著者
杉澤 武俊
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.150-159, 1999-06-30
被引用文献数
2

日本でなされている教育心理学の研究では, 統計的検定によって有意な結果が得られる確率(検定力)はどのくらいであろうか。本研究では, 1992年から1996年までに発行された『教育心理学研究』に掲載されている論文で用いられている検定について調査し, ある特定の大きさの母集団効果量(小・中・大)が存在するときに, その研究で用いられた大きさの標本によって有意な結果が得られる確率を求めた。その結果, 対象となった論文の60%は中効果量を検出できる確率さえ.8にも満たないことがわかった。実験的方法を用いることが多い認知的側面を扱った研究は, 調査による研究を行うことの多い情緒的側面を扱った研究に比べて, 同一の母集団効果量に対する検定力が低くなっていた。また, 帰無仮説を研究仮説とした場合は, 特に高い検定力が必要であるにもかかわらず, 有意でない結果をもって仮説を支持できるほど検定力が高いとはいえなかった。また, 標本効果量を算出し, Cohen(1992)の効果量の基準の見直しを試みた。一部基準が不適切であるようにも考えられるものがみられたり, 研究領域や研究方法によって異なった基準を用いるべきであることを示唆する結果が得られたが, この点に関しては今後更なる検討が必要である。さらに, 標本効果量と標本の大きさの関係について分析した結果, 研究者は検定力を明確に意識こそしていないが, 効果量の小さいものに対しては標本を大きくして検定力を高めていることが示唆された。検定力は日本ではほとんど問題とされてこなかったが, 統計的検定が分析の中心となっている以上, もっと検定力に目をむけていかなければならない。
著者
安藤 彰男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学
巻号頁・発行日
vol.102, no.419, pp.37-38, 2002-10-23

本稿では、音声認識を利用した2つのリアルタイム字幕制作システムを紹介する。1つは、ニュース番組を対象とした字幕制作システムである。このシステムでは、番組中のアナウンサーの声をリアルタイムで認識し、認識結果中の認識誤りを即座に人手で修正して、字幕原稿を制作する。もう1つは、バラエティ番組やスポーツ中継を対象とした字幕制作システムである。こちらでは、番組中の音声を直接認識するのではなく、リスピークと呼ばれる方式をベースとしている。NHKでは、ニュース用字幕制作システムを利用して、2000年3月27日から、毎日ニュース番組の字幕放送を実施している。また、リスピークに基づくシステムを用いて、2001年12月31日の紅白歌合戦、2002年2月のソルトレークシティオリンピックなどの字幕放送を実施した。
著者
須佐 雄輝 小泉 直也 上間 裕二 常盤 拓司 杉本 麻樹 稲見 昌彦
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告 エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.24, pp.1-6, 2011-03-19

パーソナルファブリケーションに代表されるような,個人の手によって行う創造活動が増えている.その結果,食分野においても,「キャラ弁」 などの文化が生まれてきた.そこで,食品による創造活動に着目し,菓子による造形のワークショップを開き,観察を行った.その観察から 「菓子組み」 の価値を見つけ出し,その実現に必要となる機能を抽出した.それらをシステムの設計指針として菓子組みを支援する造形アプリケーションの開発を行った.It has become popular to do creative work by one's own hands, for example a culture known as "Personal Fabrication". As a result, in the field of food, it has also burn a culture that creates "Characterized" lunch boxes. Therefore, we focused on the creative works of food, and held a creative workshop using sweets, then we observed it. From the observation, we discovered a value of "Sweets Assemblance", and we extracted features to realize the sweets as-semblance. we regarded them as a design guide, and we developed a sweets assemblance support application.
著者
村山 和之
出版者
インド音楽研究会
雑誌
インド音楽研究 (ISSN:0915793X)
巻号頁・発行日
no.5, pp.4-34, 1995
著者
長瀧 寛之
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.3, pp.1-8, 2010-07-03

本稿は,著者が現在岡山大学にて開講中の授業科目 「テレビゲームからみる情報科学概論」 の実践についてその概要と現在までの実践結果を報告するものである.本科目は学部 1,2 年生を対象とした教養教育科目であり,工学系の知識に馴染みが薄い学生も履修生となり得る.そのため,情報科学の学問的側面を直感的に伝える方法として,テレビゲームを具体例として多用する講義スタイルを考えた.現在進行中の科目であるが,アンケート結果からは,情報科学への興味や学習意欲の向上について学部を問わず好意的な反応が得られている.This paper presents an abstract of "Introduction to Computer Science through video games", an introductory course of computer science for liberal arts. This course provides students with basic knowledge of computer science through many examples of video games. This course is designed for students who are interested in video games or computer science. This is an on-going class of 2010 liberal arts at Okayama University. Many students attending the class evaluate that connecting computer science with video games helps them to understand computer science easily.
著者
堀内 勇作 名取 良太
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.21-32, 2007-03

