著者
小山 智幸 小山田 英弘 陶山 裕樹 孫 玉平 伊藤 是清 船本 憲治 田中 利光
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

フライアッシュ、砕石粉、各種非反応性スラグ、焼却灰など、発生量が増大している種々の副産粉体を、コンクリートの性能を向上させながら大量に有効利用する方法を確立することを目的とし、既に得られた実験室レベルの成果をもとに、構造部材レベルにおける構造性能と設計方法ならびに耐久性能を総合的に検証した。結果、本コンクリートは構造体コンクリートとして使用できること,及びその調合設計,構造設計ならびに耐久設計の方法を明らかにした。
著者
鄭 潔西
出版者
関西大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度は、研究に関係する資料収集を行った上で、計画したいくつかの課題を遂行した。一、論文「万暦二十一年潜入日本的明朝間諜」(『学術研究』2010年第5期総306期)、「16世紀末明朝的征討日本戦略及其変遷-以万暦朝鮮之役的詔令資料為中心」(『明史研究論叢』第8輯)、「一六世紀末明朝の対日本情報システムの一環となった琉球国」(『南島史学』75・76合併号)、「万暦二十一年豐臣秀吉中毒〓命誤伝考」(王勇主編『中日美系的暦史軌迹』、上海辞書出版社)、「萬暦二十年代傳入明朝和朝鮮的日本豊臣秀吉死亡情報」(松浦章編著『明清以來的東亜海域交流史』、[台北]博揚文化事業有限公司)を発表し、学術報告「Information Networks in East Asia during the Last Decade of the 16th Century : Intercommunication and the Imperial Strategy of Ming Dynasty China」(The Fourteenth Asian Studies Conference Japan(ASCJ)、日本・東京・早稲田大学、2010年6月19日)、「16世紀末的東亜和平構建-以日本侵略朝鮮戦争期間明朝的外交集団及其活動為中心」("東亜区域合作与中日韓美系"学術研討会、中国・上海・復旦大学、2010年11月8日)、「関于隆慶万暦前期倭寇的両个問題被虜人和御倭賞格」("国際視野下的中西交通史研究"学術研討会、中国・広州・〓南大学、2010年12月20日)と「16世紀末的東亜-以中日両国向的人物往来和情報流通力中心」(広東省社会科学院広東海洋研究中心招待講演、中国・広州・広東省社会科学院、2010年12月30日)を行い、明代万暦時期における明日間の人的往来、情報ネットワーク、明朝側の対日本戦略などの諸問題に関する最新の研究成果を発表した。二、関西大学に博士論文「明代万暦時期の中日関係史の研究」を提出し、文化交渉学の博士号を取得した。上記のように、今年度の研究は計画通り遂行した。
著者
中田 知生 岩間 暁子 高田 洋 中井 美樹 岩間 暁子 高田 洋 村上 あかね 中井 美樹
出版者
北星学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究においては、欧米において社会学分野の学術雑誌に頻繁に用いられる新しい分析モデルについて、理解し、社会学研究にどのように適用できるかを考え、実際に分析を行ってみることである。本研究においては近年の社会学の理論構築のために収集された調査データ、特に、変化を扱うことが可能であるパネルデータや、調査においての回答拒否を含んだデータなどは、従来の分析方法では正確な推定値を算出することができないからである。本研究では、アメリカの大学における統計学・データ解析に関する実際を知った上、それらを分析する方法としてのそれらの新しい統計モデルやそれらを分析するソフトウェアに関する情報を収集した。採取的には、雑誌論文において、これらの新しい方法のいくつかについて、論文を執筆して掲載した。
著者
柳井 毅
出版者
分子科学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

