著者
横山 幸満 石井 紘 鈴木 将之 上野 勝利
出版者
宇都宮大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

1.大谷石の間隙は全体の40%で、間隙中の水と気体の挙動が強度に影響を及ぼす。岩というより超過圧密土としての性質が卓越する。2.地下水面下にある大谷石を地上で自然状態に放置すると、急速に脱水が進行する。これを吸収させても飽和度は80%にしか戻らない。3.完全飽和及び完全乾燥状態の大谷石の一軸圧縮強度は共に100kgf/cm^2程度で大きいが、上記の乾燥履歴を受けたものは強度が50%以下になる。4.大谷石は多孔質材料であるコンクリートと同様にクリープ挙動をする。50年以上安定している残柱の応力状態を考えると、応力比70%がクリープ破壊のめやすとなる。5.深い陥没は、残柱の逐次クリープ破壊に起因するもので、広い範囲の支持体を失った天盤が曲げ破壊することによって生じるものである。6.浅い陥没は、残柱破壊を必ずしも伴わず、地下水位上で風化を受け易い天盤の曲げ破壊によるものである。7.天盤のドーム状崩落やせん断破壊は曲げ破壊より起こりにくい。8.陥没・落盤等の事故の時系列解析の結果、これらのイベントは地球潮汐応力の球テンソル成分が圧縮の時に起こり易いことが分かった。限界状態にある天盤に対して、地球潮汐応力がトリガー効果を与えたものと考えられる。9.陥没前の地盤振動を解析した結果、約15日の卓越周期を得た。これも地球潮汐応力の影響を示している。10.実際の空洞直上のボーリング孔に高感度ひずみ計を埋設して計測を続けているが、地球潮汐力によるひずみを明確に捉えている。付近の地震計の動きとの相関を追っている状況である。
著者
中谷 正生 飯尾 能久 小笠原 宏 佐野 修 山内 常生
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

断層の滑り摩擦の絶対値を知るために、来るべき地震の断層のすぐそばに精密温度計のアレーを設置するという世界で初めての観測を行った。南アフリカの金鉱山に、地下3kmでの採掘活動が大規模な地質断層のそばで行われているところがある。我々は、この地点で長さ30m程度の多数のボーリングを行い、コアと、孔内ビデオ映像の詳細な解析により、厚さ20mを超える複雑な断層帯の構造を三次元的に描きだした。その結果、断層帯の片側と母岩の境界の厚さ10cm程度の部分だけが、損傷が激しく、際だった弱面になっていることが見出された。この構造は面をつらぬくボーリング孔がカバーする全範囲(10x10m程度)にわたって連続しており、また、相当に平面的であった。この面を中心に、距離1m以内に多くの温度計を設置することができた。断層帯は、主に母岩の砕屑物が固結した岩石でできていたが、その中で面構造を示す部分はごくわずかであった。数センチの厚みで、剪断の集中による葉状構造が観察される所は他にも数カ所あったが、先に述べたものだけが、ぼろぼろの状態で、全ての掘削孔で、この面を通る部分だけ、壁の材質がリング状に失われていた。連続観測された温度データは非常に安定で、この鉱山で発生が期待されるM2-3クラスの地震が、上述の弱面で起こった場合、その滑り摩擦強度が、実験室から予想される値の1/10程度でも、測定することができるほどである。これは、いわゆる地殻応力問題で取りざたされている断層強度の範囲の全域をカバーできていることになる。地震によって起こった発熱による周辺岩盤温度の時間変化をみるこの観測では、地震後1ヶ月ほどのデータが必要だが、地震の被害を受けやすい断層直上での観測であるため、地震後に観測機器にアクセスできなくなる可能性もある。そのため、データの収録、伝送、電源供給方法は無線を含めた多重化を行った。
著者
北浦 賢一
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

