著者
高橋 恵利子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.169, pp.16-30, 2018 (Released:2020-04-26)
参考文献数
34

日本語学習者の日本語アクセントの習得に関わる認知的な要因を調査するために,上級韓国人日本語学習者70名を対象に,アクセント習得に関わると考えられる複数の課題を課した。課題は,有意味語の読み上げ課題,アクセント正誤判断課題,無意味語の読み上げ課題とそのモニター課題,およびアクセント弁別課題の5つであった。読み上げ成績と最も相関が高かったのはアクセント正誤判断課題であった。また変数間の関係について,アクセント生成と他変数との関係を考察するために重回帰モデルの検討を行った結果,アクセント生成成績を予測する変数はアクセント正誤判断課題成績のみであることが示された。
著者
伴 清治
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.187-196, 2022-09-30 (Released:2022-10-30)
参考文献数
22

インプラント上部構造用材料は,レジン系,セラミックス系,金属系に大別でき,多くの選択肢がある.セラミックス系はさらにガラスセラミックス系とジルコニア系に二分される.一方,デジタル技術の進歩により,CAD/CAMシステムを使用して高い適合精度でインプラント上部構造を製作することが可能となってきている.また,CAD/CAMシステムは年々多様化し,使用可能な材料が増える傾向にあり,その選択に苦慮する場合がある.たとえば,金属系材料は機械的性質においては満足できるが,審美性およびアレルギー問題により使用は限定される.PEEKおよびPEKKなどのスーパーエンジニアリングプラスチックは化学的性質に優れているが,硬さが低く主にフレーム(コア)として用いられる.また,ガラスセラミックスやコンポジットレジンは微視的には不均質組織であり,機械的性質および化学的性質が各微細組織部分で異なり,上部構造体として口腔内に長期に使用した場合,表面が荒れ,変色しやすくなる.結果として,対合歯の摩耗は大きくなってくる.一方,ジルコニアは均質組織であり,すべての上部構造用材料のなかで最も化学的耐久性が高く,強く,硬く,鏡面研磨仕上げをすれば,対合歯の摩耗は最も小さいと判断できる.したがって,材料学の立場からは,種々の歯科修復材料のなかでジルコニアがインプラント上部構造として最適の性質を有していると判断される.
著者
井上 君夫
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.755-760,a1, 1994-08-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7

平成5年の暖候期は稀にみる異常な天候となった。大規模かつ長期間にわたる寒気の流入と日照不足は特に水稲に昭和55年冷害を大幅に上回る被害を与えた。寒気の流入は大気の蛇行に伴って極付近から南下したものであり, 大気一海洋間で起こっている異常現象がそれらを容易にした。やませも例年以上に吹走したが, 8月上旬の寒気は下層のやませと上層の一般風が一体となる稀な様相を見せた。このような異常天候, 特に低温と日照不足が水稲に被害を与えたが, 壊滅的被害を与えた原因は水稲側にもあった。それは北日本の水稲の生育が次第に遅れ, 最も低温に弱いとされる減数分裂期が8月上旬の低温に遭遇してしまったからである。深水管理で冷害をある程度回避できた事例はあるが, 異常な天候下でも成立する技術の構築の必要性も指摘されている。
著者
宮﨑 友裕 森田 哲夫 木之下 僚太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00166, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
10

本研究では,DMOによる観光満足度調査の際,来訪前の期待度を合わせて収集・分析することで,DMOが自地域の代表的な観光施設の評価・改善点の把握につなげることを試行した.調査では道の駅の各機能について,来訪者の事前の期待度と来訪時の満足度,総合満足度を各5段階で収集した.集計・分析の結果から,「道の駅」来訪者の期待度の強い項目として駐車場・トイレ・物産品販売を得た.道の駅総合満足度を目的変数とした重回帰分析による満足度モデルでは,駐車場の満足度と期待度の差分を有意な説明変数として得た.来訪者は駐車場に関して事前に道の駅の他の機能に比べ強く意識している可能性が示された.期待度が大きい項目では,事前の情報提供の改良等により総合満足度を向上できると考える.
著者
小林 雄志
出版者
日本インスティテューショナル・リサーチ協会
雑誌
大学情報・機関調査研究集会 論文集 第12回大学情報・機関調査研究集会 論文集 (ISSN:24363065)
巻号頁・発行日
pp.46-51, 2023-11-19 (Released:2023-11-24)

本研究では、日本の大学におけるシラバス作成ガイドラインに関するWeb調査を実施した。その結果、57の大学において、シラバス作成ガイドライン等の存在を確認できた。これらの資料は、「ガイドライン」、「作成要領」、「手引き」といった文言を含む名称で示されていた。さらに、これらを計量テキスト分析した結果、使用される語句について、国公立大学と私立大学でやや異なる傾向があることが明らかになった。
著者
近藤 隆二郎
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.161-164, 1995-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2

