著者
清野 健
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

1.非ガウス型の確率過程の数理生体信号や経済指標などのゆらぎは裾の厚い非ガウス型の確率分布を示し、粗視化スケールの拡大に伴って非常にゆっくりとガウス分布に近づくものがある。本研究では、そのような確率過程を特徴づけるため、発達乱流のモデルであるCastaingの分布関数に用いた解析法を提案した。さらに、非ガウス分布に従うランダムウォークを仮定することでゆらぎに含まれる高次相関を特徴付ける解析法も提案した。これらの方法を心拍変動の解析に応用することにより、健常人心拍変動にみられる確率分布の非ガウス性やスケール不変性といった新たな特徴を見出した。そのようなスケール不変性と強い相関をもったゆらぎは、連続相転移が起きる臨界点においてしばしば観測されていることから、非平衡系における臨界現象と健常人心拍変動の類似性に注目した研究を進めた。2.心拍変動の動的相転移健常人の心拍変動を示す長時間相関やマルチフラクタル性に基づいて、心拍変動と臨界現象の関連性が議論されてきた。また、平常の身体活動の範囲(睡眠時を含む)では、そのような性質はほとんど変化しないことが報告されている。しかし、健常人の心臓循環系の状態が臨界点近傍にあるということに機能的意味があり、適切な生体制御と臨界現象が関連しているならば、身体活動の状態によっては健常人であってもゆらぎのせ異質が変わることが期待される。この点を検証するため、健常人の心拍変動の性質と活動状態の関係について調べた。日常活動中、睡眠中、持久的運動中の3つの状態において測定された心拍変動時系列の解析を行い、長時間相関が睡眠中と持久的運動中には消失することを見出した。また、これまで調べてこなかった非ガウス性や局所分散の相関についても新たな解析法を導入し、その特徴を各条件で比較した。解析の結果、心拍ゆらぎ性質は活動状態依存して変化しており、強く相関したゆらぎは覚醒時の日常活動中にしか現れないことを見出した。
著者
林 農 神近 牧男 若 良二 原 豊 田川 公太朗 河村 哲也 山田 廣也
出版者
鳥取大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
2000

本研究は、世界各地の乾燥地で運転可能な風車と風力発電を開発することを目的として着手した。得られた研究業績の多くは、その取り組みの容易さから、サボニウス風車と直線翼垂直軸風車の数値シミュレーションにまず成果を得た。風車の性能試験は風洞実験施設の設計と建設に時間を必要としたこと、新技術風車もまた設計と試作に時間を必要としたので多くの研究業績を得るまでには至らなかった。この研究期間の内に挙げることができた研究業績は次のように分類することができる。(1)直接研究:サボニウス風車、垂直軸風車の数値シミュレーション、風洞実験など(2)関連研究:(a)沙漠に関する研究(b)風力発電に関する研究:(i)風況精査に関する研究(ii)風車の要素技術に関する研究本研究のために開発した風洞は、風車研究用風洞として世界に稀な特性を有する風洞である。すなわち、動翼ピッチ可変式の軸流送風機により定常風のほかに自然風のように時間とともに風速が変動する風を吹かせられる風洞であり、脈動風、突風、瞬間風の3種類の変動風パターンを発生することができる。この科学研究費補助金は地域連携を推進するための助成金であるので、地域の産学官連携に携わる人達、鳥取大学と共同研究を望む人達、流体力学の分野で活躍する研究者達、風力発電を事業化しようとする自治体の人達など、鳥取大学を訪れる多くの人達に沙漠環境風洞を見学する機会を提供した。さらに、本研究費の趣旨に則って、地域の企業との産学連携を積極的に推進するために多くの共同研究を受け入れ、鳥取県、NEDOや企業などからの委託研究も積極的に受け入れた。さらに、本研究は、最終年・平成14年度に文部科学省の21世紀COEプログラムに採択された鳥取大学「乾燥地科学プログラム」の自然エネルギーグループに研究が引き継がれる幸運が重なることになった。したがって、地域連携推進研究費で設計し試作した新技術風車は、その風車の改良を含めて、乾燥地科学プログラムのなかで、詳細な特性試験と再設計を繰り返して完成品へと導かれることになる。
著者
