著者
横山 道史
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 = Yokohama journal of technology management studies (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.21-33, 2007-03-28

本稿は、日本のフェミニズムにおいてエコフェミニズムが不在である理由とその背景について考察するものである。日本においても、エコフェミ論争(1985)が象徴しているようにエコフェミニズムに関する理論的知的格闘が存在してこなかったわけではない。しかし、日本においてエコフェミニズムがフェミニズムの一つの潮流として未だ根付いていないように見受けられるのはなぜなのか。本稿は、このような問題意識を基盤として、フェミニズムとエコロジー思想が接近・遭遇しつつも距離をとらざるを得なかった事情について考察するものである。その際、エコフェミ論争の議論を中心に検討し、また、日本におけるエコフェミニズムの可能性を探っていくという意味で欧米のエコフェミニズムの議論も併せて検討していきたい。
著者
北舘 佳史
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.1-28, 2022-09-30

フォンテーヌ・レ・ブランシュ修道院は隠修士の共同体に起源を持ち,サヴィニー会,シトー会と帰属の変更を経験した。本稿は1200年頃に院長ペレグランが書いた修道院の歴史を分析対象として,そこでどのように共同体の制度化を正当化しているのか,また,どのように院長の統治を評価し,修道院の財産を保護しようとしているのかを検討する。この史料の叙述編の検討から,隠修士の時代の理想化はあまり見られず,遺産として東方からの聖遺物が重視される一方,制度化が正当な手続きでなされたことを強調する点が指摘できる。次に院長の事績の検討から,財産を増やす能力や地域の人間関係を維持する能力が重視され,院長ロベールの選挙の正当性が暗に主張される点が注目される。最後に文書編の検討から,教皇文書によって修道院の制度的な帰属や地位が表現され,歴史的・象徴的に特別に重要とみなされた証書が選択的に採り上げられている点が指摘できる。このようにペレグランの歴史叙述からは共同体のアイデンティティと財産の分かちがたい結びつきが看て取れる。
著者
野部 了衆 Ryouju NOBE
雑誌
岐阜聖徳学園大学短期大学部紀要 = Bulletin of Gifu Shotoku Gakuen University Junior College (ISSN:13447246)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.1-43, 2001-03-31

This paper has attempted a study of Bhasa's works of Indian Sanskrit Literature. Urbhanga, a short drama of one act, regarding an incident from the story of Mahabharata, contains some very interesting elements for us. This study attempts to comprehend the culture of the time, e. g. spiritual problems, through this drama. A Japanese translation of the drama and related articles has been prepared and discussed.
著者
田中 泉吏
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1_1-1_13, 2008 (Released:2009-07-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1

Altruistic behaviors are quite impressive features in nature and call for selective explanation. Ever since Darwin, many biologists have appealed to group selection to explain altruism. In the 1960s, Williams knocked down these naïve group selectionists and alternatively promoted gene selectionism. However, group selection was highlighted again in the 1980s by Wilson and Sober, who suggested a hierarchical conception of evolution. Opposing to this conception, some philosophers, together with some biologists, proposed to adopt a pluralistic stance toward various models of selection. These three approaches give different explanations of the evolution of altruism. I compare them and show a pluralistic one is the most valid among them.
著者
高野 正太
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.621-627, 2019 (Released:2019-11-15)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1

慢性便秘を治療する際は大腸通過時間や便排出能力を念頭に置かなければならない.食事療法,運動療法は慢性便秘全般に対する共通の治療となるが主に大腸通過時間遅延型,大腸通過正常型への治療となる.一方理学療法は便排出困難型の便秘症に対して有効である.食事療法としては食物繊維を始め,乳酸菌食品や発酵食品の摂取が推奨される.運動療法として有酸素運動が便秘の改善に関係するといわれる.便排出障害に対しては排便姿勢指導やバイオフィードバック療法,体幹筋トレーニングが効果があるとされる.特にバルーン法や筋電図,内圧計を用いたバイオフィードバック療法は多くの論文が認められ施行することが推奨される.
著者
遠藤 徹 エンドウ トオル Endo Toru
出版者
同志社大学グローバル地域文化学会
雑誌
GR : 同志社大学グローバル地域文化学会紀要 : Doshisha Global and Regional Studies review : the journal of the Doshisha Society for Global and Regional Studies (ISSN:21879060)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-22, 2015-10

論文(Article)ビョーク『オール・イズ・フル・オブ・ラブ』につけられた、クリス・カニンガムによるミュージック・ビデオの孕む意味を探った論考。このMVでは、ビョークの顔を持った二体のアンドロイドによる性愛の行為(の模倣)が描かれる。一見、それは、機械が人間的なもののすべてを簒奪することの隠喩のように見える。それはそうなのだが、人間が機械の一部として従属的な存在と化されつつある現状の進み行きのなかで、それを軍事的で「男性的」な攻撃性の方向にではなく、より平和的な共存の方向へと導くためのひとつの方向性を示すものと捕らえることができる。つまり機械に「女性的」な愛を帯びさせようとする試みであると読むことができるわけである。The music video which was directed by Chris Cunningham for the Björk's song "All is Full of Love", tries to show us the scenes where machines are tries to replicate human attributes such as love or pleasure. It could be interpreted as to show the way to make human attributes survive among the machines at the time when every humanness is subordinated to machines.
著者
源馬 均 佐藤 篤彦 千田 金吾 岡野 昌彦 岩田 政敏 安田 和雅 谷口 正実 山崎 晃 立田 良廣 西村 和子
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.710-717, 1991-06-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
24