高張力鋼HT590材で製作された平滑ならびに環状切り欠き(応力集中係数Kt=1.7、2.4、3.2)を有する丸棒試験片に対して主に低サイクル疲労には落重式衝撃引っ張り疲労試験機を用い、中サイクル疲労には回転式衝撃引っ張り疲労試験機を用いて試験を行い次の結果を待た。1)低サイクル領域では平滑材、切り欠き打=1.7の破壊形式は断面収縮型の疲労破壊を示す。2)断面収縮型の疲労破壊を示す残留ひずみの挙軌は応力の大きさによらずクリープ初期領域、残留ひずみの増加量Δε_c(=dε/dN)がほぼ一定のクリープ安定領域およびクリープ加速領域の3段楷に分けることができる。また塑性ひずみ速度Δε_cはΔε_c/Tの値である。ここで、Tは最大応力持続時間である。3)Δε_cと衝撃応力δの間には次の関係がある。δ/δn=S・(Δε_c/ε_f)^β (a)ここに、S、βは試験片形状によって定まる定数4)Δε_cと衝撃引っ張り疲労寿命N_fの間には次の関係がある。(Δε_c/ε_f)・N_f^m=C (b)ここに、m、Cは材料定数5)破断繰り返し数N_fが5000回以上の場合の形式は平滑材および切り欠き材ともにすべてクラック型の疲労破壊である。6)落盤式疲労試験と回転式疲労試験の衝撃疲労強度は次式により表わすことができる。δ(N_f・T)^n=D (c)ここに、n、Dは試験片形状によって定まる定数
著者
小杉 康 佐々木 亨 橋本 雄一 鈴木 正章 瀧川 渉 山崎 京美 富岡 直人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

「噴火湾北岸縄文エコ・ミュージアム」の基本計画を作成し、小幌洞窟遺跡、有珠6遺跡の発掘調査による学術成果に基づいて、それぞれの遺跡をサテライトとして整備して、コア・ミュージアムを開設した。
著者
小林 正彦 真浦 正徳 前川 秀彰 藤原 晴彦 島田 順 黄色 俊一
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

1.精細胞の移植について、飼育条件による有核精子と無核精子の割合の変化を調べた。その結果、低温暗催青した非休眠性幼虫では無核精子の割合が休眠性幼虫に比べて多いことが明らかになり、現在使用しているB系統に二化性の遺伝子を導入し低温暗催青することにより、より効率のよいドニーの系統をえられることが判明した。2.カイコの分散型反復配列BMCI多重遺伝子族をベクターとし、クロラムフェニコールアセチル化酵素遺伝子をマーカーとし、熱ショック蛋白質遺伝子のプロモーターをもつプラスミドpBmhscatを構築し、カイコの培養細胞にリン酸カルシュウム共沈法により導入した。その結果、比較的効率よくゲノムDNAと組換えを起こしていることが明らかになった。これを精細胞に応用し、組換え精細胞および組換え体カイコが得られる高い可能性が示唆された。3.カイコの前胸腺刺激ホルモン遺伝子と休眠ホルモン-PBAN遺伝子について多型を検索し、それぞれ遺伝子座位を決定した。カイコの前胸腺刺激ホルモン遺伝子は第22連関群の2.7に占座し、精細胞移植法によりホモ致死個体が救出されたskuと同一の連関に属し、移植の指標に使えることが明かになった。4.異種間細胞の移植のため、エリサンの精巣をカイコに移植し移植適性を調べた。その結果、移植された精巣は体液中では消化されるが、精細胞の移植では細胞が健在であることが明らかになった。5.種間雑種を作り出すため、カイコの培用細胞とマウスの培養細胞の融合条件を検索した。その結果、400v/cmの至適の条件では効率よく融合細胞が得られることが明らかになった。6.遺伝子導入と細胞融合に用る電気細胞穿孔法の精原細胞への影響を調べた結果、300v/cm以下では精細胞まで分化し移植が可能であった。
著者
中野 照男 西川 杏太郎 内田 俊秀 西山 要一 尾立 和則 増田 勝彦 三浦 定俊 川野辺 渉 青木 繁夫 中野 照男
出版者
東京国立文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