木津 祐子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、中国の規範言語とみなされてきた「官話」が、中国とその周縁地域においていかなる位相を呈していたかを、琉球を手がかりに明らかにしようとするものである。研究は以下の点から実施した。(1)明清期の琉球で、誰が「官話」を用いたか、(2)各使用者がどのように「官話」を用いたか、(3)その「官話」位相にどのような特徴が見えるか。基礎となる史料は、沖縄県立博物館、県立図書館、さらに石垣市立八重山博物館などで収集し、次の成果をあげることが出来た。(a)八重山士族の家譜は、官話による記事を多く含む。その多くは、中国人及び琉球人の黄海での漂流を、極めて特徴ある文体で綴ったものであった。その中でも最大の収穫は、中国江蘇省通州の商人姚恆順の陳述書を付す家譜の発見で、乾隆年間の官話学習とその使用を探る大きな手がかりとなった。(b)沖縄県立図書館には、官話で記されたイギリス聖公会の宣教師ベッテルハイムと琉球の通事(中国語通訳)間の書簡が所蔵され、官話や日本語などの語学学習について論じた内容も含まれる。(c)琉球から中国に漂着した難民の呈文(沖縄県立博物館や八重山博物館、また琉球大学の所蔵)には、中国の役人(通事を介す)との訊問の会話記録など、興味深い記事が見られた。これらの「官話」に関する諸史料は、中国東南海域に位置する琉球列島に、「官話」が境界を超えて広く受容され、かつ多様な受容形態を見せていたことを示す。まさに境界を超える「境界性中国語」(vehicle language)として、「官話」は単に規範言語であっただけではなく、口頭また書記の場でも、現実的なコミュニケーションツールであったことが見て取れる。このように、八重山という琉球のさらなる周縁での事例から、「官話」の境界言語としての一側面を明らかにすることができた。
著者
河野 勝泰 富澤 一郎
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

この研究では、地上(電気通信大学及び附属菅平宇宙電波研究所)での、日、季節変化による自然及び宇宙放射線量の観測、観測データ相当の地上放射線照射によるLSIなどデバイスの損傷実験と評価、宇宙放射線検出デバイスの開発と評価を行ない、耐放射線性能の高いデバイスの開発を目的としている。このような地上の放射線や宇宙線を利用して、引き下げ法で自作したシンチレータ用結晶の比較評価を行い、耐高エネルギー宇宙線用シンチレータの開発の基礎をつくることを目指した。既存のMCA(マルチチャネル放射線分析器)と、別の検出プローブを用いて、当研究室で自作したテストシンチレーター結晶(CaF_2:Eu及びGd、濃度0.2-9.85mol%)を取り付けて観測し、スペクトルの検出能力、分解能(線幅による評価)を、標準のNaI:Tlシンチレーションプローブの測定結果と比較した。実際には、昨年度KMgF_3を用いて検出を試みていたシンチレーション発光がプローブの低感度領域であったことを教訓に,希土類EuとGdをドープして,その広幅のf-d発光を長波長領域にシフトさせることを目指した。結果は、作成した全ての単結晶の発光バンドが十分プローブの分光感度ピーク(420nm)に近い領域に入り、標準γ線源(^<137>Cs)とMCAによる放射線計数スペクトルから正確に評価が可能となった。コバルト60γ線源((財)産業創造研を利用)を用いた光子数測定実験から、Eu(0.2mol%)の結晶で61,163photons/cm^3の高い値を得た。得られた関連の成果は、宇宙開発事業団(NASDA)及び日本原子力研究所(JAERI)が後援する"第5回宇宙用半導体デバイスに及ぼす放射線効果国際ワークショップ"(於 高崎)及び"半導体の放射線照射効果"研究会(豊田工大)において発表し多数の宇宙放射線研究者の興味をひいた。
著者
板倉 光夫 井上 寛 森谷 眞紀 国香 清 棚橋 俊仁
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

