著者
木村 純二 岡田 安芸子 吉田 真樹 朴 倍暎 岡田 安芸子 吉田 真樹
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、西洋の哲学が理性主義的な人間観を基調としているのに対して、日本では伝統的に人間を感情的存在として捉えていることを鑑み、日本人の情念の理解について、仏教や儒教・神道・文芸作品等の思想潮流の全体に渡って総合的に考察しようと試みたものである。その際、『源氏物語』を一つの焦点とすることで、体系的連関のある研究にまとめることに心掛けている。本研究の最も主要な成果は、学術雑誌『季刊日本思想史』第80号に6本の論文として掲載される。
著者
中村 仁彦 山根 克 高野 渉 神永 拓
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

人間の身体と運動の記号モデルと自然言語モデルを接続することによって,世界や他者の理解を行い,それに基づいて自己の行動を決定する計算システムを構築した.人類の祖先がたどったものとは異なる経路をたどって,まだきわめて限られてはいるが, われわれが世界や他者を理解するのと類似の方法をロボットが獲得した瞬間である. これを再帰的に行うことによって, 他者の行動決定のモデルを推論する自己のモデルを推論するなど,いわゆる「こころの問題」に接近することができる.この過程で,人間の深部身体感覚や神経活動の推論の計算基盤を構築し,これらをヒューマノイドロボットへ実装するために,カに敏感なアクチュエータと駆動系,外乱の機敏に反応して随時にステップを変更する歩行制御系を開発した.
著者
太田 ひろみ
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.101-104, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

都市部の合計特殊出生率は全国平均より低く,特に東京都は全国でも最低の数値にとどまっている。都市部の出生率が低いことの背景には,現代の子育てをめぐる特徴的な課題が存在することが考えられる。都市部の子育てをめぐる課題として1.家族形態の変化,2.地域のつながりの希薄化,3.女性の社会参加などの要因が存在する。大学が行う子育て支援活動として,地域のニーズに応じた大学だからこそ可能な独自性のある支援を行うことが期待されている。大学が有する物的・人的資源を開放し提供することや,地域住民や当事者を含む地域資源との協働や連携のシステムを構築することなどが子育て支援活動として可能であろう。
著者
蛭田 健司 乾 伸雄 小谷 善行
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.99-100, 1997-03-12

一般に詰め将棋のルーチンでは、王が詰んだ局面か、王手がかからなくなる局面まで先読みを進める。しかし、王手がかかっでいる局面において、王側が、適切な王手回避の着手を選ぶことによって次の王手がかからなくなるということを示すことができれば、その局面が不詰みであることがいえる。この場合そこで先読みを打ち切ることができるので、探索ノード数の減少が期待できる。本稿では、王手がかかっている局面において、次の一手によって王手がかからなくなるような着手 (一手逃れ) が存在するかどうかを、先読みをしないで判定する方法について考察する。
著者
井上 和生 都築 巧 大貫 宏一郎 都築 巧 大貫 宏一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

マウスにおいて軽度の運動負荷によって引き起こされ、自発行動量の低下で示される疲労が回復する過程を経時的に測定し、疲労度を評価する系を確立した。この評価系が摂取した物質により抗疲労・疲労回復作用を持つもの、および疲労を促進するものの両方を検出できることを行動する動機に影響する薬物で確認した。この系でグルコース、クエン酸の直前摂取が、またホエータンパク質の慢性摂取が疲労の軽減作用を持つことを示唆した。
著者
大庭 真人 佐治 伸郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

養育者が子どもに対し「その時・その場」で目の前にある参照対象を物語る際、その対象が安定してそこにある/いるとは限らない。養育者が当初想定し語り始めた通りに参照対象が存在する場合、養育者は自らの語りかけを子どもの発話に合わせ、響鳴(resonance, 崎田2010)という先行する子どもの発話を自分の発話に取り込む文型を多用することにより参照対象への言及が観察された。一方、参照対象が存在しない場合には、参照対象を強く想起させるきっかけとなる対象に基づき発話を展開するという方略が取られていた。
著者
泉田 英雄
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

