著者
大賀 正一 野村 明彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

伝染性単核症(IM)の原因であるEpstein-Barrウイルス(EBV)は、免疫不全時に再活性化しB細胞リンパ腫/リンパ増殖性疾患(LPD)を、またT/NK細胞に感染して慢性活動性EBV感染症(CAEBV)や血球貪食症候群(HLH)などのリンパ網内系疾患を発症する。EBVがT細胞に感染したCAEBVやHLHは予後不良なEBV^+T-cell LPDである。私たちはCAEBV患児のT細胞活性化とoligoclonal増殖を明らかにし、活性化T細胞にEBVコピー数が多いこと、この細胞群のサイトカイン発現に異常のあることを明らかにした。このことはCAEBVにおける活性化T細胞の増殖が反応性というより、腫瘍化段階(clonal evolution)である可能性を示唆する。また、移植後LPDの発症予測に末梢血のEBV-DNA定量が有用であることも明らかにした。1)CAEBV-T細胞におけるEBV量とサイトカイン発現患児の末梢血よりcDNAを作成して、T細胞抗原受容体Vβ,Jβ領域遺伝子を用いたinverse PCR法により、T細胞レパートアを解析しoligoclonal増殖を明らかにした。このT細胞をCell Sorter(EPICS-XL)によりHLA-DR陽性(活性化)と陰性(非活性化)群に分画しDNAとRNA(cDNA)を作成した。DNAを用いてEBV-DNAの、cDNAを用いてサイトカインmRNAの発現量をreal-time PCR(TaqMan)により定量した。活性化T細胞はEBV量が多く、Th1(IFNγ,IL-2)/Th2(IL-10,TGF-β)いずれのサイトカインも高発現していた。2)EBV^+T/B-LPDにおけるEBV-DNAモニタリングの有用性EBV-DNA定量(全血)が移植後B-LPDおよびCAEBV(T-LPD)の発症と病勢の指標になることを証明した。
著者
高橋 保 内田 安三 内田 安三 佐分利 正彦 高橋 保
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

ルテニウムの配位不飽和な活性種である5配位錯体[RuH(P-P)_2]PF_6を種々の2座配位子を用いて合成し挙動を調べたところ次のようなことがわかった。この5配位錯体は溶液中では完全にフリ-な5配位では存在せず、何らかの配位を伴っている。ホスフィンのキレ-ト環が大きくなるにつれて、錯体構造はアゴスティック相互作用を有する安定なシス体へ移行していくと考えられる。またホスフィンとしてdppbを用いたとき、アルゴン下、窒素下、水素下のNMRの比較より、この錯体のホスフィンに結合しているフェニル基のオルト位の水素がルテニウムに配位するアゴスティック相互作用は、窒素や溶媒の配位よりは強く、水素の配位よりは弱いことが明かとなった。さらにdppfを配位子とする場合、この配位子のかさ高さのためにシス体の構造をとっている。これはX線構造解析により明らかとした。この錯体に配位する水素分子はハイドライドHと等価となりトリハイドライド錯体になっていると考えられる。一方ジルコニウムについては活性種をジルコノセンジアルキルから系中で定量的に発生させたところジルコニウムII価のオレフィン錯体であることがわかった。このオレフィンをスチルベンに替えX線構造解析により構造を決定した。さらにこのオレフィン錯体と他のオレフィンとをジルコニウム上で反応させたところ位置選択率99%以上、立体選択率99%以上という高選択性の炭素炭素結合生成反応の開発に成功した。さらにこの反応構の詳細な検討からジルコナあるいはハフナシクロペンタン化合物のβ、γ-炭素炭素結合が活性されること、さらにα位にメチル基のようなアルキル基をもつ場合、この置換基を選択的にβ位に移動させるこれまでにない新しい反応の開発に成功した。
著者
藤井 亮輔
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

