著者
吉原 瑛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.393-404, 2007 (Released:2007-10-25)
参考文献数
9

This paper explores the philosophy of Ekiken Kaibara (1630-1714) pertaining to medical science and health care for the people. Kaibara was a confucianist and a herb doctor practicing in the mid Edo period, and gained fame for his excellent Yojo-Kun. His writings are extensive, and show that health care services for the people were flourishing at the time, although he considered that social pursuits were not sufficiently balanced among the three dimensions -physical, mental, and social -which he thought were essential for a healthy life.When European medicine began to be introduced to Japan, all textbooks were written in Dutch. Although C.W. Hufeland's health book was first brought to Japan in 1824, a translation was not initially published. Hufeland was the foremost German scholar in Europe in the early part of the nineteenth century, and his book was translated into Japanese by teachers of Dutch learning at Bansho-shirabesho (the Tokugawa Shogunate's Western Learning Institute). The translators not only translated this book, but also made great efforts to explain the meaning of the words.
著者
杉浦 克明 原崎 典子 吉岡 拓如 井上 公基
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.43-49, 2014
被引用文献数
5

本研究は児童の知っている樹木に焦点をあて, どれくらい, どのような樹種名を思いつき, どのように知ったのかを分析することを目的とした。調査は, 神奈川県藤沢市の市立小学校5校の4年生440名の児童を対象に, どのような樹種名を思いつき, 何をきっかけに知ったのかを把握するために, 思いつく樹種名の記入と, その樹種名を知った理由についてのアンケートを実施した。五つの小学校の児童が回答した上位20種をみると, サクラやモミジ等の樹種名であった。これらの回答された樹種名は, 「校内」, 「公園」, 「道」をきっかけに知った児童が多かった。つまり, 学校, 公園, 近くの道にあることで樹種名が認識されており, 児童の周辺環境が影響を与えていると考えられる。それ以外の樹種名では, リンゴ, ヤシ, ブドウ, バナナ, ナシなど小学校周辺ではみられない食用となる果実がなる樹種名が多かった。身近ではみられないこれらの樹種名を知る要因に, テレビの影響も考えられる。また, 授業で習ったため知ったと回答された樹種名もあった。以上のことから, 樹種名を知るきっかけとして校内や公園の環境, 授業等での教育, テレビが影響を与えている可能性が考えられた。
著者
北村 和雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.36-40, 1995-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6

ヒト褐色細胞腫より新しい降圧ペプチド“アドレノメデュリン”を発見した.さらに,アドレノメデュリンのcDNAクローニングを行い,前駆体の構造を明らかにした.アドレノメデュリンは副腎髄質以外に,肺,腎,心,血管などで生合成されている.アドレノメデュリンは強力な血管拡張性の新しい降圧ペプチドであり,高血圧症などで血中アドレノメデュリンが増加していた.これらの特徴を考慮すると,アドレノメデュリンは新しい循環調節因子だと考えられる.
著者
西村 則昭 Nishimura Noriaki
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
no.18, pp.21-36, 2019

白隠の布袋画の中にメビウスの帯の描かれたものが二種類ある.本論文では,それらを白隠の禅の境地を表現するものと捉え,ラカンの考え方を用いて分析検討した.ラカンは精神分析の経験を提示するためにトポロジーを用いたが,それは精神分析が禅と同様,現実界を志向する営為だからである.「無限」という観念が象徴界の限界を示すものであるならば,メビウスの帯が作り出す「無限の深みの更なる深み」は現実界を示す.問題の画の一つには,メビウスの帯を作り出す布袋の姿が描かれており,そこには現実界の中で言語活動の根源相を自覚的に生きる白隠の境地が表現されていると考えられる.もう一つには,メビウスの帯の面をくぼませ,無限大以上の容量の袋にして,その縁を口にくわえている布袋の姿が描かれており,そこには見性という仕方で『法華経』の深理に契当した白隠の,現実界から汲めども尽きない利他の活力を得ている境地が表現されていると考えられる.
著者
大鋸 智 渡邊 広範 樋口 孝之 植田 憲 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.100, 2006

