著者
坪田 幸政 高橋 庸哉 森 厚
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

気象と大気環境の観測結果と天気予報を提供する大気環境情報システムを構築した.そして,科学リテラシーを育成するための学習モジュールを天気と大気環境をテーマとして開発した.学習モジュールは教員研修会参加者の意見なども考慮して改良された.最終年度には高校生向け講座を開いて,学習モジュールの最終評価を実施した.天気予報と風力発電,紫外線とオゾン層,地球温暖化に関する学習モジュールの評価が高かった.
著者
下村 吉治 北浦 靖之
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

健康の維持増進に栄養と運動による代謝調節の必要性は極めて高く、それらに関する正確な科学的情報とメカニズムの解明が求められている。本研究では、分岐鎖アミノ酸(BCAA)投与と運動が健康の維持増進に及ぼす効果のメカニズムを明らかにするために、(1)BCAA代謝調節機構の解明、(2)廃用性筋萎縮に対するBCAA投与効果の解明、および(3)グルコース代謝に対するBCAA機能の解明を目的とした。得られた研究成果として、BCAA代謝調節因子として分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素キナーゼの未知の調節因子がラット肝臓ミトコンドリアに存在する可能性が示唆された。廃用性筋萎縮に対するBCAA投与の効果として、5%BCAA食摂取は、廃用性筋萎縮による筋重量の低下およびユビキチン-プロテアソーム系成分量に対して影響しなかったが、それらに対抗する細胞内シグナル成分の減少を抑制することが示唆された。さらに、グルコース代謝に対するBCAAの機能として、耐糖能を正常に維持するためには血中のBCAA濃度が重要な役割を果たすことが示唆された。
著者
氏家 等 朝倉 敏夫 村上 孝一 山田 伸一 池田 貴夫 會田 理人
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日本時代から現在に至るサハリン朝鮮民族の生活文化の変遷について、サハリン州や帰還者の住む韓国安山市において、約30名のサハリン朝鮮人の方々から基礎的情報を収集し、記録にとどめてきた。その結果、朝鮮文化のなかでも、オンドルや頭上運搬のような日本時代ないしソ連時代初期に失われた文化要素が少なくない一方で、日本→ソ連→ロシア時代を通じて、(1)日本時代を経験した多くの朝鮮人がウズベキスタンの朝鮮人から餅米を取り寄せ、臼と杵を使って餅を掲き続けてきたこと、(2)ロシア人の墓とは対照的に朝鮮人の墓は盛り土の前に墓石を立てる朝鮮半島方式を守ってきたこと、(3)還暦の行事を朝鮮方式で行い続けてきたなど、継続して守ってきた文化があったことを確認し、食文化や精神文化に関する文化要素は残り、住生活、衣生活などにおいてはその継承が難しかったことを明らかにした。一方、サハリン朝鮮民族は、多様な民族的関係史のなかで、韓国スタイル、北朝鮮スタイル、日本スタイル、ロシア・スタイルをそれぞれ重層的に取り入れた多重化したライフスタイルを構築してきた。また、ペレストロイカ以降の自由主義経済の展開を通じ、韓国人、北朝鮮人、沿海州の朝鮮人、中国人、日本人との交流関係が定着し、そのライフスタイルはより多角化の傾向にあることがわかってきた。日本時代を経験した朝鮮人、ソ連時代に生まれ育ち多くを社会主義経済下で過ごした朝鮮人、ペレストロイカ前後に生まれ育ち多くを自由主義経済下で暮らした朝鮮人など、世代間でそのライフスタイルの指向に違いが見られる事実も浮かび上がっている。韓国安山市等に帰還した元サハリン在住者の間では、周囲にロシア文化を流入させ、韓国文化を拒否する人々が相次ぐなどの課題も生じている。これら新たに生じた課題に踏み込むことにより、サハリン朝鮮民族の文化に対する理解がより深まることとなる。
著者
南塚 信吾 下斗米 伸夫 加納 格 伊集院 立 今泉 裕美子 佐々木 直美 木畑 洋一 橋川 健竜 小澤 弘明 趙 景達 山田 賢 栗田 禎子 永原 陽子 高田 洋子 星野 智子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、1980年代の世界史を、いわば輪切りにして同時代史的に分析し、それを一つの有機的に繋がる世界史として認識する視座と方法を探り出すことを目的とした。そして、まず、現代に繋がるグローバルな諸問題を確認した。それは、(1) グローバリゼーションの過程の始まり、(2) ネオリベラリズムの登場とIMFモデルの神格化、(3) 市民社会論の台頭、(4) IT革命、(5) 大量の人の移動などである。次いで、このグローバルな問題に対応して、世界の諸地域での根本的な変化を確認した。そして、アフリカやラテンアメリカでの構造改革から始まり、中越戦争、アフガン戦争、イラン革命の三つの変動を経て、ソ連や東欧での社会主義体制の崩壊、イスラーム主義の登場と湾岸戦争などにいたる世界の諸地域の有機的相互関係を析出した。