この研究は、展示や保管における日常的な地震対策に関する研究、地震発生時における緊急措置に関する研究の2本の柱から成る。両研究とも、阪神淡路大震災の折に被災した博物館等の機関、社寺、所蔵家をはじめ、文化財の救援活動に携わった諸機関、諸団体及び個人の協力を得ながら遂行した。震災直後に諸機関や諸団体が行った被害状況調査の報告、被災博物館等による被害の具体的状況に関する調査報告、震災後に博物館等が文化財や試料の収蔵、保管、公開、展示のために実施した改良や工夫に関する情報を、基礎的情報として、可能な限り収集し、それらを解析することによって、新しい防災対策策定のための指針を導き出そうと努めた。その上で、免震装置や吊金具、固着剤など、震災後に大いに着目されている装置や材料、防災対策にとって重要と思われる事項については、それらの有用性や問題点の所在を、実験や分析を踏まえて検討した。さらに、万一災害が発生した場合の文化財等の保全方法、被害を最小にとどめるための緊急措置、文化財等の救出や救援活動などについては、阪神淡路大震災やその他の災害の折の研究分担者、研究協力者の経験をもとにし、諸外国での研究成果を取入れて研究を進めた。また、災害に対応するための博物館や美術館、地方公共団体等のネットワークの形成に関しては、多くの機関に協力を呼びかけ、意見を交換しながら研究を行った。また、資料や参考文献等を多数収集したが、これらは、神戸市立博物館内の文化財防災資料センターにすべて移管し、今後の新たな研究や防災対策の策定に活用する。
著者
岩岡 中正 首藤 基澄 吉川 榮一 谷川 二郎 中村 直美 中山 將
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、[I]人間社会基礎論研究と[II]比較地域論の二方向から、近代(化)の検証と今日的意義およびその普遍化可能性について考える。[I]の(1)の哲学・倫理学・美学部門では、近代の主観主義的人間観の射程の研究(中山)、個人主義概念の基礎的研究(岡部)、自由主義的人間観の限界と地球全体主義の提唱(篠崎)が、(2)の法哲学・政治学部門では、近代リベラリズムにおける自律概念の研究(中村)、脱近代パラダイムの視点からの、「普遍」としての「近代の研究(岩岡)、アレント研究を通しての、政治的アイデンティティの研究(伊藤)が行なわれた。[II]の(1)の「英米における近代化」では、16世紀の英語の語彙の近代化の研究(上利)、シェイクスピアの戯曲における英国近代化の萌芽の研究(谷川)、19世紀英国小説に見る労働者と近代化の影についての研究(大野)、アメリカ小説に見る、コマ-シャリズムという近代化の悪き側面についての研究(里見)、さらに(2)の「アジアにおける近代化」では、祭元培の人権意義の非西洋的由来に見る中国近代化の特殊性の研究(吉川)、夏目漱石と芥川龍之介における日本近代化の理念の比較研究(首藤)、国民国家的視点からの日本近代化の研究と近代化論の批判的考察(小松)が行なわれた。通算13回の研究発表会と11回の研究打ち合わせ会から、以下の視点を得た。つまり、[II]グループの研究から、今日、単線的進歩の近代化論は受け入れられず、西洋も含めて世界の諸地域が多様な近代化をとげてきており、したがって近代化の一義的普遍化は困難であること、しかし他方、[I]グループの研究が示すように、やはり現代社会には「近代」に共通の普遍的な成果と問題点およびその克服の試みがあるという認識に立って、地域的な多様な近代化における個別性と、真の近代がめざす「人間の善き生」という普遍性をどう止揚するかという視点の重要性を確認した。この視点から今後さらに近代についての研究を進めたい。
著者
小杉 幸夫 亀山 啓輔 宇都 有昭 小阪 尚子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