1994年に衆議院議員選挙(以下,衆院選)制度改革が実施された当時,小選挙区制の導入によって二大政党制(少なくとも選挙区レベルでは2人の有力候補者が議席を争う状況)の実現が,将来的に期待された.しかし4回の選挙を経験した現在においても,小選挙区における有効候補者数は必ずしも2へと収束していない.先行研究においては,その要因を解明する上で,新しく導入された選挙制度が比例代表制を並立させた制度であることの戦略的帰結に焦点を当ててきた.これに対して本論文では,地方レベルにおける選挙制度の効果に焦点を当てる.都道府県議会議員選挙(以下,県議選)では,定数1〜18の単記非移譲型選挙制度が採用されている.このため,地域によっては衆院選の選挙区と県議選の選挙区の定数の間に不均一が生じることになる.衆議院議員と都道府県議会議員の戦略的相互関係を仮定する限り,この不均一は,衆院選の小選挙区における政党間(候補者間)競争に影響を及ぼすであろう.具体的には,県議選の選挙区定数が多いほど県議選の有効候補者数が多くなり,その結果,衆院選の有効候補者数も増加すると考えられる.本論文では,同仮説を演繹的に導出した上で,衆院選の選挙区別集計データを用いて同仮説の妥当性を検証する.
著者
樫原 裕大 清水 裕基 三好 健文 吉永 努 入江 英嗣
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.7, pp.1-8, 2011-11-17
被引用文献数
1

日常で歩行は何気なく行われている.しかし,何も考えずにに歩いていると知らない内に悪い癖がつき,身体に様々な問題が起こる可能性がある.これらの問題は姿勢を意識することで予防・改善することができる.そこで本稿では,スマートフォンに内蔵されている加速度センサを用いて歩行分析を行うことで,歩行時に良い姿勢を意識させるアプリケーションを検討・開発した.これにより,歩行中に悪い姿勢であったときに警報音が鳴り,常に正しい姿勢を使用者に意識させることが可能となった.Although walking is a daily natural action, it might cause many body issues by bad habits of the action unconsciously. Such issues are preventable by consideration good gait. To help this, an application is implemented, which analyzes gait by acceleration sensors embedded in smart phones. The application alarms when bad gait is detected to make user conscious of own gait.
著者
伊東 明彦 小林 由美子 杉原 正泰
出版者
日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.5-10, 1989-02-20
被引用文献数
1

The significance of depth of score, the kinds of binders and granules for compression on dividing of scored tablets was investigated. Scored tablets with the rate of depth of score per thickness varying with 10, 20 and 30% were prepared using hydroxypropylcellulose (HPC), potato starch, acacia and gelatin as binder and sieved granules in three particle sizes and no sieved granules as granules for compression. Dividing strength of the scored tablets decreased with an increase in depth of score and was affected by the kinds of binders. Weight variation of the divided tablets was the smallest on the tablet of 30% depth of score prepared from sieved granules irrespective of the kinds of binders and physical characteristics of granules. However, when the rate of depth was lower than 20%, the weight variation of the divided tablets was affected by the kinds of binders and physical characteristics of the granules. With 20% depth of score, tablets using potato starch and gelatin as binder showed little weight variation. In case of the 10%, tablets using potato starch and granules of 16-32 mesh showed better results. Tablets prepared with non-sieved granules showed effect of particle size distribution of granules on weight variation of divided tablets even in the case of the 30% depth.
著者
田村 征洋 黒岩 祥太
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-19, 2009-12

2005年9月11日の衆議院総選挙における自民党圧勝の要因は何か.本論文では『人々にとって最も好ましい公共政策とは何か,その傾向はどのように有権者の政党支持や選挙に於ける投票に影響しているのか』を計量的に位置付けることを考え,政策に対する有権者意識に関する基礎的知見を得る為に,政策全般に対する有権者の選好傾向を調査・分析した.具体的には,政策全般へのコンジョイント分析を用いる.従来の5段階評価などは政党(全体)評価と個々の政策(個別)評価の関係を定量化することが困難であり,「軽い負担で手厚いサービス」という安直な結果に陥りやすい.現実は各政策を個別に評価(投票)するのではなく政党単位(政策の組合せ)で評価する.従って,全体評価から部分(要因)価値を定量化するコンジョイント分析は有効な手法であろう.結果は野党が掲げる理想的な政策(公共事業費の大幅な削減や消費税の現状維持,年金の一元化など)の効用値は高くなるものの政党単位で見た場合(各党の掲げる政策に近い水準を当てはめた場合)では有権者の政策に対する選好傾向にバラツキが生じ,今回の選挙結果を裏付ける有効な知見を得た.