出版者
日経BP
雑誌
日経ビジネス = Nikkei business (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.2053, pp.28-31, 2020-08-17

3月中旬、アジア、欧州、米国でロックダウン(都市封鎖)によって経済活動が止まった。途端に各地のディーラーが販売活動をやめ、対策会議で報告される完成車の販売在庫台数が瞬く間に積み上がった。「需要落ち込みのスピード、深さは08年のリーマン・ショッ…
著者
高橋 哲也 武居 哲洋 伊藤 敏孝 竹本 正明 八木 啓一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.32-37, 2014-02-28 (Released:2014-03-25)
参考文献数
19

背景:Spinal cord injury without radiographic evidence of trauma(非骨傷性頸髄損傷,SCIWORET)はわが国に多いが詳細な報告は少ない。目的:当院救急外来におけるSCIWORET の特徴を検討すること。対象と方法:頸椎・頸髄損傷91 例のうち,頸椎損傷のみは20例であった。頸髄損傷71例のうち単純X線とCTで頸椎に骨傷や脱臼がないSCIWORET は81.7% の58 例(年齢64.3 ± 14.7 歳,男性46 例,女性12 例)であり,その特徴を後方視的に検討した。結果:受傷機転は転倒30 例,転落15 例,交通外傷8 例,墜落5 例であり,65 歳以上では転倒・転落といった軽微なものが多かった(p<0.05)。頸椎X 線側面像で脊柱管狭窄およびretropharyngeal space( 咽頭後隙,RPS)拡大を認めたのはそれぞれ33 例(56.9%),17 例(29.3%)であった。脊柱管狭窄を認める割合はRPS 拡大群では4/17 例(23.5%)であったのに対し,RPS 正常群では29/41 例(70.7%)と有意に多かった(p<0.001)。結語:当院救急外来におけるSCIWORET は高齢男性の軽微な受傷機転により発症しており,頸髄損傷に占める頻度は過去の報告より多かった。SCIWORET において脊柱管狭窄を有する割合は,RPS 正常群では拡大群と比較し高値であった。
著者
望月 隆弘 衣笠 えり子 草野 英二 大和田 滋 久野 勉 兒島 憲一郎 小林 修三 佐藤 稔 島田 憲明 中尾 一志 中澤 了一 西村 英樹 野入 英世 重松 隆 友 雅司 佐中 孜 前田 貞亮
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.853-862, 2012-09-28 (Released:2012-10-05)
参考文献数
23

【目的】ビタミンE固定化ポリスルフォン膜ダイアライザ(VPS-HA)が,血液透析患者の貧血や,貧血治療薬(ESA)の投与量に影響を与えるか否かを検討した.【方法】主要なエントリー基準は,機能分類IV型ポリスルフォン(PS)膜を3か月以上使用し,直近3か月はTSAT 20%以上で,ESA製剤の変更がなく,ヘモグロビン(Hb)値は10.0g/dL以上12.0g/dL未満を満たす患者とした.研究参加は48施設で,305症例がエントリーされた.エントリー患者を,VPS-HAに変更する群(151名)と,従来のIV型PS膜を継続する群(154名)の2群に分け(中央登録方式),研究開始時のHb値を維持(10.0≦Hb<11.0g/dLおよび11.0≦Hb<12.0g/dL)するESA投与量を主要評価項目とした.その評価指標としてエリスロポエチン抵抗性指数(erythropoietic resistance index:ERI)を用いた.【結果】研究は1年間実施された.目標Hb値10.0≦Hb<11.0g/dLの範囲では差はなかったが,目標Hb値11.0≦Hb<12.0g/dLの範囲で,VPS-HA群はIV型PS膜群に比して良好なESA反応性を示した.とくにVPS-HA群のDarbepoetin alfa(DA)投与例では,8か月以降で開始時と比較して統計的有意差をもってERIが減少していた.またIV型PS膜群のrHuEPO投与症例では,統計的に5,7,10か月で,開始時と比較してERIが増加していた.VPS-HAとIV型PS膜の群間比較では,11か月目でVPS-HA群のDA投与例でIV型PS膜群に比して,ERIが有意に減少していた.【結語】目標Hb値11.0≦Hb<12.0g/dLの範囲で,ビタミンE固定化膜は,IV型PS膜に比べてDA投与量が減少しており,ESA投与量軽減効果が期待できる(UMIN試験ID:UMIN000001285).
著者
佐々木 孝侍
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.163-180, 2012-07-31 (Released:2017-10-06)
参考文献数
26

