発した超並列言語NCXなどへの移植を行い、各種の実験や性能評価、及び言語開発へのフィードバックを行った:・熱流体、渦発生のシミュレーション・弾性体の変形と応力の計算(境界要素法)・場の計算(境界要素法)とSORによるポアソン方程式求解 ・有限要素法における自動メッシュ分割・コンピュータグラフィックスにおける並列レンダリング・生態系(魚群)の自律型行動シミュレーション・並列遺伝的プログラミングによるニューラルネットの構造生成・実時間音楽情報処理システムB班では、超並列言語NCXの実装を改良すると共に、共有メモリ型計算機、分散メモリ型並列計算機、ワークステーションクラスタなど、種々なアーキテクチヤを持つ並列計算機への対応化を行った。また、幾つかの代表的なベンチマークプログラミングを移植し、それぞれの計算機上で性能評価を行った。更に、その他のMIMD型の超並列型プログラム言語V,ANET-LやABCL/fなどの並列計算機上での開発も行った。C班では、超並列計算機でのマルチユーザの保護と性能、複数のユーザのプログラミングモデルの提供、超並列用入出力機構のサポート、などの特徴を備えた超並列計算機用のOS・COSを設計・開発した。本年は、D班の作成する超並列計算機JUMPミ1へのCOSの実装に備え、並列ワークステーションをLANで接続した評価用の環境を用意し、その上にJUMP1ミ1のエミュレータとCOSマイクロカーネルをのプロトタイプを結合したCOSエミュレータを設計・実装した。また、D班の開発したプロトタイプボードJUMP-1/3(仮称)へのCOSエミュレータの移植を行った。D班では、様々な超並列計算のパラダイムに対応できる共有メモリ超並列計算機JUMPミ1の研究開発を遂行し、本年度は(1)主要コンポーネントであるメモリベースドプロセッサ(MBP)、キャッシュコントローラ、ネットワークル-タなどのを開発・デバッグを行い、(2)MBPをDSPでソフトウェアシミュレーションして他の部分はJUMP-1と同設計のシステムJUMP-1/2の設計・開発をし、(3)また、JUMP-1の特徴である高速プロセッサ間ネットワークRDTや高速シリアルI/OシステムStaff-Linkの開発・及びCOS開発のために、SUNワークステーションに接続して種々の実験が行える評価用ボードJUMP-1/3の設計・開発を行った。
著者
村田 雄二郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

研究1年目の今年度は、当初の研究計画にしたがい、備品購入による研究環境の整備、基礎的な文献の収集と調査を行った。また、北京に出張した機会を利用して、中央民族大学を訪問し、胡振華・索文清教授と面談し、中国の民族学研究をめぐって、研究交流を進めた。索教授からは、大陸におけるチベット近現代史研究の現況に関して、貴重な提言と示唆を得た。さらに研究開始後まもなく、日本の外交資料館に収蔵される外交文書「西蔵問題及事情関係雑纂」に、本研究に有用な資料が含まれることが判明した。次年度も引き続き、これらの資料や情報を活用した研究を進めて行くつもりである。以上の作業にもとづく今年度の研究成果は、次の通りである。1、 南京国民政府はその成立当初から、周辺民族、とくにチベット・新疆・モンゴルの統合問題を重要な政治課題に掲げ、行政院(内閣)に蒙蔵委員会を設置するなど、その実効支配のための制度や環境を整えようとした。2、 しかし、そうした努力にもかかわらず、対チベット関係においては、東チベット地区(中央は1939年に西康省を設置)で1930年唄から、チベット・漢軍の激しい武力衝突が頻繁に発生したことが物語るように、中央政府がチベットに実効支配を及ぼす力はなかった。1931年の満州事変が、国民政府による国家統一の危機をさらに深めたことはいうまでもない。3、 こうした状況の中で、1933年にダライ・ラマ13世が死去したことは、中央政府にチベット「介入」へのまたとない機会を提供するものだと受けとめられた。