著者
加藤 裕
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1959, no.9, pp.1-5, 1959

周知の通りヘラクレイトスの根本思想は、「万物流転 (ηαντα ρετ) 」である.それは「万物がロゴスに従って (κατα τον λογον) 生起する」 (H. Diels: Fr. der Vorsokratiker. Fr. 1) ことである.それ故「万物流転」の思想を把握する最大の鍵は「ロゴス」にあると言うことができる.「万物」及び「流転」ということに根拠がないと言う訳ではもとよりないのであるが、言わば「万物流転」という根源体験に理性的照明を与えるものが、「ロゴス」であると言うことはできるのではあるまいか.小論は、その「ロゴス」に焦点を合せたヘラクレイトス研究の覚書である.
著者
堀田 千絵 川口 潤
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.61, 2007 (Released:2007-10-01)

本研究は,修正Think/No-Thinkパラダイムを用いて意図的忘却と日々使用するストレスコーピング尺度得点との関連を検討することを目的とした。まず、すべての実験参加者は無関連語対を記銘した。次に,Think/No-Think段階において,手がかり語に対応する反応語を考えないようにするか,もしくは再生するかを反復して行うことが求められた(0,4,もしくは12回)。テスト段階において,手がかり語の対応語を再生するように求められた。結果は,ストレスコーピング尺度得点で抑制効果に差は見られなかった。
著者
長沼 亮滋 矢部 一郎 高橋 育子 松島 理明 加納 崇裕 佐々木 秀直
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.83-87, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
27
被引用文献数
2

3,4-diaminopyridine(3,4-DAP)を投与した9例のランバート・イートン筋無力症症候群患者の治療効果について後方視的に検討した.3,4-DAPは筋力低下と自律神経異常症に対し有効である一方,傍腫瘍性小脳変性症の小脳性運動失調に無効であった.有効例8例の投与期間は15~149ヵ月であった.3例が10年以上投与しており,長期間安全に投与できた.2例が小細胞肺癌(small cell lung carcinoma; SCLC)により死亡し,1例がSCLCの悪化で投与中止した.副作用が生じた2例のうち1例は投与中止したが1例は減量し投与継続した.維持用量や副作用の生じた用量には個人差があり,慎重な用量決定を必要とした.
著者
横山 淳 山口 浩雄 重藤 寛史 内海 健 村井 弘之 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000834, (Released:2016-03-08)
参考文献数
10
被引用文献数
4 8

症例は24歳の男性.夜間飲酒した翌朝に痙攣を認め当院救急部に搬送された.到着後に痙攣重積を呈して人工呼吸器管理となった.脳幹反射の異常や病的反射,髄膜刺激徴候は認めなかった.頭部MRIの拡散強調画像で異常信号はなく,左後頭葉に陳旧性梗塞様の所見を認めた.入院直後より横紋筋融解症による高CK血症と急性腎不全を呈し持続血液透析濾過法を開始した.髄液中L/P比の著明な増加よりミトコンドリア病を疑い,末梢血にてミトコンドリアDNAのA3243G変異(ヘテロプラスミー20%)が判明しmitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes(MELAS)と診断した.本症例はMELASとしては非典型的な経過を辿ったため貴重な症例と考えられた.
著者
常世田 智明 稲熊 祐輔 宮城 愛 辻本 育子 中嶋 貴 瀬嵜 良三 氏平 伸子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.87-92, 2017 (Released:2017-01-28)
参考文献数
17

症例は59歳の初診時に腎機能障害を認め血液透析導入. 同時期に心機能障害, 2型糖尿病も指摘. 腎生検未施行であり, 糖尿病性腎症と臨床診断していた. しかし, 「頭痛, 嘔吐, 感音難聴, るいそう, 知能低下, 母が心疾患であること, 血中乳酸値が繰り返し2mmol/L以上」などからミトコンドリア病を疑い, 65歳時に遺伝子検査を提出. tRNA-Leu (UUR) 3243A→G変異を認め, MELASが疑われた. その後, 遷延する低血糖をきたし死亡. 剖検を行ったが, 低血糖の原因となりうる形態的な病変は確認できなかった. 腎臓は廃絶状態であり, 腎不全に至った正確な病変の判定が困難であるが, ミトコンドリア病に関連した腎不全の可能性があると思われた. 心筋, 脈絡叢上皮細胞の電子顕微鏡検査にて, 異常なミトコンドリアの増多を認め, 病理学的にもミトコンドリア病の所見を示していた.
著者
高橋 海 山原 可奈子 伊藤 浩平 岩岡 和博 後藤 雄一 寺山 靖夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001292, (Released:2019-09-28)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