全国の成人男女2,000人に訪問調査を行った(有効回答率68.1%)。その結果、調査日直近の1ヵ月以内に鍼灸を受けている者(月間鍼灸受療者)の割合は2.2%(受療回数:4.6±3.7回/月)で、このうちの鍼灸単独受療者の割合は0.8%だった。また、年内に鍼灸受療を経験した者(脱落者)は7.3%(同4.2±5.6回/年)で、うち鍼灸単独受療者の割合は3.6%と推計された。一方、調査日直近の1ヵ月以内に按摩を受けている者(月間按摩受療者)の割合は5.3%(同6.2±7.3回/月)、うち按摩単独受療者の割合は3.9%だった。また、年内に按摩受療を経験した者(脱落者)は15.5%(同5.8±8.9回/年)、うち按摩単独受療者の割合は11.0%と推計された。
著者
辰己砂 昌弘 松田 厚範 忠永 清治 南 努
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、メカニカルミリング(MM)法により得られる非晶質微粒子を熱処理することにより、高イオン伝導性結晶を析出させた新しいタイプの固体電解質ガラスセラミックス材料を創製することを目的としている。2年間で得られた主な成果は以下の通りである。(1)MMによるLi_2S-P_2S_5系、Li_2S-P_2S_5-SiS_2系およびLi_2S-P_2S_5-GeS_2系非晶質固体電解質材料の合成を試みた。その結果、何れの系でも広い組成域でガラスが得られた。これらのガラスは室温において10^<-4>Scm<-1>程度の高い導電率を示した。(2)上記(1)で作製したガラスを様々な条件で熱処理することにより、室温での導電率が10^<-3>Scm^<-1>付近の極めて高い導電率を有するガラスセラミックスが得られた。(3)上記(2)で得られたガラスセラミックス中には、現在室温で最も高い導電率を示すLi_<4-x>Ge_<1-x>PxS_4系チオリシコン結晶と類似の結晶がいずれも生成しており、これが高い導電率の得られる要因であることを見出した。(4)Li_2S、単体リン、単体イオウを出発原料として、Li_2S-P_2S_5系ガラスおよびガラスセラミックスの合成をMM法により試みたところ、熱的・電気的性質においてLi_2SとP_2S_5から作製したものとほぼ同等の生成物が得られた。(5)MM法によって得られたLi_2S-P_2S_5系ガラスセラミックスを固体電解質とし、負極にIn金属、正極にLiCoO_2を用いて全固体二次電池を試作し特性を評価した。その結果、初期数サイクルの不可逆容量が大きいものの、初期充電を容量規制で行うことによって放電容量が増大し、200サイクル経過後も放電容量約100mAhg^<-1>、充放電効率ほぼ100%の極めてサイクル特性に優れた全固体電池が得られた。
著者
長嶋 雲兵
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

本年度は研究計画に従い、プログラミング環境と先に作成したプログラムの改良を行った。それにともない、ポテンシャル関数を決定するための断熱ポテンシャルを計算するための分子軌道計算のパラメータの決定を行った。断熱ポテンシャルを求める際の分子軌道法のパラメータは、全電子エネルギーを計算する際の基底関数と電子相関の取扱い方である。計算方法は、多配置参照配置間相互作用(MRSDCI)であり、用いた基底関数はダニングらの基底関数をDZにまとめ分極関数を加えた物(DZP)およびTZにまとめ分極関数を加えた物(TZP)である。軌道数は二酸化炭素2分子あたり60(DZP)と120(DZP)である。多配置参照関数の選び方は、重要な参照配置の候補が見あたらないので、まずHF電子配置1つを参照関数としてSRSDCIを行い、そこで0.05以上の大きな係数を持つ電子配置を参照配置としてえらぶ。そしてそれらをもちいてさらにMRSDCIを行い、そこで0.05以上の係数を持つ電子配置を参照電子配置に加えると言う方法である。