著者
江口 英利 三森 功士
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究はイベルメクチンがYAP1の阻害により胃癌に対して抗腫瘍効果を有すかを明らかにする。イベルメクチンを胃癌細胞および胃癌マウスモデルに投与すると腫瘍増殖抑制効果を認めた。またその機序として、Hippo経路の転写因子であるYAP1は細胞増殖関連遺伝子であるCTGFを誘導するが、イベルメクチン感受性胃癌細胞においてイベルメクチンの投与によりYAP1 mRNA、核内YAP1蛋白が減少し、CTGFの発現が減弱した。つまり、イベルメクチンはHippo経路のYAP1発現を抑制することにより細胞増殖を抑制しうる。また胃癌症例において、YAP1高発現群は予後不良であった。
著者
小保方 晴子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

再生医療研究において、作製された医療材料の生態親和性を評価することは極めて重要な実験項目である。ヒト細胞を用いた研究においては免疫拒絶反応を回避するため、ヌードマウスを用いた移植実験が多く行われてきた。ヌードマウスにヒト細胞で作成された組織を移植すると、組織再生が促され、比較的長期に生体内で維持されることが多く報告されている。ヒト細胞のヌードマウスへの移植系はヒトへの自家移植系の模擬実験系と認識されている。そのため、ヒト細胞のヌードマウスへの移植結果は、ヒト臨床研究に移行する前の重要な参考データとなっている。本研究課題はこのような組織工学・再生医療研究の歴史を踏まえ、皮下移植後のヒト組織再生を促進させる因子の探索と、ヒト臨床研究に向けて、ヒトへの移植後どのような反応が起こるのかを正確に予測できるような動物実験モデルを構築することを目的として研究を進めている。特別研究員採用期間に行った研究から、再現性の高い皮下移植法を開発し、野生型マウスとヌードマウスの皮下移植後の免疫応答の違いや、汚職組織の組織再生能の違いについての形態学的・遺伝子学的に解析を行い新たな知見を多く見出してきた。また免疫応答をコントロールするため免疫抑制剤で免疫応答を抑制した野生型マウスとヌードマウスの皮下移植後の組織と免疫応答の比較研究も行ってきた。本年度はこれまでの研究成果を論文にまとめ、研究成果から見出された新規の体性幹細胞の研究にも取り組んでいる。
著者
山中 智省
出版者
目白大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、日本の若年層向けエンターテインメント小説の一つであるライトノベルを、「若年層の読者たちを戦略的に獲得することを企図した出版メディア」と捉えた上で、その段階的な発展過程を、メディア論的視座を重視した文化研究の立場から実証的に探っていく。また、以上の調査・分析を通して、ライトノベルがもたらした小説や物語の受容・創作のあり方、ならびに若年層の文学・読書能力や教養の形成状況などを包括的に捉えつつ、現代日本の「文学」に生じた変容/再編の具体相を明らかにする。
著者
坂部 貢 角田 正史 高野 裕久 欅田 尚樹 立道 昌幸 松田 哲也
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

「いわゆる化学物質過敏症」患者を対象として、化学物質曝露と身体症状出現の相関性の有無について、自律神経機能の変動を主としてリアルタイム測定した。また、本症の主症状である「嗅覚過敏」の病態解析について、脳科学的な解析を行った。1)総揮発性有機化合物(TVOC)変動と自律神経機能の変動は、統計学的に強く相関した。しかし、TVOCの変動と自覚症状については相関は認めなかった。2)脳科学的解析では、嗅覚刺激による前頭前野の活動が、本症では対照群に比して活発化していることがわかった。本症は、化学物質の毒性学的影響というよりも、「臭い刺激」が契機となる、心身相関を主体とした状態であることがわかった。
著者
田島 一樹
出版者
横浜市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