防災・農林業・医療などで用いられる画像処理の自動化を目指し、画像の撮影状況によって与えられるアプリオリ情報を有効利用する処理の枠組みについて研究を進めた。特に、高解像度画像やハイパースペクトル画像の処理については、適度に自由度を制限したモデルの導入により観測対象の情報を的確に得る枠組みを構成した。主な成果を以下列挙する。被害域の推定:本例では、発災前に撮影された衛星画像をアプリオリ情報として扱い、発災後に撮影された画像を「一致強化」の原理による非線形写像アルゴリズムの中で比較し、被害家屋の分布等の変化域抽出を行った。本方式は2003年12月に発生したイラン南東部地震に伴うBam市の被災例に適用され、処理結果は我国の現地調査団にも提供され、検出結果の妥当性が現地調査で検証された。農作物の糖度推定:農作物の風味は含まれる蛋白量や糖度、アミノ酸等の割合に依存する。収穫後の分析より得られるこれらの量を、収穫前の作物のハイパースペクトル画像から推定することを試みた。この推定系では、ハイパースペクトル画像の多数の波長間の演算をニューラルネットワークとPSO(particle swarm optimization)法を組み合わせた方法で最適化した。この推定では収穫後の分析値を教師データとして用いている。人肌抽出指標の導出:短波長赤外域のハイパースペクトル画像から水面下や土砂上に横たわるヒトを効果的に検出する際のアプリオリ情報活用法について解析を行い、ヒトの皮膚の持つ特異的なスペクトル情報を活用することで肌を顕在化させる正規化指標NHI(normalized human index)を見出した。周期植生の独立成分分析:高高度ハイパースペクトル画像観測の際に発生する混合ピクセル問題を解決する一方法として、少数のパラメータを含む混合ピクセルモデルを導入し、超解像観測で発生する混合ピクセルを一定の条件のもとで個々のピクセル情報に分離する方式を提案した。
著者
水野 寿朗
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

動物の初期発生において胚形態やサイズが各種の発生様式の決定に与える影響を明らかにするため、下等脊椎動物の典型的な発生様式に対応するモデルを提案し、関連する実験系を開発して提示した。胞胚期の中胚葉形成に与える細胞密度が関連すること、原腸胚期以後の正常な胴尾部形成には一定の卵黄サイズが必要であること、さらに器官形成期の体節数決定に胚サイズが影響することが示唆され、巨視的な胚空間の役割が生物学的に意義付けられた。
著者
小林 英樹
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は、以下のことに取り組んだ。1.「映画化(する)」の「化」など、漢語を構成する言語単位の造語機能について分析を行った。その成果を、小林英樹(2006)「漢字の造語機能」(『朝倉漢字講座2 漢字のはたらき』)として、まとめることができた。2.「助けることを表す漢語サ変動詞」の分析に取り掛かった。その結果、以下のようなことが明らかになった。(1)通常は、危険なところから安全なところに移せば(救出すれば)、助けたことになるが、救出しても、助けたことにならない場合(手遅れのケース)もある。(大島署や地元消防団員らに5日午前9時50分に救出され、病院に運ばれたが、すでに死亡していた。(朝日新聞1993年7月5日))(2)助けることから許すことに移行しつつある「救済(する)」がある。(恩赦は平成に入ってから「大喪恩赦」(89年)と「即位の礼恩赦」(90年)の2回あり、いずれも政令恩赦として行われ、選挙違反者が大量に救済された。(朝日新聞1993年5月6日))以上のようなことを、小林英樹(2006)「漢語サ変動詞の意味・用法の記述的研究-「救助(する)」、「救出(する)」などをめぐって-」(『日本語文法の新地平1形態・叙述内容編』)として、まとめることができた。3.「建てることを表す漢語サ変動詞」の分析に取り掛かった。その結果、以下のようなことが明らかになった。(1)「建築(する)」は、モノ名詞として使うことができるが、「建設(する)」、「建造(する)」、「建立(する)」は、モノ名詞として使うことができない。(古い{建築/*建設/*建造/*建立}の保存に熱心だ。)(2)内項になるものの範囲は、「建設(する)」の方が「建築(する)」よりも広い。(新庁舎を{建設/建築}する。ヨルダンとの連合国家を{建設/*建築}する。)以上のようなことを、小林英樹(2007)「漢語サ変動詞の意味・用法の記述的研究-「建築(する)」、「建設(する)」などをめぐって-」(『語学と文学』43)として、まとめることができた。
著者
牧山 康志
出版者
文部科学省科学技術政策研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

