著者
津村 ゆかり 開原 亜樹子 石光 進 吉井 公彦 外海 泰秀
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.377-384, 2002-12-25 (Released:2009-04-30)
参考文献数
11
被引用文献数
7 6

国産23試料,輸入80試料,合計103試料の瓶詰め食品のキャップシーリング中の可塑剤の種類及び含有量を調査した.103試料中93試料から炎色反応により塩素を検出した.そのうち62試料からフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP),フタル酸ジイソデシル,アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル),フタル酸ジイソノニル,フタル酸ジシクロヘキシル,クエン酸アセチルトリブチル,ジアセチルラウロイルグリセロールのいずれか又は複数が検出された.DEHPが検出されたもののうち12試料については,瓶内容物中の可塑剤含有量も調査した.油脂分の含まれる流動性の高い食品に対して,DEHPの移行が認められたが,1回の摂取で耐容一日摂取量を超えるものはなかった.またDEHPが最も多く検出された食品について,種々の保存条件における移行量を検討した結果,振とうによってキャップシーリングから食品へのDEHPの溶出が促進されることが示唆された.
著者
村岡 修 中川 好秋 松本 和男 中辻 慎一
出版者
日本薬史学会
雑誌
薬史学雑誌 (ISSN:02852314)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.20-41, 2022 (Released:2022-07-30)

シリーズその2の続編である本報においては,医薬や農薬開発の基礎となる 20 世紀の薬学分野での有機化学研究について,長井長義を源流として,生薬学,薬化学,薬品製造学に分枝して発展してきたわが国特有の薬学における天然物化学研究を中心とした流れを概観する.また,研究開始初期に習得した有機化学の知識と技能を最大限に駆使して新たな分野を切り開き,その分野で傑出した業績を挙げた2名のノーベル賞受賞者を含む化学者の業績についても紹介する.
著者
川端 博子 藤田 佳穂 吉澤 知佐
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.514-522, 2020 (Released:2020-09-02)
参考文献数
7

ジャケットの裏地の用い方が, 動作機能面での快適性に及ぼす影響について考察することを目的とし, ジャケットの着用感評価と衣服圧計測を行った. Mサイズの4枚のジャケット (素材と伸び率の異なる裏地をつけた3枚と裏地なし) で, 裏地の効果を比較した. 次に, MとSサイズのジャケットの着用実験より, 動作性を維持する裏地の条件について考察した. 結果は, 以下のとおりである. (1) 裏地なしジャケットでは衣服圧は最も低いにもかかわらず, 動作のしやすさ, 着脱のしやすさ, 質感のよさで裏地つきのジャケットより評価が低かった. (2) Mサイズで裏地違いの3枚のジャケットの比較より, 柔らかく平滑なキュプラレギュラー裏地のジャケットでは, 衣服圧の低減とともにすべりの良さ, 動きやすさで高い評価が得られた. ポリエステルストレッチ裏地を用いたジャケットの評価が低かったのは, 伸長性よりも袖すべりのよさが動きやすさに効果を与えるためと考えられる. (3) キュプラレギュラー裏地のSサイズジャケットとポリエステル裏地のMサイズのジャケットには, 着用感評価と衣服圧に差は見られなかった. ジャケットの動作快適性を維持し, 衣服圧を抑えるには, 伸縮性よりもすべりがよくせん断特性の小さい裏地の使用がふさわしいことが明らかとなった.
著者
滝島 真優
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.44-57, 2022-02-28 (Released:2022-05-21)
参考文献数
30

本研究は,きょうだい児に対する教員の認識を明らかにし,学校教育における組織的なきょうだい児支援のあり方について検討することを目的とした.教員を対象とした質問紙調査を実施し,320通の回答を有効とした.その結果,きょうだい児の多くが慢性疾患や障害のある兄弟姉妹や親に対する感情面のサポートを担っており,学校生活への直接的な影響は現れにくいことが考えられた.また,支援を必要としたきょうだい児への対応のほとんどが教員による課題解決型の対応となっていたことが示された.きょうだい児に対しては,課題背景を理解して対応する必要があることから,現状の対応では不十分であることが課題となっていた.以上の点から,学校が予防的観点できょうだい児の生活状況を把握する役割を担い,教員と学校専門職が専門性を発揮し,連携を図りながら,きょうだい児に対して必要な支援が行き届くシステムを整備する必要性について言及した.
著者
新谷 和幸
出版者
全国社会科教育学会
雑誌
社会科研究 (ISSN:0289856X)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.57-68, 2014-03-31 (Released:2017-07-01)
被引用文献数
1