多遺伝子性疾患の疾患感受性座位を探索する遺伝統計学手法として、患者/健常者を対象とした関連解析、および連鎖不平衡解析が多く用いられる。我々は、異なる人種で疾患感受性が報告されている候補座位に対し『遺伝子領域に配置した等間隔・高アレル頻度SNPsをマーカーとして用いる2段階絞り込み関連解析法』を独自に開発し、日本人の2型糖尿病(T2D)の疾患感受性遺伝子を探索し、遺伝統計学的に3番染色体上に新規疾患感受性候補遺伝子(ENDOGL1)を見出だした. 糖尿病発症に係わる機序を探索した結果、1)ENDOGL1遺伝子は膵β細胞に高発現し糖尿病の病態で発現が増加すること、2)ENDOGL1タンパクはミトコンドリアに局在すること、3)200mgの量ポリクローナル抗体精製に成功したこと、4)DNA/RNA nucleaseファミリーのEndo G遺伝子(アポトーシス刺激によりDNAの断片化を引き起こす)と約40%のホモロジーを持つ本遺伝子の発現が、アポトーシス誘導時に増加すること、さらに、5)ERストレスにより本遺伝子の発現量が増加することを見出だした。作製した抗体を用いて糖代謝、アポトーシスに及ぼす影響を継続して検討中である。
著者
平田 孝道
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

申請備品である直流電源装置、温度調整器、電子天秤が納入されてから、C_<60>プラズマに関する実験を行った。その結果、以下に述べる結果を得ている。(1)接触電離カリウムプラズマへのC_<60>導入量(昇華用オ-ブンへのC_<60>塗布量)とC_<60>プラズマ生成時間の一部定量化を行った。さらにC_<60>の昇華温度を微調整することによって長寿命かつ安定したC_<60>プラズマの生成・制御が可能になった。(2)プラズマ中の終端電極に取り付けたオメガトロン型質量分析器により、C_<60>プラズマ中のイオン種の分析を行った結果、K^+、C_<60>^-イオンの検出に成功した。さらにオメガトロンの入射、背面及び側面電極へ印加する直流バイアス電圧の微調整によって、高感度かつ高精度のイオン種分析が可能になり、C_<60>^-イオン信号と負イオン交換率との相関関係が明らかになった。(3)C_<60>プラズマ中にシリコン及びガラス基板を設置し、基板バイアスに対するC_<60>プラズマ膜の電気伝導度変化を調べた結果、10^<-2>〜10^<+6>(Ω・cm)の広範囲にわたって膜の電気伝導度を制御することに成功した。また基板バイアスによってC_<60>とカリウムの入射比率を自由に制御することにより、特異な性質を有する膜を生成させることも可能になった。この結果に関しては、赤外吸収分光法による光学的測定及びX線回折による結晶性分析などとの定性的一致を得ている。今後の研究展開としては、高真空かつ強磁場中でのイオン種の“その場"測定及び成膜実験を考えている。
著者
松井 孝典
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,組織を取り巻く様々な環境リスクにおいて,従前の生活環境リスクに加えて,今後顕在化が予測される自然環境・地球環境リスクを包括的に管理する実践活動を支援することを目的とした知識モデルとナレッジベースの開発を行い,システムの実装と広く社会への公開を実行した。
著者
浅田 匡 野嶋 栄一郎 魚崎 祐子 佐古 秀一 淵上 克義 佐古 秀一 淵上 克義
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、次の4つのアプローチを行なった。教師の認知に関する研究に関しては、教師の認知と子どもの認知とのズレは学習方略、思考内容・思考過程などにおいて大きいことが明らかになった。単元開発に関する研究に関しては、単元開発の進め方(相互作用)によって教師の学びに差があることが示された。校内・園内研修に関する研究に関しては、校内研究は必ずしも教師の成長・発達におよびカリキュラム開発に関する知識創造が生起していないことが示された。また、校内研究が十全に機能するためには、継続的な記録、互いが心理的に支え合う文化(風土)、プライマリーグループの存在、組織へのコミットメントが関連することが示唆された。メンタリングに関しては、徒弟的関係に基づくメンタリングが行われ、心理社会的機能が重視されていることが明らかになった。
著者
浅山 信一郎
出版者
国立天文台
