著者
見上 彪 内貴 正治 松田 治男 板倉 智敏 平井 莞二 加藤 四郎 森口 良三
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

本研究はマレック病(MD)のワクチンブレイクに対抗しうる有効なワクチンの開発を最終目標としている. 以下に3年間で得られた成績の概要を述べる.1)MDウイルス(MDV)・七面鳥ヘルペスウイルス(HVT)のウイルス群は血清型として3型に分類されている. それぞれの血清型あるいは免疫原として用いたウイルス株に特異的な単クローン性抗体が班員により, 多数樹立され, これら抗体を用いることにより野外分離ウイルスの同定が容易になった. また, MD腫瘍細胞を免疫原として用いて, MDに特異的な単クローン抗体も作出され腫瘍細胞の同定に有用と思われた.2)ニホンウズラにおけるMDの浸潤状況とHVTによるワクチン予防効果を検討したところ, 実質臓器のリンパ腫瘍を主病変としたMDがウズラの間で多数発生していること, リンパ腫病変とMDV羽包抗原との間に正の相関が, またリンパ腫病変とHVT血清抗体との間に負の相関があることが明らかとなった. MDワクチンブレイクの発生をみたウズラ群から4種のMDVが分離され, これらウイルスは単クローン性抗体により血清型1に属し, 鶏に対しても強い腫瘍原性が示された. 同様にニワトリ群からも5種のウイルスが分離された.3)MDに対するワクチン候補株として, 非腫瘍原性MDVの分離が急がれている. 我々はニワトリ及びキジ類それぞれ13羽, 10羽からウイルス分離を試みたところ, 調べたすべてのニワトリからウイルスが分離され, 単クローン性抗体により血清型2に属していることが明らかとなった. 今後, これらウイルスを用いてワクチンブレイクに対抗しうるワクチンが開発されることが期待される.
著者
白井 英俊 白井 賢一郎 有田 節子
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本語の談話を主たる題材として、談話理解、特に対話における情報のやりとりに関する理論を構築することと、計算機と人間との対話のモデルの構築を目的とした。理論的な枠組はSDRT理論(分節談話表示理論)のアイデアに基づきながら、言語学的な理論研究と、計算言語学的な応用研究の両面からアプローチした。日本語に特化してSDRT理論の提唱する談話関係を拡充し、談話構造の記述の可能性を明らかにした。ツィッターのような短い談話には特に有効であることが示唆された。
著者
野田 研一 山里 勝己 木下 卓 高田 賢一 中村 邦生 窪田 憲子 笹田 直人 中川 僚子 久守 和子
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

英米文学および英米文化の研究を通じて、英米圏における〈日本幻想〉の胚胎・生成とインパクトの諸相を総合的かつ具体的に検証することをめざした。(ただし、課題の性格上、日本文学に関する研究も含まれる。)理論的には表象論を基底に据え、コロニアリズム/ポストコロニアリズムにおける「接触界域」(contact zone)論を踏まえつつ、日本表象に内在する複雑なダイナミズムを明らかにした。具体的には、言説としての〈日本幻想〉生成のプロセスを複数のテーマ設定によって分析した。これらのテーマは、連続的な生成プロセスであり、明瞭な区分を与えることは困難であるが、このプロセス全体を通じて、所定の個別化された〈日本幻想〉が産出・消費されてきたものと考える。
著者
堀内 嵩 小林 武彦 定塚 勝樹 篠原 彰 日高 真純
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