児童虐待問題の解決を図る施策に、育児支援、虐待事例への対応、及び、社会的養育の3本柱がある。これらへのアプローチを統合的に行い、最善の公共政策の実現を図るためには、現場を取り込み、一貫して問題の解決を図ることに責任と権限とを担う行政の機関と、ネットワークの枠組みなど、共同体のガバナンス(協働的統治)が適切に機能する制度的枠組みが必要である。優れた政策策定能力、現況に即した施策の決定・実現・見直し、その鍵となるのが、「中間的専門機関」を核とするガバナンス制度にあることを本研究で明確にした。
著者
長瀬 勝彦
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の成果のひとつとして、意思決定と理由との関係について整理することができた。意思決定は事前に設定された理由に基づいておこなわれる、また意思決定をした本人はその理由を事前に認識しているし、事後に想起された理由も信用できるというのが一般的な通念であるし、規範的意思決定理論とその関連分野の研究も、基本的にはその認識に立脚している。しかし、われわれの研究を通じて浮かび上がってきたのは、理由がもっと不確かで融通無碍な存在であることである。人間の意思決定のほとんどは無意識的におこなわれるが、そこに理由があるかどうかもあやふやであるし、あったとしても意識されていない。意識的な意思決定に際しては、しばしば理由探しがおこなわれるが、分析的な理由付けは人間本来の意思決定とは質的に異なっているために、期待ほどの成果が上げられない。他者に説明するときとそうでないときには異なった理由が採用される。事後的に想起された理由は、客観的な記録ではなく、そのときに妥当と思われた解釈であって、無意識の自己正当化などに影響されている。理由のこのような側面は、さらに研究していく必要がある。そのほかの成果として、人間の記憶の不確かさについて、やや新しい知見が得られた。過去の研究では、日常的に目にしている紙幣や硬貨のデザインを描かせると、ほとんどまともに描けないことが見出されている。それをもって記憶の不確かさの証左のひとつとされてきたのであるが、紙幣や硬貨はデザインが複雑であるし、記憶しにくい。本研究では、コンビニエンスストアのセブン・イレブンとローソンの看板のマークを被験者に描かせた。このようなマークは単純で、目立つようにデザインされている。したがって記憶に残りやすいと予想される。しかし、ほとんどの被験者は十分に正確とみとめられるほどには描くことができなかった。
著者
田仲 浩平 塚本 寛 田仲 浩平 塚本 寛 福富 純一郎
出版者
徳島文理大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

研究では,血液ポンプに対し水圧変化および管路抵抗の変化,また血液ポンプ回転数の周期変動試験を組み込んだ自動負荷試験機を開発し,生体の循環動態同様の機械的な負荷能力の機能を確認することにある.開発した試験機については,疑似血液,拍動成分,コンプライアンス管などの追加と生体循環に近似した病態プログラムの機能を付加し,血液試験や動物実験回数を減少させつつ,多様な血液ポンプ類の特徴を明らかにし評価することが可能である.
著者
鈴木 英一
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