HF配置を参照関数として用いたSDCIを行うと0.05以上の係数を持つ電子配置が1つ現れるが、それを参照関数に加えたMRSDCIを行うとそれの係数が小さくなると言う事を示している。TZP基底関数を用いた計算では、HF電子配置を参照関数としたSDCIの結果はHF電子配置が0.9以上の係数をもつのみで、それ以上の配置は全て0.03以下となった。HFとMRSDCIでは若干傾きが違うが、MRSDCIとデービッドソンの補正を加えた物はほぼ同じ傾向を示し、さらに計算方法が同じ物どうしではDZPもTZPもほぼ平行であった。さらに基底関数の改良に加えデービッドソンコレクションや自然軌道反復を行なった結果得られた断熱ポテンシャルは、常識的に精度の良い方法を取っても核間距離の近いところでは断熱ポテンシャル局面の曲率など、DZPを用いたMRSDCIの断熱ポテンシャルの形状とあまりかわらない結果が得られた。
著者
菅野 了次 園山 範之 米村 雅雄 田村 和久 山田 淳夫 鳥飼 直也 小林 弘典 山田 淳夫 小林 弘典 鳥飼 直也
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究課題では,新規なイオニクスデバイスの開発を目的として,新規材料開発と新規反応開拓を目指した.全くのブラックボックスである電気化学界面での反応挙動の解明のためにモデル電極を開発し,電気化学界面での反応の詳細が明らかにできるようにしたことが,本研究の大きな成果である.また,最高のイオン導電特性を示す固体電解質材料にたいする純理学的な知見は,今後の材料開発の指針を示すものである.
著者
村田 一郎 加藤 照之 柳沢 道夫 長沢 工 土屋 淳 石井 紘
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1986

1.受信機の改良国産のGPS相対測位用受信機の開発が本研究の目的の一点であった。L1単波受信機としては、すでに昨年度完成していたが、測定精度向上のため、L1、L2の2波受信が可能となるよう改良を施した。L2波搬送波再生方式として、Pコード解読形を採用したので、好S/N比が得られた。この受信方式を採用した機種は米国に1機種あるだけで、特色ある国産受信機が製作されたことになる。ただし、受信チャンネルが8本と限定されたため、同時受信可能衛星数は4個ということになった。完成は今年度秋期であったが、データ解析処理ソフトウェアが未だ途中段階であること、さらに、GPS事情の激変のため、労力を外国製受信機の対応に取られ、現在までのところ、本確的な運用までには至らず、文京区地震研究所と三鷹国立天文台との間で試験観測を続けている。2.試作受信機による観測三浦・房総両半島を結ぶ基線網において、1987年06月と88年02月の2回試験観測を実行した。6月の観測については、昨年度報告済みであるが、2月の観測については、データ処理に時間的な余裕がなく、報告できなかったので、ここに結果の一部を記しておく。下表は基線長を前回の結果と比較したもので、10kmの距離を1cmの精度で計測するという研究当初の目的の一つを達成したものと判断できる。基 線 基線長(m) 前回との差(cm)間口ー野比 7813 2.9 1.0野比ー鋸山 12154 -1.2鋸山ー間口 13730 1.2また、対国立天文台基線(20km)を使い、外国製GPS受信機と並行観測を継続中で、この結果も含めた総合研究報告を現在作成中である。
著者
海老原 修
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

