著者
杉浦 銀策
出版者
駒澤大学
雑誌
英米文学 (ISSN:03867463)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.99-136, 1998-03-25
著者
梅村 博昭
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.53-68, 2006-09-30

サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(『ライ麦畑でつかまえて』)とドストエフスキー『地下室の手記』を比較したリリアン・ファーストによる興味深い論考がある。両作品の主人公が半ば自らの意思で規範を逸脱していること,にもかかわらず他者との関係は完全に切れておらず,コミュニケーションとノン・コミュニケーションの間に引き裂かれていること,高度な自己評価と自己否定の間を揺れ動くこと,読者への呼びかけという手法をとっていることなどを指摘したものである。しかしそれらの類似点を参照しながら『地下室の手記』を再読すると,こんどは両作品の重なり合わない面が浮かび上がってくる。またドストエフスキー研究者の間では『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の源泉は,むしろ同じドストエフスキーの『未成年』や『カラマーゾフの兄弟』であるとの議論がある。ファーストの行っている比較自体が『地下室の手記』を実存主義の祖と考える1970年代的な文学的思潮のなかで可能であったという観もある。文学研究が様変わりしてしまった今,両作品を読み比べする行為は間テクスト性,脱構築といった概念を呼び込まずにはおかない。そして「『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と『地下室の手記』は似ているか」という問いは間テクスト性の網の目の中でちりぢりに分解してしまうであろう。
著者
治部 眞里 小林 義英 落合 圭 橋本 定幸 塩尻 栄美子 山崎 雅和 栗原 正昭 浜中 寿 坂内 悟 國谷 実
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.601-609, 2010 (Released:2010-01-01)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

イノベーション測定手法の一つとして,特許と論文のリンケージに注目が集まっている。科学技術振興機構(略称JST)においては,イノベーション創造を推進するファンディングエージェンシーとして,中期目標上,科学技術政策の投資効果や評価の情報発信を定めている。そこで,JST事業の成果がイノベーションの創造にいかに寄与しているかを,科学論文と特許とのリンケージを分析し,可視化する評価システムを構築した。本論においては,論文および特許のリンケージ等の定量的測定を基に,JSTが過去に支援した研究課題の成果について分析した事例について紹介する。
著者
立松 洋子
出版者
別府大学短期大学部
雑誌
別府大学短期大学部紀要 (ISSN:02864991)
巻号頁・発行日
no.27, pp.137-157, 2008-03

(1)今回の調査で大分県の郷土料理で高い認知度を示したのは,ひじきごはん,高菜ご飯,とり飯,けんちん汁,団子汁,とりてん,やせうま,カボスゼリーである。郷土料理の種類で認知度の差があるが,この8品だけが認知度が60%以上である。郷土料理は子どもにはあまり知られていない(伝承されていない)と考える。1つの根拠と考えられるのは,一般的に大分県は小藩分立の影響が残り,郷土料理が県全体で食べられていないと考える。(2)学校や家庭や外食で作られ普及している郷土料理の方が,子どもへの認知度が高くなると考える。家庭でも大事に引き継がれている郷土料理ほど認知度は低い。これらの認知度の低い郷土料理を絶やさず,次世代に伝承していくことが重要であると考える。(3)ほとんどの郷土料理は地域性があるが,学校給食でだされている郷土料理は地域を超えて伝承されている。このことからも,学校での食育は重要であると考える。(4)郷土料理が体に良いと思う・美味しいと思うと60%が認識しているが,郷土料理が本当に身近な料理と思っている子は31%しかいないことからも郷土料理は子どもに浸透していない。また,郷土料理は家庭で, 1か月に数回しか食べられていないことからも郷土料理が作られていないことがわかる。また,非常に伝えていきたい,作れるようになりたいと思う子どもも少なく,郷土料理にあまり関心がないようである。これからどのように取り組みをするかが重要になる。(5)外食については, 69%の子どもたちは1ヶ月に数回以上外食の頻度があり,外食が日常化している。また,家庭では芋類・豆類・果物が食べられていない。家庭での調理が少なくなり外食やコンビニ弁当・インスタント食品では芋や豆・果物をとる機会が少なくなると考えられる。家庭でも心がけて郷土料理の素材である芋や豆を使った料理を作ることで,郷土料理が家庭で一層普及し,さらに,学校給食がこれまで以上に食育の立場で郷土料理の伝承に大きな役割を果たすことを期待している。また,外食での郷土料理の普及も重要な鍵となると考えられる。
著者
冨岡 亮太 鈴木 大慈 杉山 将
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.182, pp.43-48, 2009-08-24
被引用文献数
2