著者
立石 博高 相馬 保夫 佐々木 孝弘 金井 光太郎 鈴木 茂 鈴木 義一 新井 政美 藤田 進
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、文明の「辺境」と「マイノリティ」の生成を、近代ヨーロッパにおける市民社会の形成のメカニズムと関連させながら歴史的に解明することにある。平成17年度は、文献資料・文書館資料の収集(アメリカ合衆国、中東地域)、国際ワークショップ(イタリアの研究者)、および国際シンポジウム(アテネ、ポーランド、エストニア、デンマークの研究者)を共に東京外国語大学において開催し海外の研究者との研究協力関係の構築に努めた。平成18年度は、前年の研究成果にたち各種の研究会、国際シンポジウム(チェコ、ウクライナ、ポーランドの研究者)を東京外国語大学で開催し、また、およびチェコ・プラハで国際ワークショップを開催し、現地の研究者とともに、本科研研究代表者・分担者が報告等を行う同時に同地での文献資料・調査研究を精力的に行った。平成19年度は、本科研最後の年にあたるため、それまでの研究成果をまとめ、さらにそれを発展させるために、東京外国語大学海外事情研究所において市民社会論に関する研究会を開催し、国内から二名研究者を招請、ヨーロッパ市民社会とその周縁に存在する諸社会との比較・再検討が今日的視点から行なわれた。またスペイン・バルセローナとポンペウにおいて国際ワークショップを開き、「近現代ヨーロッパとアメリカ・ロシアの『市民権』」「ヨーロッパの国民形成と『市民社会』」等のテーマに関して本科研のメンバー及び同地の研究者が報告、議論するとともに、資料収集と現地調査を行った。また11月から2月にかけ本科研の成果である『国民国家と市民』(山川出版社、2008年11月出版予定)の準備研究会を東京外国語大学海外事情研究所で行った。これらの研究報告会、ワークショップ、シンポジウムなどは、本課題を解明し、検討・発展させるための有意義な場となり、その成果は、各年度の海外事情研究所『クァドランテ』(No.8〜10)成果報告書ならびに上記の論集で示されるであろう。
著者
津田 憂子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

現行のロシア憲法制定過程で草案作成に関与した法律家、政府及び議会関係者に対するインタビューを現地で実施し、ソ連崩壊後のロシアでどのように制度が設計されてきたかに関する実証的研究を行った。実証的研究と並行して、制度設計に関する比較政治学の既存理論とロシアにおける理論研究を合わせた体系的な理論構築を行い、最終的には実証と理論という2つの視座から本研究の仮説を論証することを目指した。
著者
中村 誠宏
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

苫小牧研究林のクレーンサイトにおいて地上15-20mにある枝(地上部)の温暖化処理を2008年5月から本格的に開始した。その結果、温暖化処理は、地区部処理区、地下部+地上部処理区、対象区の3つのタイプが揃った。それぞれの温暖化処理区において、このまま温暖化が続いた場合の100年後の気温を想定して5度の温度上昇を維持するための装置も設置してある。この電熱ケーブルを枝に張り巡らす地上部の温暖化処理は世界でも例を見ない手法である。以上の実験環境の整備により、北海道の代表的なミズナラ自然林を舞台に、人工的な温暖化現象を作り出し、樹木にどのような変化が現れるのかを長期的に調べることが可能な状態になった。本年度の温暖化処理区での調査は、昨年に引き続き林冠部の葉形質と食害度の調査を行った。さらに、葉の光合成と呼吸量の測定も行った。温暖化の処理効果を近接リモートセンシングで把握できるようにクレーンの上部に分光カメラと熱カメラを設置して林冠部の撮影によるモニタリングを開始した。一方、林床植物の群集構造そして繁殖戦略についての調査を開始した。土壌の温暖化を直接大きな影響を受けているのは林床植物群集であると考えている。今年度の主な結果は、ドングリ生産量が枝の地上部(枝)の温暖化処理によって2-5倍に増加したことである。また、秋の落葉も10日ほど遅くなり、地上部の温暖化は樹木の様々な生態的な特徴に影響を与えていることがわかってきた。また、樹木の生理機能に関しては、土壌の温暖化処理によって春先の葉の呼吸量が増加することがわかった。しかし、地上部の温暖化処理はこれら機能への影響は見られなかった。