In recent years, models on fashion magazines have become highly popular in Japan. Such popularity finds its explanation in the enthusiastic behavior of fans as can be noticed in big fashion events such as "Tokyo Girls Collection". This paper ethnographically describes the phenomenon of the behavior of models' fans. In order to understand their interpretation and feelings about fashion models, the author conducted a semi-structural survey asking eighteen women about their most favorite models in 2011. This paper also looks into how fashion magazines, the place of activity for models, are perceived by the fans. The participants' observation at girls' events has also been assessed. The findings of the research can be stated as follows. According to fans, fashion magazines constitute a source of information about models. In fact, the attention of fans goes straight to the features of the body, the face or to the hairstyle of models. The models' fans do not interact with each other as is usually the case. Fans are not really interested in the personality or the private life of models. The paper shows however that at girls' events, the fans are more attracted by the features of the body.
著者
村川 三郎 坂上 恭助 越川 康夫 高津 靖夫 仲川 ゆり 薬師神 厚志
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.66, no.545, pp.59-64, 2001
参考文献数
9
被引用文献数
3 1

The purpose of this study is to establish the new calculating method of fixture requirements for railway stations by applying a simulation technique based on the characteristic factors of stations. In the previous papers, we showed the results of analyses on the passengers and their behaviors of toilet utilization in the East Japan Railway stations. In this paper, as part three, we made a proposal for the new calculating method of fixture requirements for railway stations based on the analyses of fixture usage. The main contents are as follows ; We showed the calculating method and the calculating conditions by simulation. The arrival patterns to each fixture in the toilet were set up from the investigated values. Also, the duration time of occupancy and the service level of waiting time were shown in each fixture. The maximum permissible waiting time in each fixture was set up from the questionnaire survey on the opinions of toilet utilization in buildings. The Monte Carlo simulation technique was applied for the calculation of fixutre requirements based on these calculating conditions. The numbers of fixture requirements were shown on the relation of arrival rates in each fixture. The calculating results were compared with the existing fixture numbers in the investigated five stations of the East Japan Railway.
著者
釘貫 亨
出版者
名古屋大学
巻号頁・発行日
1997

identifier:http://hdl.handle.net/2237/16644
著者
壬生 彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome:CRPS)に対する理学療法として,中枢神経系の機能異常に対する介入である鏡療法や段階的運動イメージプログラムなどが,疼痛の軽減および機能の改善に寄与することが認められており,推奨されている。しかし,効果が十分でない症例も報告されている。今回,鏡療法を実施したが,十分な効果が認められなかったCRPS症例に対して,運動療法を中心とした介入に変更することで日常生活動作(Activity of daily living:ADL)およびCRPS症状の改善を認めた経過を報告する。</p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>症例は30歳代の女性で,X-2年5月,自転車走行中にバイクと衝突し転倒した。直後より左上肢の痛みがあったが,明らかな骨折や神経損傷はなかった。複数の医療機関において加療を受けるも症状改善せず,X-2年2月にCRPSと診断され,X年6月に当院を紹介受診となった。主訴は左上肢痛と歩行困難であり,杖歩行にて来院した。左前腕より遠位および右下腿より遠位にNumerical Rating Scale(NRS)で6から9の痛みを訴え,著明な浮腫を認めた。アロディニアにより患部への接触は非常に困難であった。患肢,右肩関節,頸部の関節可動域制限があり,四肢体幹の運動は緩慢であった。また,The Bath CRPS Body Perception Disturbance Scale(BPDS)は37/57であり,患肢の身体知覚異常を認めた。疼痛生活障害尺度(Pain Disability Assessment Scale:PDAS)は47/60であった。精神心理面はPain Catastrophizing Scale(PCS)が48/52,Pain Self-Efficacy Questionnaire(PSEQ)が4/60であった。初期評価より,患肢の疼痛軽減と機能改善を目的として鏡療法と触覚識別課題を開始した。1か月間の介入を行ったが,疼痛増強や不快感を訴え続けたため,これらの介入のみでは改善が期待できないと判断し,ADLの改善と活動量増加を目標に患部外の運動療法を中心とした介入へと変更した。具体的かつ段階的な目標設定と達成度のモニタリングを行い,基本的動作能力の改善と活動量増加を図った。来院時には,健肢および体幹の積極的な運動を行い,運動による機能の改善が目標とする動作の改善につながることを実感させるように心がけた。患肢に対しては,自宅で鏡療法を継続させ,患肢および鏡像肢の知覚の変化に合わせて課題を調整した。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>理学療法開始より9か月時点での評価では,独歩が可能となり,ADLと精神心理面の改善を認めた(PDAS:26,PCS:36,PSEQ:16)。NRSに著変はないものの,アロディニアの軽減,身体知覚の改善などCRPS症状の改善も認めた(BPDS:27)。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>本症例では,CRPSの理学療法として推奨されている鏡療法よりも基本的動作能力の改善と活動量増加を図った運動療法が奏功した。初期評価時に自己効力感が低い症例に対しては,鏡療法といった即時的な効果を実感することが困難である介入よりも,日常生活動作の改善に直接つなげる運動療法が有効かもしれない。</p>
著者
渡辺 浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.63A, pp.718-724, 2017 (Released:2018-06-08)