高スケーラブルな新規電子相関計算法の基礎理論として、電子相関計算のボトルネックとなる積分変換計算を効率化するような「局所ハミルトニアン法」を提唱し、その基礎理論を確立した。本提案手法では、この変換計算に対して、局在化分子軌道を変換基底として利用し、基底空間を区分けし、各区分けで小さな積分変換を行う。そして区分同士の相互作用も低次まで考慮する積分変換を行う。局所ハミルトニアン法の基礎理論を計算機上に実装し、その性能を評価した。(LiH)n鎖をテスト分子として、局所ハミルトニアン法による積分変換計算の計算コスト(総flop数)を見積もった。見積もりでは、ハミルトニアン分割での打ち切りを判定する敷居として、分割領域の二組(IJ)の空間的距離が15bohr以内の組み合わせのみを考慮し、さらにScwarzの公式を用いたprescreeningを施した。長鎖の(LiH)nに対して、総flops数は、鎖長に対して良好な低次スケーリングを示し、ほぼlinear scalingな計算コストであった。従来のo(N^5)の計算コストである計算法と比較して、局所ハミルトニアン法の計算は、n=15~20程度ですでに効率よい計算であることを示した。上の開発で得られた、局在化分子軌道ベースの打ち切り近似ハミルトニアンを利用することで、Pulay、Wernerらの局所電子相関法LMP2法を実装することができる。PulayやWernerらによる実装は、積分変換が難所であったが、本研究では「局所ハミルトニアン」をその強力な処方箋として大規模計算に活用できると期待される。DNA Base-Pairをテスト分子として、Base Pairの相互作用エネルギーをLMP2により求めた。局所ハミルトニアンの分割として2種類の分割様式を試したが、分割様式によらず二種類の計算は誤差が少なく良い一致を示した。分割ではBase Pairの水素結合を切っているが、従来型のMP2計算の結果と比較しても遜色ない精度を算出することを確認した。以上の結果から、本手法の基礎的なアルゴリズムは大まかに形成されたと言える。
著者
南 徹弘 日野林 俊彦 安田 純 今川 真治 小島 康生
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

幼児の社会的相互交渉他児との社会的相互交渉と言語的コミュニケーションスキルの関連を検討するために19名の4歳齢幼稚園児を対象とした観察を実施した。幼児の発話量には個入差が大きかったものの、概ね、女児は男児よりも肯定的発話を示し、否定的発話は男児に頻繁にみられた。また、スキルレベルの低い児は、より単独で過ごすことが多く、より活動的で、遊び集団への仲間入りを頻繁に試みていた。しかしながら、その試みは他児から必ずしも受け入れられず、他児からの拒否や無視を受けることが多かった。一方スキルレベルの高い児は遊びを方向付ける発話が多くみられ、遊び集団から離脱しても他児の追従を受けることが頻繁であった。すなわち、言語コミュニケーションスキルの高低が幼児の行動としてあらわれ、ひいては仲間関係に影響を及ぼすことが示された。そこで、実際にいざこざが生起した際に彼らがどのような行動を示すのか、また、いざこざに関わっていない他児がどのように関与するのかを保育園において5歳齢児を対象とした観察を実施した。その結果、男児のいざこざおよびいざこざへの介入には社会的関係に直接影響を受けず、女児のいざこざは彼らの社会的関係を反映した傾向があることが示された。保育士のしつけ行動幼児が逸脱的な行動を示した際に保育士がどのように介入しているのかについて、保育園3歳齢児と担当保育士を対象とした観察を行った。食事場面等においては保育士は児の行動を方向付けるようなしつけを頻繁に行っていたが、自由遊び場面においては児の自主性に任せるようなしつけ行動を示した。また、効果的なしつけの存在が認められたものの、保育士は必ずしもそのようなしつけを用いず、児が自身で考えられるような機会を用意していることが示唆された。
著者
秦 明徳
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

岩石の風化作用は気圏,水圏,生物圏,岩石圏といった地球サブシステム間の相互作用として成り立っており,地球システムとして説明できる身近な好例である。本研究では風化作用を軸とした花崗岩地帯学習の在り方について取り上げ,地球システム教育の一般教育における重要性とその可能性について探った。具体的にはシステム論的視点にたった花崗岩類風化作用の教材開発・カリキュラム資料の作成するとともに、実験授業を行い,その評価を踏まえながら新しい地球学習のありかたについて提案した。
著者
篠藤 明徳 日詰 一幸 伊藤 雅春 佐藤 徹 前田 洋枝
出版者
別府大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

市民討議会の全国事例(2006年から2010年)調査を通し、身近なテーマ、青年会議所と行政の共催、プログラムの類型等が明らかになり、高崎市、豊山町の事例調査では、参加動機等を分析できた。ドイツでの変形型プラーヌンクスツェレの状況やアメリカでのアメリカスピークス、ケッタリング財団など全国組織の支援体制を調査できた。その結果、参加者の多様性の担保や情報提供の公正等、市民討議会の質保証の基準を明確化すると共に、データバンクの構築・公開、表彰・認証制度の創設などを提案できた。
著者
狩俣 繁久
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