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、マイクロマシニング導波管を用いたTHz帯超電導サイドバンド分離ミクサの開発を行なっている。サイドバンド分離ミクサに必要不可欠な導波管型90度ハイブリッドカプラーは櫛歯状の構造を持ち高いアスペクト比を持つ。これまでの調査で、導波管壁の垂直度を保ちつつD-RIE(Deep Reactive Ion Etching)を用いたシリコン基板のマイクロマシニングで実現することは難しいことが分かった。また別の問題点として、シリコンの微細構造上に均質な金メッキを施すことも難しいことが分かった。そこで、フォトレジストで作成した構造体に金蒸着等を用いてTHz帯導波管回路を作成した実績を持つチャールマス工科大学(スェーデン)との共同研究を開始した。具体的には研究代表者が800GHz帯において設計を行った導波管型90度ハイブリッドカプラーを、チャールマス工科大学において試作を行った。試作の結果、800GHz帯において導波管型90度ハイブリッドカプラー十分な精度で制作することが可能であることを確認した。この成果を平成20年3月に開かれた応用物理学会で口頭発表を行った。今後は研究代表者が本研究の初年度に2mm帯で既に実証したサイドバンド分離導波管回路をTHz帯でマイクロマシニングにより作成を行う。そして国立天文台で開発しているAIN接合を用いたTHz帯において広帯域特性が期待できるSIS素子と組み合わせ、高感度かつ高帯域なTHz帯超電導サイドバンド分離ミクサの実現を行う。
著者
山本 隆彦
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

体内に埋込まれた人工心臓に対して非侵襲にエネルギーや情報を伝送する方法として体外結合型経皮エネルギー情報伝送システムはきわめて有用である.本研究ではエネルギー伝送のための磁束と情報伝送のための磁束が直交関係となり,相互干渉のきわめて少ない一体型経皮トランスフォーマの試作と評価を行った.今年度は研究開発中の一体型経皮トランスフォーマの実用化に向けて,着脱の容易が容易になるような機構の導入およびシリコーンによるコーティングを行い,このときのエネルギー及び情報伝送特性を評価した.その結果,試作した経皮トランスフォーマにより,全人工心臓駆動定格消費電力の2倍に相当する40Wのエネルギーを伝送可能であると同時に.4.800bpsの通信速度において1Mbitの情報を誤りなく伝送可能であることを確認した.次に,東京医科歯科大学において研究開発中の補助人工心臓MedTech Heartの実用化を目指し,薬事法により定められているEMCに関する性能評価を行った.その結果,試験項目の一つであり,空間を介して外部に対し放出する電磁波を測定・評価する放射性妨害波試験においてCISPRの限度値を超過した.電磁波の放射源の一つとして各部を電気的に接続するためのケーブルがアンテナとして動作していることが明らかとなったため,ケーブルのシールド,さらに施したシールドを接地し再度放射性妨害波の測定を行った.その結果,外部に対して放出する電磁波の強度をCISPRの限度値以下に低減することができた。また,本対策を行っだ状態において外部電磁界に対する耐性を評価する放射イミュニティ試験を行った.その結果,誤作動は一切確認されなかった.本研究において行ったEMC対策の手法はMEdTech Heartを実用化する上できわめて有用であると同時に、医療現場における電磁環境向上にも大いに貢献するものと考えている.
著者
北島 正弘
出版者
防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

1. 試料作製: グラフェン試料はGOS型に加えて、欠陥の少ない剥離グラフェン及びCVDグラフェンを、超高速測定及びバイアス効果の観察に供した。2. デバイス作成およびバイアス効果測定解析手法の確立: 始めに90 nm酸化膜/Si基板上に剥離グラフェンを付着させた。光学顕微鏡により単層グラフェンの付着確認後、その上に電子線リソグラフィー法により金電極を作成した。周波数48THz付近にGモード(グラフェンの炭素間伸縮振動モードに起因するピーク)の存在を顕微ラマンにより確認した後、超高速分光測定に供した。50Vの電圧印加したとが、このピークの周波数変化は~0.05 THzと小さかった。デバイス構造に問題があると考え、イオン液体を用いた手法へと方針を転換した。イオン液体に浸したCNT電極に電圧を印加した状態でポンプープローブ測定した結果、40 THz及び48 THzにそれぞれ、Dモード、Gモード(欠陥に誘起される振動)のコヒーレントC=C伸縮振動を明瞭に観測することができた。これらのピークの振幅、周波数及び寿命は電圧印加によって大きく変化した。特に高電圧印加ではGモードの強度が極端に減少した。これはフェルミ面が光励起のエネルギーを超えると、フォノン励起が起こりにくくなったことによる。これは、電子格子相互作用に係わるコーン異常効果の消滅により、周囲に自由電子のない“裸の”フォノンの運動に対応する興味深いダイナミクスを示す。3.グラフェンの波束ダイナミックス: 検出光を波長分解することにより、欠陥における電子の弾性散乱によっておこるDモードのフォノンが、非常に高い波数を持ったフォノン波束としてふるまうことを示すことができた。これは光学フォノンの波束励起例としては初めてのものであり、ナノスケールの検出や、操作などの分野に応用できる可能性があり、当初予測しなかった重要な成果である。