最終年度の本年度には,過去二年間の研究を踏まえ,インターネット上の英語データから作製する言語データベースを英語研究・英語教育に利用し易いフォーマットに変更する方法を検討し,インターネットから良質の英語のウェブページを収集し,それから英語のデータベースを作成するための方法を検討した.このような方法をできる限り容易に実現できるように次のような検討を行った.(1)どのようなフォーマットをもつ言語データベースが一般的に最も柔軟で多目的であるかの検討(2)これまでの言語データベースを使用した経験に基づいた,言語研究・言語教育に最適なフォーマットの検討(3)データベースのフォーマットを使用者の希望に応じて再構成できるプログラムの検討(4)英語データの検索→英語文の抽出→英語データベースの作製→データベースのフォーマットの変更という手続きを簡単に行う方法の検討英語研究と英語教育に最も適切なデータベースの形式は,一つの文が一行になっている,すなわち,一つの英文が改行によって複数の行に分けられていないフォーマットであることが確認された.このような形でインターネットのウェブページを最も容易に利用できる方法は,MicrosoftやGoogleやYahooが提供する,いわゆるDesktop Searchと呼ばれるものである.これは,使用者のハードディスクの内容とインターネットのウェブページをシームレスに検索してくれるものである.また,データベースを作成するためにはhtmlファイルを効果的にテキストファイルに変換する必要があるが,最近,「html→テキスト変換」のソフトウェアがフリーウェアを含めて,かなりのものが出回っているので,どれがより使いやすいかを詳細に検討した.Desktop searchや「html→テキスト変換」によって得られたデータは,出典をタグとして付加し,さらに,行数も付け加えることによって,使い易くなることが明らかになった.今後は,3年間の研究を踏まえて,データベースの作成のためのプログラムの紹介や利用方法,作成された英語データベースのサンプル,英語データベースを利用した英語研究や英語教育への応用にいてまとめて,公刊したいと考えている.
著者
八神 健一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、パルボウイルス非構造タンパク(NS)がTリンパ球にDNAメチル化を誘導し、アポトーシス抵抗性や細胞増殖性等の形質変化を起こすことを明らかにし、in vivoにおいてNSの発現によりコラーゲン誘導性関節炎の発症率への影響を検討した。NSを発現させたマウスTリンパ球は大半の細胞がアポトーシスにより死滅したが、生存細胞ではDNAメチル化の亢進によりBmperの発現が抑制され、ウイルス再感染抵抗性を獲得することが明らかとなった。また、NS発現ベクターを接種したDBA/1マウスにコラーゲン関節炎を誘導したが、その発症率は対照群との間に有意な差は認められなかった。
著者
北村 晶
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

全身麻酔薬の作用機序の探索を目的として、ラット皮質ニューロンの初代培養標本から、パッチクランプ法をもちいて自発性抑制性および興奮性シナプス後電流(miniature IPSCおよびEPSC)を記録し、ハロタンとプロポフォールの興奮性および抑制性シナプス伝達へのmodulationについて調査した。麻酔薬はシナプス後膜への効果として抑制性GABAergicなシナプス伝達を増強する作用があり、今回の実験でもそれぞれの麻酔薬がCl^-電流を増強した。シナプス前への効果の機序として、神経伝達物質の放出への影響のメカニズムを考察するために、選択的Ca^<2+>チャンネル拮抗薬を用いて、frequencyへの効果を調査した。ハロセンはfrequencyを低下させ、ω-conotoxinおよびω-agatoxin存在下ではその低下の効果が減少した所見が得られた。すなはちハロセンはN-typeおよびP/Q-typeのCa^<2+>チャンネルをブロックすることで、細胞内カルシウム流入を減少させ、シナプス前よりの興奮性神経伝達物質の放出を抑制する可能性が示唆された。miniature IPSCへの効果において、両薬剤はdecay phaseおよびamplitudeeへの効果から、Cl^-電流の動態が一様でないことが観察された。cell-attachedモードにおいて、それぞれの麻酔薬によりコンダクタンスは変化せず、開口確率を増加させたが、ハロタンではmean open timeの延長、プロポフォールではinterburst intervalの低下が観察された。以上の結果より、薬剤によっての神経伝達物質の放出の抑制作用、Cl^-チャネルの開口確率の増加、開寿命の延長、閉寿命の短縮へ及ぼす作用に相違があり、臨床作用での相違に関連づけて考察した。
著者
青山 吉隆 中川 大 松中 亮治 柄谷 友香 田中 啓一
出版者
広島工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近年においては従来の大量消費型ライフスタイルから,都市における生活の質「都市アメニティ」を重視したライフスタイルへの転換期を迎えている。この「都市アメニティ」は,人々の生活の豊かさと環境保全の共生を図っていくうえで重要な概念となっている。そこで,本研究では,都市アメニティの維持・拡大と環境が共生した都市社会システムを構築するための施策体系を明らかにする。具体的には,まず「都市アメニティ」の概念を体系化・計量化する。また,都市アメニティの利害関係者の構成を明らかにすると共に,受益と負担に対する施策の提示と目標に向けた実現可能性についての合意形成を目指した。本研究の成果をまとめると以下の通りである。1.都市アメニティを,「ある空間に存在する多種多様な都市の要素の量・質・配置に対して、ある都市活動を行うに際して大多数の人々が主観的に感じる共通の価値」と定義し,空間アメニティ・アメニティ機能・アメニティ要素といった階層構造として提示した。2.京都市北部における学校・緑地・神社仏閣・墓地の4つのアメニティ要素を対象に,その影響範囲を明らかにした。さらに,京都市都心部において,面的集積を保持した京町家の近隣外部効果は土地資産価値を高める傾向があること,京町家の影響範囲よりも中高層建築物のほうがより広範囲な学区レベルに及んだこと,中高層建築物の集積が土地資産価値を低める傾向にあること,以上3点を明らかにした。3.京町家まちなみ保全の活動に対して,周囲の協力の割合が高いほど,個別地域住民の協力選択確率が高まること,調査対象とした元学区19のうち,16の地域では潜在的な保全可能性を担保していること,これを担保していない3つの元学区に対しては,社会的相互作用の視点から,保全可能性を確保するための方策案を各元学区の特性に応じて提示した。
著者
小林 茂雄
出版者
武蔵工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

