著者
入江 仁士
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本課題で開発したグリオキサール(CHOCHO)の高度分布導出法でMAX-DOASのスペクトルデータを再解析したところ、北京市・泰安市・横須賀市では大気境界層中のCHOCHO濃度が平均で約200pptvと高濃度であったことが分かった。つくば市と辺戸岬では80pptv程度であった。衛星データを組み合わせたところ、横須賀周辺では高濃度域は数十km以内、中国では数百kmの空間スケールで拡がっていたことが示唆された。
著者
中森 広道
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「緊急地震速報」についてアンケートを中心に調査研究を行った。一般住民に対しては、緊急地震速報の認知度・理解度ならびに評価などについて、地方自治体と不特定多数の収容施設(百貨店)に対しては、導入・運用に関する現状と評価について、それぞれ調査を行った。その結果、緊急地震速報についての一般住民の認知度はある程度高くなっているが、具体的な内容や意味についての理解度は必ずしも高いとはいえなかった。また、地方自治体や百貨店などで緊急地震速報の導入ができてない施設は、速報による人々の混乱を懸念するのではなく、予算や設備の問題が大きいことが明らかになった。
著者
前 泰志
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

緊急地震速報直後など緊急時に人間がとるべき行動を,人間の動作や状況の変化に応じて適宜指示する実時間行動指示システムの構築に関する研究を行った.人間がより理解しやすい行動指示法として,音声指示だけではなく,室内に設置したプロジェクタを用いて緊急避難のための室内での安全領域を提示する方法を提案した.実験により安全領域と避難経路の提示,簡潔な音声指示の組み合わせが避難行動をわかりやすく指示できることがわかった.
著者
山崎 文雄
出版者
東京大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究では,地震の横揺れが到着する前に,地震発生情報を高速道路走行中のドライバーに伝達する方法について最新の技術的検討を行い,どのような方法が可能かどうか,その実現性や限界を含めて検討した.地震発生を鉄道総合技術研究所が開発したUrEDAS的な方法で即時把握し,VICS(ビ-クル・インフォメーション・アンド・コミュニケーション・システム)を利用してドライバーに知らせることを第1候補としながらも,その他の方法,たとえば沿線の電光表示板を密に設置して伝達する方法や,他の通信メディア(たとえば携帯電話やポケベル)を利用する方法などについても考慮した.その結果,現時点のVICSでは,装着率が低く,一部の車両にのみ地震発生を通報しても,都市部における事故や被害の低減にはつながらないであろうという結論になった.しかし,車両の自動運転区間などにおいての適用可能性は高く,また,東海地震の警報が発令された場合など,ラジオの受信を義務づけられるような状況においては,有望と考えられ,今後の研究を続けたいと考えている.
著者
家 正則 高見 英樹 早野 裕 柏川 伸成 高見 英樹 早野 裕 柏川 伸成
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

レーザーガイド星補償光学系をすばる望遠鏡の共同利用装置として完成させ、すばる望遠鏡の視力を10倍に改善した。その結果、補償光学系を用いた新観測装置の開発などが始まり、高解像観測の利用が大幅に増えた。代表者を中心とする研究では赤方偏移7.215(距離129.1億光年)の最遠銀河を発見し、宇宙初期の銀河の計数から宇宙の再電離(宇宙の夜明け)が、ほぼこの時期に起きたことを解明した。
著者
山田 昌孝
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では消費者の革新性とイノベーション採用行動の間に、「わっ、すごそう」などという採用行動の前に新しく「ポジティブな強い心の揺れ」という概念を導入し、「わくわく度」という尺度で測定する。採用に踏み切るためには、革新性がより高くさらに当該イノベーションにより強く心を動かされた消費者がより早く、高い確率で採用することを生存関数モデルを用いて実証し、理論的にも予測精度としても精緻化に成功している。
著者
緒方 靖哉 熊谷 健一 吾郷 眞一 北川 俊光 久原 哲 白畑 實隆 井上 治典