平成11年12月〜平成13年1月に実施したアンケート調査「運動部顧問の指導信条に関する調査」の追跡調査を実施した。平成14年12月〜平成15年1月にかけて、高等学校運動部顧問552名、中学校顧問314名の合計866名を対象に郵送調査を実施した。前回と今回2回の調査にともに回答された対象者は294名であり、第1回調査に回答されないが第2回調査にのみ回答された対象者は167名で461名の回答を得た。また、アンケート調査実施に際しては、神奈川県教育庁、神奈川県高等学校体育連盟、中等学校体育連盟より、調査票作成や郵送法の配布・回収方法、および県内学校運動部の問題点について意見を交換した。さらに、同じような学校運動部と地域スポーツの関係に課題をかかえる地域の専門家とのヒアリングや意見交換を重ねた。すでに、アソシエーションとコミュニティを対比して運動部とスポーツ活動の関係性の限界を予測し(2000)、総合型地域スポーツクラブ、民間フィットネスクラブ、企業スポーツクラブ、学校運動部の4機関から、2機関または3機関が合同でクラブを形成することが現実的対応と提言したが、学校運動部の変化は、この提言に沿った形で変化している。このように抜本的な運動部活動の在り方を模索する事態を迎えたとき、先に指摘した4機関の合併にともなう外部指導者導入が運動部存続の活路のように思えるが、ヒアリング調査やアンケート調査からは、顧問教師の指導信条に著しい変化は認められず、指導者の指導信条が多様化する子どもたちのニーズに追いつけない事態を危倶する。今後は外部指導者の指導信条を知り、学校運動顧問のそれと比較することが必須の作業となる。
著者
光延 真哉
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成21年度は次の1~3の論文を発表し、4の口頭発表を行った。なお、1と2は昨年度(平成20年度)内に投稿、受理されたものであり、その概要については昨年度の報告書に記載したためここでは省略する。1.「『春世界艶麗曽我』二番目後日考」(『国語と国文学』86巻6号、2009年6月)2.「歌舞伎役者の墳墓資料」(『演劇研究会会報』35号、2009年6月)3.「スペンサーコレクション所蔵『風流ぶたい顔』について」(『国文学研究資料館平成21年度研究成果報告<見立て・やつし>の総合研究プロジェクト報告書』5号、2010年2月)4.「東京都立中央図書館加賀文庫所蔵『役者とんだ茶釜」について」(歌舞伎学会秋季大会、2009年12月12日、於鶴見大学)3はニューヨーク公共図書館(The New York Public Library)のスペンサーコレクション(The Spencer Collection)所蔵の黒本『風流ぶたい顔』(延享2年刊ヵ)、4は東京都立中央図書館加賀文庫所蔵の名物評判記『役者とんだ茶釜』(明和7年成立、何笠著)を新たに紹介したものである。前者は「三段謎」の形式で江戸の歌舞伎役者40人を採り上げた作品、後者は鐘元撞後掾という架空の一座で上演された『菅原伝授手習鑑』の評判を記した作品であり、いずれも本研究が対象とする近世中期の江戸における、歌舞伎の享受の在り方を示す好資料である。また、今年度は、昨年度、東京大学大学院に提出した博士論文をもとにし、笠間書院から刊行予定の単著『江戸歌舞伎作者の研究-金井三笑から鶴屋南北へ-(仮題)』の原稿執筆を行った。いずれの論考にも大幅な加筆訂正を施しているが、特に研究課題の一つとなっている初代金井由輔について、その事績を新たにまとめて増補したほか、従来活字化されていなかった金井三笑作『卯しく存曽我』の台帳の翻刻を掲載する予定である。
著者
谷澤 俊弘 増田 直紀
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

次数による選択的ノード除去に対する強相関複雑ネットワーク上のパーコレーション転移を記述する解析的表式を導出し,その表式を用いてスケール・フリー・ネットワークの選択的ノード除去に対する脆弱性を著しく改善するネットワーク構造を見つけることができた。この構造はほぼ同じ次数を持つノード同士が結合し,さらにそれらの同次数ネットワークがゆるやかに相互結合するという独特な階層構造を持っている。その他にも,囚人のジレンマゲームにおいて協力者同士が形成するクラスターがパーコレーション転移を起こすことなどを含む有益な結果を数多く得ることができた。
著者
阿部 晶子 稲葉 大輔 岸 光男 相澤 文恵 米満 正美