平成19年度は、前年度に実施した岐阜県白川村の平瀬地区における照明実験の結果を分析すると共に、平瀬地区における屋外照明の実施計画をまとめた。すなわち、既存のポール灯による街路照明ではなく、街路に隣接する空地や建物壁面などの照明を配置した低輝度分散型の照明計画である。防犯性と周辺への見通しを高めると共に、消費エネルギー量を現状よりも小さくするという提案であり、研究成果を基にした光環境整備まで結び付けることができた。さらに横浜市中区の山手西洋館において、場所の認知を促すと共に、歩行者の安心感を高め、消費エネルギーが高くならないようなライトアップの手法を検討し、2007年12月に実施した。照明方法としては、地域の象徴となる建物ファサードの中で、場所の認知につながる部位を抽出し、そこに光を集中させることと、人の気配を醸し出すような光をファサードにつくるということである。一部の街路灯を消灯し、筆者らが提案する低輝度分散型の街路照明も実験的に提示した。地域住民へのアンケート調査を基に照明を計画し、実施後にそれらの効果を検証した。以上の様に本研究では、異なる二つの地域を対象とし、各々の街の特性に合せた照明計画を実験的に提示し、その防犯効果、歩行者への安心感に与える効果、見通し、場所の認知への貢献度、などを検証した。そして何れの提案に対しても、現状の街路照明よりも、光束量が約1/4となり、消費エネルギーを削減できることを示した。
著者
平野 和弘
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

科研費補助金の助成を受ける以前からのものも含めて30名の群馬の小・中・高の教師の公開インタビューを実施し、参加者が10名に満たない時もあったが、多い時は50名を超える一般市民も含めた参加者たちと共に、「語り」を触媒とする地域における意味生成の実験的空間を創出・維持してきている。その貴重な記録は、「戦後教育史学習会ニュース」というかたちで学習会を支える会員たちに郵送され、さらにそれを製本した「年報戦後教育史を学ぶ」も3冊が刊行済みで、4冊目もすでに編集を終え、印刷・製本を待つばかりになっている。2009年3月にはシンポジウム「日本の教師の歩んできた道」を開催し、北海道における「教師の学校」の実践・研究との交流を通じて、教師のライフヒストリーの語り・聞き取りの研究的実践の現段階における成果と課題を確認した。
著者
中野 優
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

コルチカム科花き園芸植物を用いて遠縁種間交雑を行ったところ、胚珠培養により、グロリオーサ類、サンダーソニアおよびリットニア間の複数の組み合わせにおいて属間雑種が得られた。これらの雑種は、いずれも新規形質を示したことから、コルチカム科花き園芸植物における新品種育成に属間交雑が有効であると考えられた。また、GISH法により属間の染色体が明確に識別できたことから、属間のゲノムの相同性は低いことが予想された。