34年、ラサでのダライ・ラマの葬儀に列席した黄慕松は、中央大官の初めてのラサ入りとなった。また、40年の新ダライ・ラマ即位式典に蒙蔵委員会委員長呉忠信が参列したことは、国民政府のチベット関与を一歩前進させるきっかけになった。4、 ただし、呉忠信の式典参加をめぐっては当時から、「主宰」か「参列」かで、その解釈が大きく分かれており、民国期の中蔵関係を考える上での、一つの焦点となっている。次年度は、この点に的を絞り、黄慕松および呉忠信のチベット入りをめぐる中蔵関係の展開について、档案資料を駆使した個別研究を行うことにする。
著者
見上 彪 岡崎 克則 中島 員洋 松田 治男 平井 莞二 高橋 英司 東原 朋子
出版者
東京大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1989

現在,マレック病ウイルス(MDV)に起因する鶏のマレック病(MD)の予防には,主として七面鳥ヘルペスウイルス(HVT)の単価ワクチンが野外で広く用いられている。しかし現行のワクチンでは予防し得ない超強毒MDVによるMDが存在する。本研究はこのようなMDに対応し得るワクチン,組み換え体ワクチン,多価ワクチンあるいは成分ワクチンの開発を最終目的としている。以下結果を記載する。1。MDVのA抗原をコ-ドする遺伝子をBCに捜入し,リコンビナントウイルス(RCV)ーAを得た。これを接種した細胞の表面にはA抗原が発現していることが蛍光体法により確認された。 ^<35>S標識抗原とA抗原特異的単クロ-ン性抗体を用いて免疫沈降を行ったところ,感染細胞可溶化液中には多量の抗原が58ー68Kの位置に,また感染細胞上清には少量の抗原が46ー54Kの位置に認められた。発現A抗原はMDV感染血清と特異的に反応し,この抗原を接種した鶏の血清中にはMDV感染細胞と特異的に反応する抗体が検出された。2。MDV遺伝子中には単純ヘルペスウイルス(HSV)のgBに類似する糖蛋白をコ-ドする領域が存在する。この領域をBCに捜入して得たRCVーBは感染細胞の細胞質および細胞表面にMDV感染血清によつて認識される蛋白を発現した。この蛋白はMDVのB抗原に対する単クロ-ン性抗体や免疫血清とも反応した。またSDSーPAGEおよびMDV感染血清を用いたイムノブロット法により88/100,64および54Kdの分子量からなる蛋白であることが明らかとなった。3。胸腺切除および抗鶏CD4ないしCD8単クロ-ン性抗体投与によりCD4ないしCD8陽性T細胞を欠損させた鶏に強毒MDVを感染させた。CD8欠損鶏においては神経腫大とリンパ腫が認められたのに対して,CD4欠損鶏においては神経腫大のみが認められた。
著者
今井 悠介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究は、アリストテレス-スコラ的な類種概念による秩序から別の秩序への転換という視点を軸に、デカルト存在論の特質を描くことを目的とする。本年度は以下の研究を実施した。1/存在論を形作る概念枠組みの変化を研究するため、前年度に引き続き主にスアレス、エウスタキウスらデカルト以前の近世スコラ哲学者との比較を行った。スアレスの区別論において、他の諸々の区別を三つの区別のみに帰着させるという構造化がなされ、この構造化・単純化を引き継いだのがデカルトであることを明らかにした。エウスタキウスにおいてはこのような構造化がなされておらず、デカルトのものと異なっている。以上の系譜関係は認められつつも、普遍自体の考察を素通りし、区別の徴表の議論を実体論に先立たせ、その前提とさせるデカルトの議論構成において、スアレスの体系構成の換骨奪胎が起こっており、存在論の議論構成においてもドラスティックな変化が起きたことを明らかにし、以上の成果を日本哲学会において発表した。