高血糖及び小胞体ストレス下におけるメトホルミンの膵β細胞保護作用を検討した。インスリン抵抗性が惹起されない短期間高脂肪食負荷マウスでみられる膵β細胞の代償性増殖は、メトホルミン投与により膵β細胞増殖が抑制された。また、マウス単離膵島において、グルコース誘導性の膵β細胞増殖を抑制、高脂肪食および高血糖下において、AMPKリン酸化を亢進し、mTORシグナルを抑制した。メトホルミンは、小胞体ストレス誘導性の膵β細胞アポトーシスを抑制し、その機序とし、4EBP1を介し、翻訳開始を抑制する可能性が考えられた。メトホルミンは、インスリン抵抗性とは独立して、膵β細胞に保護的に作用している可能性が示唆された。
著者
福水 健次 鈴木 大慈 小林 景
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

H29年度はカーネル法の効率的計算アルゴリズムの課題を中心に研究を遂行した.まず,カーネル法を用いた分布間の距離尺度としてよく用いられる Maximum Mean Discrepancy (MMD)の効率的計算に関して研究を行った.MMDの計算は,そのまま実行するとサンプル数 n に対して O(n^2) の計算量がかかるため大規模なデータに使うことが難しい.これに対し,MMDをU統計量として表現して,データからのランダムサンプリングを行う不完全U統計量の計算を行うと,計算量が削減されるだけでなく,分布の均一性検定の帰無分布が漸近正規性を満たすという非常に良いよい性質を持つことが分かった.この結果に基づいて,MMDの効率計算を従来から研究を行っていた事後選択推論(Post Selection Inference)に応用した論文をまとめて投稿準備を行っている.また,カーネル法を用いた自然言語処理における共起尺度に関して共同研究を行い,低ランク近似の方法を用いることによって比較的少ない計算量で尺度を構築することが可能で,巨大なコーパスからでも学習が可能であることを示した.さらに,カーネル法による分布埋め込みに関するサーベイ論文を出版した.このトピックは本課題においても大きな役割を果たす技術であるが,まとまって書かれた教科書などは存在していなかった.本サーベイ論文は技術を普及するうえで重量な役割を持つと考える.
著者
豊前 太平 (嶋田 太平)
出版者
東京工業大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

【目的】煮込み調裡における食材へのうま味のしみ込み現象は,煮汁中のうま味成分が食材表面から内部へと浸透する物質移動現象である.本研究は,ゆで卵への調味という身近なテーマを題材とし,高校の教育課程では触れることの少ない化学工学(移動現象論)について,入門的な学習機会を創出することを目的とする.ここでは,食材(ゆで卵)への物質移動について,食紅を用いた視覚的評価,および,煮汁中の金属カチオン濃度の定量的評価から考察する.【題材】おでん料理では,事前に作ったゆで卵を,殻を剥いた状態で煮汁に浸して調味する.一方,「味付けゆで卵」と称されるゆで卵は,「殻付き」の状態で味付けを施されたゆで卵であり,味付けに係わる物質移動は,卵殻を介する点で,おでん料理の場合と大きく異なる.本研究では,味付けゆで卵の調味プロセスについて取り上げる.【実験】精製水,市販の硬水(硬度1468mg/L),または,イオン調製水(Mg^<2+>,Ca^<2+>またはNa^+;0.025~0.1mol/L)500mLをビーカーに取り,生卵を投入後,ガスコンロにて加熱した.沸騰から5分経過後に加熱を終了し,すみやかに卵を取り出した.また,精製水または市販の硬水200mLに食紅0.05gを溶解し,その中に加熱後の殻付きのゆで卵を3~24時間浸すことにより,物質移動の視覚的評価を行った.さらに,卵殻に精製水20mLを入れ,75℃に調節したイオン調製水50mL中で所定時間加熱し,卵殻を通した金属カチオンの移動を評価した.金属カチオンの定量には,イオンクロマトグラフィーまたは原子吸光光度計を用いた.【結果】煮汁から卵殻内への金属カチオンの移動は,浸漬時間60分程度では,有意に現れなかった.これは着色による評価でも同様に観察され,白身の着色は,薄くまばらであった.浸漬時間が24時間と長くすることで,卵殻を通した白身の着色は明確になった.
著者
枝川 亜希子
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