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究の成果として、研究代表者及び分担者の所属する九州大学大学院農学研究科遺伝子資源工学専攻と法学部の教官が担当し、遺伝子資源工学専攻及び法学部の学生を対象に「バイオテクノロジー概論」及び「バイオテクノロジー法学概論」と題する学際講義を、この三年間にわたり開催した。平成7年度には、「バイオテクノロジーと法」と題するシンポジウムを開催し、バイオテクノロジーにおける知的所有権の問題を取り上げ、バイオテクノロジーの分野における法の関与に関し議論を行った。また日本農芸化学会主催の第20回化学と生物シンポジウムにおいて、本研究分担者である法学部教官が全面的に協力し、遺伝子導入生物の法学的見地からの解釈について討論を行った。平成8年度には、LHL(Life-Human-Law)研究会を三回開催し、バイオテクノロジーにおける成果物の知的財産としての保護のあり方、生物資源情報に関する問題点と法学的な保護のあり方及び現実に行われたDNA鑑定と現時点におけるDNA鑑定の根本的な問題点などについて、活発な討論会を行った。また九州バイオテクノロジー研究会・平成8年度技術講習会を開催し、バイオテクノロジーにおける基礎技術の公開とその提供を行った。平成9年度においては、本研究主催で“理系と文系の情報交流の現状と今後の課題"と題する公開シンポジウムを開催した。本シンポジウムにおいては、財団法人工業所有権協力センター・広田洋二郎氏及び福岡県弁護士会・岩田務氏を招聘し、討論会を行った。さらに本研究分担者、農学、法学研究科大学院生をパネラ-とし、法学・農学研究科における大学院学際講義の現状の把握と今後に向けた問題点の整理・検討を行った。
著者
岩宮 眞一郎 高田 正幸
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

工業製品から発せられる音の感性的側面(音質)の経済的価値を評価するために,マーケティングリサーチの分野で用いられるコンジョイント分析を利用した検討を行った。本年度も,掃除機とドライヤーの稼動音を対象とした。先ず,市場調査により,これらの機械製品を特徴付ける属性(性能,デザイン,音,価格など)と水準を設定した。音属性の水準を設定する際には,A特性音圧レベルやシャープネス(音の鋭さの指標)の2種類の音響指標の値を基準としたが,A特性音圧レベルが変化したときにはシャープネスは一定であり,その逆も同様であった。全属性のさまざまな水準を直行計画により組み合わせた27種類の製品プロファイルを被験者に呈示し,各製品に対する選好度を回答させた。実験は2種類ある音属性を入れ替えて個別に行った。実験の際,音属性の各水準に対応する稼動音を被験者に聴取させた。実験には50名(男女各25名)が参加した。得られた選好度の回答結果にコンジョイント分析を適用し,製品を特徴付ける各属性の重要度や属性毎の各水準に対する効用値を求めた。各属性の重要度を比較すると,掃除機の場合,音属性をA特性音圧レベルおよびシャープネスとしたいずれの実験結果でも「価格」「付加的機能」「メーカー」の順に重要度が大きい。また,「タイプ」「集塵方式」「音」の各属性の重要度は「メーカー」属性よりもやや低い。ドライヤーの場合は「価格」「タイプ」「メーカー」「マイナスイオン発生機能」「音」の順に重要度が大きかった。音属性の1水準の変化に対する経済評価値を求めた結果,掃除機では5dBAのA特性音圧レベルの変化に対して3347円,0.25acumのシャープネスの変化に対して3692円と評価された。ドライヤーでは,6dBAのA特性音圧レベルの変化に対する評価額が591円であった。これらの評価額は価格属性4水準の平均の約11〜13%に相当し,昨年度行った仮想評価法による評価結果と近いものであった。さらに,稼動音を呈示せずに同様の実験を行った。得られた重要度や経済評価値と音を呈示した実験の重要度や経済評価値にはやや差があり,稼動音を聴取させる代わりに行った教示の影響が示唆された。
著者
木原 成一郎 徳永 隆治 平井 章 梅野 圭史 日野 克博 刈谷 三郎
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度は最終年度にあたるため、研究の総括とそれに必要な作業を中心に行った。1、前年度に日野氏と米村氏が中心となって教員養成段階で身についた「実践的指導力」を調査する方法として、学生に視聴させる体育授業のビデオ教材を開発した。本年度は、学生にこのビデオ教材を視聴後自由に質問紙に感想を記述させ、その記述をKJ法を用いて分類し、「実践的指導力」の下位項目と考えられるカテゴリーを取り出した。2、さらに、研究分担者の所属する大学で行う模擬授業や教育実習の反省会の前後に、この開発したビデオ教材を視聴させて学生に自由な感想を記述させ、この「実践的指導力」の下位項目と考えられるカテゴリーを基準として、「実践的指導力」の到達状況を把握した。その到達状況の結果をもとに、対象とした学部、コースの体育科教育関連科目(教育実習を含む)の改善点を明らかにした。3、これまで得られた知見に基づき「技術的実践」と「反省的実践」の双方からなる「実践的指導力」を向上させるための、模擬授業や教育実習での教える体験とその体験を省察する理論的学習の双方を結合させる体育教師教育プログラムを開発するための原則を提案した。4、以上の研究成果について第59回日本体育学会(早稲田大学)及び第28回スポーツ教育学会(奈良教育大学)で発表し研究成果に対する研究者のご批評とご意見をいただいた。それらのご批評とご意見をふまえて、最終報告書を作成した。