本研究は山形県飯豊町中津川地域をフィールドとして、草木活用の知恵を活かして自然と共生する山里の姿を現地調査および文献調査に基づき明らかにすることを目的とした。草木活用の知恵はいずれも草木を採取し、加工、利用、さらに転用、修理していくところに表れていた。利用した後は、自然に還元され、再度採取可能な一連の資源循環型の生活を表している。これは自然と共生するための一つの重要な要素である。調査より、草木を活用する知恵には、資源を上手に活用する知恵と自然に対するこころづかいを育む知恵があり、互いにしっかりと結びついたときに初めて自然との共生した生活が形成されたといえる。「こころ」や「活用の知恵」が代々、親から子へ伝わり受け継がれ、自然に対する一定の作法をつくりあげた。そして、草木活用の知恵を全て利用し、困難を乗り越え、ときには楽しみである行事が行われていた。現在、私たちの生活では簡単に見過ごされてしまっている「豊かさ」が、中津川地域ではっきりと確認することができた。今研究では、人と自然が一体となった草木活用文化を明らかにし、中津川地域の草木活用文化が生み出す「豊かさ」を提示ですることができた。
著者
田中 信治 樫田 博史 斎藤 豊 矢作 直久 山野 泰穂 斎藤 彰一 久部 高司 八尾 隆史 渡邊 昌彦 吉田 雅博 斉藤 裕輔 鶴田 修 五十嵐 正広 豊永 高史 味岡 洋一 杉原 建一 楠 正人 小池 和彦 藤本 一眞 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1321-1344, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
203
被引用文献数
2

大腸腫瘍の内視鏡治療の適応病変としては,早期大腸癌のみでなく前癌病変としての腺腫性病変も多く存在し,大腸EMRとESDの棲み分け,そのための術前診断,実際の内視鏡治療の有効性と安全性を第一線の臨床現場で確保するための指針が重要である.そこで,日本消化器内視鏡学会では,大腸癌研究会,日本大腸肛門病学会,日本消化器病学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として「大腸ESD/EMRガイドライン」を2014年に作成した.本ガイドラインでは,手技の具体的な手順や機器,デバイス,薬剤の種類や使用法など実臨床的な部分については,すでに日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編「消化器内視鏡ハンドブック」が2012年5月に刊行(2017年5月に改訂)されているので,技術的内容に関しては可能な限り重複を避けた.大腸ESDは2012年4月に保険適用となったが,2018年4月には保険適用範囲と診療報酬点数が改訂された.「大腸ESD/EMRガイドライン」発刊後,SSA/Pの病態解明やESD症例のさらなる集積もなされており,ガイドライン初版発刊から5年目の2019年に最新情報を盛り込んだ改訂版を発刊するに至った.
著者
大類 清和 生原 喜久雄 相場 芳憲
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.389-397, 1993
被引用文献数
10

スギ・ヒノキからなる五つの小集水域において,土壌水や渓流の水質調査を行い,土壌から渓流への水質変化過程について検討した。調査地は群馬県の渡良瀬川上流に位置する東京農工大学演習林内の小集水域である。土壌水から渓流水へとイオン組成が大きく変化し,とくにNa<sup>+</sup>とHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>の著しい濃度上昇がみられた。pHは土壌水では場所により4~7程度の値であったが,渓流水はどの小集水域でも7前後であった。Al<sup>3+</sup>の溶出はpH4.8付近以下で顕著にみられた。 pH4.8以上では,土壌水,渓流水ともCa<sup>2+</sup>濃度は主要陰イオン合計(Cl<sup>-</sup>+NO<sub>3</sub><sup>-</sup>+SO<sub>4</sub><sup>2-</sup>+HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>) の濃度と強い正の相関関係がみられたが,主要陰イオン合計の濃度が同じでも土壌水に比べ渓流水でCa<sup>2+</sup>濃度は低かった。 pH4.8以上ではSiO<sub>2</sub>濃度はHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>濃度およびpHと正の相関関係がみられ,とくに渓流水はこれらの値が高く,母材風化による影響を強く受けていることが示唆された。 pH4.8未満では,逆にSiO<sub>2</sub>濃度はpHと負の相関関係がみられ,またH<sup>+</sup>濃度はNO<sub>3</sub><sup>-</sup>濃度と正の相関関係があり,硝化作用などによるH<sup>+</sup>の著しい増加で粘土鉱物の破壊の促進が示唆された。
出版者
日経BP社
雑誌
日経エコロジー (ISSN:13449001)
巻号頁・発行日
no.149, pp.28-31, 2011-11