大阪府内の水道原水として取水を行っている河川水から、平成17年度に分離・同定したNaegleria spp.、Acanthamoeba spp.について、PCR産物のdirect sequencingを行い、遺伝子解析を行った。分離したNaegleria属180株の遺伝子型解析を行った結果、動物に対し実験的にアメーバ性髄膜脳炎を引き起こすとされるN.australiensis、N.philippinensisなどを含むNaegleria属13種を検出した。分離したAcanthamoeba属74株について遺伝子解析を行った結果、A.castellaniiなど7種を検出した。その系統樹解析を行ったところ、アメーバ角膜潰瘍の原因となるA.castellaniiが属するType4遺伝子群に4株が属していた。さらに、水道水を対象に自由生活性アメーバの分離・同定を行った。建築物内で日常的に使用している蛇口栓(水道水質基準を満たしていることを確認している)から2試料、使用頻度の低い蛇口栓から28試料を採取した。分離・同定は、平成18年度と同様の方法で行った。採取した30試料のうち、20試料(66.7%)から自由生活性アメーバを検出し、Naegleria spp.22株、Vannella spp.2株、その他15株を同定した。日常的に使用している蛇口栓から採取した水道水からは自由生活性アメーバは検出されなかった。Naegleria属については遺伝子型解析を行っている。本研究により、水道原水中に病原性の高い種を含め多種類の自由生活性アメーバが棲息することが明らかとなった。水道水については、使用頻度の低い蛇口栓から採取した試料から自由生活性アメーバが高率に検出され、滞留が原因と考えられる自由生活性アメーバ汚染が示唆された。
著者
浪花 彰彦
出版者
北海道大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

報告者は、無積雪地帯におけるニホンジカの誘引方法について研究するため、市販されている融雪剤三種(塩化ナトリウム・塩化カルシウム・塩化マグネシウム)を誘引剤として用いて、カメラトラップ法によって撮影した写真から、誘引効果が認められるかどうか検証する実験を行った。実験は、和歌山県東牟婁郡古座川町にある、北海道大学和歌山研究林の林内で行った。誘引地点を林内3箇所に設定し、それぞれの地点において、給塩ポイントとして、三種類の融雪剤を2.5kgずつ入れた桶を25m間隔で設置した。またそれぞれの誘引地点に隣接するように、給塩なしの対照ポイントを設定した。それぞれの給塩ポイントおよび対照ポイントには、自動撮影可能な赤外線センサー付デジタルカメラ(Stealth Cam Rogue IR Digital Video Game Scouting Camera)を設置し、撮影範囲に出現する野生動物の撮影を行った。2009年12月から2010年1月にかけて1ヶ月にわたって実施した給塩実験の期間中、センサーカメラを常時作動し、連続撮影を行った。1ヶ月の給塩実験期間中に撮影されたニホンジカの頭数は、延べ185頭であった。対照ポイントでの撮影頭数27頭に対して、三種類の融雪剤を給塩したポイントでの撮影頭数は、塩化ナトリウム(Na),が92頭、 塩化カルシウム(Ca)が21頭、塩化マグネシウム(Mg)が45頭であった。対照ポイントにおける撮影頭数との比を取ると、Na=3.4、Ca=0.8、Mg=1.7となった。さらにNa給塩ポイントで撮影された写真からは、シカが桶から塩を舐め取っていると思われる様子が頻繁に観察された。以上の実験結果から、塩化ナトリウムが、ニホンジカに対して高い誘引性を示すことが明らかになった。市販されている融雪剤三種のうち、最も単価が安いものは塩化ナトリウムであるため、費用対効果の観点からも、塩化ナトリウムがシカの誘引剤としては優れた効果を持つことがわかった。
著者
臼井 将勝
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