著者
岡崎 章 中館 尚也 丸 光恵 内藤 茂幸 小越 明美 油谷 和子
出版者
拓殖大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,チャイルドライフ・デザインという新しい概念をもとに感性デザインの専門家と看護学の専門家の協力によって進め,プレパレーション・ツールを初めとして,関連ツールを開発した.当初プリパレーションと表記されていたものが3年間にプレパレーションという表記に変わるなど,まだ定着していない分野であったが,医療看護現場・看護教育現場に実用ツールを提供できたことは,本研究の成果である.本研究開発ツールの有効性は,手術用と骨髄穿刺用のツール"Smile"では動作解析システを,腎生検用ツール"Yutori"ではアイマークカメラを使うことで定量的な評価を実施した.これに看護側の定性的な評価を加えて検証した."Smile"は,改良を加えながらチャイルドライフ・デザインのHPから無料ダウンロード提供を実施しており,ツールの効果と取り組みに対して,2007年医療の質・安全学会ベストプラクティス特別賞を受賞した.同内容のプレパレーション絵本「入院患児のための手術用プレパレーション」は2007年グッドデザイン賞(中小企業庁長官特別賞)を受賞した.子どもの不安感や恐怖感は,プレパレーション・ツールだけで払拭できものではなく,処置直前時の恐怖軽減,処置中の注意転換など,プレパレーション・システムとしてのストレスコーピング・ツール,ディストラクション・ツールが必要なことを明らかにし,6種類開発した.詳細な研究プロセス・開発ツールは,チャイルドライフ・デザインのHP(http://www.childlife-design.com/)に記載している.
著者
大橋 裕太郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

「理科離れ」と呼ばれる理科や科学に対する若い世代での興味・関心の薄れの問題に対して、筆者はサイエンスコミュニケーションのアプローチから問題解決のための試みを行った。サイエンスコミュニケーションとは、最先端の科学を市民へ紹介し、理解を促すことで社会全体の科学への理解促進を目的とした活動を指す。近年、博物館や科学館などの文化施設、さらには野外学習の場では、ITを利用したサイエンスコミュニケーションを支援する試みが盛んに行われている。筆者は、自然や理科に楽しみながら親しむことができ、真正性がある学習の場として水族館の教育的価値に着目し、水族館におけるITを利用した学習環境デザインを行った。神奈川県藤沢市の新江ノ島水族館と共同で、携帯端末を利用した映像ナビゲーションシステムのアプリケーションを開発し、2008年5月3日から6日の4日間にわたって来館者に対して実証実験を行った。システムの利用後に、満足度や操作性、内容やネットワークに関する質問紙調査を行った。質問紙調査の結果から、システムの操作性やコンテンツに対して好意的評価を得た。特に「システムが観察に役立った」、「システムによって知識が深まった」など、学習効果に関する質問項目に肯定的に回答した利用者数に有意な差を確認することができた。その他、利用者の会話によるプロトコル分析から、利用者の観察行動の特徴を抽出した。利用者は端末のディスプレイを他者と共有することで相互的な気づきを促進していることが分かった。実証実験中にアクセスの集中などにより、ネットワークの接続に問題が発生したことがあったため、この点は今後の課題である。
著者
齊木 崇人 小玉 祐一郎 宮代 隆司 土肥 博至 杉本 正美 上原 三知 佐藤 滋 土肥 博至 杉本 正美 上原 三知 佐藤 滋 中井 検裕 鎌田 誠史 橋本 大樹 長野 真紀
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

新しい住宅地開発プロジェクト、神戸・ガーデンシティ舞多聞の実践と、本研究の指針とした、E・ハワードの田園都市思想とガーデンシティ、それらの系譜にみるコミュニティのフィールドワークを同時進行的に行うことにより、将来の持続可能なコミュニティの創出・再生を目指す居住環境計画に対する、「特有価値を持つ空間デザインを生み出す手法」「コミュニティ形成を促す方策」「空間とコミュニティを持続・向上させるエリアマネジメントの仕組み」の指針を導き出した。
著者
佐野 明人 藤本 英雄
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は, 動力やコンピュータを持たない歩行ロボットに関するものである. ロボットを歩かせるのではなく, 歩けるような脚・足にすることで, ロボット自身が自然かつ滑らかに歩行することができる. 開発したロボットは, 約2時間歩き続けたり, 時速3.3[km/h]で素早く歩いたりすることができ, しかも歩く姿はヒトそっくりである.