スパース正則化は凸最適化を通して変数選択や多様な情報源の統合を実現するための系統的な枠組みとして近年注目されている。多くのスパース正則化法は滑らかでない最適化問題として定式化されるため、このような問題を効率的に解く方法が求められている。本論文では、一般の凸な損失関数と広いクラスの正則化関数に対する最適化手法をproximal minimizationの枠組みから導出し、理論的な性質を議論し、既存の手法との関係を解説する。講演では実際のパターン認識やCVの問題を題材として、非常に多くの素性やカーネルが与えられたもとでいかに効率よくこれらを選択し学習することができるかデモンストレーションを行う。
著者
今井 知正 中村 秀吉 (1985) 丹治 信春 野家 啓一 村田 純一 大庭 健 藤田 晋吾 土屋 俊 長岡 亮介
出版者
千葉大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1985

われわれの研究課題は「現代科学哲学における実在論と反実在論」であったが, われわれは三年間の研究を通じ, 個別的な論点はともかく, この研究課題についての次のような全体的な概観を得ることができた.レーニンの『唯物論と経験批判論』を今世紀の実在論のひとつの出発点として取り上げることができる. 彼は「宇宙は人間が存在する前から存在していた」「人間は脳なしで思考することはできない」という二命題を不可疑とみて, 観念論に対する唯物論を擁護した. しかし, フレーゲとウィトゲンシュタインに端を発する論理的実証主義の言語論的展開は言語を哲学の中心に据えることによって, 〈物質-精神〉の枠組をたんなるひとつの哲学問題としての地位にまで引き下げたのである. 超越的実在を語ることも超越的観念を語ることもわれわれに理解可能な言語を越えることであるから, 従来の実在論と観念論の対立は無意味となった. だが, 論理実証主義の言語論的展開もまた不徹底をまぬかれなかった. そしてタメットが二値原理を基準にして実在論と反実在論を定式化したときにはじめて〈物質-精神〉の枠組自体が撤去され, それに代わって古典論理と直観主義論理の対立が実在論論争の全面に現われてきた. 彼は, われわれの言語の論理を二値原理の貫徹する古典論理であるとすることに疑問を提起し, 二値原理を保持する実在論は幻影ではないかと主張した. 要するに, 〈物質-精神〉の枠組が〈世界-言語〉の枠組に取って替わられたとき, 実在論は劣勢に回ったのである. ダメットの提起した論点はなお検討に値する点を多く含んでいるが, 一言でいってわれわれは, 実在論と反実在論の対立の根本問題が指示の理論における言語の役割と言語理解の問題にあると結論することができる. そしてこれはまたわれわれの研究の次の課題でもあるのである.
著者
西原 利夫 櫻井 忠一 渡邊 輝雄
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
機械學會誌
巻号頁・発行日
vol.36, no.198, pp.682-687, 1933-10

Haigh式繰返應力試驗機の作動方法を理論的に取扱ひその結果が實驗と定性的に一致する事を示しこの試驗機を理想に近く動かすには電動子と電磁石との距離を可及的大きくしなければならぬことを示す。次にこの試驗機に用ひる試驗片の屈曲強さを求め片振圧縮耐久試驗に於ける試驗片の屈曲は通常の屈曲と異る事を推論した。
著者
小幡 重一 吉田 彌平
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.1, no.11, pp.305-320,Pl.19-Pl.22, 1925-08

