著者
馬場 信行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.357-364, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
32

本論は、京浜電鉄が明治後期から昭和初期まで開発し、その後引き続き所有、管理、運営した羽田穴守海水浴場および周囲付属施設を対象として、文献調査に基づき、その運営実態と招致戦略の解明を目的とする。分析の結果、京浜電鉄は運営に試行錯誤を繰り返しながらも、明治後期から30年以上継続して海水浴場を維持し、多くの客に一日の遊楽を提供し、庶民の行楽の一環としての海水浴文化の定着に大きな役割を果たしたことが明らかになった。また、新社会層の女性や子どもが楽しめるように配慮した集客戦略は、化粧品という当該社会層を意識したサービスを提供した堀越商店のノウハウを取り入れながら、次第に施設や設備を洗練させていったことが判明した。
著者
時実 象一
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.287-293, 2018 (Released:2018-07-17)
参考文献数
22

フランスの国立デジタルアーカイブ機関のうち、フランス国立図書館(BnF)とフランス国立視聴覚研究所(INA)に訪問調査をおこなった。BnFのGallicaプロジェクトでは年約10億円の予算で蔵書のデジタル化を進めており、すでに新聞・雑誌210万号、画像120万点、書籍55万冊を公開している。BnFはEuropeanaの創設メンバーであり、今も強力に推進している。INAはテレビ・ラジオ番組の法定納入機関として、1400万時間の番組を収集し、INAthèque を通じて学術研究者に公開している。また、商業利用できる番組200 万時間分をINAmediaproを通じて世界に販売している。その一部はina.frから一般公開している。
出版者
東京電力
巻号頁・発行日
vol.昭和41年7月(昭和41年10月27日 昭和41年11月10日 一部訂正), 1966
著者
松山 亮太 淺野 玄 鈴木 正嗣
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.59-63, 2016-04-30 (Released:2018-05-04)
参考文献数
8

これまでに著者らは,タヌキ(Nyctereutes procyonoides)-イヌ(Canis lupus familiaris)間におけるセンコウヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)の交差感染の有無を明らかにすることを目的に,これらの宿主動物に由来するセンコウヒゼンダニ集団について遺伝学的研究を実施してきた。その結果,タヌキ-イヌ間の交差感染に関する遺伝学的証拠を得ることができた。しかし同時に,狭い調査地域においてセンコウヒゼンダニ集団が2つの遺伝的グループに明確に区分されることも明らかとなった。この現象が生じた要因を考察すると,「イヌや野生動物の移動によりダニの移入が生じた可能性」,「センコウヒゼンダニの行動生態に原因がある可能性」,「宿主-センコウヒゼンダニ間の相互作用により,センコウヒゼンダニの遺伝的差異が形成された可能性」が考えられた。それぞれの可能性を検証するには,疫学研究やセンコウヒゼンダニの生態学的研究に加え,disease ecologyの枠組みの中で研究を行う必要がある。
著者
渕上 恭子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D11, 2020 (Released:2020-09-12)

2009年、ソウル市冠岳区の主サラン共同体教会が、未婚の父母等、産みの親が育てられない赤子を置いてゆく「ベビーボックス」を設置し、以後10年間で1,600人の棄児を保護してきた。「ベビーボックス」は、生存が危ぶまれる棄児達を救っている一方で、嬰児遺棄を助長しているとの批判を免れないでいる。本報告で、「ベビーボックス」への嬰児遺棄が増え続ける背景と、そこにやって来る未婚の父母に対する子育て支援のあり方を考える。
著者
江頭 満正
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.17-29, 2018-10

本稿では、FUJI ROCK FESTIVAL 2015の経済的影響について考察した。現在、日本の音楽業界は大きな変化を遂げている。CDの販売量は減少しているが、音楽祭は250カ所以上で開催されている。音楽祭は盛んになり、音楽業界だけでなく地域の発展のためにも重要な位置を占めるようになった。フジロック2015の会場で、来訪者の居住地域と来訪者の購買行動について調査アンケート調査を実施し、221の有効回答を得た。経済波及効果金額は、主催者消費および、交通費、宿泊費などの来訪者消費から算出し、フジロック2015の経済波及効果は約150億円であった。これらの結果から、フジロック投資利益率は高く投資効率の良いイベントであること、来訪者消費行動に関しては初心者の訪問者よりも多額の消費傾向があることが明らかになった。また、ロックフェスティバルの構成要素を分析し、フジロックの優れた部分を明らかにした。今後、観光学の枠組みで、ロックフェスティバルを研究する必要があり、さらなる成長の為には地方自治体の関与が重要となるだろう。