Ekki is native to the western Africa. As it is considered to have great durability, great many Ekki members were imported in1990s. However bridge made of Ekki had dropped in 1999. It was recognized that suitable maintenance was required for Ekki bridges. Durability performance of Ekki is important, however there are few information about it. The aim of this study is to investigate long-term decaying behavior of Ekki bridge members. Suspension bridge which has Ekki deck members was diagnosed in 12, 16 and 25 years passed after construction. Valuable information about decaying behavior and diagnosis were obtained.
著者
鈴木 輝好
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.193-201, 2004-09

企業年金保険は年金基金向けに提供される保険会社の運用商品であり、最低利回り保証や成果配当といった仕組みを有する。また、所定の控除金を支払うことにより契約をいつでも解約でき、その時の返戻金は保証された利回りと成果配当により単調に増加する契約者持分を基準にして算出される。本論文ではこれらの仕組みをリスク中立測度の下で評価した。その際、生命保険会社から年金基金に対して持ちかけられる契約の転換、さらには生命保険会社には資産運用が悪化した場合にデフォルトする危険性があることを考慮に入れた。いくつかの仮定の下で、問題は二つの互いに分離できない早期行使のある無期限平均値オプションの価格付けに帰着した。その結果、本論文では企業年金保険の価格に関する解析解の導出に成功した。また、得られた解析解を用いてデフォルトリスクに関する影響を分析したところ、投資適格級の範囲内ではデフォルトリスクの差は商品格差として表れにくいことが分かった。
著者
片山 倫子 神田 英里香 渡辺 明香 藤巻 杏里
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.304, 2009 (Released:2009-09-02)

目的近年の洗濯機の動向としては、従来からの渦巻き式からドラム式への転換が進んでいる。日本では店頭に並んでいる洗濯機の性能を評価したラベル等の表示に関する法的な規制が確立されていないため、消費者は洗濯機の特徴をよく知らずに購入しているのが実情である。本研究では市販の全自動電気洗濯機について洗浄実験を行い各洗濯機の洗浄性能の比較検討を試みた。 方法被洗物としてはJISC9606電気洗濯機で規定されている模擬洗濯物(シーツ1枚・シャツ1枚・タオル4枚・ハンカチ2枚)の計8枚に補助布を加え2kgに調整した物を用いた。この被洗物の特定の部位に洗浄力評価用の湿式人工汚染布の一辺を縫いつける方法で取り付けた後に各機種の標準コース(水温40度)で洗浄した。洗浄中に使用した洗濯用水、消費電力量、所要時間を測定した。洗浄力の推定は模擬洗濯物に添付した湿式人工汚染布の洗浄前後のK/S値の差によった。 結果全汚れ除去量に見合うK/S値をみるといずれの機種についてもほぼ等しく最終的な洗浄力はほぼ同程度であるとみなせるが、単位水量あたり・単位時間あたり・単位消費電力量あたりの汚れ除去量を調べてみると機種間の相違が大きかった。一般に渦巻き式等のたて型洗濯機は同一コースでの繰り返し洗濯時の再現性が良かったがドラム式等のよこ型洗濯機は繰り返し時の再現性が悪い傾向が見られた。
著者
鈴木 聡子 船橋 良 阿部 祐子 片山 倫子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.225, 2006