3年間で白保方言の臨地調査と波照間方言・白保方言の比較研究を行った。日本語の影響は、予想以上に大きく、回答を得られない単語が近接する方言間の言語年代学的な数値を出すには無視できない数であった。そこで、さまざまな音環境にあらわれる母音、子音がどのように音韻変化したかを詳細に比較した。両方言で類似するものの多くは、分岐する以前の祖方言の形式を保存するだけでなく、変化の要因などを共通に有したまま分岐し、別々に平行的に変化したものがあることがわかった。波照間、白保方言に特徴的にみられる語末のN音挿入も分岐した後に平行的に変化したものである。母音の音位転換と子音の音位転換があることを指摘したが、音位転換は分岐後の収斂変化であることがわかった。形容詞の代表形を収集し、波照間方言と白保方言を比較した。その結果、波照間白保祖方言の形容詞語尾は-haNであったが、両方言ともに、周辺方言、とくに石垣島中心市街地方言の影響で一部の形容詞の語尾に-saNと-sahaNを有する語があることがわかった。saN形容詞は借用語形であり、sahaN形容詞は、saN形容詞のsa連用形をhaN形容詞の語幹として取り込んだものである。語尾にsahaNをもつ形容詞の発生は両方言で平行的に変化したものである。形容詞語尾の違いが八重山方言、宮古方言の下位区分の重要な指標になりうることもわかった。文法現象は、名詞の語彙に比べて借用されにくく影響も小さい。文法現象が体系的であることを反映して、借用された形容詞語彙は、その判別が名詞に比べて容易であることもわかった。
著者
大串 和雄 千葉 眞 本名 純 月村 太郎 根本 敬 狐崎 知己 木村 正俊 武内 進一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、複雑化を増す現代世界における政治的暴力の力学解明を試みた。取り上げた課題は主として以下の通りである。(1)グローバル化時代の暴力に関する政治理論的考察、(2)民族浄化の概念とメカニズム、(3)パレスチナ解放闘争におけるアラブ・ナショナリズムと個別国家利害の相克、(4)犯罪対策と治安セクター改革におけるインドネシア軍の利益の維持・拡大、(5)グアテマラにおける政治的暴力、(6)アフリカ諸国における民兵、(7)ビルマ難民の民主化闘争における非暴力の位置づけ、(8)ラテンアメリカの移行期正義。
著者
清水 裕之
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

これまで劇場建設に求められたものは、1980年代に始まる多目的ホール建設ラッシュから、その反動としての90年代には専用劇場の建設、また今日では劇場の多目的化についても見直され始めている。こうした日本の劇場建設における独特の二者択一の状況を生む背景には何があったかということを歴史的な作業を通して解明し、劇場建設に一つの見解を得ようとするものである。即ち、劇場建設における計画の「多目的」あるいは「専用」の問題についてその議論が見えてくる時代に遡ることによって、現在の劇場建設における功罪を検証しでいる。「多目的」劇場、あるいは「専用」劇場を建設を取り巻く問題の中で、現代に見られる我が国の演劇創造と劇場の乖離現象を暗示するのが、帝国劇場(1911年開場)、築地小劇場(1924年開場)、東京宝塚劇場(1933年開場)であり、それはヨーロッパの劇場空間の影響を受けて進行する。一方、ヨーロッパにおける劇場の近代化には、逆に演劇創造と劇場の協力関係が見える。特に、舞台装置家アドルフ・アッピア(1826-1928)は、舞踊家エミール・ジャック・ダルクローズ(1865-1950)と共に、ダルクローズ学校内ホール(ドイツ・ドレスデン)において、ルネッサンス以来初めてプロセニアムアーチを排除した空間を実現した。そこには、アッピアの演出理念、新しい劇場技術が反映され、ダルクローズとともにつくり出した演劇創造と劇場空間との協力関係を見ることができる。こうした協力関係が、我が国においてどのような背景で乖離の芽が作られたのかについて演劇界、建築界の言説をもとに描き出し、以下の点がなぜ達成できなかったかについて、社会における劇場の位置づけ、劇場制度、劇場技術、舞台と客席との空間構成から見直すものである。
著者
白川 千尋
出版者
国立民族学博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