超音波加湿器による過敏性肺炎の2例を報告した. 両例とも環境誘発試験陽性であり, 同試験後早期のBALは好中球増多を示し, 第1例では病理組織学的にも胞隔内に好中球浸潤が認められた. 第1例では加湿器の水の培養を施行しえなかったが, 皮内反応, 沈降抗体, 吸入試験の成績から Aspergillus fumigatus が起因抗原と考えられた. 第2例では水の培養および沈隆抗体から抗原として Acremonium が疑われた. 従来, 加湿器肺の抗原として好熱性微生物が重視されていたが, 超音波加湿器による本報告例ではその関与を示唆する所見は得られなかったことから, 本症の抗原検索にあたっては加湿器の機構にも留意すべきと考えられた.
著者
小暮 修三
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.119-139, 2009-03

かつて、日本の沿岸各地には、裸潜水漁を行いながら生計の主要な部分を賄う人々が存在し、彼/女らは俗に「海人(アマ)」と呼ばれ、特に、男性は「海士」、女性は「海女」と表記されている。この海人の歴史は古く、『魏志倭人伝』や記紀、『万葉集』から『枕草子』に至るまで、その存在が散見される。また、海女をモチーフとした文学作品や能楽、浮世絵も数多く残されている。しかしながら、もはや裸潜水漁で生計を立てている海女の姿は、日本全国のどこにも見つけられない。 このような海女を対象とする研究は、一九三〇年代から民俗学を筆頭に、歴史学、経済地理学、医療衛生学、労働科学、社会学等において、数多く見つけ出すことができる。しかしながら、海女の表象、特にその裸体の表象に関しては、浮世絵に描かれた海女についての記述を除き、特別な関心は持たれてこなかった。 そこで、本稿では、二十世紀を通してアメリカの「科学」雑誌『ナショナル ジオグラフィック』(National Geographic)に現れた海女の姿から、性的視線を内在させるオリエンタリズムの形成について考察する。ただし、そのような過去(二十世紀)のオリエンタリズム批判「のみ」で、この考察を終わらせてしまえば、既存の反オリエンタリズム的枠組みに留まるだけの論考になってしまう。そこから、太平洋戦争前の海女に関するナショナルな表象に触れると共に、戦後の『ナショナル ジオグラフィック』における海女の表象を維持・補完していたと思われる「観光海女」の存在、及び、海女をとりまく社会環境の変化を取りあげ、オリエンタリズムと国内言説の相互関係について考察を行う。
著者
林 直保子 与謝野 有紀
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.27-41, 2005 (Released:2005-08-26)
参考文献数
31
被引用文献数
6 6

高信頼者は低信頼者に比べ他者の信頼性の欠如を示す情報に敏感に反応するという小杉・山岸(1998)の結果を4つの研究で検討した。調査1では,小杉・山岸(1998)で用いられた一般的信頼感の指標が,一般的信頼感のレベルと他者の信頼性情報への反応パターンの間の関係を検討するための適切な指標となっていなかった点を指摘した。調査1の結果に基づき,2つの実験とひとつの郵送調査では,一般的信頼感として異なるものを用いた。結果は,低信頼者が他者のポジティブ人格情報に敏感に反応し,対象となる人物を信頼するようになることを示していた。3つの研究から,高信頼者と低信頼者は対称な反応パターンを有しており,いずれも社会的な機会を拡大するという点で適応的であることが示唆された。
著者
布川 日佐史
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.37-46, 2007
被引用文献数
1

現代日本においてワーキングプアという言葉が一般化し, 貧困の広がりが注目を浴びるようになってきた。貧困の判定基準は生活保護給付額であり, それがあってはならない状態である貧困の境界線を確定している。また, 生活保護が最後のセーフティネットとして貧困をなくす役割を負っている。生活保護制度は, 2005年より, 自立生活の基盤を失い社会生活に参加ができない社会的排除状態にある生活困窮者に対し, 日常生活・社会生活・就労自立のための体系的支援 (生活保護における自立支援プログラム) を始めた。本稿は, 雇用形態と家族形態の変容を前にして, 最低生活保障としての生活保護制度が, 所得・消費・資産のミニマム保障はもとより, 自立の基盤作りのための対人援助サービスを保障できるものにしなければならないとの問題提起をしたものである。
著者
林 俊郎 石丸 梓
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会全国大会研究発表論文集 日本社会情報学会 第22回全国大会
巻号頁・発行日
pp.252-257, 2007 (Released:2010-01-22)

The news about the attempted poisoning of Ukrainian presidential candidate with dioxin was given wide coverage in the world media. The author attempted to calculate the amount of dioxin with which the candidate was poisoned,taking into consideration his toxic intake from the viewpoint of the Yusho investigation previously reported in Japan. The candidate's toxic intake was calculated at 1.75-2.20 mg-TEQ. Thi value fairly agrees with the maximum incubative amount that exhibits toxic symptoms,mainly chlor-acne.
著者
中山 修一 和田 文雄 高田 準一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.57-64, 2012 (Released:2012-04-09)
参考文献数
12
被引用文献数
2 4

新学習指導要領に盛り込まれた持続発展教育の推進と地理教育の在り方に関し,国際地理学連合地理教育委員会の取組み,さらに,その推進母体であるユネスコの教育革新運動の系譜の考察を通して,日本における持続発展教育としての地理教育の進むべき道を検討することは喫緊の課題である.