大和ハウス工業・環境エネルギー事業統括部・事業企画グループの宇野豊・グループ長の元に、こうした話が企業から舞い込むようになったのは今年春のこと。原発事故やその後の節電要請を受け、再生可能エネルギー特措法成立の可否が注目を集めたころからだ。同社への問い合わせは、これまでに数十件に上る。大和ハウスはメガソーラー事業に参入する。
著者
満園 良一 勝田 茂 金尾 洋治 田渕 健一 永井 純
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.182-191, 1986-08-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究は, 中・長距離ランナー23名 (年齢19~25歳) を対象として, 外側広筋からニードル・バイオプシー法により筋組織を採取し, 骨格筋線維の諸特性を明らかにすること, およびこれら諸特性と, トレッドミル走行により測定された最大, 最大下運動時の有酸素的作業能との関係について検討した.結果は, 以下のように要約される.1) 外側広筋におけるST線維の比率は, %STが61.3%, %area STが63.4%の平均値であり, ST線維寄りの傾向にあった.また, ST・FT線維の平均横断面積は3, 000~13, 000μm2の範囲にあり, ST線維の方がFT線維よりも大きい傾向にあった.2) 外側広筋におけるCapillary supplyは, CDが279±51/mm2, C/F ratioが1.62±0.15, CC (/ST) が5.7±0.9, CC (/FT) が4.5±0.7であり, CCについてはST線維の周りの毛細血管数がFT線維のそれより有意に多かった (p<0.01) .3) 外側広筋におけるSDH活性は, 2.98~12.35μmoles/g/minの範囲にあり, %STおよびCC (/ST) との間にそれぞれr=0.480 (p<0.05) , r=0.640 (p<0.01) の有意な相関関係が認められた.4) トレッドミル走行により測定した有酸素的作業能は, VO2maxが68.5±7.3ml/kg/min (4, 066±329ml/min) , VO2@ATが45.9±5.1ml/kg/min (2, 756±313ml/min) であった.この有酸素的作業能と骨格筋線維の諸特性との関係については, VO2max, VO2@AT (ml/min) と%STとの間にr=0.583, r=0.537 (いずれもp<0.01) , VO2max, VO2@AT (ml/kg/min) とCC (/ST) との間にr=0.534, r=0.430 (いずれもp<0.05) , さらにVO2max, VO2@AT (ml/kg/min) とSDH活性との間にr=0.612 (p<0.01) , r=0.450 (p<0.05) の相関関係がそれぞれ認められた.以上の結果は, 中・長距離ランナーにおいて, ST線維や毛細血管などの構造的特性がSDH活性などの機能的特性を規定する一要因であること, および骨格筋線維の構造的・機能的特性が有酸素的作業能に大きく影響する可能性を示唆している.
著者
望月 理香 永徳真一郎 茂木 学 八木 貴史 武藤伸洋 小林 透
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.30-38, 2012-01-15
被引用文献数
1