著者
布広 永示 マッキン ケネスジェームス 大城 正典 松下 孝太郎
出版者
東京情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,プログラミングに対する学習意欲を喚起し,やる気を継続させる学習環境を提供することを目的として,ゲーム感覚的な学習機能を取り入れたプログラミング学習支援システムを開発した.次に,開発した学習支援システムをプログラミング演習や企業の新人教育などで活用し,本システムの学習効果を評価した.確認テスト・期末テストの平均点の推移やアンケートの結果から,本システムを使用することで,プログラミングに興味を持つという観点では有効であったと考える.更に,プログラムの構造や処理の流れを理解するという目的に関しても効果があったと考える.しかし,プログラム作成能力の向上については十分な効果を得られてなく,学習機能やシステム活用方法などの改善を検討していく必要がある.今後の研究課題として,エンタテインメント性を取り入れたプログラミング講義・演習の学習方法や学習支援機能の研究を進めていく予定である.
著者
山崎 守一 NORMAN K.R. 宮尾 正大 逢坂 雄美 NORMAN K.R
出版者
仙台電波工業高等専門学校
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究は、オックスフォードの「パーリ文献協会」(Pali Text Society=PTS)から刊行されている全パーリ文献の正順・逆順語彙索引の作成及びそのソフトウェアを開発することを目的としている。この研究目的を達成するため、韻文作品の代表として『ダンマパダ』(Dhammapada 423 詩節)を、また、散文作品として膨大な分量を持つ『ヴィナヤ』(Vinaya 全5巻・総ページ数1,588)を選び、パーソナルコンピュータを用いて、これらの完璧な正順と逆順の語彙索引を作成・完成させることを目指して遂行した。初年度は、ノーマン教授とヒニューバー教授により校訂・出版された『ダンマパダ』(PTS 1994)の語彙索引を作成した。ノーマン教授から、教授自身の作成によるパーリ語フォント(ノ-ミンフォント)を使用して入力された『ダンマパダ』を受け取り、われわれが作成したパーリ語フォントに書き換え、語彙(Word)の「正順索引」と「逆順索引」を作成した。さらに、これまでに開発したプラークリット語の詩脚索引作成プログラムを一部改良することによって、詩脚(Pada)の「正順索引」と「逆順索引」をも作成した。このことによって、韻文作品の語彙と詩脚の索引印作成するプログラムの妥当性が確認された。これら4種類の索引、すなわち語彙の「正順索引」と「逆順索引」、それに詩脚の「正順索引」と「逆順索引」は、いずれも写真製版出版が可能な索引であり、これらの索引を、「パーリ文献協会」に投稿した。そして、それらは同協会の評議委員会による査読を受け、1995年にIndexes to the Dhammapadaと題され、単行本として出版された。この書物は、世界中のパーリ文献学者及び仏教学者の研究に稗益することであろう。次に、オルデンベルクによって編纂された『ヴィナヤ』の研究にとりかかった。『ダンマパダ』と同様、語彙索引作成のためのノ-ミンフォントで打ち込まれたフロッピ-を、われわれのフォントに書き変えて解析処理をしたのであるが、このテキストには大量の省略文字があり、さらに明らかなミスプリントも多数存在しており、これらの問題点を解消することが先決事項となった。このため、逢坂の作成したプログラムを走らせることによって、まずプレリミナルな語彙索引を作成した。この出力結果をノーマン教授に送り、ノーマン教授がチェックしたものを、こちらのチェック結果と比較照合する。お互いにミスを見い出すことができなくなるまで何度もこのようなやり取りを繰り返し、コンピュータ上に正確なテキストを形成することを目指した。