第一は個々の歴史的建造物の修理修復手法の調査と提案に関して、1)石巻市指定文化財「天雄寺観音堂」の修理計画作成から現地復原監修までを行い、2015年5月に竣工式を執り行うことができた。2)石巻市指定文化財「旧日本ハリストス正教会石巻聖堂」及び「観慶丸」の修理計画・工事に関して、石巻市近代建築修理活用調査研究委員会委員長として、修理計画と工事手法などをとりまとめた。3)気仙沼市内湾地区の登録文化財6棟の修理工事監修に関して、小野健商店土蔵は修理計画作成から工事監修まで行い、2015年度で修理工事を完了させた。角星酒造店舗は2016年半ばに完成予定である。第二は歴史的住環境の調査と修理修復再生手法の提案であり、1)石巻市長面浦の神山家修理と尾崎集落の再生のために、実測調査と修理計画作成を行った。2016年度は、この漁村の再生と一緒に事業構想を練らなければならない。2)気仙沼市旧市街地の歴史的建造物の調査に関して、三陸沿岸の歴史的都市の中で、気仙沼市の旧市街地は内湾地区を除くと津波被害から唯一よく残ったところで、現存建物の調査を行った。第三は歴史文化的資源の調査に関して、1)壁材としての凝灰岩と屋根葺き材としての天然スレートの調査を行った。仙台湾沿岸に産する凝灰岩を使った建築物の構造と設計手法に関して考察を行った。引き続き、天然スレートの使用例、施工方法などの調査を行った。2)気仙大工と左官の技術の解明に関して、石巻市の遠藤家の実測調査を通して、建築技術と設計手法に関する視点を明らかにした。柱寸法が1本1本異なり、他の建具が流用できないことは驚きであった。気仙大工が活躍した場所にはすぐれた意匠の土蔵が見られることから、気仙の大工と左官は密接な関係があったと考えられる。所属大学からの支援が得られないことから本研究事業の継続は断念するが、2年間でやり残した課題は退職後も継続していく。
著者
山本 政幸 ジェームズ モズリー ルース クリブ 指 昭博 後藤 吉郎 吉田 公子
出版者
多摩美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、20世紀イギリスにおける近代的なグラフィックデザインの形成プロセスの一端を、タイポグラフィの視点から明らかにすることである。とくに1920年代後半から30年代にかけて流行した幾何学的な構造をもつ新しいサンセリフ体活字の設計手法に注目し、イギリスでこの活字書体を発展させたエドワード・ジョンストン(Edward Johnston, 1872-1944)とエリック・ギル(Eric Gill, 1882-1940)の制作活動を把握し、背後にあった造形思想の実態を探った。両者が継承したアーツ&クラフツ運動の精神性が、機械化と大量生産に対応してゆく独自のデザイン観に至る経過をたどり、イギリスにおけるモダン・タイポグラフィの発達に貢献したことを確認した。
著者
横山 諒一
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

神経経済学の研究遂行のため,私は2つのアプローチを行ってきた.それは,機能的MRI(fMRI)を用いた脳活動の評価と,MRI構造画像を用いた脳構造の検討である.その成果として,購買意思決定に関わる神経基盤について,筆頭著者として論文を執筆し,国際学会誌に2本公刊された.また,国内外で学会発表を行い,複数のトラベルアワードを受賞した.また,上記の研究成果により,東北大学医学系研究科辛酉優秀学生賞の受賞や,博士課程の短縮終了(半年)を達成した.さらに,共同研究にも積極的に参加し,共著として9本の論文が国際学会誌に公刊された.博士課程2年次には,カリフォルニア大学バークレー校に留学し,最新の神経経済学の知見を習得と共に,米国での人材ネットワークを築いた.留学後も,スタンフォード大学に短期訪問をし,研究発表などを行うことで,自身の研究について世界トップレベルの研究者からフィードバックを得た.したがって,研究の達成状況は良好であると考えられる.
著者
Kanako ISHIHARA Mieko SAITO Natsumi SHIMOKUBO Yasukazu MURAMATSU Shigeki MAETANI Yutaka TAMURA
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.14-0119, (Released:2014-10-05)
被引用文献数
1

Veterinary staff carrying methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) can be a source of MRSA infection in animals. To identify risk factors of MRSA carriage among veterinary staff, MRSA carriage and epidemiological information (sex, career, contact with MRSA-identified animal patients and others) were analyzed from 96 veterinarians and 70 veterinary technicians working at 71 private veterinary clinics in Japan. Univariate analysis determined sex (percentage of MRSA carriage, male (29.2%) vs. female (10.0%); P=0.002) and career (veterinarians (22.9%) vs. veterinary technicians (10.0%); P=0.030) as risk factors. Multivariable analysis revealed that sex was independently associated with MRSA carriage (adjusted odds ratio, 3.717; 95% confidence interval, 1.555–8.889; P=0.003). Therefore, male veterinary staff had a higher risk of MRSA carriage than female staff.
著者
服部 良久 青谷 秀紀 朝治 啓三 小林 功 小山 啓子 櫻井 康人 渋谷 聡 図師 宣忠 高田 京比子 田中 俊之 轟木 広太郎 中村 敦子 中堀 博司 西岡 健司 根津 由喜夫 藤井 真生 皆川 卓 山田 雅彦 山辺 規子 渡邊 伸 高田 良太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

23人の研究分担者が国内外の研究協力者と共に、中・近世ヨーロッパのほぼ全域にわたり、帝国、王国、領邦、都市と都市国家、地方(農村)共同体、教会組織における、紛争と紛争解決を重要な局面とするコミュニケーションのプロセスを、そうした領域・組織・政治体の統合・秩序と不可分の、あるいは相互関係にある事象として比較しつつ明らかにした。ここで扱ったコミュニケーションとは、紛争当事者の和解交渉から、君主宮廷や都市空間における儀礼的、象徴的な行為による合意形成やアイデンティティ形成など、様々なメディアを用いたインタラクティヴな行為を包括している。
著者
今井 久美子
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2006-03-23