三極眞空管を含む電氣振動囘路を利用して微細な變位や運動を測定する方法は「ウイデイントン」「ドーリング」及「トーマス」等によって研究され極めて感度鋭敏なものである事が證明された。「ウィデイントン」の方法は三極眞空管を含む二つの電氣振動囘路の間の「ビート」を利用する所謂「ヘテロダイン」法であつて變位の絶對の値み極めて精密に測定する樣な場合には最も適當して居るが少くも二つの振動囘路を必要とし取扱上かなりの不便を免れない。これに反し「ドーリング」及「トーマス」の方法は夫々全然違つた考を基とした方法であるが何れも唯一つの振動囘路を必要とする點に於て實用上甚だ好都合である。著者等は此等唯一つの振動回路を使用する方法を研究し色々の應用を試みた。先づ「ドーリング」の方法即ち「チューンド、グリッド」囘路内の蓄電器の電氣容量の變化を利用する方法に「コンデンサー、マイクロフォン」を應用して爆發の音響、母音等種々なる音響を精密に記録する事を試みた。次に此「コンデンサー、マイクロフォン」を壓力計に改造して壓力變化の精密なる記録をとる事を試み其應用の一例として「ピトー」管に此壓力計をつないで扇風器の風速の變動を記録してみた。物體の振動等を記録するには非常な精密を要する場合以外は「トーマス」の方法が便利である。此方法では物體と「コイル」との關係的位地の變化によつて「エツディーカーレント」損失の變化を惹き起すのを利用するもので振動體に何物をも觸れさせずに其振動を記録する事が出來る。「トーマス」は「ハートレー」囘路を使用したが著者等は音響や壓力變化の記録をとる場合と同じく「チューンド、グリッド」囘路を使用して全く同様の成績が得られる事を示した。是等の方法は猶色々な方面に應用の途があると考へられるから種々な用途に適應する樣な装置を一と纒めにした器械を造つたら甚便利であらうと考へられる。因つて著者等は以上の經驗に基いて「アルトラ、マイクロメター」即三極眞空管を應用して微細な變位や運動を測定する器械を東京市麹町區有樂町報知ビルデイング内安藤商店をして製作させた。
著者
坂東 浩司
出版者
北海道東海大学
雑誌
北海道東海大学紀要. 人文社会科学系 (ISSN:09162089)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.107-119, 1988

日本固有の事物や日本の文化的特徴を有する事柄の英訳法は, 文章の種類やその用途によって訳出法は異なるが, 大体次の六つの方法が考えられる。(イ)類似事物の英語相当語を代用する。(口)英語相当語に'Japanese'を冠する。(ハ)説明的表現にする。(二)日本語をそのまま英語化する。(ホ)日本語と, 英語相当語または説明的表現を併置させる。(へ)和英合成の複合語にする。本稿では, これらの英訳法の特徴を概説したうえで, LafcadioHearnの物語文学作品に焦点を絞り, それらの作品中に散見される日本文化に関する語彙が上述のどの方法によって英訳されているかを考察した。考察にあたっては, Edward G.Seidensticker訳による川端康成の小説『伊豆の踊子』, 『雪国』, 『千羽鶴』の三作品を中心とした他の翻訳者たちによる英訳法との比較考察をおこなうことによって, Hearnの特異点を浮き彫りにさせた。その結果, 彼の物語文学における英訳法は他の翻訳者たちのそれとは異なり, 随筆や論考における英訳法と同様の手法を用いているという結論を導くことができた。これは, Hearnが作家であると同時に研究者であるため, 彼にとっては物語文学が随筆や論考などの一連のジャンルの著作と同様に, 広義の日本研究の一環であり, 日本人の精神的特性を究明し, それを英米人に紹介するという彼の主要テーマの延長線上にあるためである。実際の創作過程において, 彼が日本の風俗・習慣や日本的色彩の濃い語彙を積極的に作品中に採り入れて英訳を試みているのも, こうした彼の執筆姿勢の反映であると見ることができると論及した。
著者
増田 萌 脇田 建
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.41, pp.27-34, 2007-05-11

本研究は彩色を施された文書が生ずる色覚障害の問題に取り組む。本手法は、筆者が意図した色彩効果を目的関数として定式化し、それを最大化することにより、文書の筆者が意図した色彩効果が色覚障害者にとって最も認知し易い文書になるように再配色を与える。一般に非線形多変量となる目的関数は、マルコフ連鎖モンテカルロ法のレプリカ交換法を用いて最適化した。また、計算時間を高速化するために、探索空間の近似を行った。本手法の評価のために、文書に意図的に色覚障害者が文字を読み取れない彩色を施したものを本手法を用いて再配色し、十分な可読性が得られることを確認した。Color-blindness is caused because color effects intended by the author are sometimes difficult for the color-blind to observe. SmartColor takes author's expectation about color effects found in the document in terms of mathematical formula (energy function). Minimization of the energy function gives the best repainting for the color-blind. Replica exchange method (a variant of MCMC) for minimization nonlinear multivariate target functions energy function. SmartColor incorporates some approximation technique to reduce computational cost. Effectiveness of the system is tested by using specially arranged diagrams and color-blind simulation.
著者
山口 哲 大谷 恭史 矢谷 博文 荘村 泰治
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, 2009-09-10
被引用文献数
1