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

う蝕原性細菌であるミュータンスレンサ球菌は生後19か月から31か月の間に主な養育者が母親である場合、母親を由来として児に定着すると報告されている。しかしながら,我が国における定着時期についての調査は少ない。そこで我々は岩手県平泉町において生後3か月時点から,児のミュータンスレンサ球菌の検出,母親の唾液中ミュータンスレンサ球菌数,齲蝕の発生および育児習慣について追跡調査を行い,これらの関連について検討中である。今回は、2歳6か月時にう蝕の認められた児と、う蝕の認められなかった児について1歳時、1歳6か月時、2歳6か月時の各時期における育児状況のアンケート結果およびミュータンスレンサ球菌の検出状況、母親の唾液中ミュータンスレンサ球菌数との関連について比較検討を行った。その結果、2歳6か月児のう蝕有病者率は21.1%、一人平均df歯数は0.93本であった。2歳6か月時におけるう蝕発症の関連要因を知る目的で、2歳6か月時のう蝕の有無を目的変数としてロジスティック回帰分析を行った結果、1歳時における哺乳瓶による含糖飲料の摂取,大人との食器の共有,2歳6か月時における毎日の仕上げ磨きの有無、1歳時および1歳6か月時におけるミュータンスレンサ球菌の検出状況が有意な関連要因であった。また、ミュータンスレンサ球菌の検出時期と2歳6か月時におけるう蝕発症との関連をみてみると、1歳時からミュータンスレンサ球菌が検出された児は、2歳6か月時に初めてミュータンスレンサ球菌が検出された児に比較して有意に高いう蝕発症率を示した。今回の調査結果から、児の口腔内のシュクロースの存在がミュータンスレンサ球菌の早期定着を促し、その早朝定着がう蝕発症要因の一つであることが示唆された。
著者
渡邉 正樹
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は,学校を中心とした効果的な歯科健康教育プログラムの開発を目指して、子どもたちの口腔保健行動の実態を明らかにし,家庭や地域との連携のありかたを検討することにある。まず最初に,現在の日本における学校歯科健康教育の実態を総括し,問題点を明らかにした.つづいて,小学生の口腔保健行動の特徴と関連要因に関する調査結果について報告した.その概要は次のとおりである.口腔保健行動には,歯口清掃行動,摂食行動,受診受療行動があり,それらには性差と共に学年ごとの特徴ある変化があるため,それぞれ別々に考えていく必要がある.歯口清掃行動は,学年が上がるにつれ,適切な行動がとれるようになる.摂食行動と受診受療行動は,学年が上がるにつれ,適切な行動がとれなくなってくる.口腔保健行動は,男子より女子の方が適切な行動がとれるという傾向がある.また口腔保健に関する自己効力・態度・意欲からも女子の方が積極性に取り組もうとする傾向がみられる.ここではさらに学年に応じた歯科健康教育の達成課題についても明らかにした.その次に養護教諭を対象とした歯科保健指導の問題点に関する調査の結果について報告した.その中で,地域・家庭・学校との連携が不可欠であること,しかし実際には多くの障害があることなどを明らかにした。特に家庭との連携の困難さは深刻であった.これらの結果に基づいて最後に,米国の包括的学校保健プログラムを参考に,新たな包括的学校歯科健康教育プログラムの提示を試みた。
著者
杉本 貴人 福谷 祐賢 佐々木 一夫
出版者