堀内らは、この研究領域の開始前までに、(1)大腸菌の複製フォーク阻害部位(Ter)において相同組換えの活性化が起こり、ホットスポット(Hot)となること、(2)出芽酵母のリボソームRNA遺伝子(rDNA)リピート内にある複製フォーク阻害部位(RFB)における阻害が、rDNA領域内の組換え、さらにコピーの増減に必須であることを見出していた。その後本研究により(1)大腸菌のTer近傍に見出した組換えのHotにおいても、遺伝子増幅が起こり、酵母とは異なりローリングサークル型複製により、菌集団の約10%の細胞でHot領域が約400倍に増幅することを見出した。(2)一方、以前から酵母のサイレンシングタンパクの一つSir2がrDNAリピート内発現の抑制(サイレンシング)と組換えの抑制に必須なことは知られていたが、機構は不明であった。我々はsir2欠損下では35SrDNA間に存在する両方向のRNAポリメラーゼIIプロモーターの発現の抑制(サイレンス)が解除され、転写が起こる結果、その領域に結合していたコヘーシンが外れ、その領域の姉妹染色体間の結合がゆるむ結果、非対称的組換えが活性化(コピー数変動)されることを見出した。(3)fob1欠損下ではrDNAのコピー数は凍結するが、高いコピー数は維持される。この未知の維持機構を明らかにしようと、fob1欠損下でコピー数維持不能変異株を多数分離し解析したところ、6株のコンデンシンの変異株を分離した。コンデンシンタンパクの局在化の解析から、コンデンシンはS期にrDNAのRFBにFob1依存的に特異的に結合することを見出し、rDNAのコピー数の維持に必須であることを明らかにした。一方篠原らは、減数分裂期に起こる相同組換えの分子機構を解析し、特にこの時期に働くことが知られているRecAホモログDmc1と共同して働く因子を探索することで、二つの新しい因子Mei5とSae3を見出し、3者の染色体への結合が相互依存的であることから、3者は複合体として働くと結論した。
著者
中野 勝郎 杉田 敦 細井 保 名和田 是彦 川崎 修 山崎 望 川原 彰
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、インターナショナル・ミニマムを世界共通課題としてとらえ、普遍的な立場からこれを国際レベルの政治機構を通じて組織・制御することの妥当性を問うた。またナショナル・ミニマムを国レベルの政府によって組織・制御する具体的な制度が問われ、分節的な構成による組織・制御が展望される一方で、私たちが有する社会・政府観の再検討が提起された。全体として、国際レベルから地域レベルへといたる多元・重層的な政治を構想することができたのではないかと考える。
著者
南 優子 鈴木 貴 角川 陽一郎 大内 憲明 立野 紘雄 多田 寛
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

閉経後乳癌62名の血中・乳腺組織中ホルモン濃度と乳がんリスク要因との関連を解析した。ホルモンレセプター陽性の場合、エストラジオール(E2)の組織中濃度は血中濃度の43.7倍、陰性では14.5倍。また、ホルモンレセプター陽性では「授乳歴あり」で組織中E2濃度が高くなる傾向が認められた(p=0.01)。これらよりホルモンレセプター陽性乳癌組織内ではE2が生合成または血中から集積され、その機序に授乳歴が関与している可能性が示唆された。
著者
早坂 菊子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

専門家診断の実態から予防という観点で、近親者に吃音者がいる、あるいは両親、そのどちらかが吃音者である家庭を早期に抽出し、パンフレット等で、正しい吃音への対応を発吃前に知らせることで、吃音の発現、進展を防止できるのではないかと考えた。そこで1歳半検診において、近親者に吃音者がいるかどうかの調査を行う。さらに、いると答えた家庭には予防の事項が書かれているパンフレットを送付し、正しい知識の啓蒙を行う。また、2ヶ月おきに各家庭から日常場面での言語表出を録音したテープを送ってもらう。調査は茨城県内の保健所13箇所である。方法は、主に調査者が調査用紙を母親に配付するという方法をとったが、遠方の場合は保健所に配付、回収を依頼する。回収数936名中ありと答えたもの32名、3.4%であり、男子17名、女子15名であった。1親等6名、2親等21名、3親等以上8名であった。住所を明記した者が11名であり、彼等にパンフレットを送付し、必要以上に吃音を回避しないように、出現してもあわてないように指導をおこなった。言語症状は、溝上(1997)を参考とした。1999年6月までは症状はあらわれなかったが、2000年2月に2人の子供に症状があらわれたという連絡がはいった。新たにパンフレットをおくり、吃りはじめた子供への対応を教示した。現在、追跡調査中である。
著者
大政 正武 鈴木 和夫 福田 正樹 柴田 久夫
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチの3種のイグチ類の菌根性きのこの培養菌糸体からプロトプラストの調製方法を開発した。2. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチのプロトプラストの培養方法を開発した.この際通常プロトプラストの培養に使われる寒天が良くないことを明らかにし、その代わりにゲランガムが良いことを示した。3. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチの培養に対する培地成分、培養温度など各種条件の影響を合成培地を用いて明らかにした。4. ハナイグチを中心にイグチ類の遺伝資源を26株収集した。5. ハナイグチの11系統のミトコンドリアDNAのRFLP分析によりこれらが3つのグループに分けられることを明らかにした。これはミトコンドリアDNAの大きさの違いによる分類とも一致した。6. ヌメリイグチのプロトプラスト再生株に形態変異や酸化酵素活性の変異が表われ、これらの間に関連性があることを明らかにした。7. ヌメリイグチの細胞学的な性質を明らかにした。8. 以上の知見から、プロトプラストや交配を用いることによりヌメリイグチの育種が可能なことが明らかになった。9. アカマツの無菌的に育成した実生に、ヌメリイグチ、ハナイグチの菌根を合成することに成功した。10. イグチ類のキアミアシイグチから、新しいマクロライドフェノール性物質を抽出し構造決定した.又、菌根菌のケロウジからはこれまでにない新しいタイプの抗細菌性物質を抽出し、構造を決定した。
著者
荘厳 舜哉 山本 登志哉 亀島 信也 河合 優年 竹内 伸宜 坂元 章 藤永 保 上原 明子
出版者
大阪学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