魚類寄生甲殻類や食用昆虫など,学術的知識の応用から甲殻類アレルギー患者での交叉反応リスクが懸念されながらも実際に調査されていないものに目を向け,トロポミオシンという共通アレルゲンの存在に焦点を絞って各食品やその調理品に含まれる濃度や含量を明確にするために研究を行った。その結果、魚類口腔内に寄生するウオノエ類とこれらが混入した調理品や食用昆虫等において、エビトロポミオシン様タンパク質が原材料表示義務の生じる濃度を超えて存在することを明らかにした。さらに、キダイ寄生ウオノエ類を例にLC-MS/MS分析によってトロポミオシン様タンパク質が真にトロポミオシンであることを証明した。
著者
河野 公一 織田 行雄 渡辺 美鈴 土手 友太郎 臼田 寛
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

研究総括体内に吸収されたフッ物はそのほとんどが腎臓から排泄されるため、高濃度のフッ素暴露のみならず長期にわたる低濃度のフッ素暴露でも腎障害をきたすことが動物試験により確認された。健常者では尿中フッ素量は生体へのフッ素の負荷量をよく反映し、一般環境からの摂取やフッ化物作業者における暴露の指標として広く用いられている。地域住民を対象とした検診結果および動物試験に、より尿中へのフッ素の排泄は腎でのクリアランスに依存しており、もし腎機能の低下がある場合、例えば慢性腎炎や腎不全の患者のみならず健康な個体でも中高齢化とともにフッ素の排泄障害と体内への蓄積が示唆されることが確認された。腎フッ素クリアランス値はクレアチニンクリアランス値に比べて40歳台までは比較的穏やかな減少傾向にとどまるが50歳台以降では急激な低下を認めた。さらに動物を用いたフッ化ナトリウム負荷試験ではフッ素クリアランスが低下し血中フッ素濃度が高く維持されること成績を得た。体内に吸収されたフッ素はその大半が24時間以内に排泄されるが、この排泄率は腎機能の低下とともに減少し、もし腎フッ素クリアランス値が20%低下すればフッ素の24時間における排泄率も20%減少することが確認された。わが国でも増加しつつある腎透析患者では血中フッ素濃度が高く維持され、アルミニウムなどの他の元素とともに骨や脳の病変とのかかわりから問題とされてきた。最近では透析液の脱イオン化などによりこれらの疑問は解消されたとする報告がみられる。しかし本研究の成績より、現在一般に使用されている透析膜自体の性格などから血中フッ素は十分に除去しえず、これらの問題は解消されたとする根拠が得られなかった。近年、わが国の産業界では作業者の中高齢化が急速に進みつつある。このような状況においてフッ物などの有害物を長期にわたって取り扱う作業者が今後さらに増加することが予想される。したがってこれら作業者の健康管理の基準はそれぞれの作業環境において個々の作業者の加齢による腎機能の低下などの生理的状態を考慮した上で評価することが強く望まれる。
著者
櫛引 美代子 工藤 優子
出版者
弘前学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

乳房緊満に対するキャベツ葉湿布の冷却効果について検証することを目的に、キャベツ葉を用いて、同意を得られた20歳代非妊娠成人女性34名、褥婦3名を対象にキャベツ葉冷湿布実験を行い、湿布剤貼付部位の温度、血流測定を行った。非妊娠女性のキャベツ葉冷湿布では皮膚表面平均温度は5分後に1.3℃下降し、15分後まで有意に下降した。30分後から皮膚表面平均温度は上昇傾向が認められた。褥婦の場合、キャベツ葉冷湿布5分後にいずれも急速に皮膚表面温度が下降し、10~25分後より徐々に上昇した。乳房例では冷湿布開始時に血流が低値であったが、徐々に血流の増加が認められた。キャベツ葉冷湿布は緩徐な冷却効果が示唆された。
著者
佐藤 純 稲垣 秀晃 楠井 まゆ 戸田 真弓
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