著者
迫田 久美子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、五つの実験調査を実施し、以下の二点を明らかにした。(1) 第二言語習得研究の観点から、シャドーイングのメカニズムを分析し、作動記憶や日本語の運用能力の養成において、シャドーイングが音読や書写よりも効果があること、教材の難易に関係なく効果が見られる事等を明らかにした。(2) 国内の教育機関で授業にシャドーイングを導入し、教室場面での実施可能性を検証し、多人数の授業においてもシャドーイングの有効性を実証した。
著者
山中 章 廣岡 義隆 山田 雄司
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

聖武天皇伊勢行幸地の中で最も長期に滞在した宿泊地が河口頓宮(740年11月2-11日)と赤坂頓宮(同月14-22日)である。前者については平成15年度に発掘調査他を実施し、その実務機関の一端を始めて明らかにした。さらに平成18年度には後者の実態を解明するため頓宮想定地の有力地である三重県亀山市関町での発掘調査を実施した。その結果、推定地の北西部から、聖武天皇の時期に壮大な規模の土木工事を実施したことを証明する重圈文軒丸瓦と共に、城壁の跡を発見することができた。城壁は観音山の山裾の谷上部を縫うようにして設けられており、(1)基底土木工事、(2)築地基底部造成工事、(3)築地構築工事の三段階に分けて行われていたことが実証され、特に、これまで全く知られていなかった城壁が装飾性と格式に富む築地塀であったことが始めて立証され、その建設時期と相まって、検出遺構が聖武天皇の宿泊施設である赤坂頓宮の囲繞施設をも兼ねていることが明らかにされた。聖武天皇の伊勢行幸はその後の美濃行幸も含めて、既存の公共機関の施設を利用、改修、解体新築して進められたことが知られている。その中心を担ったのが造伊勢行宮司である。周到に準備された「伊勢行幸」を考古学的に証明したのが今回の発掘調査の成果であり、昨年の調査で実施した朝明頓宮の成果とも会わせて、行宮造営体制や行宮の基本構造、個別行宮の特色などを一気に明らかにすることができた。また赤坂頓宮の北西隅を解明したことによって、これまで全くその存在を現すことがなかった、伊勢・鈴鹿関の位置が特定でき、三関研究にも大きな成果を得ることができた。またこうした古代の行宮(頓宮)建設が隋・等の同施設からどの様な影響を受けているのかについて、国際シンポジウムを開催し、比較研究した。さらに、近年めざましい発掘調査成果を出しているヴェトナムのタンロン王城遺跡の調査分析も実施し、日中越三国の古代王権が隋・唐をモデルにした国造りを行っていることも明かにすることができた。
著者
樫尾 直樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究は、現代の宗教性を個々人の宗教意識の中に見、その宗教意識を摘出するために、現代的宗教性を表現する言葉として「スピリチュアリティ」を選択するとともに「スピリチュアリティ」を主題とした映像作品を制作し、視聴者がその映像作品を鑑賞した後、制作者と作品について対話するという実践から生成された言説を解釈、分析するものである。諸作品は、民俗や伝説、人工的生命としてロボットを題材としたドキュメンタリー、様々な素材のコラージュによって映像化した前衛的作品などがあり、それぞれの作品の表現していると考えられる「スピリチュアリティ」の像をめぐって対話が行われた。まず主題に関しては、神霊や無機物のいのちや偶然や縁あるいはトランスが主題とされており、いずれも一言でまとめれば、「超人間的なもので人為によって操作することのできない何ものか」を「スピリチュアリティ」の意味内容として考えられているという点である。対話が実質的に可能だった作品とそうでなかった作品とがあったが、対話が成立したものはいずれも、制作者の意図したところを視聴者が探りあてようとし、それを受けて制作者が説明するという流れで展開された。神霊がスピリチュアリティ言説のひとつの核となっている点は、伝統的であるとされる表象文化を背景としている点では異なっているものの、昨今の「スピリチュアル・ブーム」と称される文化的動向と共通している。無機的ないのちと有機的な人間存在との絆という関係性はそれに対して新しいスピリチュアリティ言説である。しかし、不可視の動態と人間の諸動作に対する反応というコミュニケーション的観点からすれば、人間間あるいは人間とペットなどの生命体との関係性と相似的である。対話はある意味で主題の確認と解釈として成立し、「超人間的なもので人為によって操作することのできない何ものか」という意味での宗教的聖性を現代的素材で反復している。