全部で6つの大きな課題が,4つの研究集団の手によっておこなわれた。最初の3つは研究代表者を中心としたグループの,条件統制観察研究,乳児保育所の自然観察研究,それに河北と上海における感情意識構造の質問紙研究である。それぞれの結果は報告書にまとめられているが,全体を通じて,日本の母親や保育者が受け身姿勢であるのに対して,中国の母親や保育者の,指導をすることに対する強い姿勢が描き出された。坂元のグループは,最近日本でも話題になっている青少年の暴力犯罪に関する調査研究をおこなった。結果は多岐にわたるが,日中両国共,青少年犯罪の原因は家族内コミュニケーション不足といった後天的要因が作り出しているという見解において共通であった。日本ではメディアによる悪影響が問題にされるが,実際にはそれは青少年犯罪の本質ではないということも明らかにされた。山本のグループは,子どもが小遣いをどのように使うかということに視点を当て,日本民族,吉林省延辺に居住する朝鮮族,同じく延辺に居住する漢民族,上海市の漢民族とい4集団の比較研究をおこなった。その結果,民族間というよりも,居住地域において小遣いの使い方に違いが認められた。また,小遣いの使途に関する親子間の認識のずれは,これも当然のことながら,年代が上昇するにつれて拡大する。しかしながら,小遣いで購入する物品の価値判断については文化・地域において違いが認められなかった。河合のグループは,内モンゴル自治区の満州族を対象として,据え付けカメラを固定して日常を撮影するという手法,及び日記の分析を通じて,民族に特異的な養育観の研究をおこなった。幼稚園教育自体においては日中間に大きな違いはないが,集団の中での役割や行動規範の獲得において,中国側に強い強制力が働いていることが明らかになった。
著者
阿江 通良 藤井 範久
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,小学1年生から6年生までの児童284名(男子141名,女子143名)の歩行動作の計測を行い動作データを収集した.得られたデータをもとに小学生の歩行動作の標準的動作パターンを作成した.また青年および高齢者の歩行動作と比較することにより,小学生の歩行動作の特徴を明らかにした.1.小学生の歩行動作の特徴歩行速度,ステップ長,ステップ頻度に関しては,以下の特徴が見られた。(1)学年とともに歩行速度・ステップ長,歩行比が大きくなり,ステップ頻度は小さくなった.また男子の方が女子より歩行比が大きく,ステップ頻度が小さかった.(2)歩行パターンは,学年とともにステップ頻度依存からステップ長依存に変わり,小学生以降さらにステップ長に依存していくと考えられる.また男子の方が女子よりステップ長に依存していた.また、動作に関しては,以下のような特徴が見られた.(1)支持期の股関節は男子の方が女子より伸展しており,これは体幹が起きており,R-on時の大腿の後傾が小さく,L-on時の前傾が大きいためであった.(2)男子より女子の方が膝関節,下腿および足の動作範囲が大きかった.2.小学生の歩行動作に関するデータベースの構築ステップ長,ステップ頻度,歩行速度,歩行比(ステップ長/ステップ頻度),kinematics(身体重心の軌跡,関節および部分角度など),kinetics(回復脚の関節トルクおよび関節トルクパワー)などを算出し,学年,性別に着目してまとめた.そして,身体各部の2次元座標をもとに標準的動作を学年,性別ごとに作成し,stick picturesで表示できるようにした.
著者
宮島 大一郎
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