福井医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、家族性アルツハイマー病(AD)のアミロイド前駆体蛋白717遺伝子変異(APP717)6例とプレセニリン1遺伝子変異(PS-1)7例、非家族性ADでアポリボ蛋白E(Apo-E)E4対立遺伝子の保有個数が異なる例(計33例)、正常対照6例で、海馬皮質亜野での神経細胞脱落と神経原線維変化(NFT)形成を定量的に解析し、これらの遺伝子変異と神経細胞死との関連について検討した。方法は海馬前額断でKluver-Barrera染色とGallyas-HE染色を行い、海馬体をCA4,CA3,CA2,CA1,subiculumの5亜野に分けて観察し、NFTを有しない核小体の明瞭な神経細胞、核小体が明瞭な神経細胞内の原線維変化(i-NFT)神経外原線維変化(e-NFT)の密度を測定し、罹病期間、神経細胞脱落の程度、神経原線維変化の程度との関連を調査した。その結果、APP717例ではCA2とCA1において非家族例よりもNFT形成が高度で罹病期間での有意差がなく、この部位ではAPP717遺伝子変異がNFT形成に強く影響していることが示唆された。PS-1例では、CA3とCA2、CA1で対照例や非家族性例よりも神経細胞脱落が強くNFT形成も高度で、PS-1がi-NFT(NFTを持ちながら生存している神経細胞)からe-NFT(神経細胞死)への過程に関与している可能性が示唆された。またApoE E4対立遺伝子ではCA2以外においてNFT形成に関与があり、特にCA1で強いことが示された。CA2は正常加齢ではNFTがもっとも出現しにくく、ADのNFTにもっとも脆弱性のある部位と指摘されている。本研究でもCA2はApo-E E4の影響をうけにくい部位であることが示され、CA2におけるNFT形成は特別な状況でAPPやPS-1遺伝子変異と関連をもっている可能性が示唆された。
著者
川勝 忍 大谷 浩一 和田 正 奥山 直行
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.レビー小体型痴呆28例とアルツハイマー型痴呆49例、正常対照30例について、XE-133吸入法シングルフォトンエミッションCT (SPECT)により局所脳血流量を測定した。平均脳血流量はDLBではADや対照と比較して有意に低下していた。脳萎縮の程度はアルツハイマー型痴呆と差がないことから、レビー小体型痴呆においては、網様体賦活系など脳幹機能の障害と関連して大脳皮質の血流が低下している可能性が考えられた。部位的には、アルツハイマー型痴呆では側頭頭頂葉の低下がみられるのに対して、レビー小体型痴呆では側頭頭頂葉に加えて、後頭葉での有意な局所脳血流量低下を認めた点が特徴的であった。これは、幻視の出現との関係が推測された。2.次に、アポリポ蛋白E多型について検討し、ε4アリルの頻度は、対照0.07、アルツハイマー型痴呆0.25、レビー小体型痴呆0.17であり、アルツハイマー型痴呆では有意に高く、従来の報告と一致していた。また、レビー小体型痴呆では有意ではないが高い傾向がみられた。これは、レビー小体型痴呆の多くで老人斑アミロイド沈着が広範囲に認められることと考え合わせると、アミロイド沈着促進の遺伝的危険因子であるアポリポ蛋白Eε4が、アルツハイマー型痴呆の場合と同様に、レビー小体型痴呆でも作用している可能性が考えられた。なお、対象のなかレビー小体型痴呆1例については剖検により診断を確定した。3.以上より、レビー小体型痴呆は、画像所見およびアポリポ蛋白E多型からみた遺伝的危険因子において、アルツハイマー型痴呆と共通する病態を有する疾患であることが推察された。
著者
児玉 安正 佐藤 尚毅 二宮 洸三 川村 隆一 二宮 洸三 川村 隆一 吉兼 隆生
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

亜熱帯域には3つの顕著な降水帯(亜熱帯収束帯)があり,梅雨前線帯はそのひとつである.本研究では,各収束帯の生成メカニズムについて研究した.SACZ(南大西洋収束帯)について,ブラジル高原の影響をデータ解析と数値実験の両面から調べた.亜熱帯ジェット気流の役割に関連して,ジェット気流に伴う対流圏中層の暖気移流と降水の関係を論じたSampe and Xie(2010)仮説が梅雨前線帯だけでなく,SACZとSPCZ(南太平洋収束帯)にも当てはまることを示した.梅雨前線帯が南半球の収束帯に比べて向きや緯度が異なることについて,黒潮の影響を論じた.