著者
小林 繁
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、障害児・者の学習文化活動を保障していくための課題と方向性を探っていくことを意図して、全国の先進事例や先行研究の調査とともに、全国の市町村自治体での取り組み状況についてのアンケート調査を実施した。そこでは、この間の生涯学習施策の進展に伴って、障害をもつ人の学習・文化保障の取り組みがどの程度進んでいるかを具体的に把握、分析する課題意識のもとに考察を行った。まず先進事例としては、東京を中心に行われている障害者青年学級(教室)、障害をもつ人を対象とした講座および届けるという発想にもとついたアウトリーチサービスの取り組み、大学で行われているオープンカレッジ、社会教育施設での対応、などについての調査見学を行った。また、全国調査の結果からは、まず学校週5日制対応の事業については、圧倒的に多くの市町村ではその対応がなされていない状況が明らかとなり、障害をもつ児童が地域で生き生きと学習文化事業に参加していく取り組みが求められていることを提起した。また、障害をもつ人が参加できるような配慮をしている事業を実施している自治体が回答した自治体総数の30%であり、依然として課題が大きいことがあらためて確認された。その意味で、教育を受ける権利を保障する責務を負う教育行政、とりわけ社会教育行政の役割と課題が浮き彫りにされたと同時に、とりわけスタッフやボランティアといった人的な面とプログラムなどのソフトの面からの学習支援のあり方を先進事例の取り組みから学んでいく必要性を強調した。そうした点をふまえ、最後にまとめとして、以下の視点の重要性を提起した。(1)学習権保障の視点(2)ノーマライゼーションとポジティブアクションの視点(3)社会教育施設・機関の役割
著者
矢野 初美
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

大きく分けて2つの研究を行った。まず、野外実験として、東京都西東京市にある東京大学附属田無試験地に自然生育している個体から、異なるハプロタイプ(B1、Ja)を持つアオキ個体を選択し、相互授粉実験を行い、交雑可能性を検証した。その結果、B1、Ja両ハプロタイプともに相互に授粉実験は成功し、異なるハプロタイプ間での結実が確認された。このことから、造園用材料として、他の地域由来の個体を導入し、それが野外へと逸出・定着し、繁殖する際に、元から地域に自生するアオキ個体と交雑している可能性が高いと考えられ、この研究成果を学術論文として発表した。2つ目として、昨年度までに収集していた関東地方対象区域の衛星画像データ、採取したアオキ個体のハプロタイプデータを用い、都市地域・農村地域における自生型(Ja)・非自生型(B1)ハプロタイプ個体の生育割合と自然環境要因、人為的要因との関連性を解明した。具体的には、目的変数を各樹林パッチにおけるB1タイプの出現割合、説明変数をランドスケープレベル、樹林パッチレベルにおいて抽出しか項目(例えば、地形、樹林パッチの面積・形状等)として、一般化線形混合モデルを構築し、stepAIC関数によるモデル選択を行った。その結果、周辺森林面積率、地形、過去に当該樹林パッチの林相に変化があったか、という項目について非自生型B1タイプ個体の出現割合が顕著に影響を受けていることが明らかになった。このことにより、植栽からある程度年月が経過した導入樹木の逸出・定着状況が野外の広範囲地域で提示された。
著者
新村 聡
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近代自然法学の国家論の中心をなす社会契約説は、市民政府の起源と忠誠義務の根拠を、契約・合意・同意などから説明した。この社会契約説を批判したのが、デヴィッド・ヒュームとアダム・スミスである。本研究は、ヒュームが、市民政府の起源について原始契約の存在を認めた上で、忠誠義務の根拠を契約に求める見解を批判して利害と慣習から説明したことを示した。さらにスミスが、ヒューム理論を継承発展させた「権威の原理」と「功利の原理」の理論によって市民政府の起源と服従の根拠を説明し、社会契約説への理論的批判を完結させたことを明らかにした。日本では、近年自然法思想およびヒューム、スミスらの思想はしばしば「市民社会論」と呼ばれてきた。本研究は、日本における市民社会論の歴史についても考察した。近代自然法学および重商主義の経済理論を特徴づけるのは、貨幣数量説である。ヒューは、貨幣数量説を国際的金移動の理論と結合して、重商主義の貿易規制策を批判する一方、連続影響説より貨幣数量が産出量水準にも影響を及ぼすことを認めた。本研究は、アダム・スミスが、『法学講義』で貨幣数量説と異なる銀価決定論を述べており、『国富論』では、銀価の変動を歴史的に考察する一方で、ステュアートの理論的影響のもとに流通必要量説を主張し、貨幣数量説と異なる見解を展開したことなどを明らかにした。