観賞植物類においては主に花が育種の対象になり生殖が影響を受けている場合が多い.このことよりビンカ,パンジー,プリムラ・ポリアンサについて植物体構造変化による種子生産栽培を試みた.これらの生殖生態の解明を行った結果,いずれの植物種もミツバチが受粉媒介する典型的な植物と異なった生殖における生態を持っており,また受粉媒介昆虫の確保がいずれも難しいことがわかった.これらの植物において開花や種子稔実の負担を調べるためつぼみを摘除,開花のみさせる,あるいは人工授粉により全ての花を受粉させることにより種子生産量,植物体の生育を比較した.その結果,つぼみ摘除はいずれの植物においてもresource生産構造の生育を促進した.受粉後の花弁摘除はプリムラにおいてはresource消費軽減の有効な方法と考えられた.一方パンジーでは受精の成功の有無に関わらずほぼ枯れるまでの長期間に渉って受粉受精の能力があるため花弁摘除は昆虫訪花を排除して逆効果になることがわかった.いずれの植物においても花弁摘除がresource生産構造の遮光の軽減になるかどうかは明らかで無かった.ビンカにおいては開花の負担は小さく,また花によるresource生産構造への遮光の影響も小さかった.ビンカにおいては訪花昆虫の種子生産への寄与が大きく,また能動的自花受粉のメカニズムにより種子稔実における問題は小さく収穫労力の改善が必要と思われた.いずれの植物についても初期につぼみ摘除をする方法を試みた結果,つぼみ摘除終了後大きく肥大したresource生産構造に多くの花が集中して咲くことがわかり,受粉,収穫労力の集中化の点で有効な方法と考えられた.
著者
山木 朝彦 井上 由佳 塚田 美紀
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研修の機会などを通じた美術にたいする教師への教育と学校との連携という観点から俯瞰したとき、テイト・ギャラリーの教育普及活動全般が非常に質の高い内容を誇っていることを調査によって確認した。さらに、学校と連携して行われた実践的な教育プログラムであるバーバル・アイズ(Verbal Eyes)というプロジェクトの実施の方法と教育的意義の両面について、学芸員・教師・アーティストなど主要な関係者から聞き取り調査を行い、美術教育における美術館利用のあり方や表現活動と鑑賞活動を有機的に結びつける手法、そして、アーティストを媒介にした現代の美術の動向を学校に伝達する方法を明らかにした。
著者
杉村 孝夫 日高 貢一郎 二階堂 整 松田 美香
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

50年前20年前の大分県方言談話資料(1次2次とも実施したのは24地点)に加え、本研究では大分県内13地点の談話を収録した。それらは、少年層・青年層・高年層の3世代の男女1組の最大8つの場面設定の会話と自由会話からなる。50年間を通して同じ年代設定、同じ場面設定の談話を3回収録したことになる。これらの談話資料を比較し、文末助詞の抑揚と機能、辞去の場面の分析など50年間にわたる言語生活の変容を解明した。
著者
大谷 直輝
出版者
埼玉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究では、理論と方法論の両面から言語構造を動機づける認知的・談話的な基盤についての考察を行った。具体的には、大規模な言語コーパスを参照して、実際の使用文脈の中から現れる、英語の不変化詞の談話機能や文法機能を考察した。また、方法論の面では、言語の身体性や反意語間に見られる非対称性に注目した質的方法論と、文法的・意味的・談話的な要素のコーディングに基づく量的な方法論を融合させ、言語を経験的に分析するための手順を示した。
著者
達富 洋二 森山 卓郎
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、教室談話の記録を分析した。その結果、生活語レジス ターによる発話には,生活語レジスターによる発話には指標的な機能をもつ発話があるという 特徴があることが明らかになった。教師が子どもの発話を聞く時に、生活語レジスターによる発話にはこれらの特徴があることを理解したうえで、子どもの発話に関与していくことで、教 室談話が創造的なものになることが分かった。
著者
宗原 弘幸 古屋 康則 早川 洋一 後藤 晃 後藤 晃
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