著者
平石 貴樹 高橋 和久 大橋 洋一 柴田 元幸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の基本的目的は英米圏文化における映画と文学との相互作用をその界面において考究すべく、電子化された映画映像と電子化された文学テクストを利用することであった。だが同時に利用できる電子媒体が、真摯な文化研究計画にとっては、十分に活用できない不備なものであったり、研究にふさわしくないものも多く、自らデータベースを立ち上げる必要に迫られ、その作業に着手した。利用可能でその有効性が飛躍的に高まるようなデーターベースの構築を進めると同時に、文学と映画をオリジナルとアダプテーションという観点から捉え、その関係を、境界画定と境界破壊の両面から考察することになった。計画は両面あり、ひとつは材料を限りなく収集し、電子化しデータベース化する作業、いまひとつは理論的考察によって文学文化における映画の意味、文学と映画の相互作用などを考える準備として、文学の映画化作品との関係を考慮することであった。最終結果としてのデーターベースの完成(このようなデータベースは完全なものはありえないが)を見なかったが、作業は継続している。理論的考察としては、オリジナルとアダプテーションとの関係が明確ではなくなるという難題に直面した。これは現代の複製文化から翻案文化すべてに共通する大きな問題で、文学と映画と載然と二分化することを困難にする理論的難題であって、完全な解決などありえないが、この問題を契機にさまざまな思考や理論を考案することになった。文学と映画との関係は英米圏文化では、従来考えられていた以上の予測不可能な多様な関係を形成していることが確認され、また両者の関係は他の社会的文化的分野に波及しており、この研究は文化研究からさらに教育の場においても有効であることも確認できた。
著者
松川 恭子
出版者
奈良大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は、以下の2点を中心に研究を進めた。(1)ゴア社会の大衆劇「ティアトル(tiatr)」の劇団主宰者・俳優が物語・身体動作・歌(カンタール)で「ゴア性」を観客に喚起しようとする過程についての調査、(2)ゴア外、特にアラブ首長国連邦ドバイ・サルジャーにおけるゴア人コミュニティ内のティアトル受容の現状。現地調査を2回実施し(平成19年4月24日〜5月9目、8月27日〜9月10日)、具体的には、以下の作業を行った。第一回目の調査は、ゴアとアラブ首長国連邦ドバイで行った。ゴアでは、一つの劇団のある村落への出張公演に同行し、劇団員が舞台上で「ティアトル俳優になる」点を中心に舞台設営から終了までを観察した。ドバイの調査では、劇団の現地エージェントの男性にドバイにおけるティアトル受容の現状について、特にゴアからの公演招聘の手順を中心にインタビューを行った。第二回目の調査もゴアとドバイで行った。ゴアでは、ティアトルにおける身体動作を中心に俳優にインタビューを行い、ドバイでは、ティアトルの公演場所の調査を行った。本年度後半は、南アジアにおける演劇関連図書の収集・レビューを継続するとともに、調査成果のまとめを行った。その一部を日本文化人類学会、「宗教と社会」学会(2007年6月)と国立民族学博物館共同研究「キリスト教文明とナショナリズム-人類学的考察」研究会(2008年3月)で発表した。
著者
イアン カラザース 南 隆太 吉原 ゆかり 清水 裕之 本橋 哲也 BRANDON Jim RIMER J. Thomas POWELL Brian TIERNEY Robert GOTO Yukihiro 呉 佩珍 松田 幸子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、日本の現代演劇の成立過程と現状を、上演テクストに注目して考察することで、日本現代演劇史を見直す視点を提供することを第一の目的として研究を行ってきた。現代日本演劇史において、西洋演劇が与えた影響や、日本演劇が西洋演劇に与えた影響を視野に収めることで、グローバルな視覚から世界演劇史に切り込むことが可能となった。本研究の最も大きな成果は、現代日本演劇史を上記のような視点から見直した結果としてのA History of Japanese Theatre『日本演劇史』の出版である。研究代表者は、3年間の研究を基に、研究分担者および研究協力者とともに演劇史の執筆を開始し、ケンブリッジ大学出版局との出版が決まっている。