一昨年度と昨年度に続き、本年度も戦後日本のマスメディアにおけるオセアニア表象、とりわけメラネシア地域に関する異文化表象を主たる対象としながら、主に以下の研究活動を行った。1.1960年代から本研究に着手する前年(2002年)までに放映されたメラネシアを取り上げたテレビ番組における異文化表象のあり方の検討。2.同じ時期に出版されたメラネシアを取り上げた図書における異文化表象のあり方の検討。3.1.で検討の対象としたテレビ番組の制作過程に対する文化人類学者の関与のあり方の検討。その結果、主に以下の知見を得た。1.テレビ番組においては、各年代を通じて集落部を対象とした番組がきわめて多く、対照的に都市部のみを取り上げたものは皆無に等しい。また、番組のなかで取り上げられる人々はペニスケースや腰蓑といった出で立ちであることが多い。そして、これらの地域や人々に対して「秘境」、「未開」、「裸族」などの語が使われ、「近代的な世界から隔絶した世界に生きる人々」や「外部者を容易に寄せつけない未開人」といった提示の仕方がなされている。こうした傾向は1960年代から2002年まで大きく変化することなく続いている。2.図書においては、テレビ番組にみられたものと同じような傾向が、1960年代から70年代に出版されたものに関して認められる。しかしながら、そうした傾向は1980年代以降に出版されたものに関しては希薄になり、都市部を取り上げたもの、あるいはTシャツやズボン、ワンピースといった出で立ちの人々の写真を多く掲載したものも目立つようになっている。3.テレビ番組の制作過程に対する文化人類学者の関与は1960年代においては顕著であったが、海外での調査研究に関する基盤整備(科研費の充実化など)が進むとともに希薄化し、近年では番組制作者が番組の制作過程で文化人類学者の研究成果を一方的に「流用」する形になっている。上の1.で指摘したように、テレビ番組のなかでメラネシアとそこで暮らす人々は、1960年代からこの方、一貫して「未開」や「秘境」といったキーワードに収斂する形で表象されてきた。こうした表象が維持されてきた背景には、それがテレビ界の視聴率競争との関連で、視聴率を獲得するための重要な「資源」と目され、利用され続けてきたことがあると考えられる。なお、以上に述べた知見などについては、別に作成した報告書(『日本のマスメディアにおけるオセアニア表象の文化人類学的研究-平成15〜17年度科学研究費補助金研究成果報告書』)で詳述した。
著者
山内 太 長谷部 弘 高橋 基泰 佐藤 康行 村山 良之 岩間 剛城
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、近世村落社会における農民的土地所有の性格について、特に新潟県の割地制度を素材としながら、実証的に明らかにしようとしたものである。旧上塩尻村(長野県上田市)の事例研究をベースとして、旧中郷屋村等新潟県蒲原平野に位置する、かつて割地を行っていた村落の資料調査を行い(継続中)、共同体的な土地所有制度であると見なされてきた割地が、この地域の自然環境、並びに村落構造と密接な関連をもちながら行われていたという事実を明らかにしつつある。
著者
寺林 伸明 白木澤 旭児 三浦 泰之
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

北海道と黒竜江省、吉林省に関する「満洲開拓団」について、関係者、関係文献の研究を日中共同ですすめ、「満洲開拓」の実態追求にかかわる下記の重要諸課題について、報告書を集成の予定である。
著者
菊池 馨実 関 ふ佐子 石田 道彦 大原 利夫 尾形 健 石田 道彦 大原 利夫 尾形 健 関 ふ佐子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

アメリカ高齢者法を多角的に検討した共同研究を日米法学会総会で行うとともに、アメリカでの現地調査の概要を雑誌に連載する機会を得た。また各研究者が、個別に、日本社会保障法学会、日本成年後見法学会、全米ロースクール協会などでの学会報告で、高齢者の権利擁護、高齢者法などに係る研究発表を行った。このほか、各研究者が、自律の価値付け、アメリカ医療改革・所得保障制度などに係る比較研究、日米の福祉国家研究など、高齢者の法的保護に関わる多くの論文を発表した。
著者
石塚 修 今村 哲也
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

臨床的な観点から考えると、膀胱の再生においては、膀胱頚部、つまり尿道括約筋部の再生が、尿失禁の予防には重要である。まず、われわれは、ラビットの大腿骨骨髄より注射針で骨髄由来幹細胞を採取し培養し増殖することを可能とした。その培養細胞を、障害を与えた尿道括約筋に移植し、尿道括約筋部の再生を免疫染色およびRT-PCR法にて組織学的に、また、機能的検査にても確認することができた。
著者
西田 友昭 河合 真吾
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

白色腐朽菌および白色腐朽菌の産生するリグニン分解酵素は、ブチルパラベン類(防腐剤)、ジクロフェナク(抗炎症剤)、メフェナム酸(抗炎症剤)およびトリクロサン(抗菌剤)の分解と毒性除去に有効であることを明らかにした。さらに、リグニン分解酵素は、現行の下水処理における除去効率が10%以下である難分解性のカルバマゼピン(抗てんかん剤)をも分解しうることを見いだした。
著者
山本 淳一 小嶋 祥三
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