症例は30歳女性.25歳頃から数回にわたり皮質盲症状を呈し近医を受診した.脳梗塞様の画像所見と糖尿病の病歴からミトコンドリア病が疑われたが,血清および髄液乳酸値が正常,筋病理に異常を認めないことから確定診断には至らなかった.30歳時に意識障害と皮質盲症状,頸部および右上肢の不随意運動を呈して当院を受診.頭部MRIで両側大脳基底核の異常信号とMRスペクトロスコピーで乳酸ピークの増大を認め,髄液乳酸値の高値,ミトコンドリア遺伝子解析でm.4296G>A遺伝子変異を認めたことからミトコンドリア脳症と診断した.成人発症のm.4296G>A遺伝子変異の報告は非常に稀であると考え文献的考察を行い報告する.
著者
関,増建
出版者
日本計量史学会
雑誌
計量史研究
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, 2004-12-27
著者
関 増建 加島 潤一郎
出版者
日本計量史学会
雑誌
計量史研究 (ISSN:02867214)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.101-105, 2004
著者
溝上 雅史 杉山 真也
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.67-78, 2012-06-25 (Released:2013-05-09)
参考文献数
84
被引用文献数
2 2

B型肝炎ウイルス(HBV)ワクチンの開発の成功により,本邦では1986年から nation-wide に母 子感染防止事業が始まり,本邦における HBV の主な感染経路であった母児感染予防対策が開始され た.その結果,本邦では25歳以下は世界で最も HBV 持続感染者(HBキャリア)が少ない国の一つ となり,HBV により引き起こされる B 型肝炎は本邦では過去の疾患になったと考えられた.しかし,一方では本邦には今まで存在しなかった新たな HBV genotype A が海外から流入し,従来 よりも感染リスクが増加している.この新たな感染は主に性行為感染症により拡大しており,現在ではこの水平感染が HBV の主な感染経路となっている.また,HBV ワクチン接種者についても,Vaccine induced eacape mutant の有無に関わらず,感染が成立したという事例も報告が続いており,HBs 抗体価をはじめとする HBV ワクチンの効果についても再度見直す必要がある.さらに, 現在頻用されている分子標的治療薬投与により,これまで治癒したと考えられていた HBs 抗原陰性 且つ HBs 抗体陽性者からの再活性化や劇症化が起こることも明らかとなってきた. 以上の事実は,一度でも HBV に感染した場合に一生再活性化のリスクを抱える点や現行の HBV ワクチンの問題点を踏まえて,HBV 感染症と HBV ワクチンのあり方について新たな局面をむかえて いることを示している.
著者
高橋 徹至 遠藤 乙音 古閑 寛
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.100-106, 2020 (Released:2020-03-25)
参考文献数
20

要旨:症例は75 歳,男性.X−1 年11 月,左上肢と両下肢の脱力を呈する脳梗塞で他院入院.退院後も症状再燃を繰り返した.クロピドグレル内服にて経過観察となるも両下肢脱力の進行を認めた.ビタミンB12 欠乏性多発神経炎の診断でビタミンB12 投与されたが症状進行.下肢遠位筋の筋力低下と深部腱反射消失,手袋靴下型の温痛覚障害を認め,女性化乳房,肝脾腫,下肢に色素沈着と浮腫を認めた.POEMS 症候群の疑いにてX 年9 月当院に精査入院.入院数日後に構音障害と左上下肢麻痺出現し,右中大脳動脈領域の梗塞と右中大脳動脈閉塞を認めた.血清VEGF 著明高値,神経伝導検査(以下,NCS)で脱髄および軸索障害の所見を認め,POEMS 症候群と診断した.本症例は当初主幹動脈狭窄を認めなかったが,POEMS 症候群の発症とともに閉塞に至った.POEMS 症候群とビタミンB12 欠乏,脳血管障害との関連を文献的考察含めて報告する.
著者
永田 栄一郎
出版者
日本臨床生理学会
雑誌
日本臨床生理学会雑誌 (ISSN:02867052)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.155-160, 2019-12-01 (Released:2020-03-06)
参考文献数
8

神経免疫疾患は,重症筋無力症,多発性硬化症,ギラン・バレー症候群,慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP),自己免疫性脳炎,多発性筋炎など自己免疫の異常を起こし,中枢神経系および末梢神経に障害を起こす疾患で,その症状は多彩である.中でも末梢神経障害,筋疾患に関しては診断,治療の評価に対して筋電図検査は有用である.ギラン・バレー症候群,CIDP などの末梢神経障害を起こす疾患では,神経伝導速度検査が有用である.CIDP では,運動神経伝導速度では,遠位潜時の延長,伝導速度の遅延,時間的分散や伝導ブロックなどの異常が認められる.また,針筋電図などでも神経原性変化が認められる.多発性筋炎や皮膚筋炎などの筋疾患では針筋電図において筋原性変化を認める.さらに,重症筋無力症は反復刺激試験においてwaning 現象を認め診断の一助となる.神経免疫疾患において,特に電気生理学的検査は診断・治療の上で重要である.