『心はだれにも見えないけれど「こころづかい」は見える.思いは見えないけれど「思いやり」はだれにでも見える』(宮澤,2010).という詩にあるように,人それぞれの感性を外から知ることはできないが,その感性をもとに起こした行動は客観的にとらえることができる.本研究では,感性を言葉やジェスチャなどの表現を駆使して伝えるのではなく,感性に紐付く各人の行動(その人にとっての経験)を介して伝えることで,各人に最適化された分かりやすい表現により,感性のコミュニケーションが可能となるモデルを提案する.近年,ユーザ間のコミュニケーションをサポートするためのツールやインタフェースが発展し,多種多様な表現によって情報を伝えることが可能となってきている.しかし,感性の伝達においては,同じ言語表現・ジェスチャ表現であっても表現に対応付く感性が個人ごとに様々であるため,表現の伝え手がイメージした内容と受け手がイメージする内容が一致するとは限らない.そこで,本研究ではライフログから抽出される自身の経験を介した感性コミュニケーションモデルを提案する.本モデルは,言葉などの表現方法だけでは伝えることが難しい伝え手のイメージを,そのイメージに対応付けられる受け手の経験を提示することにより,情報の受け手が伝え手のイメージを分かりやすく理解できる,という新しいコミュニケーションチャネルを与えるものである.本稿では,本研究で対象とする経験の定義と感性コミュニケーションにおけるアプローチ方法を述べた後,提案モデルの各Pointの概要,実装方法を述べる.続いて,提案モデルの実現において重要なポイントである情報の受け手に提示する経験の選び方の検討を行った.経験に対する「なじみ」の強さを1つの指標とすることで,受け手に分かりやすい経験を選ぶことが可能になると考え,被験者実験によってその有効性を示した."No one can see your emotion but we can see your action (Miyazawa, 2010)." That is to say, we can't see emotion but can recognize the emotion from the action it triggers. We propose an emotion communication model supplement the regular communication modalities of words and gestures. Many tools and interfaces have been developed to support user-user communication. Literal information can now be exchanged in various forms. However, user-user communication is imperfect since it remains impossible to communicate images. In this paper, we propose an emotion communication model that permits images to be exchanged and attendant algorithms that identify "symmetry" experiences to be mined from Life-logs. Experiments are conducted to discover the criteria needed for accurate experience identification. The model establishes new communication channel through an analysis of personal actions (based on Life-log) as related to emotion. Therefore, it eases misunderstanding and increases intelligibility since it draws on personal experiences. In this paper, we report the concept of the emotion communication model and describe how to process Life-log data for matching experiences. Then, we conducted experiments to confirm the impact of explanations based on quantitative similarity and those based on familiarity to confirm the effectiveness of the emotion communication model.
著者
濱砂 雅人 伊藤 暢浩 幸塚 義之
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第30回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.164-167, 2014 (Released:2015-04-01)

KinectはMicrosoftから発売されているセンサーデバイスである.Kinectには人間の骨格情報を取得する機能が搭載されている.しかし,イベント会場の様な人の往来が見込まれる環境では,誤った人物を追跡してしまう場合がある.理由として,センサーが遮られるとKINECTから追跡対象者の情報が失われるためである.本研究では,センサーが遮られる直前の追跡対象者の位置情報を保持することで一度Kinectのセンサーから消失した人物を再追跡するシステムを提案し,実装・検証を行った.
著者
土`山 明
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

X線CTは物体の3次元内部構造を非破壊で得る手法である。単色化した放射光を用いることにより、その高い光束密度とコヒーレンスにより、吸収や位相コントラストなどに関する3次元像を定量的に高S/N比、高分解能で得ることができる。我々の研究グループは、SPring-8の放射光を用いて、この手法を隕石や宇宙塵の研究に応用するとともに、宇宙機が地球に持ち帰った彗星、小惑星や月サンプルの分析をおこなった。発表では、吸収像と位相像を組み合わせた手法による、炭素質コンドライトについての最近の成果や、「はやぶさ2」や「オシリスレックス」計画により持ち帰られる予定のサンプル分析のための新たな手法の開発について述べる。
著者
井手口 彰典
出版者
鹿児島国際大学福祉社会学部
雑誌
福祉社会学部論集 (ISSN:13466321)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.87-99, 2013-03-01

「同人音楽」と呼ばれる実践が日本で拡大・浸透を続けている。同人とは本来 「趣味を同じくする仲間」を意味する言葉であったが、今日ではいわゆる「オタク系文化」と密接に関連した語として理解されていると言ってよい。オタク(やその文化)は現代日本を象徴する現象として既に世界的に知られており、その研究も活発であるが、しかし一方で同人活動については、未だ手つかずの課題が多く残されているように見受けられる。ならば、同人活動の一端である同人音楽について論じることは、単に新興の音楽実践の内情を明らかにするというのみならず、現代日本文化の一側面を理解する上でも大きな意義があると言えるのではないか。そこで本論文では、まず同人音楽の具体的な活動内容を記述し、次いで当該実践を支える4つの環境要因の抽出を試みる。さらに同人音楽の本質を「妨げられない」という点に求め、その可能性を考究する。