本稿の目的は,小学校社会科の概念探究学習として,概念の名辞(カテゴリー)に着目し,科学的概念だけでなく,常識的概念も含めて概念を探究する学習(概念カテゴリー化学習)の必要性と,その授業構成方法を明らかにすることである。小学校段階の児童にとって,概念探究学習における命題を探究する学習は,児童の発達段階や小学校社会科の目標の観点から,児童が学習する上で困難な状況があった。それを改善し得る教育内容・方法として,常識的概念も含めた概念の名辞(カテゴリー)とカテゴリー化を用いた学習方法に着目し検討した。その結果,小学校段階において,概念の名辞を認知機能のカテゴリーとして学ぶ重要性や,それを児童が科学的方法で獲得する上で,(1)類推-同定という思考活動,(2)カテゴリーの階層性を生かした包摂的カテゴリー化,(3)反証事例を用いた批判的学習過程,の必要性について明らかにした。以上,小学校社会科の概念探究学習における概念の名辞(カテゴリー)に着目して探究するという,筆者の提唱する「概念カテゴリー化学習」は,児童の発達段階に適した小学校社会科の目標に迫ることのできる科学的な学習方法論であるとともに,中等教育で命題を探究する学習を行うための基盤形成を担う有効な学習方法論でもある。
著者
栗原 義夫 山下 久美子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.18-25, 2020-01-30 (Released:2020-01-30)
参考文献数
18

Sodium-glucose cotransporter 2(以下SGLT2と略す)阻害薬は血糖降下作用と様々な代謝改善効果が報告されているが,ごく最近,本剤の投与により糖尿病腎症1~2期の患者において,その推算糸球体濾過率(以下eGFRと略す)の改善が報告された.そこで,3年以上SGLT2阻害薬を服用している当院通院中の2型糖尿病患者111名(腎症1期68 %,2期27 %,3期5 %)の各パラメーターの推移を後ろ向きに検討した結果,SGLT2阻害薬服用者では3年後の体重,血圧,HbA1c,AST,ALT,γ-GT,LDL-C,尿酸はいずれも有意に低下しており,HDL-C,Hctは有意に増加していた.さらにeGFRは2年後より有意な増加が続くことが認められたことから,本剤は腎機能が比較的保たれている患者において腎機能改善効果を有している可能性があることが示唆された.
著者
若松 大祐
巻号頁・発行日
2021-03-31

常葉大学
著者
尾崎 翔 木村 太郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 72.1 (ISSN:21890803)
巻号頁・発行日
pp.174, 2017 (Released:2018-04-19)

最近、不純物として重いクォークを含んだ高密度及び強磁場中のクォーク物質に近藤効果が現れることが議論されている。これまでの解析は摂動的な方法を用いていたため、近藤スケール以下では結合定数が発散してしまい、赤外領域での解析が困難であった。我々は、高密度あるいは強磁場中のQCDが1+1次元になることに着目し、厳密に解ける1+1次元共形場理論を用いて近藤温度以下でのQCD近藤効果を非摂動的に解析した。本講演では、QCD近藤効果の赤外固定点及びその近傍における様々な物理量を示す。
著者
山形 孝志 敦賀 貴之 植松 良公 生藤 昌子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究課題では、炭素排出権取引市場や炭素税など炭素価格付加政策の排出削減効果と経済活動への影響を、統計・理論、両面からの分析を行う。具体的には、新たな高次元動学パネルデータ統計分析手法を開発し(研究課題1)、世界炭素排出量と経済の国際動学的関係を実証分析する。そして炭素価格付加政策の効果とマクロ経済に与える影響を、上記統計手法(研究課題2)ならびにマクロ経済理論(研究課題3)から分析する。さらに2020年以降の排出削減の国際的枠組みである「パリ協定」に科学的根拠を与えたIPCCの気温上昇予測値が多数の外部研究結果に基づきどのように導かれたかを、新たな統計的手法よって明らかにする(研究課題4)。
著者
片岡 大右
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、(A)近代社会における批判の諸機能を理論的・歴史的に再検討するとともに、(B)そこでのロマン主義というモーメントの重みを見定め、かつ(C)こうした経験との関係で日本的近代の問いがいかに生きられてきたのかを考究することで、全体として、(D)「文学的なもの」の近代社会における身分規定の変容を、19世紀初頭以降の西欧という時空を相対化しつつ再把握することを目的とする。
著者
行松 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.615-623, 1992-06-25