著者
大田 信良
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

現在のポストインペリアルな歴史状況における英国文化は、大英帝国解体後になおも残存する帝国意識、または、その保守主義を批判的に乗り越える新たなヒューマニズムと多文化主義の可能性によっては、十分捉えることができない。むしろ、21世紀の現在につながるグローバル化や帝国主義に注目する「長い20世紀」の視座を考慮することにより、本研究は、「英文学」をその重要な一部とするグローバルな帝国の文化が、冷戦期米国のモダニズム文学と大学の研究・教育制度の編制にトランスナショナルに転回した英国リベラリズムの政治文化によっても担われていたことを論じた。
著者
椿 清文 LANBERT RT
出版者
津田塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

日本学術振興会外国人特別研究員としての一年目、ランバート氏は歴史研究と人種の問題に焦点を当てつつ、資料収集、理論書の解読、そして論文の作成をおこなった。「『ミシシッピ・バーニング』・ファイルの新たな開封」は2006年3月発行の『黒人文学研究』75号に掲載予定。「『オペラ・コミーク』からMTVの『カルメン』へ:メディアスコピー」「アリス・ウォーカーの『カラー・パープル』:ウーマニストの民話」「スティーブン・スピルバーグの『カラー・パープル』における映像の語りと印象主義的傾向」は現在アメリカの諸雑誌で審査中である。「ウォルター・モズリーの『青いドレスの悪魔』:ネオ・ノワールの改革の精神」はアンソロジー「異常な目:ポストコロニアリティと探偵小説」のための一章。ランバート氏はまた2006年の春から秋にかけて、日米の諸学会の大会、支部会などにおいて、ラルフ・エリソン、パーシヴァル・エヴェレット、『ミドル・パッセージ』などを取り上げつつ、人種に焦点を当てながら、文学と映画の関係について精力的に発表を行う予定である。
著者
山田 仁一郎 山下 勝 若林 直樹
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、現代日本映画産業における全体的な製作提携の構造と業績の関連について、2000年代の製作委員会のネットワーク分析を通じて明らかにすることを目的とする。映像コンテンツの制作に際し、製作委員会と呼ばれる時限ネットワーク組織を分析の対象とする。製作委員会には、多様な企業が自社の事業利用を目的として参画する。これらの企業群は従来の映画産業にない独特な製作手法や著作権ビジネスのスキーム等のノウハウを持ち込み、日本の映画産業の復興に大きく寄与した。近年では、アニメーション映画の製作経験を蓄積してきた出版社の影響力が増しつつある
著者
井上 隆史 山中 剛史 TAILLANDIER Denis 井関 麻帆 田中 真夕美
出版者
白百合女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

三島由紀夫の手稿類(創作ノート、下書き原稿、ゲラへの書き込み、書簡など)を調査すると同時に、二葉亭四迷、宮沢賢治など三島以外の作家の手稿研究の従来の成果や問題点について検証した。そして、フランスの生成論について検討、哲学(解釈学)や美術史の議論も取り込んで、より望ましい手稿研究の方法論を探った。これを踏まえ、三島の代表作「金閣寺」や遺作四部作「豊饒の海」の創作ノートを研究し、後者に関しては、創作ノートで検討されていたが、その後大きく変更された第四巻の当初の構想を発展させ、「幻の第四巻」を仮構した。