2/デカルトの強い影響を受けた近世スコラ哲学者であるクラウベルクの検討、およびアルノー、ニコルの『ポールロワイヤル論理学』の検討を行った。クラウベルクにおいて、アリストテレスのカテゴリー論批判の議論とデカルト哲学の摂取が結びつく次第を検討し、また、『ポールロワイヤル論理学』において、オルガノン的枠組みとデカルト哲学の概念群がどのように架橋されているのかを検討した。その結果、デカルト哲学の概念群が、オルガノン的枠組みの一部を刷新し、後の哲学者の体系構成に変化を与えるものであったことを明らかにした。3/デカルトの存在論に関するマリオン、クルティーヌらの先行研究を整理し、デカルト哲学の体系構成の検討を行った。また、本有性、明晰判明性等々の概念群の関係を整理することで、観念の理論がデカルト存在論とどのように関係するかという問題の一端を明らかにした。
著者
西田 友広 佐藤 雄基 守田 逸人 深川 大路 井上 聡 三輪 眞嗣 高橋 悠介 貫井 裕恵 山田 太造 堀川 康史 中村 覚 高田 智和
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

日本中世史学は、徹底的な史料批判を実践することで、歴史像の厳密な再構成につとめてきた。しかしながら厳密性を追究した結果、分析対象から漏れてしまう史料も生み出してしまった。それらは断簡・無年号文書・破損汚損文書といった、史料批判の構成要件を満たせなかったものである。本研究は、隣接諸科学を含めたあらゆる方法論を援用し、かつ情報化されたデータをあまねく参照できる環境を整えることで、こうした史料の可能性を徹底的に追究し、有効な研究資源とすることを目指している。併せて、かつて確かに存在していた文書の痕跡を伝来史料から丹念に抽出することで、現存史料の背景に広がる、浩瀚な史料世界の復元に取り組んでゆく。
著者
蒲生 俊敬
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

前年度製作の可搬型高精度ガス分析システムに改良を加えつつ,フィールド観測への応用を図り,沿岸及び外洋海水中に溶存する水素の分析データを蓄積した。水素の供給源や消費速度について他の気体とも比較しつつ考察を進めた。平成20年5月19日〜5月26日,および同年10月20〜22日にかけて,東京大学海洋研究所附属国際沿岸海洋センター(岩手県大槌町)に本システムを持参し,大槌湾内および大槌川河口域での観測を実施した。河口域において大気平衡時濃度の95倍という極めて高濃度の溶存H_2を観測した。大槌湾における溶存H_2,COおよびCH_4濃度は,塩分との関係からみて,濃度の高い河口域の水,濃度の低い大槌川の水,および外洋性の海水の混合によって決まると推定した。また,大槌湾表層水の溶存H_2はすべて過飽和(136〜9478%)であり,このことから大槌湾表層水から大気への明確なH_2の放出を明らかにした。溶存H_2とCOは類似した挙動を示すことから,同一の供給源すなわち有機物の無機的な光分解に由来する可能性のあることを示したなお,大槌川河口域では高濃度の溶存CH_4が検出されたことから,還元的な微小環境の存在が示唆され,そこでH_2も生成する可能性がある。さらに,外洋域でもデータを取得するため,6月24日から7月4日にかけて,学術研究船「淡青丸」KT-08-14航海に参加し,相模湾・伊豆黒潮周辺海域における溶存H_2およびCO濃度の観測を行った。黒潮海域ではクロロフィル濃度極大と溶存H_2濃度極大の深度が合致することを見いだした。H_2濃度極大(過飽和)をもたらすプロセスとして,(1)有機物の非生物的な光分解,(2)微小還元環境での嫌気性バクテリアによる有機物の発酵による生成,および(3)海洋シアノバクテリア等の窒素固定に伴う生成,の可能性を指摘した。9月17日〜9月19日に開催の日本地球化学会年会および日本海洋学会秋季大会において中間発表を行ってレヴューを受け,平成21年3月までに最終結果を取り纏めた。