〈B〉目的〈/B〉 近年、日本の家庭用電気洗濯機は渦巻き式から回転ドラム式へと急速に転換しているが、外見は同じでも両者の洗浄機構には大きな違いがある。一方、古くからドラム式を使用してきたヨーロッパでは、店頭の洗濯機に対して洗浄性能評価の表示を義務付けている。そこで著者らは次々に出現したドラム式についてJIS C 9606で採用している湿式人工汚染布とIEC60456で採用している4種のEMPA汚染布による洗浄性能の比較を試みた。〈B〉方法〈/B〉 被洗物としては、JIS C 9606で規定されている模擬洗濯物(シーツ1枚,シャツ1枚,タオル4枚,ハンカチ2枚の計8枚に補助布を加え,約1.5kgに調整)を、供試洗濯機は家庭用全自動洗濯機(ドラム式)3台とIEC基準機のウェスケーター(回転数は52rpm)及びJIS C 9606標準洗濯機を用いた水のみ(17±2℃)による10分間の洗濯を行った。被洗物の受けた機械作用は小型MA試験布によって推定し、洗浄力については各汚染布の表面反射率変化及び表面反射率から算出したK/S値によって検討した。〈B〉結果〈/B〉 IECのウェスケーター、日本の標準洗濯機及び3種のドラム式洗濯機(H11年、H13年、H17年製造)について洗浄力を湿式人工汚染布による洗浄前後のK/S値の差で、被洗物の受けた機械作用をMA/5値で推定したところ、標準洗濯機はウェスケーターの約2倍の機械作用を被洗物に付与しながら洗浄力はウェスケーターの半分程度であった。3種のドラム式には大きな差はなく、いずれの機種もウェスケーターと比べるとMA/5値は1.7倍、洗浄力は1.4倍程度であった。湿式人工汚染布とEMPA112はほぼ同じ洗浄性能であったが、EMPA111のみは水に溶出しやすく機械力との相関が見られなかった。
著者
岡本 安晴
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.44-55, 2011-09-30 (Released:2016-12-01)
被引用文献数
1

Bayesian analysis is applied to experimental data to effectively exploit information by the up-down method. Comparing Bayesian analysis to the standard one, which estimates the point of subjective equality (PSE) by averaging part of the comparison stimuli, confirms the two methods do not differ in terms of the PSE estimation. However, the standard analysis estimates only the PSE, whereas Bayesian analysis can also estimate a just noticeable difference (JND). Estimates of the PSE and JND determine a psychometric function. These results reveal that the Bayesian analysis is useful and superior to the standard analysis.
著者
山田 澄夫
出版者
麻布大学
巻号頁・発行日
1976-11-29