臨床実験:天気の悪化で疼痛の増強を示す天気痛被験者に対して、40hPa分の低気圧暴露を行うと痛みの増強と交感神経興奮,さらに鼓膜温を上昇させた.2015年3月~2018年6月に当科外来を受診した天気痛患者53名について問診調査を行った.受診患者は女性が多く,痛みに加えて,不安・抑うつはそれほど高くないが,破局化思考が高い傾向にあった。動物実験:野性型マウスに-40 hPa分の低気圧暴露を行うと,上前庭神経核におけるc-fos陽性細胞数(すなわち神経細胞の興奮)が有意に増加することが明らかとなり,半規管あるいは球形嚢に気圧を感知する部位が存在することが示唆された.
著者
石幡 浩志 庄司 茂 島内 英俊
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は齲蝕等の病変および補綴学的要求により、歯科学的術式によって歯の歯髄が除去された状態、すなわち失活歯の内部に生ずる歯髄腔内に、微小な無線通信媒体を設置し、これに内蔵したセンサーによって生体内情報を計測する基本的手法を確立することである。今年度は動物(犬)を用い、実際に歯内に無線通信媒体(RFID)を埋設し、埋設した装置と実際の通信が可能であるかどうかを検証した上、その耐久性と生体に対する安全性を評価し、さらにこれらの手法を実際の生体計測に利用するための具体例を提示した。まず、生体内に設置した無線ICタグ通信媒体との通信を想定し、制御を実施するために用いる電波として、硬組織および軟組織を同時に透過しうる短波領域を用いた。この帯域をカバーするRFIDチップ(ISO/IEC15693 chip 13.56MHz : SRF55V10S, Infineon Technologies)をもとに無線ICタグを顕微鏡下にて製作した。ビーグル犬の右側犬歯を抜髄、根管充填を実施したのち、試作ICタグを根管内に埋設した。リーダー(FPRH100, 500mW, Feig, Weilburg, Germany)と試作ICタグとの通信距離は口腔内への設置前で30mm、設置後はおよそ25mmであり、短波領域では、軟組織、硬組織を通じて生体が著明なバリアーとはならなかったことが示された。一方で、埋設された通信媒体は一両日後には機能を停止した。口腔内にRFID等の無線通信媒体を設置する手法は確立したと思われるが、これを長期にわたって運用するには埋設する無線通信媒体に高度の耐久性を備える必要があると思われる。口腔内に設置した無線通信媒体を用いた生体計測として、温度、pH、圧力等を利用することが挙げられる。本研究では、歯周外科治療の歯周組織の治癒および組織再生を促すための術後におけるリハビリテーションを効果的に行うために、これら無線ICタグを生体内に設置する方法が有意義であると考え、実際に生体にレーザー照射による物理的刺激を加えた際の生体反応をシミュレーションし、生体内に設置した計測システムの利用法を模索した。その結果、生体に可視短波長領域(緑色)レーザー照射実施すると、抗アポトーシス効果が生ずることが明らかとなった。すなわち、歯周治療における組織の細胞死を抑止する手法としてのレーザー照射が有用であり、その際、歯周組織生体に対するレーザー光の照射量を正確に計測する方法およびその後の組織反応を経時的に把握するため、無線通信媒体を歯周組織内に設置する手法が有用であると思われた。
著者
森 伸子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

腎臓病を自然発症した猫に対するAIMの臨床研究を実施した。初年度は、臨床試験の立ち上げとプレ臨床試験、2年目は、AIM濃度と最適な投与法の検証のための臨床試験、3年目は、腎臓病猫2群に対するAIMの用量の違いによる効果を検証を行った。これらの試験の結果から、AIMの効果と反応マーカーとして有望な項目が、より明確化され、数値の改善だけでなく、QOLの改善も見られ、食欲向上、活動性の復活などの報告も受けた。一方、AIMの投与によっても、変化が見られない猫や途中離脱を希望する場合もあり、さらなる投与法や、AIM形状の改善なども併せて検討していく必要性を感じた。
著者
鵜飼 熊太郎 鈴木 洋一郎 仁木 和昭 高野 元信
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