著者
タン ミッシェル 松本 恒雄 丸山 千賀子 丸山 千賀子
出版者
帝塚山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、英米法系の消費者法システムにおけるソフトローの実態を調査し、最近日本においても消費者政策として推進されているソフトローのあり方を比較法政策的観点から研究するものである。欧米諸国を中心に比較調査をして、ソフトローを推進するための消費者法システムの理論およびフレームワークを明らかにした。欧米諸国で活用されているソフトローの手法の特徴、実践例を分析した上で、日本における活用方法について、論文及び内外のシンポなどで提言を行った。
著者
木村 成伸 五十嵐 淑郎 生城 真一 千田 俊哉
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803にAcidovorax sp. KKS102株ビフェニル分解酵素系遺伝子やラット肝臓シトクロムP4501A1遺伝子を導入することにより,ビフェニルやダイオキシンを貧栄養環境下で水酸化できる新規シアノバクテリア株を作製した。芳香族環境汚染物質のバイオレメディエーションにおけるシアノバクテリアの有用性が確認できた。
著者
高瀬 淳
出版者
藤女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は,「学校の自律的な管理運営を保律する制度とは如何なるものか」という問題意識の下,ロシア連邦における学校の管理運営体制に関する現行法制を教育改革の動向や教育行政制度の全体像を踏まえて総合的に分析するその構造と実態を明らかにすることを目的としている。本研究では,ロシア連邦の管理運営体制が,学校の自律性の確保に向けた3つの段階を経て成立したことが明らかとなった。まず,ペレストロイカ政策期の学校では,国家・行政機関からの自律性を確保することが意図された。これは,学校裁量権の拡大に伴い,学校が自らの意思を決定できるようにするための措置であり,それぞれ同数の教職員,生徒及び保護者・地域住民から構成される学校代表者会議や学校会議が,学校の管理運営に責任をもつ体制が形づくられた。つまり,学校の管理運営は,国家・行政機関ではなく,保護者・地域住民など「社会」の代表者が参加して行われることが基本方針とされたと指摘できる。次に,ソ連邦崩壊から1996年かけては,こうしたマルクス主義的なイデオロギーからの自律性を獲得することが目指された。具体的には,学校裁量権の拡大が再確認されると同時に,学校から共産党粗織を排除する措置が講じられた。これにより,学校の管理運営は,学校自身の手に委ねられることとなり。西欧的な民主主義社会の形成という新たな国家理念の中で,学校ごとに特色ある教育を提供するための条件整備が図られた。さらに,1996年以降には。学校会議が,学校の自主管理の一形態として。保護者会話,学校総会,教職員会議などと同列に例示されるに留まるなど,学校の管理運営体制の自由化が図られた。その結果,今日のロシア連邦では,学校の管理運営における「責任の明確化」と「効率化」が,実質的に校長の権限と責任の拡大を方策として進められ,校長の強力なリーダーシップの発揮を通じて,個人や社会の多様なニーズに対応した学校教育を実現していくことが期待されている。
著者
岩井 善郎
出版者
福井大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

耐摩耗設計における材料選択と摺動条件選定の指針を得るために、シビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移条件および摩耗率に及ぼす材料の含有成分と摺動環境の影響を研究した。1.成分含有量の異なる種々の銅合金についてピン・ディスク形式の摩耗試験を行った。その結果、Niの含有率が大きい銅合金では、シビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移がみられるが、Ni含有率が30%以下のCuーNiーZu合金(洋白)ではいずれの摩擦条件でもシビヤ摩耗を生じる。洋白材の耐摩耗性はNiとZnの含有率の増加にともなって向上する。その程度はNiのほうが著しいが、Znの含有率が増加するとNiの影響は小さくなる。