しかし、この作業が進むにつれて、PTS版『ヴィナヤ』の読みの訂正をどのようにするかの問題も起こり、ケンブリッジで直接討議することによってこの種の問題解決の基本方針を確認した。さらに、教授の来日中に、得られた結果を時間をかけて慎重に吟味し、パーリ語の語順(Word Order)プログラムの確認、同一語彙の異表記の取り扱い、研究者が最も使用しやすい形態にするためのレイアウト等についての共同討議を行った。また、これまでの一連の研究によって開発された、韻文用プログラムと散文用プログラムを使用して、膨大な量の全パーリ・テキストの完全な語彙索引と詩脚索引作成の実現に向けて、解決すべき問題点を建設的に討議した。このようにして、『ヴィナヤ』のテキスト・データベース構築上に横たわる種々の問題を解決し、省略文字の全文字化を行い、コンピュータ上に『ヴィナヤ』の完全なテキストを作成した。そして、このテキスト・データベースに基づいた語彙索引を作成し、独自に開発された語彙プログラムが3.5メガバイトもの大量な散文テキストでも処理できるプログラムであることを確認した。この語彙索引は、『ダンマパダ』と同様の手続きを踏み、「パーリ文献協会」からIndex to the Vinaya-Pitakaと題して出版され、コーン博士の辞書(New Pali-English Dictionary)編纂にも使用されており、その有用性が実証されている。現在、『ディーガ・ニカーヤ』(Digha-nikaya)の語彙索引作成に向けて、このテキストのテキスト・データベースを構築する作業に取りかかっている。
著者
中山 壽之 高山 忠利
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

安全で事故のない外科手術を供給するために、効率的手術手技の習得法を検討した。術者と第一助手の双方向、臓器近接部から手術野をビデオ撮影しマルチ画面再生することにより合目的な教育法を策定した。手術ビデオの一部は外科学会や日本肝胆膵外科学会から公開されている。
著者
山内 昌之 ERGENC Ozer KHALIKOV A.K GRAHAM Willi ERCAN Yavuz DUMONT Paul QUELQUEJAY C ALTSTADT Aud PAKSOY Hasan 福田 安志 内藤 正典 新井 政美 小松 久男 栗生沢 猛夫 坂本 勉 WILLIAM Grah PAUL Dumont CHANTAL Quel AUDREY Altst HASAN Paksoy
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

この共同研究が目指したものは、中東とソ連における都市とエスニシティの在り方を比較検討しながら、近現代の急速な都市化にともなう環境、人間と社会との関係、個人と集団の社会意識の変容を総合的、多角的に解明しようとするところにあった。当該地域におけるエスニシティの多様性と連続性を考慮するとき、これは、集団間の反目、矛盾が先鋭で具体的な形をとって現われてくる都市という生活の場においてエスニシティの問題を検討することであり、またエスニシティ、民族、宗教問題を媒介変数としてトランスナショナルな視角から都市の在り方と変容を検討することでもあった。本共同研究の参加者は以上の問題意識を踏まえ、まず第1に、タシケント、モスクワ等のソ連の都市と、イスタンブ-ル、テヘラン、カイロ、エルサレム等の中東の都市において現地調査を行なった。これらの諸都市での調査においては現地人研究者の協力を得た上で、都市問題の現状とエスニシティを異にする住民相互間の衝突、反目の具体的事例をつぶさに観察した。また現地調査と平行して、現地人研究者との間で意見の交換を行ない、当該地域での研究状況の把握、現地人研究者との交流に努め、さらに必要な資料の収集にも当たった。第2に、ソ連、中東世界での都市化にともなうエスニシティ、民族、宗教問題を分析した。モスクワ国家による都市カザンへの支配の実態を検証し、また経済開発によるソ連中央アジアでの居住条件の変化と、エスニシティ・グル-プの変容についての相関関係を検討した。さらにイスラエルにおいては、ソ連からのユダヤ人移民にともなうユダヤ都市の拡大・拡散による、アラブ人とユダヤ人の文化接触の問題を取り上げた。次いで都市を基盤とした民族主義イデオロギ-の形成・展開の側面についても検討を加えた。トルコにおけるトルコ民族主義の展開過程とその周辺トルコ系地域への影響を、歴史的事実を踏まえつつ分析した。