7 0 0 0 OA 大日本古文書

著者
東京帝国大学文学部史料編纂所 編
出版者
東京帝国大学
巻号頁・発行日
vol.家わけ第2 (浅野家文書), 1906
著者
池内 長良
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.213-234, 1994 (Released:2017-04-27)
参考文献数
36

It is possible to find out about the rice crops in lean years by studying the reductions in land taxes. In this paper, the auther focuses on land taxes as indices of the crops and elucidates the distribution of the reductions in land taxes in Kyushu, Chugoku and Shikoku district where there were regions severely hit by planthopper damage. The Shogunate government granted loans to feudal lords whose land tax in Kyoho 17 (1732) was less than half of their normal land tax. In Kyushu, Chugoku and Shikoku, loans were granted to all independent clans located within the following boundaries; the southern boundary lay on the south of the Takanabe and Hitoyoshi Clans, and the eastern lay to the east of the Mori and Tosa Clans. With regard to the Chikugo Kurume Clan, Nakatsu Clan (Buzen Domain, Chikuzen Domain, Bingo Domain), Bungo Oka Clan and the lzumo Matsue Clan, clans and domains can be arranged as follows in order of the rate of reduction of their land taxes: Nakatsu Chikuzen Domain, Kurume Clan, Nakatsu Buzen Domain, Matsue Clan, Nakatsu Bingo Domain, Oka Clan. In the villages of the Karatsu Domain, the Fukuoka Domain, the Kokura Domain, the Buzen Domain of the Nakatsu Clan and the Bungo Domain of the Nobeoka Clan, the land taxes paid for the paddy fields dropped to less than 10% of the Harumendaka. There were, however, villages in the long, narrow valleys of the interior where the drop was small. In the Bungo Domain and the Buzen Domain, some villages paid no land taxes for their padday fields although the fall was small compared to villages on private lands. All the villages however, were entirely exempted from paying taxes for their plowed fields. As for the villages in Aki and Bingo in the San'yo belt, there was a great reduction in the land taxes of the Aki villages, marking a sharp contrast with those of Bingo. Among the villages of Bicchu, there were large drops in the land taxes paid by the Shogunate domains while there were little reductions in the land taxes paid by private domains. In the Shogunate domain of Mimasaka, the drop in the eastern part was smaller than that in the western. In the lzumo Matsue Clan and the Shogunate domain of Iwami in the San'in belt, though there were some villages which paid no land taxes for their paddy fields, the land taxes paid for the plowed fields were the same amount as the Jomen. The ratios of the land taxes for the paddy fields and plowed fields in the Hamada Clan are not clear, yet the reductions in their land taxes are almost the same as the overall reduction in the land taxes for both paddy fields and plowed fields in the Shogunate domain of Iwami. In the lyo Matsuyama Clan, priority was given to securing seed rice, which meant that they paid no land taxes. That which could be used as seed rice was presented as tax and compensation was granted instead by the clan in the form of soybeans. In the Ochigun Domain of the Imabari Clan, there were two groups with great reductions in land taxes among the 52 villages located in and around the Imabari plains. As for the villages of the lyo Saijo Domain situated on the Niihama plains, the reductions in their land taxes were extremely small.
著者
阿部 彩
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-3, 2019-06-30 (Released:2021-07-01)
著者
羽田野 正隆
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.229-239, 1966-04-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
11

断裂図(法)は分布図としてすぐれた性質を有しているが,利用度は必らずしも高いとはいえない.筆者は主としてグード以来発表されてきた諸断裂図を,いろいろな角度から検討した結果,その原因が断裂そのものにあるのではなく,過度の分離性と不自然な形態を惹き起こす断裂の仕方にあることを認め,この点が改良されれば,断裂図の価値およびその利用度は高まるであろうと考えた. このような観点から,筆者は断裂図に点対称概念を導入した新らしい型の断裂図を作成した.そして,それが上記の目的によく合致することを認めた。
著者
佐原 久美子 福井 誠 坂本 治美 土井 登紀子 吉岡 昌美 岡本 好史 松本 侯 松山 美和 河野 文昭 日野出 大輔
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.106-114, 2022 (Released:2022-05-15)
参考文献数
25