As dental implants have become an established dental treatment, the number of applications to difficult and aggressive cases has increased. To overcome these difficulties and realize safe and precise surgery, computer-assisted navigation systems have been developed. In conventional systems, surgeons feel anxious intra-operatively because they have to operate instruments in the oral cavity while watching a surgical monitor. Thus, we develop novel surgical navigation system by combining the retinal projection head mounted display (RPHMD) and the augmented reality (AR) techniques. In this paper, we propose an image overlay procedure based on the RPHMD and verify its accuracy.
著者
金 昌龍 渡部 和彦
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.369-379, 2003-08-01
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

本研究は,太極拳を実施している中・高齢者34名を対象に太極拳の実践が立位姿勢保持に関するバランス機能にいかなる効果をもたらすかについて,イクイテストシステムの分析によりその関連性について調べた。その結果,以下の知見が得られた。1.太極拳の実践は短期間ではその効果は現れにくいが,継続的な実践によって,中。高齢者のバランス機能の能力を向上させ,あるいは機能低下を遅延させる可能性が示唆された。2.水平移動を伴う外乱刺激に対する身体応答の速さは,太極拳の実践によってその機能の向上が期待できるという可能性が示された。3.脚の伸展筋力は太極拳を長期間実践することにより,ある程度の衰えを防ぐ可能性が示されたが,脚筋力とバランス機能との間には相関関係が認められなかった。4.太極拳を長時間継続することはヒトのバランス機能の向上に貢献できる可能性を示した。静的バランス機能より動的なバランス機能への貢献の可能性が示された。
著者
清水 雅史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播
巻号頁・発行日
vol.93, no.465, pp.39-44, 1994-02-18
被引用文献数
1

本稿ではMMICを用いた位相器は4bit程度のものが多いことに注目し、離散的な最適化方法であるジェネティックアルゴリズムを使ったパラメータチューニング法を提案した。各素子の振幅、位相を4bitの分解能として8素子の直線配置の1次元アレイを想定し、ビームを所定の角度に向けるステアリングと、サイドローブを抑制する励振分布を提案方法により導出し、解析的に導かれた結果と比較した。
著者
槇田 仁 伊藤 隆一
出版者
慶應義塾大学産業研究所
雑誌
組織行動研究
巻号頁・発行日
no.25, pp.73-95, 1993-03

慶應義塾大学産業研究所社会心理学班研究モノグラフ ; No. 37精研式文章完成法テスト(SCT)を開発してから30年近くの年月が経過した。永年,SCTによるパーソナリティ診断や, 診断法の教育訓練を続けていると, 訓練効果が高いことも分かるが, それと同時に, 評価と評価者のパーソナリティ属性との間に興味ある関係のあることが経験的に分かるようになってきた。
著者
堀田 創 野澤 貴 萩原 将文
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.347-356, 2008-06-15
被引用文献数
1 1

本論文では,位置情報に基づく新しいインターネット広告システムを提案する.インターネット上の広告システムは,一般的に効果の高いと考えられるユーザに対して広告を配信するものが望ましい.本研究では,広告効果向上の方法の一つとして,位置情報を根拠とする方式を提案している.位置情報に基づくインターネット広告配信は,ターゲットとしたい地域から近い位置に居るユーザに広告を配信することで実現される.しかしながら広告の効果的な範囲は地域ごとの特性および広告の質によってそれぞれ異なり,それらを詳細に広告主が指定するのは極めて困難である.その結果,産業界における実現可能性が非常に低くなるという問題がある.提案システムは,ニューラルネットワークにより自動的に広告の効果的な範囲を推定し,それを配信アルゴリズムに組み込むことで広告主に負担をかけない広告配信を可能としている.このシステムは携帯電話用の広告配信として利用され,現在も実際に運用されている.検証実験の結果,広告の効果的な範囲の自動推定および,位置情報に基づく広告が有効であることが確認されている.