著者
白木 洋平
出版者
立正大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では東京都周辺域を研究対象地域,1997年から2006年までの夏季12時から18時までを研究対象期間とし,東京都周辺域における熱環境の違いが対流性降雨の頻度に与える影響について相関分析による統計的評価を行った.次に,研究対象地域内にて最も都市が発展している東京都に着目し,熱環境の他に建物パラメータを加えて再度相関分析を行った.
著者
城崎 知至
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

レーザー核融合では、固体の数千倍に爆縮した高密度プラズマの一部を点火温度まで加熱し、そこから生じる核融合燃焼波が残りの低温高密度燃料へと伝搬することで爆発的な燃焼が行われる。本科研研究においては、核燃焼シミュレーションにおいて重要な高エネルギー粒子によるエネルギー輸送を精密に解く輸送-流体結合コードを開発し、これを用いて点火・燃焼過程の詳細解析を行った。
著者
武田 篤志
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

本年度は、戦前に構成された「杜の都・仙台」の呼称とそれに相関する場所イメージが、終戦以降どのように変容したのかという点に留意しながら、仙台をめぐるローカルアイデンティティの現代的諸相について社会学的に明らかにした。まず、戦前の観光案内書や郷土書で流通していた「杜の都」の呼称が、昭和に入ると仙台をモチーフにした流行歌に用いられ、歌声の経験として場所の記憶となる局面に準目し、戦前に人気を博したレコード曲「ミス仙台」と戦後の仙台を表象する「青葉城恋唄」を取り上げ、両作品の歌詞に描かれた仙台像の比較分析から仙台の場所イメージの変容を明らかにした(その成果は『仙台都市研究』第3巻に論文発表)。加えて、仙台市の戦災復興事業に関与し、主に戦後仙台の緑地行政に従事してきた行政関係者OBへの聞き取り調査をおこない、「杜の都」の呼称が仙台市行政のシンボルとなっていった経緯についてオラールヒストリーをまとめた(その成果は、これまでの諸論文のなかで適宜活用している)。また、東北都市学会編『東北都市事典』(仙台共同印刷)の執筆依頼を受けたのを機に、戦前から戦後・現在にいたる「杜の都」の場所イメージの変化を通時的に概括した(武田担当項目:「杜の都」)。さらに、理論的研究として、近年再評価が進んでいるフランスの都市社会学者、アンリ・ルフェーヴルの空間生産論とその派生的議論を取り上げ、現在の都市社会学で注目されてきている「場所の社会学」論議への道筋を明らかにするとともに、その先駆的な研究として、英国の社会学者、ロブ・シールズの社会空間化論を検討した(その成果は『社会学年報』第33号に論文発表)。
著者
國井 勝
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

アンサンブルデータ同化手法に基づく観測データインパクト評価手法を用いて過去の台風事例でデータ同化に利用された観測データのインパクトを定量的に評価し,台風予測精度向上に効果のあった観測データを抽出することで,統計的に台風予測精度向上に最適な観測手法を推定した.結果として,大気中下層の観測データが台風予測精度向上により大きく寄与することが分かった.
著者
磯部 祥尚
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、並行システムの設計を支援するため、モデル検査器のように自動的に、かつ定理証明器のように記号的にそのシステムの動作を解析するツールの開発を目標として、(1)定理証明器の証明自動化と(2)モデル検査器の記号処理化の二つの側面から研究を行った。前者の(1)については、並行動作の理論CSPに基づく定理証明器CSP-Proverにモデル検査の自動検査アルゴリズムを実装し、証明自動化の可能性を示した。後者の(2)については、並行システムの構造や各プロセスの動作から、そのシステム全体の動作を記号処理によって自動解析する方法を提案し、その方法を解析ツールCONPASUとして実装した。例えばCONPASUは、無限状態の並行システムから、その動作を理解するために有益な記号ラベル付き状態遷移図を自動生成することができる。