交尾は、肺呼吸、四足歩行と並んで、ヒトを含む脊椎動物が陸圏に進出する際の前適応である。交尾の進化過程を再現するため、近縁種に交尾種と非交尾種を含んだカジカ上科魚類をモデルとして、雄間の競争、特に精子競争の影響に焦点を当てて、実験的に調査した。行動形質の評価指標として繁殖成功度に注目した。その結果、射出精子量、交尾の順番が、繁殖成功度に影響し、先にたくさんの精子を雌に渡すという行為が交尾の進化動因であることが示唆された
著者
住野 公昭 江原 一雅 山下 長司郎 石井 昇 正井 栄一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

通信設備など災害時に使用する設備は、災害直後に素早く稼動するものほど価値が高い。被災者は災害直後から2〜3日の間が一番困難な状況にある。阪神淡路大震災被災直後に医療機関は様々な情報を必要とした。他の医療機関/個人/災害対策本部/などに連絡をし、それらから情報を得、あるいは情報を提供したりするには、電話連絡よりも、メールやInternetのホームページのような形式の通信システムが優れている。その理由は、通信時間が短くて済む事、相手がいなくても情報を得る事が可能であるからである。そのような用途に使え、さらに、1)被災後すぐに使用でき、2)個人でも所有できる程度に安価で、3)電池で稼動し、4)可搬性が優れていて、5)画像も含めたメールが扱え、6)携帯電話/衛星電話/でも使用できるシステムを作成した。Internetと比較すると以下の点で、本システムの方が優れている。1)メール送受のリアルタイム性、2)メール受け取り確認の必要性、3)災害時のネットワーク資源の効率的利用、4)セキュリティが高い。例えば、Internet mailでは、メールがメールサーバに受信された時刻とメールが実腺に読まれる時刻の間には時間的ずれが生ずる。本システム(kU-Net)ではメールは直接相手のコンピュータに届くので、受信者はメールが届いたことを即座に知ることが可能であり、メール受信時刻とメールが読まれる時刻との間に遅れが生じにくい。セキュリティに関して、本システムでは、ネットワーク媒体に電話回線だけを使用するので、運ばれるデータがInternetのように多くのコンピュータを経由することがないので、覗き見される危険が少ない。ユーザーが勝手に電話番号の変更をできないので、送信者の確認がとりやすい。などの利点があり、災害時の通信システムとして適している。
著者
南條 博 小林実 貴夫 高橋 正人 増田 弘毅 川村 公一 高橋 正人
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

骨髄より動員された内皮幹細胞と樹状突起細胞が、全身諸臓器の血管の活性化に直接関与することを成体で明らかにする目的で、本研究を遂行した。骨髄キメラマウス4ヶ月のトレッドミル負荷1週-4週後の全身諸臓器を詳細に観察した。得られた主な知見は以下の通りである。1)骨髄由来樹状突起細胞が多く出現している部位とまったく見られない部位に分かれているのが特徴で、一様の分布ではない。2)骨髄由来樹状細胞は肋間動脈開口部で多く見られる。3)骨髄由来樹状細胞の出現頻度はトレーニングマウスとトレーニングしないマウスで有意な差はみられない。4)骨髄由来樹状細胞の出現頻度はトレーニング1~4週で差はみられない。5)骨髄由来内皮細胞は上行大動脈起始部にみられる。6)心臓毛細血管では多数の骨髄由来内皮細胞がみられる。7)全身諸臓器の動脈、静脈、リンパ管に骨髄由来内皮細胞がみられる。さらに、週齢による骨髄由来内皮幹細胞と樹状突起細胞の動態を検討し、以下のことが判明した。8)骨髄由来樹状細胞は週齢とともに増加し、大動脈弓から下行胸部大動脈、72週では腹部大動脈に至る大動脈ほぼ全体に分布する。最終的に動脈硬化のない老齢マウスにおいて、骨髄由来樹状細胞が大動脈内膜全体に分布するという世界で初の知見を病理形態学的に証明した。
著者
尾崎 幸仁
出版者
大阪府立園芸高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