ブドウ球菌食中毒は,黄色ブドウ球菌が産生するエンテロトキシン(以下Entと略)を含んだ食品をヒトが摂取することにより生ずる典型的毒素型細菌性食中毒である。本食中毒の原因物質がEntであることは,すでに1930年代より明らかにされ,現在までに抗原特異性を異にするA,B,C,DおよびEの5型の存在が確認されている。 著者は本毒素の検査体系-特にEntの検出法の確立-と本食中毒予防の基礎を確立するための研究を行った。以下,各項芦別にその概要をのべる。1.Ent A,B,C,DおよびEの精製 本菌食中毒はわが国のみならず文明諸外国においても高い発生を示しており食中毒発生に際しての確実な診断および疫学調査は公衆衛生上極めて重要な課題となっている。本菌食中毒の最も確実な診断は,推定原因食品中に極めて微量に含まれるEntを検出することである。微量毒素の検出法としては,型特異的抗Ent血清を用いた逆受身赤血球凝集反応やradioimmunoassayなどによる抗原-抗体反応が有効であるが,これらの方法を応用するためには極めて高い特異性を持つ抗血清ないし抗体グロブリンが必要である。それにはA~Eの各Entを免疫学的に均一な標品までに精製し,それを免疫原として型特異的抗血清を作成することである。 一方,毒素分子の構造と抗原性や毒素活性との関係,毒素の作用機序の解明のためにも精製毒素を得ることが必要である。 これまでにも主として米国の一部の研究所や大学においてEntの精製が試みられてきたが,著者は以下の本毒素産生菌株と精製操作により,A~Eのすべての型のEntの簡易精製を試み,高純度な精製標品と型特異的抗Ent血清を得ることができた。 Ent A~Eの産生に用いた黄色ブドウ球菌は,A型に13N-2909,B型にC-243,C型に493,D型に1151,E型にFRI326の各菌株である。毒素産生培地としては,4%NZ-amine培地を用い,37C,24~48時間振とう培養し,その遠心上清を精製の出発材科とした。精製過程におけるEntの検出はreference抗Ent A~E血清を用いたスライドゲル内沈降反応と,サルへの経口投与または静脈内接種による嘔吐発現の有無により,精製標品の純度は後述の各EntのAmberlite CG-50画分(以下粗毒素と略)をウサギに免疫して得た抗粗毒素血清とのOuchterlonyのゲル内沈降反応により検討した。 Ent精製の第1段階では,濃縮操作と部分精製をかねてすべての型に共通にAmberlite CG-50.クロマトグラフィーのバッチ法を用いた。その結果,いずれの場合も多量の培養上清から効率よくEntを濃縮することが可能であった。 本実験に供したAおよびB産生株にα-溶血毒を産生しないため,Ent AとBの精製では,ついでCM-セルロースクロマトグラフィーとSephadex G-75またはG-100のゲルろ過を組み合わせた3段階の操作により,免疫学的に単一な精製標品を得ることができた。この方法による回収率はAでは36%,Bでは40%であった。 一方,培養上清中に多量のα-溶血毒を含むEnt C_2,DおよびEの精製では,上記3段階の操作に,Entとα-溶血毒の分別方法としてDEAE-セルロースクロマトグラフィーを導入した。Ent Eの精製では,さらに他のタンパク夾雑物を除去するためにDEAE-セルロース再クロマトグラフィーを用いた。その結果,Ent C_2は4段階,Eは5段階で精製標品を得ることができ,その回収率は10%および5%であった。しかしながら,Ent DはDEAE-セルロース再クロマトグラフィー,6M尿素を用いたSephadex G-75ゲルろ過,等電点分画の7段階の操作によってもなお,最終標品からEnt以外のトリプシン抵抗性のタンパク夾雑物を分別することはできなかった。 各最終標品で免疫して得た抗血清はOuchterlonyのゲル内沈降反応において,抗Ent A~C_2およびE血清は対応する精製毒素と粗毒素に対して1本の沈降線を形成し,それらはreference Entとその抗血清が形成する沈降線と完全に融合した。抗Ent D血清は粗毒素に対して2本の沈降線を形成したが,非Ent画分をリガンドとしたアフィニティークロマトグラフィーにより, 特異性の高い抗血清を作成することができた。 各標品の免疫学的特異性をゲル内沈降反応と催吐活性中和試験で検討した結果,各標品は対応する抗血清とのみ沈降線を形成し,その催吐活性は特異的に中和された。逆に,他の型の抗血清とは沈降線を形成せず,その活性も中和されなかった。 以上の結果から,既知あるいは未知のEntは簡易化した同一精製法-α-溶血毒非産生株は1),Amberlite CG-50を用いたバッチ法による培養上清中のEntの濃縮,2),CM-セルロースクロマトグラフィー,3),Sephadex G-75ゲルろ過の3段階,α-溶血毒産生株はこの過程にDEAE-セルロースクロマトグラフィーを導入した4段階-で高純度な精製標品を得ることが可能であると推定された。2.精製毒素の物理化学的性状 精製毒素の物理化学的性状,酸・アルカリおよびタンパク分解酵素などに対する安定性,生物活性基と抗原決定場の決定および毒素と生体内レセプターとの相互作用などの毒素学的追求は,タンパク化学的見地から極めて興味ある問題であり,しかも毒素の作用機序を明らかにする重要な手がかりを与えるであろう。