次の6つのステップからなる療育プログラムを構成し,3歳から7歳の13名の重度自閉症幼児に適用した効果を詳細に分析した.(1)「基本的社会的相互作用」対人刺激の過敏性をとり、遊びを中心にした社会的相互作用を安定させることが、支援プログラムの初期段階においては最も重要であった。(2)「共同注意」応答型共同注意は、指さしから視線に手がかりを移行させることで、全ての子どもで成立した。始発型共同注意は,相手がその刺激を見ることができない場面設定をし、参加児の興味を引く刺激を用いることで促進された.(3)「模倣」以下の摸倣を系統的に評価し、運動、知覚、自己他者認知の障害のあり方を分析した。粗大・微細,動作・音声,対称・非対称,他者方向・自己方向。(4)「音声言語理解」聞き取り理解の学習と前頭葉の活動との相関関係が見られた。(5)「言語表出(哺語,単音,単語,文)」視覚的枠組み使って,文法にあった文を成立させていく指導ステップを構築した。(6)「機能的言語」叙述言語に関して、自分の経験した事象を報告する指導によって、獲得と般化がなされた。子どもの注意を十分引く必要があり試行回数が学習効果を決定する課題は「離散試行型指導法」を用い,社会的相互作用を目的とした課題と般化促進のために「ピボタル行動指導法」を用いた.基本的には週1回、大学での子どもへの指導,親面接,家庭でのかかわり方と指導のアドバイスを実施した.その結果、9名の自閉症児の社会言語領域、認知領域の発達年齢に大きな向上が見られた.また,適応行動尺度では,全員について向上が見られた.このような指導だけでは,音声言語の獲得と拡張、機能化がなされなかった4名の自閉症児については,絵カードの交換によるPECS(Picture Exchange Communication System)を導入し,3名について音声模倣の獲得がなされた.
著者
木越 治
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近世小説史の記述に用いられる「初期読本」というジャンル呼称は、その始発に位置する都賀庭鐘自身が明確に有していたそれ以前の小説と自らのそれとを区別する意識を受け継いで設定されたものである。また、その発展とみなされる京伝・馬琴らの江戸読本とも一線を画そうという意図をも内包している。それゆえ、今後の文学史記述においてこのジャンル呼称を用いる場合は、こうした評価軸を意識しつつ、所与のものとしてではなく、選ばれた作品のみに与えるジャンル名として用いていく必要がある。
著者
北島 勲 仁井見 英樹 畠山 登
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

炎症反応の中核を成す転写因子NF-κB活性化状態を病院検査室で利用できる高感度・迅速な計測方法を開発する。本研究は液相における物質のブラウン運動を計測する一分子蛍光相関法を基盤にした応用開発である。救急医療での迅速な対応が要求される全身炎症反応症候群(SIRS)病態に関わるNF-κB活性化状態の迅速検査法を確立することでSIRSの予後予測と早期対策が期待できる。
著者
沢岡 清秀
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.<創造的再利用>の意義に対する設計者・建築家の基本的認識について:<創造的再利用>は古美術の博物館展示的作業や、既存建築の物理的骨格のみを利用して思いのまま変更する作業ではなく、既存建築を「対話」の相手と考えてアイデアを構想する、新しい創作の一領域であると捉えられている。それは、既存建築の中にそれを創り出した人々の考え方や価値観、感情の「表現」を見るという基本的視点に立っている。その結果生み出されたすぐれた事例は歴史的文化的価値を経済的社会的価値に転換し、長い間人々に忘れられていた空間に光を当て、パブリックのための価値を生み出している。2.<創造的再利用>のデザイン手法について:一方に内部と外部を切り離して考える「内外分離の原則」があり、これは特にニューヨーク市の保存行政において顕著に見られる。この原則は、外部の保存と引き換えに内部の自由な変更を保証し、内外デザインに強いコントラストを生む背景を形作っている。他方に外部ファサードのみを保存して内部のみを改変する手法には明確な批判もあり、これは特にチューリヒ市において顕著に見られた。そこでは内外を続合して考え、新旧の混在をより積極的に表現する方向性が模索されている。<創造的再利用>は既存作品の「解釈」から成り立つ点で演劇の演出や音楽の演奏にも通ずる「対話」に基づくアートであり、21世紀においてますます重要になる新たな創作の領域であると考えられる。