江戸のまちにおける写し霊場 (33ヶ所) を取り上げ, 札所番号・景観類似・巡拝域などについて考察した結果, 本尊が観音である寺社のネットワークであること, 本西国との類似性を意識した演出法の存在, 江戸全域を巡るものと地域的に限られたものに分かれること, 都市像の形成を促す役割を持っていたことなどを示した。江戸西国三十三所 (上野王子駒込辺) の『案内記』を分節化し, 御詠歌が本西国連想の媒介であったこと, 景観的視点が重視されていたことを示すとともに, 現地景観体験と本西国の景観を連想する体験とが重なって成立しており, 江戸における写し霊場の鑑賞構造が, 虚実が交錯する中で部分的全体性を体得するものであったことを示唆した。
著者
遠山 大輔
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.8-11, 2017 (Released:2019-01-01)

本稿では京都府の「舞鶴高 1 女子殺害事件」における、防犯カメラ画像の鑑定の問題点について事 例報告を行なう。本件は N 氏が被害者をわいせつ目的で殴打して殺害したとされた事件であった ( 後に N 氏の無罪が確定した )。本件では、被害者と思われる人物と自転車を押す男性と思われる人 物が、遺体発見現場近くの防犯カメラに記録されていた。このカメラ画像の鑑定書が証拠のひとつ とされていた。鑑定書では、人物の服装や自転車、また耳たぶの酷似が根拠として挙げられ、N 氏 と防犯カメラに記録された人物が同一であると結論づけられていた。この鑑定書について、別の専 門家に意見を求めたところ、1 画素にどれだけ対象が記録されているかで画像の値打ちが決まり、 見えるか見えないかも決まるとのことであった。これにより、耳たぶの画像については 1 画素に 2.5 × 2.5 センチ程度しか記録されていないなど、提示された防犯カメラ画像では同一性について 論じることはできないという結論を得ることができた。鑑定は同一性判断の基準や表現について検 証可能な形で行われる必要があると感じている。
著者
宮地 秀樹 山本 剛
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.449-455, 2023-11-01 (Released:2023-11-01)
参考文献数
51

COVID-19によるパンデミックは医療体制に大きな影響を与えた。COVID-19陽性期間の急性心筋梗塞発症率は陰性患者に比べ増加したが,実臨床では受診控えなどによってパンデミック期間の急性心筋梗塞の入院患者数は減少した。CCUでは各施設が診療の質を維持するために様々な対応を行ったが,パンデミックにより急性心筋梗塞患者の治療までの時間は延長し,院内死亡率が世界各国で上昇した。一方,日本では,院内死亡率は上昇しなかった。 本稿では,COVID-19と急性心筋梗塞の関連性およびパンデミック期間の急性心筋梗塞診療の実情について解説する。
著者
Yonathan Asikin Tomomasa Kudaka Ryota Maekawa Takuya Kobayashi Makoto Takeuchi Masahiro Horiuchi Koji Wada
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
pp.FSTR-D-23-00142, (Released:2023-11-28)

Pineapple is an important representative fruit of Okinawa Prefecture, Japan. The fruits of the five new breeding lines (“Okinawa No. 22,” “Okinawa No. 25,” “Okinawa No. 26,” “Okinawa No. 27,” and “Okinawa No. 28”) were evaluated for physicochemical traits, total carotenoids, volatile components, and orthonasal aroma profiles. The fruits had comparable weight, total soluble solids, and titratable acidity but displayed different color space b* values (yellow index). This yellow indicator was positively associated with total carotenoid content, with the “Okinawa No. 26” line having the most (8.74 mg/kg). The amount and composition of volatile components and, consequently, aroma-active compounds varied between fruits. The “Okinawa No. 28” line contained the most active-aroma compound methyl 2-methylbutanoate (odor activity value = 297.78). Except for “Okinawa No. 25,” the lines were associated with pleasant orthonasal aromas, such as fruity, sweet, coconut-like, and peach-like, indicating their potential use in fresh or processed foods.
著者
矢部 充英 藤井 崇 寺井 岳三 松本 政明
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.11, pp.1047-1051, 2008-11-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
14