現在までに,これら研究の大部分は産生量が多く,精製の容易なEnt Bについてなされているに過ぎず,他の型の毒素についての研究は極めて少ない。本菌食中毒事例で最も高頻度に検出されるEnt型がAであるという事実を考慮に入れるならば,Ent Aの性状の検討は極めて重要な意味を持っているといえる。 著者は前項でのべたEnt精製法により得た精製標品,特に本菌食中毒で主役を演じているEnt Aの物理化学的性状を明らかにするとともに,他の型の毒素についても検討を加えた。 精製Ent Aは250nmに極小吸収,277nmに極大吸収を持ち,核酸,脂質および炭水化物を含まないトリプシン抵抗性の単純タンパクであった。精製毒素のシュリーレンパターンは3時間,経時的に測定しても左右対称で毒素分子の均一性が示され,そのS_20wは2.71S,分子量はSephadex G-75ゲルろ過法で26,000,SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で27,000,沈降平衡法で30,000と推定された。精製毒素はisoelectrofocusingにより血清学的に同一なpH7.0とpH6.5の2つの大きな画分とpH8.0の小さな画分に分画された。最大のEnt画分を示したpH7.0を本毒素の等電点(Ip)とした。アミノ酸分析の結果,精製毒素は214個のアミノ酸残基から成り立っていると推定された。各アミノ酸残基数は,アスパラギン酸34,グルタミン酸25,ロイシン22,リジン21,スレオニン,グリシン,チロシン各15,バリン13,セリン,イソロイシン各10,フェニールアラニン8,アラニン7,アルギニン6,ヒスチジン5,トリプトファン4,プロリン3,メチオニン1であった。 精製Ent Bは250nmに極小吸収, 277nmに極大吸収を持ち,核酸,脂質および炭水化物を含まないトリプシン抵抗性の単純タンパクであった。精製毒素のシュリーレンパターンは各時間において左右対称を呈し,そのS_20wは2.68S,分子量はSephadex G-50ゲルろ過法で29,000と推定された。精製毒素はisoelectrofocusingにおいて,血清学的に同一なpH7.62,pH8.35,pH8.70の3画分に分画され,pH8.35を本毒素の等電点とした。 精製Ent C_2とEも250nmに極小吸収,227nmに極大吸収を持ち,核酸,脂質および炭水化物を含まない単純タンパクであった。両毒素ともその分子量はSephadex G-50ゲルろ過法で29,000と推定された。精製Ent C_2もisoelectrofocusingにおいて,pH6.55とpH6.70の2つの大きな画分およびpH6.0とpH8.0の2つの小さな画分に分画され,pH6.70を本毒素の等電点とした。 精製Ent A~C_2およびEはpH4.3でのディスク電気泳動において単一なバンドを形成したが,pH9.4での泳動では2~4本のバンドを形成することを認めた。pH9.4での泳動で分画される複数のバンドは血清学的には同一で,しかもisoelectrofocusingで得られた画分に相当することをEnt Aで実証した。この複数のバンドは,超遠心分析およびHedrick-Smith法による分析結果から,毒素分子の分子サイズの違いによって生じるものでなく,Chargeの差を異にするcharge isomerに起因するものであると推定された。 以上の結果から,Entは分子量26,000~30,000,沈降定数(S_20w)2.7S前後のいくつかの異なった等電点を有するトリプシン抵抗性のcharge isomerタンパクであろうと結論された。Ent Dは完全には精製されなかったが,本毒素も他の型の毒素と同様の物理化学的性状を有する分子量約29,000,等電点7.70前後のトリプシン抵抗性の単純タンパクであろうことが初めて推察された。3.Entの加熱に対する安定性 Entは耐熱性毒素であるため,本毒素を含んだ食品は加熱調理後も,本菌食中毒の原因食品となり得ると考えられている。したがって,本毒素の耐熱性に関する問題は,食品衛生上極めて重要である。しかしながら,Ent A~Eの加熱処理による毒素活性の変化の差を比較検討した成績はほとんど得られていないのが現状である。 本菌食中毒の予防の立場から極めて重要な問題である毒素活性と熱処理の関係を,得られた精製Ent A~C_2および粗毒素A~Eを用いて検討した。加熱温度は60C,80Cおよび100Cとし,各5時間加熱処理による毒素の抗原性の経時的変化を特異抗血清を用いたOudin法により推定した。各毒素は50μgを0.05Mリン酸緩衝食塩水,pH7.2に溶解し,所定の温度で加熱した。 精製Ent Aは60C,3時間,80C,5時間,100C,1.25時間で50%失活し,100,2時間で完全に失活した。粗毒素Aは60Cおよび100C,1時間,80C,5時間で50%失活し,100C,2時間で完全に失活した。 精製Ent Bは60C,5時間で20%,80C,3時間および100C,20分で50%失活し,80C,4時間および100C,1時間で完全に失活した。