本研究の目的は,口腔状態と後期高齢者の要介護状態や死亡など健康への悪影響の発生との関連を調べることである.対象者295名は,後期高齢者歯科健診プログラムに参加した75歳の徳島市の住民である.各対象者から得られたアンケート調査と歯科健診結果をベースラインデータとして使用し,さらに要介護状態または死亡(要介護等)の発生状況を縦断的分析のアウトカムとして口腔状態との関連性について調べた. ベースライン時で要介護状態であった20名を除いて,275名の対象者を5年間追跡した結果,18.9%にその後の要介護等発生が認められた.Kaplan-Meier分析により「固いものが食べにくくなった」「中程度/多量のプラーク・食渣の沈着」「現在歯数20歯未満」の項目該当者は非該当者と比較して,要介護等の累積発生率が有意に増加した.Cox比例ハザード分析により「固いものが食べにくくなった」「中程度/多量のプラーク・食渣の沈着」「義歯等の使用ができていない」「CPI = 2(深い歯周ポケット)」は,要介護等発生と有意に関連していることが明らかとなった. これらの結果は,「固いものが食べにくくなった」というオーラルフレイルに関連する症状が,後期高齢者の要介護等発生の予測因子となりうることを示唆している.また,口腔衛生状態不良,歯周状態の不良および義歯不使用は,高齢者の健康への悪影響と関連がある.

7 0 0 0 OA 4.E型肝炎

著者
加藤 孝宣 高橋 和明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2418-2422, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
4
被引用文献数
1

この数年間でE型肝炎に関する常識は大きく変化した.かつては輸入感染症であったはずのE型肝炎は,今や国内感染の頻度が輸入感染を遥かに上回っている.そして国内感染の主な感染経路が動物由来であることが明らかとなってきた.鹿・猪・豚の肉や内臓を非加熱,あるいは不充分加熱状態で食することによりE型肝炎が起こり得る.原因不明の急性肝炎症例ではE型肝炎も選択肢の一つとして認識すべきである.

7 0 0 0 OA 大阪地籍地図

著者
吉江集画堂地籍地図編輯部 編
出版者
吉江集画堂
巻号頁・発行日
vol.1 東・南区及接続町村之部, 1911
著者
池田 幸弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.456-457, 2015 (Released:2018-08-26)

東海道線小田原駅に降り立つと,駅舎に掲げられた大きな小田原提灯の出迎えを受けた.小田原は天下の巨城で名高いが,江戸時代,品川から数えて9番目の東海道の宿場町として栄えた土地でもある.目指す済生堂薬局は旧街道(現在の国道1号線)に面した中宿町にあり,当時は脇本陣や10軒を超える旅籠があったという.駅の喧騒を抜け,落ち着いた佇まいの堀端を春風にそよぐ柳を眺めながら歩き,20分ほどで目指す済生堂薬局に到着した.
著者
松田 いりあ
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.186-197, 2008-06-30 (Released:2010-04-01)
参考文献数
36

フォーディズムからポスト・フォーディズムへの移行過程において,私的な商品消費は福祉国家の社会政策にもフレキシビリティを要求した.サッチャリズムは,規制緩和とプライヴァタイゼーションによって,このフレキシビリティ要求に応えようとするものであった.興味深いのは,サッチャリズムの支持者だけでなくその批判者もまた,商品消費がアイデンティティ編成にもつ意義を積極的に評価していたということである.しかしながら,アイデンティティがなによりも商品消費との関連で定義される消費社会では,社会政策の対象であった貧困層は周縁化されてしまうことになる.Z. バウマンによれば,消費社会の貧困層は消費選択の自由をもたないだけでない.労働者でも消費者でもなくなった貧困層は犯罪化されている.「マイナス記号のついた自画像」として,かれらは消費社会の自己イメージを保つ役目を果たす.貧困層の犯罪化は,かれらを福祉国家の規範の外部におき,経済的にだけでなく倫理的にも貧困を正当化することになる.
著者
大津 尚志 Takashi OTSU
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.48-58, 2022-02-28

「校則裁判」は1980 年代にはじまるが,最近になって髪色を黒染するべき,という指導をめぐって大阪地裁判決が下された(令和3 年2 月16 日)。判決では,校則に関する生徒側の主張は退けられた。校則の法的性質,頭髪の規制と人権の関係,頭髪規制の目的などを論点としてとりあげて,本判例の示す見解を分析する。原告にとって実質的敗訴である内容を検討する。本件は本稿執筆時(2021 年10 月)では控訴審が係争中である。判例についてのこれまでの「校則裁判」の判例史に載せることも含めた評釈を行い,問題性を指摘する。さらに加えて,訴訟提起後に文部科学省や教育委員会が「校則の見直し」を呼びかけるなどの動きが生じていて,大阪府のみならず全国に「訴訟外効果」が生じていることの実態を明らかにすることを研究目的とする。