このような成分含有率と摩耗量の関係を立体座標上にプロットして耐摩耗性を平面で表示することによって、最適な耐摩耗性材料の選択や創製の指針を提示できることが明らかになった。2.空中、イオン交換水中、食塩水中で炭素鋼どうしのすべり摩耗試験を行った。液の腐食性が増すとマイルド摩耗を生じる領域は高荷重側にシフトする。また液中のマイルド摩耗率は低荷重域では荷重によらずほぼ一定値を示すが、高荷重域では比例して増加するので、マイルド摩耗と荷重の関係は折れ線で示される。前者は表面の腐食疲労破壊による摩耗、後者は疑着摩耗に支配されているが、いずれも液の腐食性にともなって増加することが明らかになった。3.食塩水中の軟鋼の摩耗では、カソ-ド防食を施すと自然腐食下に比べてマイルド摩耗を生じる領域は低荷重側にシフトするが、マイルド摩耗率は小さくなることが明らかになった。4.前項の2、3の結果をから、腐食環境下の鋼の耐摩耗性はシビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移条件と摩耗率から評価すべきことの重要性が一層明らかになった。このような観点から、腐食摩耗に及ぼす成分元素の影響を引続き研究する予定である。
著者
堀 雅敏 金 東石 大西 裕満 佐藤 嘉伸 陳 延偉 富山 憲幸 岡田 俊之 東浦 圭佑
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

3次元 CT 画像から、腹部臓器の形態的特徴を大局的に取り扱うコンピュータ手法を開発した。本手法では、統計的形状モデルとサポートベクタマシンを応用した。本法の応用として、慢性肝障害における肝線維化を CT 画像から評価するシステムを構築し、その性能を確認した。本研究は、統計アトラスを用いて大局的な臓器形状変化を定量化する技術が、体幹部領域のコンピュータ支援診断に応用できる可能性を示した。
著者
塩崎 麻里子
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究では、乳がん患者が配偶者との日常生活において、配偶者が良かれと思って行っているであろうサポート態度が、患者にとってサポートとならない場合について着目している。先に行った乳がん患者に対する半構造化面接で得られた、患者にとって「ありがた迷惑」、「大きなお世話」といった配偶者からのネガティブサポート態度に関する15項目を用いて、手術前と手術後においてどのような変化が見られるかを縦断的に明らかにした。手術前と術後1ヶ月に質問紙調査を行ったところ、ネガティブサポート態度に関して欠損値がなかった乳がん患者63名(平均年齢:49.3±8.9歳)を分析対象とした。半構造化面接で得られた15項目は、比較的頻度の高いもの(早く元通りになるようにとあなたを励ます・あなたの病気や治療のことは、全て医師にまかせるものとして関与しない・自分のことよりも、常にあなたのことを優先する)、比較的頻度の低いもの(あなたと病気についての話をすることを避ける・あなたを病人として、はれものに触るように大事にする)が含まれていた。また、これら15項目は探索的因子分析と検証的因子分析を経て、3下位因子によって説明された。その3つの下位因子は、「過剰関与」、「問題回避」、「過小評価」と命名されている。術前と術後に変化が見られるかどうかを繰り返しのある分散分析で検討したところ、「過剰関与(F(1,62)=6.19,p<0.05)」と「問題回避(F(1,62)=10.35,p<0.01)」において有意な差がみられた。このことから、配偶者からのネガティブサポート態度は、術前・術後といった治療経過の中で出現頻度の認知に変化がみられるものであることが示唆された。今後、この変化が、実際に変化しているものなのか、患者のサポートニードが変化したものなのか、患者の個人的特性や状況などの変数を加えて詳細に検討していく必要がある。
著者
西田 治文 植村 和彦 栗田 裕司 朝川 毅守 山田 敏弘 植村 和彦 栗田 裕司 朝川 毅守 山田 敏弘 寺田 和雄 矢部 淳 LUIS FELIPE HINOJOSA O. MIGUEL RANCUSI Herrera
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

チリ南部の南緯33度から54度までの地域で、白亜紀後期から中新世の植物化石の採集調査を行い、鉱化ゴミ化石群という新たな概念の化石群集を含む良質の化石植物群を発見した。産出時代決定に当該地域では初めて渦鞭毛藻類による生層序区分を試み、有望な成果を得た。化石の解析から、第三紀初期のフロラが温暖な要素を含み、同時代の南極との植物地理学的関連が確認された。鉱化ゴミ化石の高解像度X線CTという新手法も試みた。