1 0 0 0 OA RS3PE症候群

著者
折口 智樹 有馬 和彦 梅田 雅孝 川㞍 真也 古賀 智裕 岩本 直樹 一瀬 邦弘 玉井 慎美 中村 英樹 川上 純 塚田 敏昭 宮下 賜一郎 溝上 明成 岩永 希 古山 雅子 中島 好一 庄村 史子 荒武 弘一朗 荒牧 俊幸 植木 幸孝 江口 勝美 福田 孝昭
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.48-54, 2019-03-30 (Released:2019-07-03)
参考文献数
16

概念:1985年にMcCartyらは,高齢で急性発症の左右対称性の多発(腱鞘)滑膜炎と手足の背側の浮腫を認める,RS3PE症候群という疾患概念を提唱した.病因・病態:血清Vascular endothelial growth factor(VEGF)濃度の著明な増加が認められ,関節局所の血流増加に関与しているものと考えられる.検査所見:赤血球沈降速度の亢進,CRPの高値を認めるが,リウマトイド因子,抗CCP抗体は陰性である.血清MMP-3濃度が著明に増加する.特に悪性腫瘍を合併した症例の血清MMP-3濃度は高値を示す.手関節の造影MRI検査では,手関節,MCP関節,PIP関節の腱滑膜炎と血流増加を認める.関節超音波検査においても,MRI同様,腱鞘滑膜炎および皮下浮腫の所見が認められる.関節X線画像上変形がないことが,RAとの鑑別に有用である.悪性腫瘍の合併:本疾患は胃癌,大腸癌,肺癌,乳癌,前立腺癌などの腺癌の合併が多いことが明らかになっている.治療:通常プレドニゾロン10~15mg/日の内服で開始する.初期投与量を投与する.通常,ステロイド薬に対する反応は劇的で1~2週以内に寛解に至る.
著者
朝倉 充彦
出版者
東北福祉大学教職課程支援室
雑誌
教職研究
巻号頁・発行日
no.2018, pp.1-11, 2019-03-31

2011年の滋賀県大津市の中学生いじめ自死事件を契機に,いじめ問題への国の取り組みは,いじめ防止対策推進法の制定,いじめ防止のための道徳教育の充実,その具体化としての道徳科の設置,および検定教科書の作成使用というようにすすめられてきた。そして,いじめ問題を主題とする道徳の授業では,弱さを克服しいじめや不正を許さない強い正義感を持つことをねらいとすることが期待されている。文部科学省が作成したいじめ問題を扱った教材「卒業文集最後の二行」を活用した授業では,いじめの被害者加害者の立場について考えることを通して,いじめを止めさせる仲裁者の出現を目指す。しかし,それは容易なことではない。むしろ仲裁を躊躇う弱さを恥じるのではなく,生徒皆が弱さを共有していることを認識し,集団の力でいじめに対峙していくことこそが今求められている。
著者
Tajul Islam Øivind Larsen Nils-Kåre Birkeland
出版者
Japanese Society of Microbial Ecology / Japanese Society of Soil Microbiology / Taiwan Society of Microbial Ecology / Japanese Society of Plant Microbe Interactions / Japanese Society for Extremophiles
雑誌
Microbes and Environments (ISSN:13426311)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.ME20044, 2020 (Released:2020-06-12)
参考文献数
54
被引用文献数
6

A novel cold-adapted methane-oxidizing bacterium, termed TFB, was isolated from the thermoglacial Arctic karst spring, Trollosen, located in the South Spitsbergen National Park (Norway). The source water is cold and extremely low in phosphate and nitrate. The isolate belongs to the Methylovulum genus of gammaproteobacterial methanotrophs, with the closest phylogenetic affiliation with Methylovulum miyakonense and Methylovulum psychrotolerans (96.2 and 96.1% 16S rRNA gene sequence similarities, respectively). TFB is a strict aerobe that only grows in the presence of methane or methanol. It fixes atmospheric nitrogen and contains Type I intracellular membranes. The growth temperature range was 2–22°C, with an optimum at 13–18°C. The functional genes pmoA, mxaF, and nifH were identified by PCR, whereas mmoX and cbbL were not. C16:1ω5c was identified as the major fatty acid constituent, at an amount (>49%) not previously found in any methanotrophs, and is likely to play a major role in cold adaptation. Strain TFB may be regarded as a new psychrotolerant or psychrophilic species within the genus Methylovulum. The recovery of this cold-adapted bacterium from a neutral Arctic thermal spring increases our knowledge of the diversity and adaptation of extremophilic gammaproteobacterial methanotrophs in the candidate family “Methylomonadaceae”.