粗毒素Bは60C,5時間,80Cおよび100C,10分で50%失活し,80C,4時間および100C,1時間で完全に失活した。 精製Ent C_2は60Cおよび80C,5時間で25~30%,100C,2時間で50%失活し,100C,3時間で完全に失活した。粗毒素C2は60Cおよび80C,4時間,100C,50分で50%失活し,100C,3時間で完全に失活した。 粗毒素Dは60C,2時間,80C,4時間,100C,20分で50%失活し,100C,1時間で完全に失活した。 粗毒素Eは60C,5時間で30%,80C,1.5時間,100C,30分で50%失活し,100C,1時間で完全に失活した。 以上の結果から,精製毒素は粗毒素よりも耐熱性であり,各毒素の加熱に対する安定性は毒素型によって異なると考えられた。Ent A,C_2,Dが高温度で比較的安定であることは,後述のごとく本菌食中毒原因食品から検出される黄色ブドウ球菌はこれらの型の毒素を産生するものが多い成績から,食中毒発生との関係上特に注目された。 Ent A,C_2およびDは80Cより60Cで早く不活化され,AおよびC_2では粗毒素のみならず精製毒素においてもこの現象が観察された。この現象が一部の細菌タンパク毒素で認められている加熱温度差によるタンパク分子の立体構造の変化によるものか否かを,精製Ent Aを用い,加熱-再加熱の実験系で検討した。その結果,60C,1,2,3,4および5時間加熱した各試料は80C,40分の再加熱により20~45%の活性の復元が認められた。60Cで加熱された試料は微細絮状物を形成して混濁したが,再加熱により絮状物は消失して透明となった。Ent A,C_2およびDで認められるこの特異的な熱安定性は,低温度(60C)でのタンパク分子の集合(aggregation)と高温度(80C)での再加熱による分子の解離(dissociation)によるものであることが推察され,この特性は本毒素の活性と構造との関係を解析するうえで重要な手がかりを与えるものであることが強く示唆された。4.毒素産生性黄色ブドウ球菌の分布と本菌食中毒発生との関連について 本菌食中毒は,他の細菌性食中毒が食品衛生意識の向上にともない減少しているのに対し,漸次増加の傾向すら認められている。このことは食品が高頻度に黄色ブドウ球菌に汚染されていることを意味するものである。ヒト,動物その他これらを取り巻く環境に広く分布するすべての黄色ブドウ球菌がEnt産生能を有し,食中毒の原因となりうるならば,生態系と食中毒で検出される本菌のEnt産生能とその型別には密接な関係があるはずであり,その検討は本菌食中毒の予防対策に重要な手がかりを与えるであろう。 以上の理由から,食中毒由来黄色ブドウ球菌と自然界由来黄色ブドウ球菌のEnt産生能とその型別を行った。 供試菌株として,1969~74年にかけて東京都内で発生した103事例の本菌食中毒の原因食品から検出した食中毒由来103株,自然界由来株は各種材料より本菌が検出されたもののうち1検体より各1株を任意に選んだもので健康人の糞便由来98株,鼻前庭由来99株,食品調理人の手指由来96株および市販食品由来99株,計392株である。Entの検出は,上記菌株の4%NZ-amine培養上清を1/50に濃縮したものを抗原液とし,本研究で作成した特異抗Ent A~E血清を用いて5μg/mlの本毒素を検出できるスライドゲル内沈降反応により行った。 食中毒由来103株中97株がA~Eのいずれか,もしくは数種のEntを産生した。そのEnt型はA型39株,C型16株,A・CおよびA・D型各11株,D型9株,B型6株,A・C・D型2株,A・C・E型1株であった。 自然界由来株は392株中272株(69.4%)がEnt産生株であった。各種材料由来株の産生Ent型は,健康人糞便由来株ではC型35株,A・C型9株,AおよびD型各6株,A・D型5株,B型4株,C・E,A・C・DおよびA・C・E型各1株,鼻前庭由来株ではC型19株,A・C型13株,A型9株,B,DおよびC・D型各5株,A・C・D型3株,B・DおよびA・B・D型各2株,A・B,A・DおよびA・B・C型各1株,調理人手指由来株ではC型29株,A型11株,B型7株,A・C型6株,A・D,C・DおよびA・C・D型各3株,DおよびB・C型各2株,A・BおよびB・C・D型各1株,食品由来株ではC型26株,A型18株,A・D型7株,DおよびA・C型各6株,A・C・D型4株,B型2株,C・D型1株であった。 食中毒由来株はEnt A産生株が多いのに対して,自然界由来株は各種材料ともEnt C産生株が多く認められ,食中毒と生態系の黄色ブドウ球菌のEnt型別分布は必ずしも同一でないことが示された。この違いが本菌食中毒発生にいかなる意味を持つのか,この点に関する今後の検討が本菌食中毒の予防の立場から極めて重要であると考えられた。
著者
池村 潤 入江 正之
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.72, no.622, pp.217-223, 2007-12-30 (Released:2017-02-25)