○研究目的 ミツバチの利用する植物を、巣に持ち帰る花粉荷より同定し、周囲の利用植物の分布を調査する。この結果をGISを使用して地図化し、ミツバチ利用植物マップを作成して、生き物(ミツバチ)の生育し易い環境(緑環境)かどうか、またミツバチの行動特性を調べる事を目的とした。○研究方法 池田市において2箇所の地点で養蜂を行いながら、ミツバチ利用植物を調べた。方法として、ミツバチが持ち帰る花粉荷を定期的に採取して、花粉を色・形状(粉質・粘質)で分類して、顕微鏡写真を撮影(電子顕微鏡を使用)し記録した。また同時期に開花しており、ミツバチが訪花している植物の花粉を採集し顕微鏡で写真をとり記録した。この写真をベースにしてミツバチ荷の植物(利用植物)名を同定して、GISを使用したミツバチ利用植物の分布地図の作成を行う。今回の研究では、調査範囲を巣の置いてある本校を中心にして、研究場所から半径1kmの範囲の利用植物を調べた。○研究成果 5月~6月にかけてミツバチの持ち帰る植物花粉荷は多種類になり、利用植物を同定する事が難しかった。特に予想した植物をあまり利用しておらず、GISを使用して、ミツバチ利用植物マップを作成出来なかった。今回の研究で解ってきたこととして、(1)ミツバチは巣の周りの植物を、流蜜量が少なくても利用する傾向がある。(2)5月半から7月上旬まで優先種として長期間にわたり持ち帰る、こげ茶色の花粉荷はクローバーである事が判明した。クローバーの花粉は、花にあるときは透明に近い色であるが、巣に持ち帰る時はこげ茶色になる事が解った。植物の分布について本校より南に1kmのところにある大阪国際空港の可能を推察しているが、調査許可が下りず調べる事は出来なかった。(3)9月中旬より半月程,黄色でウリ科の植物の花粉荷が見つかり、本校より西に1kmのところを流れる猪名川河川敷に生育しているアレチウリの可能性が推察された。アレチウリは特定外来生物に指定された植物であるが、この河川敷にはニセアカシア・トウネズミモチの生育も確認なされており、河川の環境を知るための手法として今後も研究を継続する必要性を強く感じた。
著者
関根 和生
出版者
国立情報研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は,身振りは幼児期から発話生成に影響を及ぼしているのか,また,身振りの使用が言語発達と共にどのように変化するのか,ということを実証的に検討することである。この目的を遂行するため,最終年度では,以下の4点の研究活動を行った1.平成21年度に行った研究1「談話構築における身振りの使用とその変化」と平成22年度に行った研究2「児童期における空間利用の変化」の結果から,児童期における身振りと空間利用の発達段階を提案した。また,自然状況下での談話場面のデータを収集・分析した。その結果,実験的場面から得られたデータを支持するものとなった。2.本研究の理論的貢献となる"身振りと発話の変化に関する説明理論"と,"発達段階ごとの身振りの産出モデル"を構築した。3教育心理学会や,データ収集を行った小学校で研究成果を報告し,現場の教師からフォードベックをいただいた。それをもとに,実践的貢献となる研究結果の教育場面への応用を提案した。身振りの空間利用の仕方が談話発達の予測することから,身振りが指標となるという提案である。4.最後に,本研究の問題点や限界点を総括し,今後の課題や研究の方向性を検討した。以上の研究活動から,児童期後半から,談話知識とともに人物参照のための身振りが出現することが明らかになった。この現象は,教室場面や自然会話場面など,幅広い文脈でみられるものであった。これらの知見は,談話構築がマルチモーダルに達成されていることを明らかにするデータであり,これまで言語を中心に分析してきた談話研究に対して,新たな理論的・実践的観点を提供するものである。