同時にソ連中央アジアにおける非ロシア系民族の間での民族意識の形成過程を検証し、イスラ-ムや、アルメニア正教、ギリシャ正教の復興が民族的アイデンティティに及ぼす影響を検討した。またアゼルバイジャンでの文学活動が民族意識の形成に与えた影響を分析した。これらの事例研究によって、中東とソ連における都市問題とエスニシティをめぐる問題の相関関係を明らかにし、また都市化にともなう社会意識の変容を解明することに努めた。第3に、経済と都市間ネットワ-クの側面から都市のエスニシティの問題を検討した。アレッポの都市経済におけるアルメニア人、クルド人の役割を検討した。またドイツへのトルコ人労働移民の問題を取り上げ、出稼ぎ者、帰還者双方が引き起こす都市問題が、二地域の関係の中で明らかにされた。さらにイラン諸都市とイスタンブ-ルの間の絨毯交易に従事していたアゼルバイジャン人に注目しながら、当該地域におけるエスニシティと都市経済、都市間の関係を把握した。アラビア半島諸都市における通商活動も取り上げ、アラブ世界の都市間通商ネットワ-クにおけるインド人、ペルシャ人の役割を分析した。次いでイランや中央アジアからのメッカ巡礼を分析することを通し、宗教的側面からも都市間ネットワ-クの検討を行なった。これらの研究により、当該地域における経済と宗教を軸とする都市間ネットワ-クとエスニシティの連続性を明らかにすることに努めた。第4に、総合的、多角的研究の必要性から都市とエスニシティ問題の持つ普遍的な性格に着目し、研究交流の空間的幅を広げ、中東、ソ連の現地研究者はもちろんのこと欧米諸国の研究者との間でも共同研究や比較研究を行なった。さらにストラスブ-ルにおいて日本とフランスの研究者を中心に、ソ連と中東の民族問題に関する国際シンポジウムを開催するなど、これまでの研究成果に基づいた研究者相互間の交流を推進した。この共同研究は、湾岸危機やソ連邦の解体など当該地域をめるぐる急激な変動の渦中に実施されたにもかかわらず、比較の手法を用い都市という場におけるエスニシティの問題を解明し、都市の在り方と変容を明らかにする上で大きな成果をあげることができたと確信している。
著者
三友 仁志 鬼木 甫 樋口 清秀 太田 耕史郎 実積 寿也 田尻 信行
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、わが国企業の情報化投資が当該企業あるいは産業のみならず、市場メカニズムを通じて消費者に対して及ぼす影響を理論的に解明し、併せて実証的統計的に分析することにある。平成17年度~19年度の研究期間を通じて、内外の研究動向の把握、専門家との意見交換、分析のための仮説モデルの構築、実証分析に用いるためのデータ収集、実証分析による仮説の検証、実証研究からのインプリケーションの抽出を遂行した。研究の遂行に当たっては、具体的には以下のようなテーマを取り上げた。(1)情報化が企業に与える便益のメカニズムの解明に関する研究の総括(2)情報化が消費者に与える便益のメカニズムの解明に関する実証研究(3)情報化と消費者保護に関する研究(4)通信と放送の融合にともなう市場メカニズムの変化に関する研究(1)については、企業部門における情報化投資メカニズムに関する研究の成果のまとめと総括を行い、情報化が消費者に与える影響の研究との関連を明らかにした。(2)については、情報化が消費者に与える便益のメカニズムの解明について、特に行動経済学から得られる知見を用いてこれまでの伝統的なミクロ経済学では分析しえなかった消費者行動(たとえば定額料金制度に対する選好など)に関する分析を行った。(3)については、情報化時代における消費者保護の問題について、主として個人情報保護法下における情報通信技術の活用とセキュリティ対策について研究を行った。(4)については、2011年に実施されるアナログ放送の停波とそれに伴うデジタルテレビへの移行に関して、企業並びに消費者に与える影響について研究を行った。
著者
大槻 麻衣
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