This study deals with the architectural method of Josep Maria Jujol, one of the most important architect in Catalonia, at the begining of the 20th-century, by the analysis of the changing of the architectural thought of the 20th century in Catalonia. With this purpose, this paper consists of two parts chiefly; the first part is exhausive collection of Jujol's discourses, the second part is rearranging of chronological order of all the articles dealing with Jujol mainly that written after his death. The intention of this paper is, therefore, to expound Jujol's architectural thought both inside and outside and to provide the begining of the serial study of Jujol.
著者
関川 靖
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.59-66, 1997-04-01

平成8年4月に保険業法が, 45年ぶりに改正された.これにより, 生命保険業の規制緩和が実施されるようになった.しかし, この規制緩和は, 金融自由化からの影響や消費者のニーズ及び経済環境の変化からそれに対応する経営方針の変化が不可欠であるため, 必要に迫られて生じたものと言われているが, 必ずしもそうではないと考えられる.この規制緩和は, 外国からの圧力や規制緩和の時勢と平仄を整えるために, そして政府の失敗を解消するために行なわれたのではないかと思われる.規制緩和は, 本来資金の効率的配分と消費者に利益をもたらすことを目標とするものであるが,実際にこの保険業法改正に於いてこのことが必ずしも該当するとは思われない.規制緩和の最初の段階だからといって, 規制緩和の方針が不明確で良いとは言えない.どこまで規制緩和すれば, 消費者の効用が最大になるかを明示すべきである.本論文は, 保険業における規制緩和の要因を明確にし, この規制緩和が経済環境の変化によるなものかどうかを検証するとともに, 保険業の特殊性も考慮に入れて規制緩和の範囲を明らかにするものである.
著者
吉田 伸之
出版者
虎屋
雑誌
和菓子 (ISSN:13406019)
巻号頁・発行日
no.23, pp.7-21, 2016-03
著者
田中 繁宏 Shigehiro Tanaka
雑誌
武庫川女子大学紀要. 自然科学編 (ISSN:09163123)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-8, 2010-03-31

We experienced a world wide spread novel influenza A( H1N1) virus infections in 2009. We can now get easily large amounts of news of novel influenza virus infections by internet. According to studying of Japanese government strategy of prevent 0 entering the Japan, we should take care about whether a novel influenza virus could already be in Japan. We also should be take care in making diagnostic standard on novel influenza virus infections in order to avoid doctors misunderstandings in diagnosing of novel influenza virus infections. The strategy of prevent 0 entering and the local closing of schools might be effective to prevent spreading novel influenza infections. Considering the examination of medical cares against novel influenza infections, medical facilities of outpatient of fever should be largely increased in future.