心臓ペースメーカー波形と干渉したため,自動体外式除細動器(automated external defibrillator; AED)を装着されたが,心室細動であったにもかかわらず作動しなかった症例を経験した。患者は61歳の男性で徐脈のため心臓ペースメーカー(Dual-pacing, Dual-sensing, Inhibeted mode; DDI)を埋め込まれていた。自宅で意識消失し,救急隊による心肺蘇生時にAEDを装着されたが,心室細動であったにもかかわらず作動しなかった。本症例で使用されたAEDは半自動式で,手動で解析し,電気ショックのタイミングを調整できるタイプであるが,ペースメーカー装着患者に対する性能までは保障されておらず,ペーシング波形を患者の心電図と誤認した可能性があった。一般にAEDの心室細動に対する解析アルゴリズムにおいてその感度,特異度は高く設定されているが,AEDと埋め込み型ペースメーカー波形との干渉については不明な点が多い。ペースメーカー装着症例におけるAED使用にあたっては機種によっては電気ショック適応であっても作動しない可能性があり注意を要する。ペースメーカーとAEDの相互作用について,更なる研究と解析アルゴリズムの改訂が望まれる。
著者
岩村 拡 中森 靖 岩坂 壽二
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経外科救急学会 Neurosurgical Emergency
雑誌
NEUROSURGICAL EMERGENCY (ISSN:13426214)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.179-186, 2020 (Released:2020-12-23)

今後予想される南海トラフ地震や首都直下型地震などの大地震では建物の倒壊現場での医療救護活動が想定され,平時から重機や搬出デバイスを用いて消防と医療チームが連携して訓練を行うことが望まれる.しかし訓練場所の確保が困難であり机上訓練にとどまっているのが現実である. 今回,当院の解体途中の病棟を災害現場と見立てて消防と医療チームが連携して傷病者救出訓練を実施したので報告する.
著者
木村 優
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.33-43, 2009-03-31 (Released:2017-11-28)

本研究の目的は、日常の授業で教師が行う自己開示について検討することであった。そこで中学校教師2名を対象に授業観察と面接調査を実施し、彼らが授業中に行う発話の内容分析を行った。その結果、(1)教師の自己開示には、情報、思考、経験、願望、に渡る内容の広がりがあり、特に生徒の成長に対する願望の開示を中心に他の開示内容が連続する様式的特徴が見出された。また、経験の開示に相当する発話内容が生徒と同年代時の体験で、そこには生徒に共感を示す機能が内在していた。(2)教師が自己開示を行う場面は道徳、学活の時間が主で、さらに、教師は生徒との関係形成初期に頻繁に自己開示を行っていた。これらの現象は、授業の目的の達成と、生徒が自己を率直に表現可能な開かれた関係を教室に構築することを目指す教師の目的、専門性に起因していた。以上より、教師は自己開示を授業方略の一つとして用いていたことが明らかとなった。
著者
川手 信行 中島 卓也
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.190-193, 2022-07-01 (Released:2023-07-15)
参考文献数
10

歩行は,運動エネルギーを位置エネルギーに変換し,再び運動エネルギーに再変換する連続した運動であり,これを円滑に行うための機能が,立脚期足部の3つのロッカー機能である.また,歩行における自動的な左右下肢の交互運動は,脊髄にあるといわれているCPG(central pattern generater)が関与し,交互運動の切り替えのためには,TSt時の股関節伸展による股関節屈筋群からの求心性入力が重要であるといわれている.脳卒中などの痙性麻痺においては,痙縮が持続することにより股関節拘縮,内反尖足が生じ,立脚期の股関節のTrailing Limb Angle(TLA)や足部のロッカー機能が消失し,Extension thrust pattern,Buckling knee pattern,Stiff knee patternなどの異常歩行(Qervanら)をきたす.これらの異常歩行パターンは反張膝などの合併症を誘発する可能性があるため,早期からの適切な装具療法が重要である.
著者
柏木 希介 近藤 憲子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.258-262, 1971-07-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10

In spite of long time storage over 1300 years, some of very old dyed textiles still seem to maintain beautiful color. Among others, red colored silk fabrics known as Horyujigire, which are believed to be the product of China in the 7th century, and the red string attached to a famous armor of the 12th century, both maintaining their clear red color, were examined with regard to the dyestuff and color as well.To identify the dyestuff used on these textiles, it is considered to be necessary to extract the dyestuffs directly from the dyed fabrics, not from plant tissue. In view of this we prepared silk cloths dyed with Rubeaceae roots, sapan wood, safflower, Rhizophoraceae wood and Texaceae wood.By paperchromatographic analyses we have found that the above two old fabrics would contain madder or chay root dyes. This conclusion seems to be in agreement with the result of the investigation by means of organic chemistry.Color fastness tests against the sunlight and washing on those cloths also showed that madder was more resistant than the others.
著者
山口 直比古 阿部 信一 雨宮 正恵 大村 伸栄 多胡 英樹 廣田 住友
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.387-394, 1990-12-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