新制・課程博士
著者
Yuichi Tashiro Tsuneo Yamazaki Shun Nagamine Yuji Mizuno Adachi Yoshiki Koichi Okamoto
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.53, no.19, pp.2245-2250, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
14
被引用文献数
9

We herein describe a case of a 38-year-old man with familial hemiplegic migraine with a T666M mutation in the electrical potential-dependent calcium ion channel (CACNA1A) gene. His migraine was accompanied by hemiparesis and impaired consciousness. Brain magnetic resonance imaging revealed abnormalities in the right cortical hemisphere. Single-photon emission computed tomography demonstrated a decrease in iomazenil uptake and an increase in 99mTc-ethyl cysteinate dimer uptake at the ipsilateral site. Positron emission tomography showed a decrease in 18F-fluorodeoxyglucose uptake in the same area, which later showed atrophic changes. The patient's brain atrophy ceased after treatment with sodium valproate. This case suggests that the progression of brain atrophy can be prevented with adequate prophylaxis.
著者
小島 郷子
出版者
高知大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

学校教育における金銭教育の実態を把握するための、中学校・高等学校の教員を対象としたアンケート調査結果の分析をとおして、学校教育における金銭教育の今日的課題と家庭科教育の役割を明らかにするために研究を行った。その結果、中学校・高校の7割の教員が金銭教育の実践経験を持っており、中学校においては、道徳や特別活動での実践が多く、高校では家庭と社会での実践が多くみられた。さらに、実践経験がない教員の理由の分析からも、中学校教員は金銭教育を教科指導と捉えていないことがわかった。目標の分析からは、全体的に情意的な目標が重視される傾向がみられた。教育内容については、情意的な内容は家庭教育の役割で、認知的な内容は学校教育の課題であるとの認識を持っていた。金銭や金融への関心では、関連書物の購読状況は悪く、研究会や講演会などの研修の機会もほとんどなかった。このことは、教員の意識面の改革のみならず、講座や講演会、さらには研究会を増やすなどのハード面の改革も重要な課題である。自由記述による子どもの金銭感覚・金銭教育観については、物が豊富にある社会背景と親から金銭を自由に与えられ、金銭を得るための労働経験がないことが当然になっている生活環境の中で、望ましい金銭感覚を身につけることが困難な状況にあることが浮き彫りになった。高校生については、自由に個人の価値観を優先させ、その欲求を満たすためには手段を選ばない、自己中心的な消費行動があらわれていた。以上の結果から、学校教育における金銭教育の在り方を探るためには、まず、金銭教育を担う教育主体が、各主体ごとの役割を明確化することが必要である。本来家庭教育の役割である情意的領域の教育を学校教育が担っている現状を少しでも改善するために、家庭教育における情意的な教育の充実を保護者に対して働きかけることが必要である。そして、学校教育においては、金銭に関わる認知的な学習を実践しなければならない。金銭教育研究指定校における、金銭教育プロジェクト研究などにおいても教科指導の時間、特に家庭科と社会科の時間数を確保し、両教科で金銭に関わる認知的な学習を保証していかなければならない。2002年度からの新教育課程においては、小学校家庭科から「金銭の記録」が、中学校家庭科から「契約」の内容がそれぞれ削除されることになっている。現行と比較して、さらに認知的な学習の機会が減少することになる。今日のようなカード社会、キャッシュレス社会に必要な教育は金銭に関わる認知的学習であり、金銭を管理する能力の育成である。義務教育の早い時期から始め、発達段階に応じた系統的な教育を行うことが金銭教育の今日的課題であり、家庭科は一教科としてその役割を果たすためにも、家庭経済の中での金銭に関する教育を、金銭の機能や働きといった金銭知識、金銭管理能力という視点から見直し、認知的領域の学習を取り入れていかなければならない。
著者
山口 弘誠 井上 実 本間 基寛
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

雨の音色を工学的に計測し、雨の音色と従来の降雨情報の関係性を明らかにした。1)雨の音色、および従来の降雨情報の観測: 京都大学防災研究所屋上に機器を設置して、雨滴一粒ごとの粒径と落下速度、風速、降雨強度をそれぞれ計測した。さらに、運転する車の中で集音器を設置し、計測を行い、周囲の環境が雨音とどのように関係するかに関しても解析を進めた。2)雨の音色と従来の降雨情報との関係性の解明: 上記の観測データを用いて、従来の降雨情報の関係性の何が周波数に影響するかについて、基礎解析を行った。その結果、雨滴の粒径の代表粒径(中心値)と雨音の強度に強い相関が見られた。