素粒子・原子核実験では、大量のデータ(〜1TB)を処理する必要がある。通常汎用大型計算機のテープ装置は、オープン・リール型又はカセット型である。これらのテープ媒体で1TBのデータは、5千本以上のテープとなり、その保管場所及びテープの取り扱いが問題となる。またワークステーションの標準的テープ媒体である、Exabyteテープは1本で2.5〜5GBの容量があるが、データ転送速度は500KB/秒と遅く大量データの扱いには問題が多い。このためExbyteテープと同じヘリカル・スキャン方式の、VHSテープを使用した汎用計算機用のテープシステムを構築した。VHSテープは、1本で14.5GBの容量を持ち、公称データ転送速度は2MB/秒で、外部機器との接続はSCSI(Small Computer System Interface)規格である。東京大学原子核研究所の汎用大型計算機(FACOM M-780/10s)にVHSテープ装置を接続してマス・ストレージ・システムとすることを行った。汎用計算機のBMC(Block Multiplexer Channel)とVHSテープ装置のSCSIを接続するために、汎用計算機用インタフェースをティアック社で制作した。次いで各種のテストを実施した。FORTRANプログラムによる、VHSテープのwrite処理は1.7MB/秒、read処理は1.1MB/秒で、オープン・リール型テープよりも高性能である。VHSテープ用に変更したARCSプログラム(ディスク装置上のデータを退避・復元・複写・移行を高速に行うプログラム)による原子核研究所計算機システムのバックアップ(容量8.3GB)作業は、完全に無人状態で1台のVHS装置で約80分で終了した。通常この作業は4台のカセット型テープ装置と30本のテープを使用して、必要なテープを装着・脱着することにより30分程度の時間がかかる。このようにVHSテープ装置が、汎用機用の大容量テープ、マス・ストレージ・システムとして非常に有効であること実証した。
著者
関根 嘉香
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

ヒト皮膚から放散される微量生体ガス(皮膚ガス)は体臭の原因となり、他者の快・不快感に影響することがある。一方、自分の皮膚ガスによって周囲の人がアレルギー様症状を発症すると主訴する人たちが存在する。このような現象・症状はPATM(People Allergic To Me)と呼ばれ、科学的・医学的には未解明であった。本研究では、PATM主訴者に特徴的な皮膚ガスの種類・放散量を明らかにすることを目的に、パッシブ・フラックス・サンプラー法による皮膚ガス測定を行った。その結果、PATM主訴者の皮膚ガス組成には健常者と異なる特徴があり、臭気を伴いながら他者に刺激を与える成分が存在することがわかった。
著者
北村 紗衣
出版者
武蔵大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は16世紀末から21世紀初頭までの英国を主な対象とし、近世イングランド演劇の上演史上、男性の美や性的魅力がどのようにとらえられ、またその受容にどのような変化があったのかを問うものである。ウィリアム・シェイクスピアやクリストファー・マーロウなどの劇作家が活躍していた近世から現在のウェストエンドにいたるまで、男性スターの魅力は集客上の大きなポイントであったと考えられる。戯曲テクスト、上演史、批評史に関する調査を通して、近世イングランド演劇の上演において男性の美や性的魅力に対する考え方はどのように変遷してきたかを明らかにしたい。
著者
藤井 聡 高野 裕久 宮沢 孝幸 川端 祐一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究では新型コロナウイルス感染症等に関するデータを用いて、以下の3要素を含む被害・対策効果予測モデルを構築する。(1)社会経済活動の制限やマスク着用等の行動変容が、健康・経済被害に与える影響(2)医療資源や保健体制への財政投資による健康・経済被害の低下(3)東京一極集中を緩和し国土構造を分散化することによる健康・経済被害の低減これらを統合したモデルシステムを用いて、公衆免疫強靭化対策効果の定量予測を行うとともに、パンデミック発生下における最適な行動指針の策定手法を提案する。