前年度は,空間型操作を支援するポストWIMP型インタフェースの内,実世界と同様の感覚で,実物体に対して仮想的な描画が可能な筆型デバイスの開発を行った.本年度は,複合現実空間では実物体も仮想物体も同等に扱えることに着目し,仮想物体を対象としたデバイスの開発を行った.仮想物体を対象とした場合,描画対象に穂先が接触する際に生じる穂先のしなりや反力が無く,描画感に乏しいという問題がある.これを解決するために,力覚および視覚フィードバック機構を備えた新たな筆型デバイスの開発を行った.具体的には,力覚フィードバック機構として把持部の一部が可動する機構を,視覚フィードバックとして穂先を任意の方向・強度でしならせることが可能な機構を備えた試作デバイスを作成し,研究室内で運用した.試作デバイスではこれらの機構を駆動させるのにソレノイドを用いていたが,駆動量が調節できず,十分な解像度が得られなかった.そのため,DCモータを用いたデバイスへと改良し,より現実に近い描画感提示を実現した.上記と平行して,「空間への入力」という広い観点から3次元複合現実空間における仮想物体の分解・観察に適した操作法に関する研究を行った.ここでは,多数のパーツで構成された複雑な仮想物体をジェスチャ操作によって部分的に分解し,手元でその詳細を観察するという作業を想定し,誤操作を回避可能,かつ,操作の快適性・応答の心地よさを向上させる手法を提案した.具体的には,実世界と同様の感覚で操作が行えるよう,磁石や接着剤のように,簡単には外れないが,意図的に力を加えることで外れる方法で接合された物体の挙動や応答を模したものとした.これらの成果は2010年9月のヒューマンインタフェースシンポジウム,翌年1月にMR分野の専門家が集うSIG-MRにて口頭発表を行った他,日本バーチャルリアリティ学会論文誌に学術論文として投稿した(現在査読中).
著者
桑原 伸夫
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

TV放送等の無線システムは電子機器等から放射される妨害波の影響を受けるため,各国で規制が実施されているmしかし,今後普及が進むディジタルTV に対しても同じ方法で規制を実施して良いのか明らかになっていないm本研究では,妨害波よりアナログTVとディジタルTV画像が受ける影響を評価して,ディジタルTVに対する妨害波レベルの適切な評価法を研究したm研究の結果,現在使用されている準尖頭値より平均電力やAPDで評価する方法が適していることがわかった.
著者
濱田 陽
出版者
秋田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

2年間の研究を通し、最終的に英語学習動機減退防止基本方針として、以下の6点があげられた。(1)学習者中心(2)情熱を持つ(3)教師主導(4)言語自体以上の事項提供(5)個に応じた教育(6)将来的使用。(1)と(3)は一見矛盾しているように思えるが、教師が主導した上で学習者中心の授業を行うということであり、(4)(5)は学習指導要領においても強調されている点であり、指導要領に沿った指導を行う事によって、動機減退が防止できる事も示唆している。
著者
石井 一 木幡 勝則 佐藤 ハマ子
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1.4ーピリドン類の合成と確認図1でn=0,1,2,4,6,8,10,12のアルキル鎖を有する8種の4ーピリドン類を合成し、元素分析、IR、NMRスペクトル、融点測定を行って合成した化合物の構造と純度を確認した。2.抽出平衡の検討(1)合成した4ーピリドン類の酸解離定数(Ka)及び配定数(K_D)を求めた。Kaはアルキル鎖の長さを変えても変らないが、Kaはアルキル鎖中の炭本数(n)と共に増大し、両者の間にはlog K_D=0.52+1.42で表わされる直線関係が認められた。(2)レアメタルとしてIn,Pr,Eu,Ybを選び各4ーピリドン類を用いて抽出実験を行い、錯体の結合比、半抽出PH、分抽定数(K_<DC>),抽出定数(Kex),安定度定数(β_3)を求めた、その結果 いずれの金属にも1:3(金属:配位子)錯体としてジクロルエタンに抽出され、Kex,β_3 はアルキル鎖長による影響は認められなかったが、K_Dはnと共に増大することがわかった。3.抽出速度の検討上記金属の4ーピリドン錯体はジクロルエタンに容易に抽出され、速度はアルキル鎖が長くなるにつれ僅がづつ遅くなったが、いずれの錯体も数分〜数十分の振り混ぜて定量的に抽出された。抽出の速度論的な詳細な今後引き続いて行うつもりである。以上の結果より、本研究でとりあげた4ーピリドン系化合物は、金属に対する選択性は乏しいが、上述の4元素はもとより、いわゆる硬い酸に分類される金属(例えば、Al,Ga,Ti,Zrなど)の抽出剤としては有用と考えられる。