21世紀の広帯域ISDNを実現するためには、現在の千倍以上の情報量を扱える交換システムが必要になるだろうと言われている。それを電子技術だけで実現するのはとうてい不可能であり、光交換に対する期待が次第に高まりつつある。光機能デバイスの研究もこのところ進展が目覚ましく、システム・デバイス両分野で光交換の研究が盛んになってきた。本稿は、本格化し始めた光交換の研究について、システムサイドからその動向を紹介する。幅広い分野の研究者に光交換に対する興味を持って頂くと共に、デバイス研究者にシステムを理解して頂くことを主なねらいとした。
著者
篠田 純子 松倉 節子 久田 恭子 守田 亜希子 中村 和子 山川 有子 相原 道子 蒲原 毅
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.225-231, 2016-07-30 (Released:2016-09-01)
参考文献数
12

柑橘類によるアレルギーの4例を経験した。すべて柑橘類単独でなく,他の果物野菜のoral allergy syndromeを伴っていた。感作花粉はさまざまで,4例中スギが3例,シラカンバ・ハンノキは2例,イネ科花粉は1例,ほかにブタクサ1例,ヨモギ1例であった。プリックテストでは,施行した3例全例においてBet v2が陽性であったことから,プロフィリンの関与が強く示唆された。柑橘類アレルギー患者においてプロフィリン抗体陽性の場合,海外ではイネ科花粉感作の報告が多くみられるが,自験例ではイネ科花粉感作は1例のみであり,シラカンバ・ハンノキ花粉やヨモギ,ブタクサとの交叉反応の可能性が考えられた。また,スギ花粉は3例で陽性であったことや過去の報告から,スギとの交叉反応の可能性も否定できないと考えられた。また,1例については,花粉症はみられたものの,アナフィラキシー症状がみられ重篤であったことから,LTPの関与も否定できないと考えられた。
著者
渡邊 克巳 廣瀬 通孝
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年の多感覚情報提示技術の進歩により、クロスモーダル知覚の研究は新たな局面を迎えつつある。特にクロスモーダル相互作用とその体験によって、感覚や知覚が変化するのみならず、より高次の身体知覚や情動などにも変化が起こり、その結果として行動や意思決定にも変化が現れることが明らかになってきた。本研究では、認知心理学におけるダイナミックな意思決定過程のモデルと行動変容の知見に、五感情報処理技術・VR(ヴァーチャルリアリティ)の分野の先端技術を応用することで、身体・認知能力を変化させるクロスモーダル人間拡張技術につながる知見の蓄積と高度化・体系化を行うことを大きな目的として研究進めている。2019年度(および2020への繰越案件)では、様々なVR環境におけるクロスモーダル知覚の変化を、特に身体感覚の変化、身体所有感の変化、さらにそのような変化にともなう感情の変化などに関する研究をすすめた。また行為主体感に関する研究に関しても、行為主体感が外界の知覚に及ぼす影響を調べる研究を行った。2018年度の研究は既に、査読付き論文として複数公刊したとともに、学会での発表も積極的に行った。
著者
廣瀬 通孝
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

物体と触れる指の姿勢に補正を加えた映像を提示することで,視触覚間相互作用を誘発し,実際に触っている物とは異なる触力覚を提示できる.一方で,強い擬似触力覚提示を狙って深部感覚と視覚のズレを大きくすると身体所有感の喪失がおき,擬似触力覚提示効果の喪失が起こる.この解決のために本研究では,指先などの物体と身体が接触する身体パーツの姿勢だけでなく,全身の身体姿勢の見えに適切な補正を加えることで,複雑な触力覚提示装置を用いることなく自由空間で任意の身体部位へ擬似触力覚提示が可能な新規手法を提案した.この手法を実際に構築し,基礎評価と応用評価を通じて,その性能や適用限界を明らかにした.