In Japan, more than 1, 200 medically-oriented meetings are held each year, with the number of presentations given at those meetings estimated at over 100, 000.A questionnaire was sent to the member societies of the Japanese Association of Medical Sciences in order to obtain information about the character and the role of the meeting abstract. Moreover, Another questionnaire was sent to individual doctors and researchers regarding their views of the abstract selection process. It was found that 65 percent of the meetings held by the member societies, especially large-scale and clinicallyoriented societies, have a referee system. However, submitted abstracts are rarely rejected (average 9 percent), and only the subject matter is supposed to be checked. Moreover, it was clear that most doctors and researchers recognize the necessity of a refereeusystem for national meetings of general interest where they present their research achievements, and think research meetings where a small group of specialists gather to discuss a certain subject have less need for a referee system.Through the use of these two questionnaires, two main concepts were obtained:(1) a referee system is necessary to maintain high-level meetings, and (2) all applicants should be given an opportunity to present thier papers.
著者
藤井 健太朗 磯村 拓哉 村田 真悟
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2G5OS21e04, 2023 (Released:2023-07-10)

人間のように未学習の環境であったとしても適切に知覚し、目標を達成するための適応的な行動生成が可能な知能ロボットの実現が期待されている。人間の脳の計算原理である自由エネルギー原理に基づく能動的推論に深層学習を導入した深層能動的推論によって、シミュレーション環境におけるトイプロブレムの解決は示されているが、実ロボットに応用した例はない。そこで本研究は、実ロボットによる行動生成のための深層能動的推論フレームワークを提案する。提案フレームワークは世界モデル、行動モデル、期待自由エネルギーモデルから構成される。世界モデルは対照変分自由エネルギーの最小化に基づき学習を行うことで環境の適切な知覚が可能になる。行動モデルは、期待自由エネルギーモデルによって推定される対照期待自由エネルギーの最小化に基づいた模倣学習を行うことで、目標を達成するための適応的な行動生成が可能になる。評価実験として、実ロボットによるリーチングタスクを、学習済み・未学習の環境で行なった。実験の結果、提案フレームワークはどちらの環境においても適切に知覚し、目標を達成するための適応的な行動生成が実現可能であることが確認された。
著者
橘 勝康 原 研治 野崎 征宣 槌本 六良
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ふ化直後のマダイとトラフグにカロテノイド(マダイ:β-カロテンあるいはアスタキサンチン,トラフグ:β-カロテン)で栄養強化した初期餌料を投餌し無投薬で生産を試みた。マダイでは、ふ化後20日の飼育で,β-カロテン及びアスタキサンチン強化区の生残率が対照区と比較して高くなった。トラフグでは,ふ化後28日の飼育でβ-カロテン強化区の生残率が対照区と比較して高くなった。両魚種ともに全長からみた成長にはカロテノイド強化による有意な差は認められなかった。飼育最終日の仔魚より脾臓を採取し,リンパ球の幼若化反応を検討したところ,両魚種ともにPWM20μg/mlあるいはCon A 100μg/mlの刺激で,カロテノイド強化区が対照区に比較して有意に高い幼若化の反応性を示した。これらの強化初期餌料でマダイやトラフグの種苗を飼育することにより,種々の感染症に対して抵抗力の高い健康な種苗の無投薬での生産の可能性が考えられた。引き続いてβ-カロテン強化モイストペレツトでブリ一年魚の飼育を2-3ヶ月間無投薬で行い飼育開始と飼育終了時の血液値と免疫防御能の比較を行った。飼育終了時における血液値では,両区とも飼育開始と飼育終了時では顕著な違いを認めず,実験期間を通じて健康であったと考えられた。実験終了時の免疫防御能をリンパ球の幼若化能を比較すると,β-カロテン区がマイトーゲン添加培養の全てで対照区より高い幼若化を示し免疫防御能が高いと考えられた。以上より,β-カロテン,アスタキサンチン共に免疫賦活作用を持ち,これらを餌料に添加することで無投薬飼育が可能となることが分かった。
著者
篠原 和彦 今井 英人
出版者
一般社団法人 水素エネルギー協会
雑誌
水素エネルギーシステム (ISSN:13416995)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.55-62, 2021-06-30 (Released:2023-11-18)

Evaluation and analysis of fuel cells is an indispensable technology for improving the performance and durability of fuel cells in the future. On the other hand, not all evaluation protocols for each evaluation item set as the development target have been prepared. From the perspective of maintaining and improving international competitiveness, it is important to develop functional targets, corresponding evaluation items, and evaluation protocols that are expected to be deployed in HDV, etc. In the latter part, we overview the domestic development status of advanced PEFC analysis technologies that enhance international competitiveness in PEFC development.
著者
根本 達
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第44回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.10, 2010 (Released:2010-12-20)

インドのマハラシュトラ州ナーグプール市では、仏教徒たちによる「不可触民」解放運動が行われている。この運動を始めたのは、「不可触民の父」と呼ばれるアンベードカル(1891-1956)であり、1956年、30万人以上とされる「不可触民」とともに、ヒンドゥー教から仏教へ集団改宗した。仏教徒たちは、アンベードカルの死後も解放運動に取り組み、1968年以降は、日本人仏教僧である佐々井秀嶺(1935-)が指導者として活動している。